第25夜



(そうか・・・愛してるのかも・・・知れないな)



仁科に惚れている・・・その事実を当たり前のように認めることが出来た。今まで男に恋したことはないが、仁科が相手なら男同士でもありだと思える。
ただ、ハードルはかなり高い。仁科は幼馴染に片想いをしているのだ。
失恋したとはいえ、それを簡単に切り替えられるような器用な性格ではないことは短い付き合いではあるが、知っている。
真鍋は、そんな彼が好きなのだ。だからこそ自分がそばについてやりたい。



「真鍋さん・・・?」



「いや・・・今度来るときは・・・俺とじゃなく、お前が本当に愛した奴とこれるといいな」

それなら、心から笑っていられるから・・・口には出さずに、気持ちだけはこめておいた。
仁科は笑っていたほうがいい。別に気を使ったものではない。心からの笑みを。そんな仁科が魅力的なのだから。
自分に欲がないといえば嘘になるが、本当に大切なことは・・・好きな人が心から幸せであることだ。




「真鍋さん、俺といて・・・つまらないですか?」



想像ができなかった仁科の答え。

「は?」

質問の真意がわからず返事に戸惑っていたところ、それを肯定と受け取ってしまったようだ。

「ごめんなさい、俺浮かれてた。

真鍋さんとここに行きたいってわがまま言って、ホントは昨日までずっと凹んでたけど、それでも真鍋さんついてきてくれて・・・でも、本当は俺みたいな男じゃなくて・・・」


謝る仁科は、今にも泣きそうだった。『あぁ、そうか』それで即理由に思い当たる。
仁科は勘違いしている。孤独を恐れているのだ。彼にとって真鍋は兄のようなもの。

そして、自身の性癖を隠さないで済む数少ない存在。

そんな真鍋が『他の人と・・・』と言うのだ。それを仁科と一緒にいたくないと受け取ってしまったらしい。
どのようにして誤解を解けばいいだろうか?


「悪いけど、いい年の男が付き合いだけで水族館になんか行かないぞ?」

恋人持ちならまだしも、それと縁が全く無い真鍋ならなおさら。だからこそ仁科に押し付けたのだ。結果として自分も行くことになろうとは思わなかったが・・・

「お前じゃなきゃ断ってたとこだからな」

それは紛れもなく事実だった。

「ホント真鍋さんって人がいい。でも・・・ありがとう。何だか元気でた」

安心した様子を見せる仁科。それなりに身長があるためすっぽりと入るわけではなかったが、それでも抱きしめてやる。
やっていることは性別の問題があるだけで周りと同じようなことだったが、別に構わなかった。


「真鍋さん、ここ、人前!」

公衆の面前に晒されじたばたしているが、力ずくでそれを封じる。良くも悪くも真鍋は周りを気にするような性格ではない。

「別に・・・周りのことなど気にする必要は無いだろう。窮屈すぎて・・・疲れないか?」

真鍋のようにあまりにも無関心すぎるのは問題だが、仁科のようにあれこれ考えすぎるのもどんなものだろうか。
子供なら子供らしくもう少しのびのび・・・とは思ったが、そんな仁科も好きなのだから仕方が無い。


「どうだろ。ずっとこんな感じだったから分からない・・・」

その言葉を聞いた瞬間、仁科に口付ける真鍋。何人かがこちらを見ていたが・・・真鍋はそんなことを気にする性格ではないのだ






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