再会

俺、夏目士郎と大親友の夏樹歩は晴れて高校生となった。
同じ中学だったから一緒のクラスにはなれないかと思ったけど、奇跡的に同じクラスになれた。
だから、今年も大好きな歩と一緒にいることができる。






俺は歩に片想いをしている。これはかなうのかどうか分からない恋・・・。
つまり、歩には好きな人がいるのだ。前世の親友だったらしい人を歩はずっと探している。
彼の口からその人の名前を聞くたびに俺の胸は苦しかったけど、最近はあまり苦しくなくなった。慣れもあったけど、それだけではなかった。


歩はその人を探すのを今年いっぱいでやめることにしたみたいだ。
それでその人が見つからなかったら自分を恋人にしてくれるように頼んできた。
つまり、今年いっぱい待てば歩とは恋人同士になれる。
だから俺は心に余裕があったのかもしれない。その人は決して見つかることはないだろうと・・・。
だけど、世の中はそんなに甘くはなかった・・・いや、ひょっとしたら思いあがった俺に対する天罰なのかもしれない。






クラスの編成を知るということは、当然教師の名前も知ることになる。
名前だけでは分からないけど、一体どんな人なんだろうか。俺は何気なくその名前を見た。

え・・・まさか。

俺は動けなくなる。

この名前って・・・。

いや、それは単なる偶然だ。

でも・・・これについては歩の報告を待つしかなかった。






「夏目〜聞いて聞いて!」

式終了後、実に嬉しそうに言う。

「よかった!歩と一緒のクラスだね」

「よかったのは僕も一緒だよ」

そう言って俺に抱きついてくる。それは嬉しいけど、今はそんなことをしている場合ではなかった。

「それより・・・あの人って・・・」

「うん。倉科みたい。名前も一緒。しかもかっこいいし・・・」

そうか・・・とうとう見つかってしまったのか。
これで俺の望みも完璧に打ち砕かれた。だけど、不思議と辛くはない。
こんなに嬉しそうな歩を見ると、別にいいかと思ってしまう。
俺は影から見守ろう・・・って何て暗い思考だろうか。思わず苦笑してしまう。
まぁ、歩に恋人ができても俺たちが親友であることには変わりないのだ。
それでも、前と同じというわけにはいかなくなるけどね。






歩はどうも生まれ変わった人らしい。前世のときに自殺したと言っていた。その理由も知っている。
どうもレイプされたことが原因だそうだ。そのときにどうやら現世に漂ってしまったらしく、それを見つけてくれたのが倉科先生らしい。歩はそれがとても嬉しかったといっていた。
だから、歩にはどうしても幸せになって欲しい。倉科先生ならきっと歩を幸せにしてくれるだろう。
だけど、心配なことがある。


この際、俺が歩に片想いなのは棚に上げておこう。それは些細なことでしかない。
問題は、歩の性格である。普段は優しくて泣き虫なくせに、どうもこの手のことになると人格が変わって積極的、いや、凶悪になるから、歩はきっと倉科先生に猛烈に攻撃を仕掛けるだろう。
恋愛には余り立場は関係ないというけど、生徒と教師では立場は違ってくる。
果たして倉科先生は歩の猛攻に耐えられるだろうか・・・。そこが一番心配なのである。
俺は慣れてるからいいけど、倉科先生は前の歩を知っているから、ギャップに戸惑うかもしれない。
・・・なんて、本当は自分や歩の心配をしなければいけないのに、倉科先生の心配をしている俺って何か変かも。とりあえず俺は言った。


「まぁ、ほどほどにがんばれよ」



とにかく、本当にほどほどにがんばってもらいたいものだ。



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