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 部活を終えて着替えに掛かっているその最中に、背後にいきなり立ったその人が唐突に声を掛けてきた。
 「あのさ、日吉。余計なお世話かもしんねーけど聞いてもいいか?」
 向日岳人。三年のヒトだ。なにかとよくつるんでいる宍戸先輩や忍足先輩の姿が珍しく、かたわらに見えない。
 「なんですか」
 「ああ、うん、たいしたことはねんだけど、すげえ気になってるからさ、その、怒んなよ?」
 「俺が怒りそうなことを聞くつもりならやめた方がいいですよ。俺、すでにもう機嫌悪いんで」
 一瞥残してシャツを羽織り、躊躇したらしい気配に耳を澄ませながらもジャージをたたむ。つい乱暴な動きになるのは機嫌を損ねてくれた者の姿が一瞬、目に入ってしまったから。見ようと意識したわけでもないのについ、いつものくせで居るのが当たり前の位置に自然と目が向いてしまった。
 むかつく。
 ……自分のその行動が。まるでお前は無視し切れないと、指摘されているみたいだ。
 くそっ……!
 「日吉さ、……」
 躊躇いがちに、再び声が掛かった。
 「……」
 「いや、オレまだなにも言ってないし。それなのにそういう目で威嚇されるとちょっと、……」
 「気後れしますか? いいんじゃないですか。気後れしたんならそのまま黙っててくれて一向にかまいませんから。むしろほっといてくれることを俺は望んでますから」
 「うわっ、お前それすっげぇきついよ……。つーかさ、ほっとけねえからこうして聞きに来てんじゃんよ。そんな刺刺しい目で見んなよ。それでなくてもお前は普段から愛想ねんだからさ、つんけんしてっとほかのヤツと比べて五割り増しくらいで怖ぇんだよ」
 大きなお世話である。
 愛想がなくともこれまでにそれに対して注意を受けたことはないのだ。
 目つきが悪いのだって元からだ。睨んでいる風に見えてしまうそういう造りをしているのだから、自分ではどうすることも出来ない。おかげで、別に怒ってなくても『日吉、お前なに怒ってんだよ』と言われることなんてしょっちゅうだ。
 怖いのならいっそほんとうにもうかまわないでくれていい。ほっといてくれても全然こっちはかまわないのだ。
 「先輩って、ホラー映画とかで一番最初に殺されちゃうタイプですよね。なんでそこで見に行っちゃうかなぁーって観客をはらはらさせてくれる首突っ込みたがりのマヌケなアレにそっくりですよ」
 「なんだよそれ! お前仮にも俺は先輩だぞ! もっと敬え! 日吉のばか!!」
 「敬って欲しいんならもっと先輩らしくして下さいよ。確かに先輩は学年上だけどとってる行動は鳳以下」
 がーん!! 以下かよ!?
 日吉の暴言に律儀にショックを受けてくれてロッカーに背を預けて口を曲げるその顔は、ほんの少しだが日吉のささくれだっていた気持ちを愉快にさせた。
 「好奇心旺盛なのを悪いとはいいませんけど、面白半分で首突っ込んで行くくせ、直した方がいいとも思いますよ。突っ込んで来て欲しくないと思う人間もいるわけですから。俺みたいにね」
 「こら日吉」
 くいっと。後頭部の髪が引っ張られて、反動で日吉の躯がうしろに仰け反った。声の主はやはり三年で忍足先輩のもの。
 出たな。日吉は一瞬のうちに思い、苦々しく心の中で舌を打った。
 「痛いです。はなしてください、忍足先輩」
 「痛いのは当たり前や。痛く感じさせよう思て引っ張ってんねん。お前、いくら岳人がチビでも先輩は先輩なんやで。口のきき方少しは勉強しはった方がええな」
 「侑士! お前もさり気に失礼だぞ! チビは余計だ!」
 「怒るなや。オレんのは愛情がたっぷりこもってんのや。わかりやすく例えただけやん」
 「ちょっと先輩、もういい加減に勘弁して下さい。ムリな体勢取らされて首は痛いし地肌も痛いんですって。筋痛めたりはげたりしたら恨みますからね」
 「ほんとにお前は口の減らんやっちゃなぁ」
