部屋は静寂に包まれていた。誰も何も言うことができなかった・・・。



「あいつ・・・俺宛に残さなかったものを、こんなところに残していたんだな」

倉科が歩に自分への遺書を聞いた時、何も教えてくれなかった。
それは、知っていてわざと言わなかったのだろうか。
それとも忘れてしまったからなのだろうか。
今からではそれを知ることはできないが、一つだけわかったことがある。




「あんた・・・片思いだと言ってたけど・・・十分愛されてるじゃねーか」



「そうだな。歩は歩なりに俺の気持ちに応えようとしてくれたんだな。本当に鈍いのは、俺だったんだな」



晶はもう一つの事実を知った。それは、歩の死因・・・。
以前倉科は、死んだとしか言わなかった。
それが自殺だとは思わなかった。しかも、それがレイプ、倉科の想いが関わっているとは知らなかった。


「そっか・・・歩さんは・・・」

タラシで有名だが、記憶をたどってみると、特定の付き合いをしたのは、歩しか知らない。
それは今まで全員に優しく、と思っていたが、真相は・・・歩以外と恋愛が出来なくなったからなのだろう。
だから夏目という例外を除いては、歩以外には特別に優しくしなかった。
倉科のことを悪く思っていた自分を恥じる。




「・・・ごめんな。俺の気持ちがお前をここまで苦しめていたなんて、知らなかった・・・」



歩が成仏できなかったのは、自分のためなのだろうか。
俺の気持ちに応えるためだけのために歩は現世に留まったのだろうか、そう自問する。
だったら、こんなにうれしいことはない。
でも、歩の自殺の原因を作ってしまったのが自分であるので、素直に喜べない。





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晶は底知れぬ敗北感を味わっていた。
倉科が片想いだと思っていたから、歩のことを思い続けてもいいと思った。

しかし、本当は両想いだった。

倉科は人生を通じ歩を愛し、歩は命が尽きてもなお倉科を愛そうと・・・いや、愛していた。
二人を繋ぐ愛は、どんなものがあっても断ち切ることが出来ない。
それを思い知らされた。逃げ出したくなる気持ちで続きを読む。



P.S(次)




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