10話

「朋久さん・・・何で俺と付き合うことにしたの?」


ふとわいた疑問を洋介は口に出したが、『は?』理解できない様子の朋久を見て、洋介のイライラが募る。

「そりゃ、『付き合おう』と言ったのは俺だけどさ、
だから俺が言うのも変だけどさ、
その気がないならオーケーしないでよ」


「いや、付き合う気があるから付き合うことにしたんだけど。
というか、僕、洋介くんのことが好きだって言わなかった?」


心底不可解とでも言いたげに朋久が応えた。
確かに朋久は洋介のことが好きだと言った。
それがまぎれもない事実であることは洋介も解っている。
だが、言いたいのはそういうことではないのだ。もっと根本的に存在する問題で・・・。



「言ったけど、考えてみたらおかしいよ。
付き合うっていっても別にデートをするわけでもないし、キスするわけでもないし、セックス・・・」



最後まで言うことができなかった。朋久が盛大にため息をついたから。
それが何を意味するのかはわからない。
ただ、彼の呆れたような顔は初めて見るものだった。




「洋介くんは僕を試してるの?」



「はい?」

朋久の口から『試す』との言葉が出る。
言いたいことが解らない・・・そう反論しようとしたが、目が笑っていない朋久を前にできるはずがなかった。


「僕がどれだけ我慢してるか・・・解ってないね」

返事する暇も与えられずに、洋介は押し倒された。

「僕は、ずっとこういうことをしたかったんだよ。本当は色々と君のこと、心の中で妄想してたんだ。
まぁ、いきなりこんなことをしてもただの『変態のお兄さん』だからね。
下手に手を出して嫌われるのも怖いし、『優しいお兄さん』ということで君にいろいろアピールしてきたつもりだったんだけど・・・はぁ、やっぱり洋介くんには伝わってなかったか・・・」


急に悲しげな顔をされ、洋介はあることに気づく。
朋久は洋介に自分の気持ちが伝わっていないと思っている。
つまり、朋久の告白を真に受けていないと思っているのだろう。
それでも付き合うことを持ちかけた洋介のことをどう思っているのだろうか。
ある意味断るよりも失礼なことをしたのではないか。


「おまけにこっちが口滑らせちゃって、内心びくびくしていたときも『付き合ってみる?』なんて気軽に言ってくるし。
洋介くんが男の子と付き合っているのなんか見たことないわけで、これが現実だなんて思えるわけがないでしょうが・・・」


口から出てくるのは、恨みごとか。痛いところを突かれて洋介には返す言葉が思いつかない。
朋久もしばらく何か考え込んでいたようだが、しばらく言いたい放題言ったせいか、すっきりしたようだ。
勝手に納得した様子を見せる朋久。




「うーん・・・ま、仕方ないね」



ねくすと



INDEX   TOP   Novel