第五頁〜閑話休題〜
そして二人が帰って、光も寝てしまい、静かになった秋本宅。博は一人で物思いにふけっている。
家では酒を飲まないようにしているので、コーヒーを飲んでいる。
久しぶりに二人に会ったが、あまり変わってはいなかった。
逃げるように日本を出て行った自分を責めるかと思ったが、そんなことをしなかった。
だからと言って無理に気遣うこともしなかった。
それが何よりもありがたかった。
歩との想い出は二人とも共有しているのもあったのでつらい思いをするかと思ったが、どうやら自分は笑っていることができたようだ。
彼とのことを過ぎ去ったこととして割り切ることはできないが、逃げずに向き合えることができるようになってきた。それは光のおかげなのかもしれない。ここしばらく自分の隣に人がいることはなかったから、光の存在は新鮮だった。
最初は厄介なやつだったが、段々彼といることが楽しくなってきた。おかげで歩のことを思い出す暇もなくなった。
なんか相手の思惑にはまった様で悔しいが、光をもうちょっと格上げしてやってもいいか。
そう思った博の心の中で、歩が微笑んだような気がした。
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