3話

「別に無理に僕に付き合ってもらう必要もないから。それより、来週小テストなんでしょ?練習問題はできたの?」


洋介に言いたいことはいろいろとあったが、強引に話を逸らす。
洋介が何か言いたそうな顔をしていたが、黙殺した。そうでなければやっていけない。



「いつも勉強のことばかり・・・」


それでも耐えきれないかのごとく、洋介が愚痴をこぼした。ただ、本当に愚痴をこぼしたいのは、朋久のほうだ。
彼とて洋介と勉強の話だけをしたいわけではない。いろいろしたい話だってある。
それなのに・・・そういった話をしようとしないのは、洋介のほうではないか。



「あぁ、悪かったね。洋介くんも勉強のことだけでなく、少しは僕のことだって知りたいよね」


ぐぐぐいっと・・・珍しく朋久は身を乗り出した。いつもならちょっとたしなめて勉強のほうに持っていくのだが、今日は洋介に便乗することにした。
少年のおかげで今日はネジが吹き飛んでしまったみたい。



「いや、朋久さんのことで特に知りたいことはないんだけど・・・」


だが、愛情表現を示すと、あっけなく無視される。これはこれでいつものことだ(何度も同じ反応をされてむなしくなり、朋久もあまり自分のことは話さなくなった)。
つまらなそうにもといた場所に戻ろうとするが・・・。




(?)



洋介の鞄の中に、なにやら怪しげなものが隠してあることに気付く。

「あ!」

視線をそれに移したところ、急に洋介の顔色が変わる。つまり、それは朋久に見られたくないものだということだ。
そうなると彼も黙って見過ごすわけにはいかない。だから彼は一瞬の隙を突き、それを掠め取る。


「なるほど・・・だから僕との約束すっぽかしたんだねぇ・・・」

「それは・・・!」

あわてて奪回しようとしたが、ひょいとかわす。そして、朋久に浮かぶのは、絶対零度の瞳。

「ふーん・・・ラブレター・・・。洋介くん、もてるんだねぇ・・・」

口元には妙な微笑み。『穏やかな人ほどキレると怖い』と表現するのにぴったりな地獄のスマイル。しかも、目が笑っていない。
それどころか、『今すぐ殺してやる』というのがふさわしいほどの殺気。
柔和と言われる朋久でも、流石に自分の想い人がこんなものをもらって大人でいられるはずがない。



「えっと・・・それは・・・」


そんな朋久をみて冷や汗をかきまくる少年。彼も彼で、このような表情をした朋久は危険だと本能的に察知したらしい。
逃げようとしたものの、鬼気迫る朋久を前に無理だったようで、仕方なく白状する。




「それ・・・ね、朋久さん宛てのラブレターなんだ」



ねくすと



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