「今度はどこに連れて行くんだ?」



ひたすら泣いてから倉科はどこかに連れて行く。場所は明かさない。
聞いたところで、秘密、とかわされてしまう。場所を聞き出すのは諦めて、会話に徹する。




「あんたも泣くんだな」



「・・・俺は機械か?俺だって泣く時は泣くんだ」



「いや、あんたはどんな時も笑みを絶やさないって夏目から聞いたことがあるから」



「だって、悲しい顔をするより、笑っていたほうがいいだろ?それに、俺は泣くよりも鳴かせたいからな。
晶、お前はどんな声で鳴いてくれるんだ?」




「やっぱりエロジジイ。本気でときめきかけた俺が馬鹿だった・・・」



「何だ、俺を愛してくれるんじゃなかったのか?」



そう言われると、言いたくなくなってしまうのが晶の性格である。倉科もそれを解っていて言っている。
そんなやり取りをしていると、目的地に着いたようだ。車が止まる。


「すごい・・・」

ど田舎。山。しかし、晶の目を奪ったのは、満天の星空だった。
清風高校周辺で見られる空とは大違い。
冬であるのもあって、澄み切った空には数え切れないほどの星が輝いている。


「歩のこともあるが、これを見せたかったんだ。前に見つけて、俺が愛している人を連れてこうと思っていた・・・」



「それは・・・夏樹や、歩さんの代わりに俺を連れてきたのか?」



「いや、今日つれてきたのは、晶のためだ。お前と付き合うようになってからこの場所を思い出した。
歩の穴を埋めるためでなく、純粋にお前を好きになれたら、ここにつれてこようかと思ったんだ」


まっすぐと見つめる倉科の瞳、それは晶にどう映ったのだろうか。
晶は長い間言えなかった言葉を言う準備をする。倉科に小さな包みを渡し、開けるよう促す。




「これは・・・チョコじゃないか」





すっかり忘れていたが、今日はバレンタインデーだった。しかも、これは手作りのチョコ。
それが意味するところは・・・







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