倉科息吹くんへ・・・


倉科、これを読んでいるという事は、既に僕はこの世からいないんだね?とお約束な出だしではじめてみました。文にすると言いたいことが沢山でてきちゃいそうで、かなり読みにくいかもしれないけど、僕からの最期のメッセージとして、大目に見てね。

僕は君に謝らなければいけないことがあるんだ。僕・・・君の気持ち、知ってるんだ。秋本さんが僕に抱くのと同じ意味で、好きなんでしょ?君には辛い思いをさせてばっかだね。

僕がそれに気付いたのは、あの日、僕が秋本さんのことを言ったときなんだ。あの時の君は、すごく悲しそうで・・・すぐに笑顔になったけど、僕だって無駄に親友をやっていたわけじゃないんだよ?そのくらい分かるよ。その日は何だろうと思っただけだったけど、そういう意味だと気づいたのはその後。頼まないと倉科が僕に触れなくなったんだ。君は気付いていないだけかもしれないけどね。僕は君が抱きつくのが楽しみだったから、ショックだった。僕を嫌いになったのかと思った。でも、違うんだよね。僕が君にそうさせなかったんだね。とにかく、それで、分かったんだ。倉科が僕を好きで、諦めようとして一歩退いたってのをね。今度は、どうして好きだって言わなかったのかなって思ったんだ。でも・・・言えるわけがないよね。僕は男嫌いって言ってたから、僕が気持ち悪がると思ったんだろうね。そんな男嫌いが男を好きになったと知った時は、君はどんなに僕を恨んだんだろうね。僕は、怖かったんだ。倉科が僕を嫌いになったらって思うと・・・。だから、僕は知らない振りをするしかできなかった。そうすれば、元の親友のままでいられるから。僕は倉科が親友でいてくれるため、どんなこともした。君が苦しむのは知ってても、わざとスキンシップをさせたんだ・・・。

あの時、眠ってる僕にキスをしたね?好きな人のキスって嬉しいはずなのに、苦しかった。痛いほど倉科の気持ちが伝わってきたんだ。本気で僕が好きだって・・・。冗談だったら、『何倉科僕にキスしてるんだよ、僕が好きなんだ〜』ってできたけど、出来なかった。目を開けてしまうと、倉科との全てが幻になってしまうようで、動けなかった・・・。

男に好かれて気持ち悪かったことはあったけど、ここまで胸が苦しかったことはなかった・・・。今までは君に泣きつけばよかったけど、誰にも相談できなかった。どうして君を好きになれなかったんだろうね。君が僕を好きで、僕が君を好きなら、何も問題はなかったのに、どうしてこううまく行かないんだろうね。僕が秋本さんに会わなければ君を好きになれたのかな・・・ごめん。それは秋本さんに対しても失礼だよね。

それでも、鈍い親友でいることは楽しかった。君がいて、僕がいて、秋本さんがいて。倉科に罪悪感を抱きつつも、親友であろうと必死だったあの日は楽しかった。

僕みたいなキチガイを好きなんだから、君は僕がきれいだと思っているのかな?でも、僕はきれいじゃないんだ。・・・レイプされちゃったんだよね。君の知っている人に。だけど、名前は言わないよ。それから君の気持ちが重くなっちゃった。秋本さんは、ひょっとしたら僕を許してくれるかもしれない。でも、君は絶対許してくれない。君は僕を過剰評価してるから、こんな僕を知ったら、絶対気持ち悪く思う。レイプされたことよりも、それが耐えられなかった・・・。君は僕の部屋に来たよね。何で追い返したか教えてあげようか。・・・跡が残ってるんだよ。忌々しい跡が・・・。君がこの跡を見たら、どう思うかな?まさか、キレて僕を強姦するかな?・・・いっそのこと、そうしてくれればよかった。そうすれば君を嫌いになれてよかったのに。嫌いにならなくても・・・。考えてみたら、正直に跡を見せればよかった・・・。なんてね。倉科のことだから、気持ち悪いと思っても、そんな顔はしないんだろうね。自然に僕を慰めようとするんだよね。僕は、君のそういうところが嫌いなんだよ。いつも僕のためとか言って、自分を押し殺そうとする・・・。そういうとこに救われてきたことはあったけど、そんな気持ちに段々押しつぶされそうになっちゃった。君の気持ちは僕には重すぎた。嫌でも僕が倉科を傷つけてることを思い知るんだ。

だけど、誤解しないで。結局僕はそんなとこも含めて君が好きなんだ。これを書いているときやっと分かった。君を愛することは出来なかった・・・でも、僕にとって倉科が全てだったんだ。あ、これは秋本さんには黙っててね。自分から拒絶したくせに、君に拒絶されることが怖かった。だから、必死に君のご機嫌を伺って、君に都合のいい親友でいることにしたんだ・・・。こんなことを言っても信じられないだろうね。でも、もし君が僕を抱きたいといったら、僕は拒まなかったかもしれない。だって、今君に言われたら、僕は二つ返事でオッケーする。どうして言ってくれなかったの?男嫌いだから言えないってことは分かってるよ。そうじゃなくて、僕が言いたいのは、君が側にいてくれるなら、僕は何でもしたってこと。・・・それこそ君にとっては重荷だろうけどね。

倉科・・・僕のことはいいから、君の隣にいる人を大切にしてあげて。君が心を開けば、君を好きである人が見えてくるから。君にはいつまでも過去に囚われてほしくない。でも・・・ほんのちょっとでいいから、たまには僕のことを思い出して。恋人さんに、昔こんな馬鹿がいたというくらいの軽いものでいいからね。

僕は死ぬ事にためらいはないけど、一つだけ心残りがあるんだ。それは・・・君の想いに応えてやれなかったこと・・・。だけど、これは君の恋人に任せるよ。それじゃね!



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