第27夜

本当に真鍋さんには感謝してる。
赤の他人である俺の面倒を見てくれて、こうやって時間も作ってくれて・・・もし貴方がいなかったら、俺今どうなってたか分からない。
俺も、もう少しがんばるから。佑のこと、過去のことでいられるようにするから・・・真鍋さん、そのときまでは俺のお兄さんでいてください。
他の人のものには・・・ならないでください・・・




仁科の口から途切れ途切れに紡ぎだされるその言葉。一言一言から、彼の傷が伝わってくる。
自分ひとりでどうにかしよう・・・無理やり前を見ようとしている。だが、その一方では独りで歩くことを恐れてい
二つの相反する気持ちに仁科は押しつぶされそうになっている。
そんな彼に自分が出来る事はなんだろうか?




悪いが・・・そのお願いには答えるつもりはないな



考えて出たのが言葉なのだが、仁科が一気に凍りつく。それをいいことに真鍋がまくし立てる。

「何故お前が俺の兄でいなければならないんだ。
残念だが、俺はそこまで人格者じゃない。ついでに、『そのときまでは』ってなんだ。
お前が佑君のことを過去にしたら、俺は用済みってことか?納得いかないな」




「真鍋さん・・・?」



「ったく、『お兄さん』と『そのときまでは』って、余計じゃないか?兄だったら・・・恋愛できないだろうが」



表面上はかなり冷静に見せているが、内心はかなり緊張している。
誰かに想いを告げる機会などほとんどないものだから、真鍋も限界点に達しているのだ。
自分よりもはるかに年下の、しかも同性にここまで心を奪われるとは思ってもみなかった。
とはいえ、あまりにも冷たい表情と、放たれたその言葉のギャップに、目を丸くする仁科。




「それってつまり・・・」



「お前が好きだってことだ」



「・・・は、はいーーー?」



想像を絶する仁科の驚きように、真鍋の緊張も一気に吹き飛ぶ。

「ははっ。お子様にはまだ早かったかな」

「お子様だなんて!」

そのくらいは否定しなくても分かっている。お子様では片付けられないほど、一途に恋をして彼は深い傷を背負っているのだ。

「まぁ・・・だから、俺も焦るつもりはない。仁科がもう少し元気になったら、そのときは俺のことも見てくれるとうれしいかな」

「え・・・え・・・」

「気を長くして待ってるんで、そこ、よろしく」






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