「変なところを突っ込むんじゃない。つまり、一日一日を大事に生きるのが大事ってことだ。俺でよければ出来る限りお前の側にいてやるから」

心を込めて越谷は言った。
言っているとおり越谷は未来が重要ではないと言うつもりはない。
彼も仕事をしている以上将来を見据えることは重要だと思っている。
しかし、時にはそうすることによって身動きが取れなくなることもある。
きっと真琴はそういう状態に陥ってしまいそうなのであろう。
だから、真琴には今を見てもらいたい。


今を大事に生きなければ、未来もいいものにはならない。



「ずっと側にいてくださいよ・・・。もう、越谷さん抜きなんて考えられないから・・・」


相当恥ずかしいことを言ったのか、真琴は真っ赤になって越谷の胸に顔をうずめる。そして越谷はゆっくりと真琴を抱きしめる。



真琴はいつも大事なときに大事な言葉をくれる。
その一つ一つをずっと覚えていることを真琴は知らないだろう。
真琴は越谷が自分から離れると思っているが、本当は越谷のほうが真琴が離れるのを恐れているのだ。
越谷は大人で、今まで色々なことを見、聞き、やってきた。
だから、真琴との恋愛は伊達や酔狂でやっていないつもりであるし、真琴を選んだという自覚がある。

しかし、真琴のほうはどうだろうか。もちろん彼を信じないつもりはない。
だが真琴は心身ともに子供だ。恋愛を知ったのも最近なのである。
だから、本当に大人になったとき、彼はどう思うだろうか。男同士を不毛に思うだろうか。時々越谷は不安に思う。
だけど、そんなことをいつも気にしていても仕方ない。
真琴が自分のことを好きだといってくれている、その事実さえあれば越谷は頑張れるのだ。




好きだよ、言葉には出さずに真琴に言う。真琴も同じことを言っていたらしく、ふとお互い目があって二人とも赤くなってしまった。





そんな二人の思いを知っているのかいないのか、天空では色とりどりの花が咲き乱れていた・・・。


END





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