 いや、侑士、口が減ったら怖いって。
 向日の突っ込みに、忍足は脱力しながら日吉から手を離すと、
 「アホ。マジ突っ込みすんなや。例えや例え。けど日吉の場合はマジで少しでいいから減らせ思うねん。カリカリすんのはお前の勝手やけど八つ当たりするなや。確かにがっくんは好奇心旺盛やねんけど裏を返せばお節介焼きとも言えるやん。お前を心配して声を掛けてくれた言うんのにああいう返しはあかんやろ。可愛げ無さ過ぎの八つ当たりやで」
 最初に向日の頭をぐりぐりと撫でて、『もっと言ってやってくれよ』と援護射撃を受けて急に向日が勢いを復活させると、今度は日吉の頭を軽く、ほとんど力なんて入ってない形だけのゲンコツで二回ばかりこつんこつんとした。
 「ちょっと先輩、気軽に叩くのやめてくれませんか」
 「ばかになるから?」
 忍足が何かを言うよりも先にからかってきたのは向日だ。パートナでもある男の援護を受けているからだろうか、調子付いた表情をしているのがはっきりと見てとれる。
 卑怯だ。二対一で勝ち誇るなんて。日吉は忍足を恨み、ご機嫌な態度の向日にはいまにも噛みつかんばかりの苛つきの魔の手を差し向ける。
 「俺、先輩たちよりは成績いいですよ。記憶してる限りでは去年も今年も中間考査、期末考査そのどちらの試験でも八位より下に下がったことないですから。ところで向日先輩の最高順位って何位なんですか?」
 「うっ。……胸が、……」
 まるで心筋梗塞でも起こしたかみたいに胸を押さえてしゃがみ込む向日に、日吉はふんと、勝ち誇ったかのように鼻を鳴らした。
 向日の成績が安定しているとは言えない程の波があることは事前に聞いて知っている。
 入手先は宍戸先輩からだ。
 一年の時には同じクラスだったらしく、答案はもちろんのこと試験結果の通知までをも見せ合っていた仲だったらしいのだ。
 二年、三年とクラスは違ってしまったらしいがやっていることは同じらしく試験が終了したあとは部室内で結果を報告しあっている姿が何度か目撃されているし、日吉も大きな声で語る彼らの会話を自然と耳にもしていた。
 最高は二十三位で最低は二百一位。
 聞いた時は聞き間違いだろうかと疑うほどの驚きの波を持っていたのだ。
 ばかなのか利口なのか。なにをどうしたらそこまで上がれたり下がれたりするのか。その試験を受ける前の試験勉強方法をじっくりと聞きたいと思ってしまったほどだ。
 落ちはなんてことのないあっけなさで暴露されたが。
 なんでも、歴史や古文、暗記が有効とされる教科で満点を取ったとか。
 行き当たりばったり運が良ければ億万長者にだってなれるじゃないかと、跡部をはじめからくりを知った人間みんなから言われてしまったとか。
 その当時、口にこそ出さなかった日吉も内心では跡部らのセリフに『まったくだ』と頷いてしまったほどの衝撃告白であった。
 「べつにいまさら先輩の口から聞かなくたって結果は知ってますけどね」
 「だったら聞くなよ!」
 「がくちゃんストップ!」
 歯茎を剥き出しにして『イーーーーーーーッ』と、子供じみた仕種で唸り声を上げる向日の前に躯を割って入れて『ストップ』といまにも向かってきそうな勢いの向日の肩を抱いた忍足は、『はなせ! 侑士!』となおも暴れる躯を『まあまあ』と余裕で受け止め、
 「あれやでがっくん、先輩たる者もっと悠然とかまえてやらんと。後輩の言うことに一個一個まともに取り合ってやってたらきりがないやん。特にこういう可愛げのないアホな子は周りとのコミニュケーションがうまく取れんコが多いねん。可哀そうなコなんやし、ゆったりとかまえて頭なんかをぐりぐり撫でてやればええねん。ほら、こうやってな?」
 長々と、好き勝手な意見を述べたあとにくるり振り返っていきなり本当に日吉の頭をぐりぐりと撫で回し始めた。そして。
 「ほら見てみぃ。おとなしくなったやん。どや、オレの言うたことは正しかったやろ? ほらほら、がっくんもやってみ?」
 なっ!
