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さて、さすがにずっと家で居候しているわけにも行かないので、光はバイトをはじめた。
退学および家出中の身分なので、バイト先など見つけられないだろうと思っていたが、博のコネで何とか近くのコンビニに勤めることができた。これでほんの少しだが食費が払える。

本当は夜のほうが時給はいいのだが、博が断固反対したために仕方なく夕方までやることにしている。

店長さんも友人もみんないい人で、すぐに打ち解けて、これから楽しい日々が続くかと思われていたが、それは数日で終わった・・・。




いらっしゃいませ、と入ってきた客に声をかける光。しかし、その姿を見たとたん彼は凍りついた。

「久しぶりだな、光。こんなところでバイトをしていたのか?偶然だな」

「京極先生・・・」

と光は怯えた声で答える。京極と呼ばれた男は妖しい、獲物を狙うような目つきで言う。

「まさか俺を忘れたとは言わせないぞ?あんだけ愛してやったのに」

「今は関係ないだろ!」

「ほぉ、そんなかわいくないことを言うのはどの口か?




捨てないでって泣いてすがったのはどこの誰かな?




「何で俺だけがやめなければいけないんだよ」

「それは、俺の話のほうが信用できるからだよ」

京極は退学する前の高校の担任で、二人はかつて恋人同士・・・ではなくセックスフレンドだった。
二人は時間が空いているときに性行為を楽しんでいたが、あるとき学校側にそれが知れた。
光も京極も処分が降りるかと思われたが、実際には光にだけに処分が下り、京極はお咎めなしだった。
さらにそれが元で両親に追い出され、現在に至ったのである。


「それで、今日は時間が取れるな?もちろんおまえに拒否権があるとは思えないが」

どういうことかを聞く光に対し、京極は不敵な笑みを浮かべる。

「秋本博とか言ったかな?お前が世話になっている奴。俺と関係があったことをあいつにばらすこともできるが。



いや・・・それとも、あいつを二度と社会に出られなくすることもできるな。



家の力を使えばな」


本来だったら一笑に付すべき言葉であるが、京極の家は財界でもかなり重要な立場にあるので、ただの脅しではない。
この男、京極孝司は教師についているため重要なポストにはないが、それでも政治家に知り合いが多い。
それ以前に、光は博の世話になっている身分だから、この脅しは充分すぎるほど効果があったのだ。
これ以上博に迷惑をかけるわけにはいかないし・・・



怖いのだ。博に嫌われるのが。



そういうことで光は京極についていった






そして着いたのはホテルだった。



着く前から予測はできていたが、やっぱり気が重い。とてつもなく後ろめたい気分が光を襲う。
だが、ここで拒むことはできない。光は次第に冷静になってきた。
別に彼に抱かれるのは最初ではない。前にされたとおり快楽を追い求めてればいいではないか。
初めての相手ではないのだから、自分を気持ちよくさせるのも簡単だろう。

そう考えているうちに京極が服を脱がせてゆく。相当飢えていたようで、ムードを追求しないまま京極が光を押し倒す。
その途端、光の目の色に怯えの色が浮かぶ。気が重い理由がやっと分かった。ただ好きなのではなく、



やっぱり博に恋をしているのだ。



こんなところで自覚をするとは思わなかった。
今まで別に何の感情もなく、快楽を得たいから相手と付き合い、ほとんどが身体の関係だった。
京極もそのうちの一人でしかない。


だが、本当に好きになったのは博が初めてだ。


抱かれるのは博じゃなければいやだ。
それ以外の奴とやるくらいなら死んだほうがましだ。
その思考を読み取ったのか、京極の顔に怒りが浮かび、光を何度も殴りつける。





「なに他の男の事なんか考えてるんだよ!お前ってほんと淫乱な奴だな。
俺以外に何人男くわえて悦んだのか?痴態を見せたのか?
ひょっとしてあの男のことを考えているのか?
ふん、お前のような汚らしい奴をあいつが好きになるとでも思っているのか?
お前だってそこまで馬鹿じゃないだろう」




その言葉は鋭い矢となって光の心に突き刺さる。
京極の言っていることはすべて正しい。
何人もの男に抱かれて喜んでいたという自分を知ったら絶対博は軽蔑する。
きっと汚いものを見るような目つきで自分を見るだろう。
それがものすごく怖くなった。今ここでされていることよりも・・・。
心身ともに抵抗を止めた光の双丘の奥の蕾に無理やり京極の欲望が押し付けられる。
充分に慣らしてはいなかったが、力を失った光に異物の侵入を止めるすべはなかった。




「・・・・嫌・・・痛・・・」



一度は抵抗を止めたものの、光の心は身体の中で動く欲望の塊を全力で拒んだ。
しかし、京極もそれは承知していたようで、光の弱いところ、すなわち牡自身を扱き始める。
最初は歯を食いしばっていた光だが、前後の両方から襲う快感の波にとうとう耐え切れなくなり、喘ぎ声を上げる。




「・・やっ・・・あっ・・・・・」

心は嫌がっているが、身体のほうは正直であるようだ。
前に自分を抱いた男を貪欲に欲しがる。
その声で京極も興奮し、自分の動きを激しくしてどんどん光を追い詰めていく。
しかし、途中から京極は動きをゆっくりとし、光を焦らす。そしてとうとう、


「ぁ・・・・いぃ・・・・もっとぉ・・・うごいてぇ」

止めようとはするものの、絶頂が近づくにつれ、口は勝手に動き、自ら腰を動かす。

「あ・・・・あん・・・・もぅ・・・出る・・・!」

そして、光は白濁の液を放った。意識を手放そうとする時に京極もまた絶頂を迎えたことが分かった。



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