「今まで言えなかったこと、言うよ。
先生、正直言うと、あんたが嫌いだった。
皆優しいとか言ってるけど、俺にはそうは思えなかった。
あんたの優しさは、残酷であるのと同じ意味だ。
どうでもいい奴には、うわべだけの笑顔を見せるだけだ、そう思っていた。
だから、あんたと付き合うことになっちまった時、マジかよって思った。

でも・・・気がつけばあんたのことを眼で追うようになっちまった。

でも、認めたくないからあんたと付き合うのが嫌な振りをしていた。
今から考えると、俺も馬鹿だよな。あんたが好きだって気付いたのは、あんたに嫌いだって言って見捨てられた時なんだぜ?


くどいけど、俺は可愛くもないし、素直でもない。
あんたを困らせてしまうかもしれない。
俺はあんたが好きだけど、これでも嫉妬深いんだ。
束縛するかもしれない。
あんたにとって都合のいい恋人になれない。それでもいいの?」






実はバレンタインデーに告白しようと思っていた。
素で告白するのは無理だから、何か特別な日があれば、その日にしようと思っていた。
それがちょうど倉科の実家に行った日と重なった。
この日に出来たことを嬉しく思う。ちょうど夜で、顔がよく分からない。自分がどんなに赤い顔をしているか、気付かれずに済む。
だから、緊張しながらも、どうにか言うことが出来た。
倉科はバレンタインにしか告白できない自分を女々しいと思うだろうか。






「・・・その言葉が聞けて嬉しいよ。俺もお前が好きだ。
最初はただ面白半分で付き合えればよかった。
だけど・・・そんな気持ちじゃ収まらなかった。
お前が真剣に俺のことを考えてくれていることに気付くたび、どんどん好きになっていったよ。
お前は俺のことをそう思ったようだけど、本当はずっと怯えていたんだぜ?
お前に嫌われないためにはどうしようって。
だからわざとデートとは無縁の場所につれてったり、デートと思わせないようにしてたのに・・・はっきりと嫌いって言うからな。俺があの時どれだけ傷ついたかわかるか?

でも、今となってはそれもいい思い出だ。晶・・・お前とキスしたい。いいか?」



「んなこと聞くなよ!」



ものすごい剣幕で怒るので、しぶしぶと倉科は諦める。まだキスは早いらしい。



「じゃなくて・・・。そういう時は聞かないでしろよ・・・俺は待ってるんだからさ」



「悪いな。俺も手探りなんだ・・・」

タラシで有名な倉科であるが、本気で恋をしたのは歩以来だ。
恋抜きで男をあしらうのは朝飯前だが、片想いが長すぎるため、恋愛には慣れていない。
これ以上しゃべるのもあれなので、黙って倉科は口づける。
晶に全く拒む様子はなく、貪欲にそれを受け入れる。




「ん・・・ふっ・・・」



晶の口から色っぽい声が出る。自然と口から出るのに一瞬だけ戸惑ったが、それを見てるのが倉科ならいいや。
彼は背中に手をまわし、もっと口をむさぼるようねだる。
倉科もそれがわかったようで、しつこいほど口を貪りつづける。
やっと本当の思いが通じ合った、そんな二人は幸せを確認しあった・・・。



臆病で、手探りで。〜愛の残り香に何を想う〜

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