7話

生まれて17年、彼女もいなければセックスもしたことがなかった。もちろん、チューもまだ。
それなのになぜか彼氏ができてしまった・・・かなり複雑な心境の松山洋介はため息をついた。
お相手は久喜朋久、幼馴染の大学生だった。自分も彼にはなついているという自覚はある。
小さいころから兄のように慕っていたし、ちょっとボケたところはあるけれど、基本的に面倒見がよくやさしい青年だ。
この間なんか告白しようと思った子がいたくらいだ・・・そこまで考えたところでまたもや洋介はため息をついた。彼氏ができる原因となったのは、これだったから。


クラスメートの三沢留美が朋久のことを好きだから一度会いたいと言った。
断る理由もないので洋介もおぜん立てをしたわけだったが、結果はお付き合いならず。
朋久の前では驚いてみたものの、これ自体は想定済みだ。もし自分が朋久の立場だったら即答でオーケーするだろうが、朋久の場合そんな想像が通じる男ではない。
留美と会話が弾んだことに関しては意外だったが、どうせ何らかの理由をつけて断るだろうとは思っていた。
だが、その理由にびっくりだ。どうも朋久は『洋介のことが好きだから』留美とのおつきあいを断ったらしい。
さすがにその答えには洋介も唖然とせざるを得なかった。考えてみたらこれは単なる冗談だろう。
このくらいの愛情表現は何度かされたことがある(その都度彼は流していたわけだが)。基本的に誠実な朋久は、断ることに気を遣うことが目に見えている。
ただ『君のことがよくわからないから』ということはないはずだ。で、その理由に洋介が使われ、その結果・・・ということだ。




(ったく、そんなことに俺を使わなくても・・・)



と愚痴りつつも、内心では朋久に好かれること自体は嬉しく思っているのが複雑だ。
朋久本人はどこまで洋介のことを好きかは知らないが、留美の気持ちを断ることに自分を利用するのであれば・・・ということで、なんとなく『付きあってみる?』といって付き合ってしまったのが実情だ。




(といっても・・・何も変わらないんだけどね)



別にデートするわけでも、キスをするわけでもない。
18
歳未満はゴメンナサイ・・・というお色気的なことは当然ない。




(って、期待してるわけじゃないけど!)



どうも年上の幼馴染は洋介のことを好いていることは事実なようだが、それはLOVEというよりLIKEのほうであるらしい。
『近所の弟みたいな子』というのが妥当な線か。そんなわけで、好きだと言われても実感がわかないのだ。




(って、なんで俺凹んでるんだろ)



自分の気持ちがよくわからない。男と付き合うこと自体初めてのことで、それは別におかしいことではないはずなのだが、朋久の気持ちがよくわからないことが洋介には重くのしかかる。
朋久は本当に洋介のことが好きなのか。考えてみたらあの言葉はいつもの愛情表現の延長ではないのか?




(あ、メール・・・)



気づけば朋久からのメール。そういえば、彼から来るのは珍しい。いつも―といってもそんなに頻繁に出すわけではないが―は洋介が出すことが多い。


『放課後、暇だったら遊びに行かない?』


と、御誘いのメール。どうやらデートをしたいということらしい。
もちろん洋介に断る理由はない・・・と言いたいところなのだが、こういう時に限って何か嫌なことが発生するのは、ここ最近の体験で嫌というほど身にしみている。そして、ちゃんと今日は用事があったのだ。



ねくすと



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