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耳を裂きそうな突然の大声に度肝を抜かれる。
思い通りにならない存在ではあるが、基本的に岬は物分りがいい人間だ。
柚月が言わなくても、押すべきところ、引くべきところを知っている。そんな彼が珍しく納得をしようとしない。
ただ・・・それが柚月と一緒にありたいという証なのであれば、彼にとってそれほど嬉しいことはない。


「そうだな。岬の言いたいことはよく分かる。俺も自分を納得させるのに時間がかかったよ・・・って、本来は俺が言う言葉だろう」

当然柚月だって岬と同じようなことを思っていた。だから岬の気持ちは痛いくらいに理解できるのだ。



「そんなの・・・関係ないです」



今までは柚月がわがままを言って岬を困らせることのほうが多かったが、『会えなくて寂しい』という気持ちに立場の違いなどない・・・そのくらいは分かっている。

「あぁ、そうだな。お前の言うとおりだと思う。でも、会える時間が限られるからこそ・・・一回一回が貴重なものになるんじゃないかな」

数多く会えないのなら、たとえ少なくても会えたときの時間を大切にしていけばいい・・・それが無理やり出した柚月の結論だった。

「俺は先輩みたいに物分りよくないです」

それでも、恋人は納得しようとしない。そんな岬に柚月は・・・。

「先輩・・・?」

ぎゅっと岬を抱きしめてやった。
ここまで駄々をこねる岬が珍しいから。
ただ、そうするにはちゃんと理由があるから。
だから、ただのわがままと思うつもりはない。
そして無理やり自分の気持ちを押し付けるようなこともしない。


「岬の気持ちは分かる。だけど・・・二年だけ我慢してくれ。そして、早く俺に追いついてくれ。
そうすればずっと側にいることができる」


「・・・その『二年』がって言っちゃいけないんですかね」

「うん、そうだな・・・」

ここで柚月は考え込む。明日から会う時間が減るのですら嘆いているのだ。
そんな岬にとって二年間は途方もない期間だ。だから適当な答えを返すわけにはいかない。
岬の不安を軽くするにはどうしたらよいだろうか。



「ま、こればかりはなるようにしかならんだろ」



考えてもこれしか出なかった。何せ、一人の人間をここまで大切にすること自体経験のないことだ。彼に答えが出せないのを責めることはできないだろう。

「ここで俺を不安にさせないのが先輩ってものじゃないんですか?」

と言われ、答えに困る。

「そう言うな。俺だって・・・あぁ、そうか。聞いて理解できないのなら身体に教え込めばいいのか。
そのほうが手っ取り早いじゃないか」


「うわ・・・やっぱり変態」

慌てて逃げようとするが、柚月はそれを許さない。

「なんとでも言え」

そっと岬のわき腹をさわってやる。少し岬は震えるものの大して表情は崩さない。

「誘ってるんですか、先輩」



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