 「ちょっと忍足先輩! もういい加減にして下さいよ! あ! 先輩もなに本気で撫でまわしてんですか! やめてくださいよ! ムキになってやらないでくださいってば! 痛いじゃないですか! 痛い痛い! ちょっ、あっ!」
 側頭部のあたりでひとふさぐいっと引っ張られて、躯が再び後方へと下がる。
 どうやら向日のシャツの袖についているボタンか、あるいは腕時計かに髪が絡まってしまったようだ。
 「わ、ちょっと日吉動くなって」
 「だったら先輩が早くこれ取って下さいよ! わ、ちょ、引っ張られてる引っ張られてるって! 痛っ!」
 「だから動くなって! つーか日吉お前少し屈めよ、そうそう、えっと、んー……あれ? あ、やべっ……」
 「なんなんです!?」
 「あ、ばか、まだ動くなって! おとなしく待ってろって。ちょっと侑士、これ取ってよ」
 「ちょっと先輩、俺の髪いったいどこに絡まっているんです? 忍足先輩に助けを求めるなんてそんなひどいことになってるんですか?」
 「日吉、動かんといて。がっくんはも少し腕上に上げてもらえるか? うん、それでええわ。そのまま動かんと待っててな」
 先輩、取れそうですか?
 素直に従ったはいいけど気になる日吉はそわそわしながら横目で忍足の動きを追った。せっせと動く気配はすれどなかなか取れないようで何度も『まだ動いちゃダメやで。もう少し辛抱してや』と上から声が落ちてくる。
 「がっくん、悪い。ちょお右に寄ってくれるか? あ、そこでええわ。で、腕をちょおこっちに向けてそのまま上げてくれる?」
 「侑士ぃ……」
 「大丈夫やよ。そないな不安そうな声出さんでもええし。日吉も頑張ってな。オレが責任持ってちゃんと取ってやるから」
 「……ありがと、ございます。……」
 ふと、下げた視線の先で向日と目が合い、お互いにばつの悪い表情を見せてすぐにどちらからともなく目線を外す。先に手を出したのが忍足だと言うことはもう関係ない。二人ともにいまは彼に縋って成り行きを見守っていることしかできない。
 「日吉」
 「あ、はい」
 「すまんけどちょお無理矢理に引っ張らせてもろていい? 数本やけどぶち切れるかもしれへんねん。痛いとは思うねんけど我慢してくれるか?」
 「あ、はい……いいです。任せますのでお願いします」
 「ほないくで」
 日吉は、咄嗟に目を瞑って痛みに備えて歯をくいしばった。
 ぐいっ。ぷんっ。
 引っ張られて、そして耳に響いた引きちぎられるような音。だが思ったほど痛くはなく。なんでだろうかと、忍足に顔を向けると。
 「あ。すまん。けっこう痛かってんか? 一応がっくんのボタンに犠牲になってもろたんやけど。堪忍な」
 てのひらでぽつんと置かれているボタン。糸くずもまだついたままだ。
 「日吉?」
 「あ……いえ、先輩が気を遣ってくれたお陰でそんな痛くはなかったです。
……でも、それ……」
 犠牲となった向日の袖口は無残だ。衣替えがまだのために長袖は着用しているものの暑さをやり過ごすためにブレザーを着てきている者はもう多くない。向日もそうだ。あのまま帰宅せざるをえないのは、目敏く見つけた者にだらしないと言う印象を与えてしまいやしないか、方袖だけだらしなく開いている姿に日吉の胸は痛む。
 今さら言ってもせんないことだが、自分の髪の毛が数本犠牲になってもよかったのだ。ごそっと抜き取られるならまた話は別だがたかが数本、はげるわけもなく痛みがあったとしてもそれだって一瞬のことであろう。
 「あ、そうだ。俺、安全ピンもってますから先輩、そこ、それで止めましょう」
 「うそ、それほんと!?」
 「はい。たしか学生証の中に……ああ、あったあった。ありました。先輩袖口出して下さい」
 「用意ええなぁ。なんでそないなもん持っとるん?」
