歩には先に帰っていいと言われてはいたけど、結局来るまで待ってしまった。結果が気になったのである。
もちろん二人がくっつくこと以外には考えられなかったが、今日しっかりと歩に聞いておきたった。
噂なんかでは聞きたくなかった。
しばらく待っていると、歩が帰ってきた。俺が待っていたためか、不思議そうな顔をしていたけど、すぐに満面の笑みを見せた。この分だと・・・。


「先生にオーケーしてもらったんだね」

歩は返事の代わりにワイシャツの上から俺の突起をつまんできた。
まぁ、この分だと付き合うことになったとみて間違いなさそうだ。




「ん・・・」



学校というスリルのある空間が俺を敏感にする。それだけで俺は感じてしまった。さらに歩は直に触れてこようとしたが、俺は何とかそれを止めた。

「恋人がいるのにそんなことをしていいのか?」

歩は何か思い出したようだ。それはきっと倉科先生がいたことだ。さっきくっついたんだから、忘れるなって。歩は何の悪気もなく言う。

「大丈夫だって。浮気にはならないから〜。それに、夏目には入れないよ。それとも、家に帰ってから続ける?」

浮気にならない、それならいいか。仕方ないといいつつも、俺はつい鼻歌まじりで帰りの支度をしてしまった。





俺たちは恋人という関係ではないけど、そういう恋人同士でやるようなこともやっていた。
基本的に俺が歩にキスをして
(と言っても、歩にせがまれると言ったほうが正しいんだけど)、歩が俺の体のあちこちを愛撫する。もちろんその逆もある。
どこで習っているのか
(おそらくは俺が実験台なんだろう)、歩の腕は段々と上達していって、俺の理性がなくなることもしょっちゅうである。
本人は最後までいきたいようだけど、俺は拒んできた。もし倉科先生と会ったら、俺としたことを絶対後悔するから。ともかく、今でも親友ならやる可能性が辛うじてあるようなことはやっているのである。
まぁ、倉科先生には言えないけどね。






そうやっているうちに、歩の家についてしまい、彼の部屋に案内された。
いつも通りベッドに座るけど、どうも居心地が悪い。何か緊張する。やっぱり罪悪感があるのだろうか。歩には恋人がいるのに、影でこういうことをしているということに対して。


いつもは俺が脱いでいるけど、今日は歩が脱がしてくる。恥ずかしいけども、俺はされるままにしていた。
歩は首筋、鎖骨など、俺の体のいたるところに唇をつけてくる。俺は全身性感帯人間なのだろうか。
跡をつけられるたびに俺の体が震える。どうやら心だけでなく、体のほうも歩に依存しているらしい。


「・・・ぁ・・・」

俺の胸についている突起を刺激される。体にされるよりも強い刺激と快感が襲い、俺は彼の首に手を回す。
それを聞いてやる気が倍増したのか、歩は片方は噛み、片方は手で刺激してきた。


「あ・・・あん・・・いぃ」

俺の口から勝手に喘ぎが出てくる。最初のほうは恥ずかしかったけど、だいぶそれにも慣れてしまい、快感を追い求めることに専念できるようになってきた。
でも、歩にされるのは嬉しいはずなのに、俺、何でこんなに泣きたいんだろう。
歩は俺に快感と悲しみを与えてくれる。どうして・・・俺は鳴き続けながら気付いた。同時に歩がいつの間にかズボンを脱がし、俺自身への刺激に切り替えようとする。やっと待っていたものがきた、と流されるのを必死にこらえて、歩の手がこれ以上俺に進まないようにした。


「ここから先はもうだめだ。だって、歩には先生がいるんでしょ?もし先生が俺たちがこういうことをしているってことを知ったらどう思う?きっと嫌がると思うよ」





俺たちがこういうことをしていたのは、歩の恋人が見つからなかったからだ。
だけど、倉科先生が見つかった今、もうこういったことはしてはいけないんだ。
それに、前は少しは俺のほうを向いてやってくれていた。だけど、今は習慣やスキンシップと化している気がする。
かつては一握りほどでも望みはあったけど、両想いになるという俺の望みも潰えた今、いつもは嬉しいはずのことが辛かった・・・。


そうはいっても歩はごまかして次の段階に進むだろう。だから俺はそれをさせないために、全ての想いを込めて歩を見つめた。それが伝わってきたのか、歩はしぶしぶとうなずいた。本当にしぶしぶと。それが可笑しかったので、つい俺も笑ってしまった。

でも、歩も俺も本当はうすうすと気付いていた。

その笑いが可笑しさや嬉しさだけから来るものではなかったということを・・・。

そして、これから運命の歯車が大きく狂い始めるだろうことを・・・。

だけど、それを表に出すことは出来なかった。



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