ある行為をする固体の数が一定量に達するとその行為はその集団だけにとどまらず、距離や空間をこえて広がっていく事です。

 この名前の由来は40年以上前、宮崎県の幸島での出来事に端を発します。そこにはニホンザルが住んでいて、やがて餌付けに成功しました。餌はさつま芋です。
 それをある日、一匹の若いメス猿が川の水で洗って食べる事を始めました。すると、他の猿達がまねし始めました。
 ある時、川の水が枯れてしまいました。そこで、彼らは海岸まで足を延ばし、海水で洗いました。このことにより、海水の塩分が芋を美味にする事が分かり、海水で洗う行動が群れに定着していきました。洗う行動から味付け行動に進歩したわけです。

 ここまでですと、まさに猿まねですが、ここからが凄いのです。
芋洗い行動をする猿の数があるところまで増えた時、他の地域の猿たちの間にも同じ行為が見られるようになりました。遠く離れたほかの土地や島、高崎山をはじめあちこちに生息する猿達もまた、同様に芋を洗って食べる行動を次々にとり始めました。

 1匹の固体から発した知恵が集団に広がり、その数が一定数まで増えた時、それを知る由もない遠く離れた仲間にまで、合図でもあったかのように情報が飛び火していったのです。

 この現象をアメリカの科学者、ライアル・ワトソンがベストセラーになった彼の著書「生命潮流」のなかで「100匹目の猿現象」と名付けました。

 どこかで誰かが良い事を始め、周りの人々も真似し始めて、そのまねがある一定のパーセンテージに達すると遠く離れた所でも同じ現象が始まり、社会全体に浸透していきます。