 「前にブレザーのボタンが取れたときあって、そのときクラスの女子から借りたんです。次の日返そうと思ったんだけどあげるから学生証に入れておきなよって言われてしまってそのままにしてたんです。でもお陰で助かりました。あ、はい、もういいですよ。どうですかこんなもので」
 「うん、ありがとさん」
 「ほながっくん、これはちゃんとしまっとき。なくさんようにがっくんも学生証ん中に入れといた方がええよ」
 「そだな」
 それを受け取った向日が制服のズボンの尻ポケットから学生証を取り出して開くのをそのままぼけっと眺めていると、つんつんと、忍足に肩を突付かれる。視線をそちらに向けて目が合うとなんのつもりなのかいきなり肩を抱いてそのままロッカーの方へと連れて行かれる。
 「先輩?」
 「機嫌、少しはよおなったみたいやな」
 「……お陰さまで。まさかこれを狙ってわざとどだばたしてみたなんてこと言いませんよね?」
 「はは、まさか。それよりがっくんも今さら蒸し返すのんは気も進まんやろからかわりにオレから質問させてもらうねんけど、ええやろ? て言うたそばからそないにイヤそな顔せんでもええやん。可愛くないやっちゃな」
 「べつに先輩が可愛く思ってくれなくても寂しくありませんからそれでもいいです」
 「ほんまに可愛くないコやねえ。あれか、可愛い言われたいんは鳳だけで十分てか?」
 「先輩!!」
 「はは。お前ららぶらぶやもんな。けど今ケンカかなんかしとるやろ?」
 日吉は咄嗟に鳳が居るだろう場所に目をやりそうになった。途中で、からかわれる元となるタネを自分で蒔いていることに気づいて『ばかそっち見ちゃダメだ!』と慌てて戒めた。そしてそれのかわりに横に居る人物を剣呑な目つきでもって睨みつける。
 しかし日吉のそんな努力も忍足の次の一言で無残にも台無しにされてしまった。
 「自分、真っ赤かやで」
 指摘されたせいでさらに赤くなっていくのがわかる。
 動悸も激しさを見せている。いまので完全に頭に血がのぼったか、うまく言葉が出てこない。
 確かに日吉は鳳と付き合っている。だがその関係をオープンに見せ付けてきた覚えはまったくなく。むしろ控えめにしてきたほどで、普段から距離を置いた付き合いを心がけてきたつもりだ。同学年であることから確かに近くに居ることは多かったかもしれないが親しさを前面に出した接し方はしてしまわないよう心がけてもきた。
 だが先ほど忍足から指摘を受けたように鳳がオープン過ぎるせいで一部の人間には知られてしまっていた。
 場所を考慮しろ、学校内では遠慮しろ、少しは落ち着け、等々、注意はしているのだがまったく改善されなくて。日吉も頭を悩ませている。
 一方トリあたま鳳はこともあろうに『こそこそしてヘンなウワサがたつよりあけっぴろげな方が真実を隠せると思うんだけど。それにしょっちょう纏わりついてれば相変わらず仲がいいねーって、そう思われるだけなんじゃない? 第一お前は俺に冷たいって言うか俺のこと邪険に扱ってんだから俺が勝手に纏わりついてるようにしか見えてないと思うよ。うん。いい具合に相殺されてんじゃん? ね?』……ときてる。
 お気楽過ぎる鳳の言動を大目に見てやることは、日吉には出来ない。
 歪んだ関係だということは十二分に自覚しているつもりだ。それをネタにして遊ばれたりからかわれたりしたことはまだないが、『知られている』という事実は日吉をひどく滅入らせるのだ。
 「はは、今の日吉はめっさ可愛いわ。いくら威嚇してみたところでそんな顔熱くしとったら偽物にしかならんて」
 「もう黙ってくれませんか、……」
 「なん、オレが言うてることまちごうてはおらんやろ? 実際自分ら仲ええし。特に鳳なんて日吉のことごっつ独占しはってるやん」
 「先輩……!」
