お星様にお願い!?

そういえば世間は七夕だ・・・ふと、そのことを南は思い出した。
今の今までは大してそんなことを気にしなかったし、そういうものにロマンを感じる性格でもなかったはずだった。
短冊に願い事を書くという風習は未だにドラマなどで目にするが、それはいつも『くだらない行事』と流していたはず。
それが今年に限って『願い事』のくだりに食いついてしまったのは、自分が変わったという証拠なのだろうか?

(ま、確かに去年とは状況が違うからな・・・)

去年の今頃は、お星様にお願いするべきものどころか、特にこれといった望み自体もなかった。
日常の生活を何となく、惰性で送ってきた自覚があるが、南本人はそれをあまり不満とも寂しいとも思わなかった。
とはいえ、今は状況が全く違う。彼には何物にも代えがたい存在ができてしまった。



それが、目の前にいる一人の男。



「南、俺の顔になんかついてる?」

どうやら自分は無意識のうちに、彼をガン見していたらしい・・・それに気付いた南は苦笑する。
お前のことを考えていた・・・見た目によらず南はそんなことを言える性格ではないが、それに気づいたのは彼と付き合うようになってから。

この男、森川優は、特別な存在だ。
恋人かどうか・・・と言われても、正直わからないが、南にとっては誰よりも大切な存在であることは確かだ。
『何なんだそのあいまいな表現は?』と彼を知る強敵・・・いや、先輩あたりからツッコミが来そうだが、
何せまともに独りの人間と、真剣に付き合うようなことがなかったので、上手く表せない彼を責めるのは酷というものだ。
ちなみに、一応南自身は童貞というわけではなく、これまでに何人か交際したことはあるし、身体のお付き合いもあったのだが、
そのときは『去る者は追わず』という状況で、特に独りの人間に対して執着を見せなかった。
もちろん、今の相手は森川だけで、他の人間など目に入らない。



「うーん・・・何でお前なんだろうな・・・」



自分の知り合いには何故かバイセクシャルな人間が何人かいるが、南は基本的にノンケだ。
女の子のふくよかなおっぱいが好きだし、どうせ入れるのであれば、尻の穴よりも前のほうだ・・・という、当たり前の考えの持ち主だ。
そんでもって、自分以外のペニスなど見たくもなんともない(誤解がある表現だが、自分のが見たいというのではなく、自分のは抵抗なかったとしても、他の男のは・・・という、至極当然の話だ)。
それが世の中とは不思議なもので、よもや真剣に男と付き合うことになろうとは。

「ふーん・・・南は俺じゃ不満なんだ」

目の前の男は微笑みながら、しかし、バックに殺気を撒き散らして呟いてくれたため、南は真っ青になり、首を横に振った。
彼を怒らすわけにはいかない・・・どうも自分は森川には頭が上がらないようだ。

(ま、それは当然か・・・)

そもそも今こうやって自分の側にいてくれるのも、南が頭下げてお願いし、それこそ横恋慕したからだ。
実は森川は神崎という先輩と付き合っていたはずなのだが、その後神崎を振って南を選んでくれたという経緯があるため、逆らえないのは当然。

「・・・って、そりゃそうか。南は俺と違ってノンケだしなー。
しかも、お前が以前付き合ってたのは・・・ちょっと大人っぽくて、胸おっきくて・・・って、俺と正反対じゃないか・・・」

しかしその沈黙を勘違いしたのか、今度は森川の方が凹んだので、南は狼狽した。何故森川が凹む?



「バカ!俺にはお前しかいないのに!」



と、本音を吐く。
これはどう考えても愛の告白でしかないのだが、それを聞いた森川がとても嬉しそうだったのだが、森川に嫌われないように必死である南には気づく余裕はなかった・・・。




To Be Continued!



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