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「大丈夫・・・か・・・岬・・・」
聞いても答えられない・・・そんな尋常でない岬の苦しみようを目の当たりにし、柚月の瞳が戸惑いの色を浮かべる。
「辛いなら・・・抜くよ・・・」
確かに岬とひとつになりたかった。言葉だけでは信じられなかった・・・というわけではないが、彼自身今までに経験したことのないほど大きな不安から、彼の気持ちを身体で受け止めたかった。
だが、柚月が望んだのは、こんなことではない。岬にこんなつらさを味わわせたいわけではないのだ。これから先に進むのはもう少し先のほうがいいのかもしれない。
「こんの・・・馬鹿柚月!」
だが、そんな気持ちとは裏腹に、岬が烈火のごとく怒る。
「あんたね・・・俺が・・・どんな気持ちでいると思ってんの?俺だってしっかり考えて先輩を受け入れてるんだからね。
ここでやめられたらヴァージン捧げた俺の立場がないんだよ・・・わかる?俺、処女失ったんだよ?」
「でも・・・辛い顔をしてるお前を見るのも辛いんだよ・・・」
『らしくなく』臆病な柚月に、岬の苛々もかなりの度合いになってくる。
身体が熱くて仕方がないのに。この熱をどうにかしてほしくてしょうがないのに。
なぜ自分が恥ずかしい思いまでして体を開いたのか、柚月を受け入れたのか、彼はわかっているのだろうか?柚月が相手だからこそ、この痛さも我慢できるのだ。
「何でこんなときに限ってヘタレになるかな。いつもらしくやればいいでしょうが」
「そうは言うけどな・・・」
柚月らしくなく、口調に歯切れを感じない。何か言うことをためらっているようにも感じる。
「あ、先輩、怖いんだ・・・」
冗談めかして聞いたものの・・・柚月の答えは肯定だった。
「そうかもしれないな。もし、痛いからといってお前に逃げられたら、男同士はやっぱりいやだ・・・なんか言われたら・・・そう思うと、俺は立ち直れなくなる。
お前のため?本当はそんなんじゃない・・・ただ俺が情けないだけなんだ」
自分の不安な胸のうちを柚月は吐露した。決して岬は彼のことを情けないとは思わなかった―確かにヘタレだと思った部分もあるにはあるのだが―。
それだけ自分のことを特別に想っている・・・そのサインのような気がした。絶対流してはいけない・・・そんな柚月の身体をためらいもなく引き寄せる。
「ぐ・・・」
「大丈夫・・・か?」
「へ、平気じゃないかも。でも、俺はちゃんとここにいるよ?逃げたりなんかしないから。だから、安心して。先輩のしたい風にしてくれればいい」
「そうか・・・ありがとな・・・」
ふっと笑みを見せてから、柚月はいっそう沈み込む。
「あぁっ!」
「平気・・・か・・・?」
心配するような柚月の声。
「ん。何とか。だいぶ・・・落ち着いたかも。もう・・・いいよ、動いて・・・」
「辛かったら言えよ・・・」
言ったらやめるのか?そう聞く前に柚月が口を開く。
「ちょっとだけ優しくするから」
『了解』それだけ言って岬は身も心も柚月にゆだねる。
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「あ、あ、あ・・・!」
今まで味わったことのない熱さが岬の中を走り抜ける。圧迫感と苦痛が岬を襲うが、それでも柚月を全身で感じていたかった。
「気持ち・・・いいよ・・・岬・・・」
激しく抜き差しをしながら、柚月が耳元でささやく。少しでも柚月が気持ちよくなっているのなら、それはそれで幸せだった。
「岬は・・・どう・・・?少しは・・・慣れた・・・?」
この期に及んでも岬の心配をしている。柚月にはまだそれだけの余力があるということだ。それなら・・・意地を張っていないで素直に言ったほうがいいかもしれない。
「やっぱり・・・痛いかもしれない」
だが、やめてほしいわけではなかった。この苦しさを乗り切るには、どうしたらいいかを教えてほしかった。
「そうか・・・」
『それなら今はここまでにしておこう』岬の意思を無視して柚月が出ていこうとする。
「んぁ!」
(え・・・何?)