 遠慮のない突っ込みに、もう我慢も限界だ。居た堪れない気持ちになっていることと合わせて、湧き上がってくる恥かしさにも耐え難いものがある。まったくなんの因果でこんな目にあわなければならないのか、もう、ほんとうに勘弁して欲しい。これ以上は大袈裟などではなくほんとうに、耐えられそうにもないのだ。
 「ほんとに、……勘弁して下さい……」
 そのような状態が、精神にいいわけはなく、居心地が悪すぎたせいか、それを言ったあと日吉は急に吐きたくなった。色んな意味で胸がむかつくのだった。
 「べつに自分らがどんな関係にあろうとオレには関係ないねんけど、おもっきし怪しいくらいにぎくしゃくしてはるから無視できんかってん。顔、上げてんか? もしかして泣かしてしもうた? ごめんな」
 「泣いてなんかいません……!」
 強がって顔を上げればにこりと柔らかな笑みに迎えられて、宥めているつもりなのか頭をぐりぐりと撫で回される。
 「いつもお前にまとわりついてる鳳が今日はなにをどうしたのか珍しく全然自分に近寄って行かんからおかしなこともあるもんやと思い、ちょお見とったんよ。そしたらお前はお前で頑なに鳳んこと見ようとせんことに気付いてな、やけど鳳は気になるらしくしきりにちらちらと日吉の方見よるからそれでピンときてしもうたんよ。ああ、こいつらケンカしてんやなって。ビンゴやろ?」
 「……そこまでこと細かく見ていたんなら俺からはもう言うことなんてないですよ……て言うか、そういうことなんで、もう、ほっといてくれませんか」
 「こら、まだ戻ったらあかんて。ハナシはまだ終わっとらんのや。お前はほっとけ言うけどオレらは揃いも揃ってお節介焼きやねん。がっくん然りオレ然り。あ、宍戸もや。ここには加わってないあの跡部もお前らのことを結構気に掛けとったんよ? とにかくな、アレ、うざいねん。図体がでかいもんやから目に入って無視できひんのや」
 あれと、指したその先に居たのは案の定不貞腐れた様子の鳳だ。
 着替えが済んだならさっさと帰ればいいものをいつものように日吉を待っているようだ。
 しかも、部活のあいだずっとほっといたからかなり凹んでいる上に、忍足が絡んでいるのが気に食わないのだろう、むくれてもいる。
 ロッカーを背にしゃがみ込んだその周りにどんよりと重苦しい空気を纏い、ときおりこちらに視線を流しながら日吉の支度が終わるのを辛抱強く待ち続けるその姿に、忍足が苦笑をまじえて『な、うざいやろ?』と同意を求めてくるのを『そうですね、でも……』と日吉は背筋を正して視線だけで声を発さずに『ほっといてください』と押し切ると、ふいっと忍足からも顔をそむけた。
 「……お前も頑固もんやなぁ……そこまで意固地んなられるといったいあいつがなにしたんか聞き出しとうなるやん。ええのん? お前かてそこは突付かれとうないんやろ? アレをあのままほっとかれると目に付いて堪らんてオレは言うてるんやけどそう思とるのはオレだけだとちゃうで? がっくんや宍戸もそうなんやで? 日吉がアレをまだほっとく言うんやったら、そのうち宍戸あたりが我慢できひんようになって『長太郎、お前うざい!』とか怒鳴り出してあいつんこと蹴るかもしれへんな。そんで宍戸もお節介焼きやしほっとかれへんやろから『お前いったいなにやったんだよ。なんかアドバイスしてやれっかもしれないから話してみろよ』とかなんとか相談に乗り始めるかもよ。鳳のことやからきっとべらべら喋ってくれるやろからお前、明日には今度は宍戸、がっくん、もしかしたらジローも参加してるかもしれへんな、この三人に呼び出しくろうて『話は聞いた。あいつも反省してるみたいだしそろそろ許してやれよ』とかなんとか詰め寄られんで。そうなってもお前はまたほっといてください言うんか? あいつらにもっと詰め寄られんぞ。それこそ最後は無理矢理あれを押し付けられて勝手に幕引きにされんぞ。そないな胸糞悪い終わり方んなってもええの? どや。想像しただけでもはらわたが煮えくり返ってくるやろ。おもろない気分になってくるやろ? な、ここで折れて一緒に帰ってやれや」
