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「おーい、岬君?」
気がつけば岬に押し倒されていた。別に嫌というわけではないのだが、あまりの早業にコメントのしようがなかった。
どうしたものか・・・呆然としている柚月を尻目に、ぷちぷちとボタンをはずしていく。
「ずっとずっと寂しかったんですから。ずっと会いたいのを我慢してて・・・本当は許したくなんかありません。一発殴ってやりたいんです。
でも、先輩には先輩の生活があるから、身体で払ってくれれば許してあげます」
「何か俺の台詞取られたようで悔しい」
ちょっと軽口をたたく柚月。だが、そんな彼を見て岬の様子がおかしくなる。ボタンをはずす手が震えるのが伝わってくる。
「何で・・・そんなに余裕たっぷりなんですか・・・俺は先輩がいない間ずっと・・・」
「余裕なんか・・・あるわけないだろう。俺がさっきまでどんだけびくびくしていたか・・・お前には想像できるか?」
岬に嫌われたらどうしよう・・・その気持ちしかなかったのだ。
彼にとって岬は全てだから。
人前では余裕をつくろえても、恋人の前でそれが出来るはずはない。
岬に好かれたい・・・それで柚月は必死なのだ。だから、みっともない事だってしてしまう。
「泣くからな」という言葉は、岬以外の前では絶対出ない。
「そんなの・・・わからないです!いつも先輩は完璧で。確かにヘタレといえばヘタレだけどそれでも・・・」
「お前・・・」
『泣いているのか?』それは言わないでおいた。指摘すれば慌てて少年は涙を拭うだろう。
震える岬の指先から、彼が閉じ込めていた寂しさが伝わってくる。普段は気丈なのに・・・そんな岬を見た柚月は、ふっと笑う。
「いいよ、俺は岬のものだ。岬の好きなようにしてくれればいい。その・・・俺も最近禁断症状が出てきたから」
珍しく自分から口付けしてくる岬を、じっくりと受け入れる柚月。経験豊富な彼から見れば、あまり上手いというわけではないのだが・・・上手い下手など、柚月には全く関係はない。岬の唇だからこそ、価値がある。それに、一生懸命に舌を絡ませようとする仕草が愛しい。柚月はそれに答えてやる。
「ん・・・」
歯の裏をつっついてやると、かすれた声が漏れてくる。どうも彼はここが弱いらしい。まったりと唇を貪ってから、もう一なでする。
「んぅ・・・」
岬の舌の動きが止まり、体重が柚月にかかる。自分の舌で感じてくれるのが嬉しい。
柚月も今まで腐るほどキスはしてきたはずだが、恋人とのキスはやっぱり特別だ・・・そう思いながら、口を開く。
「岬・・・もう降参か?」
わざと煽るように聞いてやる。岬にも男の意地があるようで、その言葉で一気に復活する・・・それを柚月は解っている。
「その言葉・・・後悔させます」
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