対等な存在裏側(大嘘)




「……問題は、だ」
 長い黒い髪に、妙に迫力のある黒い瞳、さらに黒い服を着て、おおむね真っ黒な女性が呟いた。
 ――ここは、北の極点。
 魔王配下、五人の腹心が一人、覇王ダイナストグラウシェラーが結界維持のためにそこにいる。
 冥王が滅び、結界維持がほぼ不可能になった今では、そんな場所にいても欠片も意味はないのだが。
 それでも、覇王ほか二体の腹心――獣王グレーター・ビーストゼラス=メタリオムと海王ディープ・シーダルフィンも、そのまま結界を張るための定位置についていた……さして意味があるわけではない。
 だが、約千年の時を過ごすうち、なんとなく住み心地が良くなってしまったのだろう……精神世界面アストラル・サイドに本来身を置くべき彼らに、『住み心地』などというものがあるのかどうかは別として。
「問題?」
 ――女性の言葉を聞いていたのは、水色の髪に黄緑の瞳を持った青年と、緑の髪と瞳を持った少年の二人だった。どちらも――いや、女性も含めてその容姿は『見かけ』だけのものに過ぎないのだが……
 聞き返したのは、青年の方だった。白いマントの下に深緑の神官服を着ている。
「……問題ッテなんだヨ?
 僕にしてみれバ、この任務自体問題なんだケド」
「仲悪いもんねぇ。グロゥ。あの『お人形さん』と……」
 しみじみと楽しげに呟いたのは、少年の方だ。
「――デ、問題ッテ?」
 少年のセリフを黙殺し、青年――覇王神官プリーストグロゥは女性に問うた。女性は頷いて、
「本気で覇王様があの二人を仲間にしたがっているか……ということだ」
『確かに……』
 ――道理である。思わず他二人はハモって呟いた。
 覇王の『人形ヴィリシルアとフェイトを仲間にする』という命令は、はっきり言って獣王へのあてつけである。間違いなく。
 ……彼らの主――覇王と、彼らの同僚――ゼロスの主君獣王は、現在とても仲が悪い。言いようがないぐらい仲が悪いのである。その代わりといっては何だが、その部下間では仲が非常にいい。
 それはともかく、そのせいか覇王は、しばしば四十代の男という容姿と千年を優に超える年齢に似合わぬ行動をとることが多々あった。
「でも、命令は命令だしサ……」
「エフエフは多分仲間にならないと思うよ」
 自分に言い聞かせるように呟くグロゥに、にこにこと笑いながら、少年が言う。
「ディノ――? でもお前、あのエフエ……フェイトとか言う奴と仲良かったダロ? どうしてそんなコトがいえるのサ?」
 首を傾げて問うてくる同僚に、少年――覇王神官プリーストディノはこくこくと頷いて、
「だってエフエフ、魔族になったら体が腐るって思ってるし」
「――っだぁあぁぁぁぁあぁぁああっ! あの義兄妹きょうだいはなぁにを教えこんどるんじゃあァアァッ!」
「をを。怒った怒った」
「というかキレ慣れてないかお前」
 いきなり髪をかきむしって叫ぶグロゥをほのぼのと横で見つめるディノと女性――覇王将軍ジェネラルノースト。
「……まずは、魔族のイメージ改善が重要な鍵だな」
「いや。その前に思いっきり嘘ダロ。体腐るのは」
 なにやらそれっぽいことをいきなり呟いたノーストに、即座にグロゥはツッコミを入れた。
「むぅ、ノリの悪い魔族オトコだ……」
「……ノるノらないの問題じゃナイ……」
 心底疲れた声で言う。
(……何故に先に滅んだんダシェーラ……ッ!)
 心の奥底で混沌に還った同僚に向かって叫ぶ――彼女がいて、それでこの状況がマシになるとは思えないのだが……
「それはともかくさ、チーム分けしよチーム分け」
「チーム分ケ?」
 問うグロゥにディノはにへらと微笑んで――何がそんなにおかしいのか――まぁそれはともかく笑いながら、
「そう。どっちがどっちを勧誘するか」
「はい」
「ぅい、ノースト!」
 手を上げたノーストを、ぴしぃっ! とディノが指差した。彼女はこほんと咳払いをすると、
「グロゥがヴィリスの方で。ほか私たちでエフエフを」
「待て待て待てッ! どうしてそうなるンダヨッ!」
「仲がいいから」
「ドコがッ!?」
「喧嘩するほど仲が……」
「違う違う断じて違うッ!」
「ムキになるところが怪し……」
「違うッ!」
 かかと落としは、もろに額にヒットした。
 額をさすりつつ、ノーストはあまりこたえていない様子で起き上がり、ぎんっ、とグロゥをにらみつけた。
「むぅ、か弱い女性に」
 その割りには、あまり強い調子では言わなかったが。
「……か弱くナイ」
 とりあえず――グロゥは力なく反論した。彼女はそれを見てディノに頷きかけ、
「さて、とりあえずチーム分けは以上でいいのだな?」
「よっし決定ッ!」
 ぐっ、と親指を立ててディノが言った。
「って……決まってたんダ……
 ……いや……もういいヨ……」
 落ち込んでいるようである。
 まるで某神官のごとくに隅にうずくまり、いじけ始めたグロゥ。その肩をディノはぽんぽんと叩き、
「まぁまぁ、僕らの方が大変だと思うよ?
 まずイメージを改善しないといけないし」
「改善も何も思いっきり間違ったイメージだって」
 ツッコみつつ、もう一度ため息をつく。
 ともあれ――




 どこぞで某魔を滅せしものデモン・スレイヤーが混沌に召されているとも知らず、高位魔族三人は妙な作戦会議をしていたのだった……




 (相変わらず落ちていない)




 ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……(エンドレス)
 リク内容にそっておりますでしょうか白河様……(汗)
 意見を交わしているというよりは意見を押し付けられるグロゥその他二人の図になっていますが(汗)
 と、ともあれ千六百ヒットありがとうございますっ!(逃走)

TOP