大きく身体が震える。自分の口から出た喘ぎに戸惑った。今の行為が与えたのは、苦痛以外にも何かあったような気がする。
『先輩、教えて』と言おうにも、その刺激が強すぎて口が動かないほどだった。
「安心して。岬におかしいところなどないから」
急に柚月が嬉しそうになり・・・中で彼が一回り大きくなる。ふたたびぐいっと侵入してから、もう一度同じように抜こうとする。
「あぁん!それ、やだ・・・」
「いやなのか?」
ちょっとだけ意地悪そうな笑いを浮かべ、抜こうとしたところでとまる。岬の息が整ったところで、また同じことを繰り返す。柚月とつながったところからどくどく熱が流れてくる。
「ちがっ・・・何か・・・変に・・・なる・・・」
明らかにおかしかった。身体が痛さ以外の何かを訴えている。もっと柚月を求めるし、萎えてしまったはずの自分自身も、再び熱を持ち始めている。
「大丈夫。俺に任せて。岬は専念していればいいから・・・」
何に・・・?そう聞こうとしたところで柚月は腰の動きを強くする。
「あ、あ、あ・・・!」
「岬・・・岬・・・」
うなされたように岬の名前だけを呼び続ける柚月。
「先輩・・・先ぱ・・・い」
全身が心臓かと思うほど、身体が変だった。自分が自分でなくなるのが不安で、そして、この熱さに耐え切れずに、岬は柚月にしがみつく。少しでも安心できる存在に触れていたかった。
背中につめを立ててしまったのか、一瞬柚月が唸ったが、気にする余裕などなかった。
「大丈・・・夫。俺につかまってるといい」
岬の立てた爪も、柚月には感じるものがあったらしい。岬がしがみつきやすいように前かがみになり、口付けをする。
「ん・・・んぅ・・・」
とろんとした目で柚月の舌を受け入れる岬。だが、されるだけではなく、今度は彼も柚月のものに応える。それを確認しながら柚月がくちづけを深くしていく。まるで岬の不安を取り除こうとしているかのようだ。
「柚・・・月・・・先・・輩・・・」
「み・・・岬・・・」
「ここ・・・触って・・・」
「あぁ・・・わかった・・・」
優しく岬自身をしごきながら、激しく岬の後ろを攻め立てる柚月。一気に両方とも犯され、恥も外聞もなく、獣のような鳴き声を岬は上げる。
「あ、あ、あ・・・そ、そこ・・・い、いい!気持ち・・・いい!」
「こうか・・・?」
「そ・・・もっと・・・あ、あぁん!」
柚月の動きに合わせ、今度は自分から腰を動かし、快楽を得ることに専念する。あまりにも気持ちがよすぎて・・・自分が自分でなくなるようなことに不安がないわけではない。
だが、そうしたのが柚月であるのなら・・・何をされてもかまわなかった。
「・・・っ・・・きつ・・・」
「ご、ごめ・・・」
顔をしかめた柚月に謝りかけたが、彼はそれを止める。
「いや・・・逆に・・・いぃ・・・」
顔を紅潮させ、柚月はますます激しく動く。
「せ、先輩・・・す・・・好き・・・」
自然とその言葉が出ていた。何度も口に出して、その想いを伝えたかった。
「岬・・・俺・・・も・・・愛して・・・る」
そんな言葉に嬉しそうに笑顔で返してくれる柚月。そんな彼に、岬はしがみつく力を強くする。
「くっ・・・やば・・・」
辛そうな顔で限界を訴える柚月。限界なのは岬も一緒だった。それを訴えると嬉しそうに柚月は腰の動きを激しくする。
「あ、あ、あ・・・イ・・・」
「岬・・・岬・・・っ・・・!!」
岬の中で熱い何かがはじけ、柚月が覆いかぶさってくる。それと同じタイミングで岬も手の中にはなっていたのだった。
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