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『浮気しようかな』突然出た岬の問題発言。当然、柚月は真っ青になる。
いくらなんでもこんなラストはあんまりだ。せっかくここまで努力してきたのに。何でこうなるの?
そんなやり切れない彼の心中を察したのだろうか?軽く笑いながら岬が続ける。
「だって、浮気したら犯してくれるんですよね?」
「おい、お前本気で浮気するつもりか!?」
うろたえる柚月に、今度は呆れ顔。
「冗談に決まってるでしょ。何で先輩以外にやられなきゃいけないんですか?」
「そりゃ、岬はもてるからな」
柚月以外に抱かれるつもりはない・・・そんな彼の気持ちがとても嬉しい。ただ、余計な心配をするほど岬は魅力的なのだ。
こればっかりはくだらない嫉妬だということに気づいているが、そう簡単に割り切れるものでもない。
「あんたに言われたくはないですよ」
と一蹴される。どうやら岬のペースにはまっているらしい。そんな自分に苦笑する。これ以上のやりとりは結果が同じだ。
ひたすら怒られて・・・というオチが待っているのは分かっている。柚月のほうから折れることにする。
「わかった。とにかく、浮気なんかしないからな」
別に心疚しいことは全くないのだが。以前は来るものはタイプなら拒まなかったが、今は非常に真剣なお付き合いをしている。
それどころか、自分でも媚びすぎなのではないか?と思うほど岬のことを気遣っている。
「それならいいんです。柚月先輩には俺のヴァージン奪った責任をとってもらいますから。
ちなみに、前もって言っときますけど、別れたくなったからといって金銭で解決・・・というのは許しませんから」
まだ信じてないのか・・・と思いかけたが、すぐそうではないことに気づく。岬が言いたいことは柚月がどうこうではない。
言い方にはあまり色気がないが、紛れもなく岬自身の気持ちなのだ。まさに人生最高のプレゼントだ。
「あぁ、責任くらい取ってやる。本来お前はホモじゃないからな。それを俺のせいでこんな道に引きずりこんだんだ。ずっと面倒見てやる」
最後の一言は岬の望みではないかもしれないけど。とりあえずはそう言っておく。想像通り岬の機嫌が悪くなりそうだったので、更につけ加えておく。
「俺なしじゃ生きてけない身体になるかもしれないけどな」
これで『面倒みる』が岬の下のお話になり、岬が一言『変態』。なお、岬がただ守られるような男ではないことは、柚月が一番知っている。
守られる立場に満足しているような男だったら、柚月が心から惚れるようなことはない。
「その変態と付き合うことにしたのは、何処のどちらさまですか?」
やっぱり言われてばかりなのも癪だ。反撃をする柚月。
「まぁ・・・そりゃ、俺ですけど・・・」
その口調があまりにも不本意そうだったので、つい柚月も吹き出してしまう。珍しく自分が押されているのが気に入らないらしい。
岬をいじめる・・・こんなチャンスは滅多にない。せっかくなので止めをさすことにする。
「つまり、お前も変態ってことだ」
「まったく・・・仕方のない人ですね。そういうとこだけ強引なんだから」
自分が変態だと認めたのか。それとも、これ以上柚月に何を言っても無駄だと悟ったのか。あっさりと降伏する岬。
「でも、まぁ・・・先輩がいなくなるのは寂しいかな」
それだけ言って岬はぎゅっと抱きついた。その声は少し震えていて・・・今までのテンションには多少なりとも強がりがあったのだろう。
「あぁ、そうだな。俺も同じだよ。ずっと思ってた。でも・・・会える時間が減るだけでずっと会えなくなるわけじゃない」
「でも!いつでも会えるわけじゃない!」
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