 忍足には、まるで未来が視えているようだと、日吉は息を呑んだ。
 忍足の言うことに『想像力が豊かなんですね』とは、日吉には言えない。
 架空の話でもありこの先そんなことになるかどうかは不確かであるはずなのに日吉の頭の中には忍足が語ったその未来の出来事が、鮮明に、想像できてしまえている。
 「…………」
 「あいつらの性格と鳳の性格をちょいと思い出してみればありえんハナシではないやろ? そうなってもかまへん言うんやったらオレはもうここで引くわ。まあ、がんばって、な?」
 ぽんと、肩に置かれた手。
 待ってください。縋ったのは早かった。
 にこり。
 「…………………………」
 柔らかく、そして穏やかなその笑みは、派手やかではないが、優しい、見た感じ決して悪くないむしろいい感じのする笑顔ではあるけれど、だけど、むかついた。
 「…………――――」
 それでも反抗的な態度はいっさい取らずに日吉は『わかりました』とだけ伝えて荷物を取りに自分のロッカーへと戻る。
 荷物を肩にかけ、ロッカーの扉を閉めて一歩前に出たあとで振り返って顔を見つめると、憎らしいことににっこりと微笑まれて、それを見てこちらが顔を顰めても平然と、手まで振られてしまう始末。
 くそっ。
 蹴るようにして進んだ日吉は、鳳の前でその足を止めた。
 「そんなとこにいつまでも座ってるな。みっともないぞ」
 腕を掴むと、
 「立て。帰るぞ」
 力任せに引っ張り上げて、荷物を持つように告げると、さっさと部屋を出てしまう。
 「日吉!」
 あとを追ってくるのも、そんな自分達の様子がしっかりと窺われているのも、すべて、背中が感じ取っている。目なんかなくたって様子なんてのは、意外とわかるものなのである。
 「日吉、……」
 「…………」
 「返事くらいしてよ、……」
 「……」
 「日吉」
 「うるさい! 言いたいことがあるんならさっさと言えよ、聞いてるから」
 「じゃあ、ちょっと止まってよ」
 二の腕を掴み行く手を阻むかのように目の前に立つ鳳に、不快そうに日吉は顔を顰める。
 「なんなんだよ、歩きながらだっていいだろ」
 「先輩とずっとなに話してたんだよ」
 「なに話してたっていいだろ。お前には関係ないことだ」
 「じゃあ、あそこで俺に声掛けたのはなんで。まだ怒ってるみたいなのになんで無視してかなかったんだよ」
 「お前が俺を待ってたんだろ。いつまでもあそこに座り込まれたら迷惑だから連れ出した、それだけのことだ。べつに一緒に帰ろうとかそんなつもりなんかねえよ」
 不貞腐れたように、声を硬いものにする鳳の手を振り払った日吉は、鳳をその場に残して一人、すたすたと裏口へと急いだ。
 「待てよ!」
 「うるさいな! お前とする立ち話なんかないんだよ!」
 「俺だって立ち話がしたいわけじゃないよ!」
 「だったら待て待て呼び止めるな!」
 「わかった」
 えっ……?
 突然の衝撃に、一瞬なにが起きたのか、日吉の頭は認識することを放棄してしまった。
 腹の前できつく結ばれている手だとか、背中に伝わる温もりだとか首の裏にかかる重みだとか、それらすべては一つの行動からきている形だ。
 後ろから覆い被さるように鳳に抱きつかれていると、はっきりと認識できたとき、幻聴なのだろうけど、頭に血がのぼる音を聞いた気がして、自由のきかない両の腕で咄嗟に耳を覆うとしてしまった。
 きっと自分はいま酷く紅い顔をしているにちがいない。耳の付け根あたりまでがこんなにも熱く感じてしまうのは初めてのことだ。
 「日吉」
 耳のすぐうしろで聞くその声は穏やかで息遣いまでもが落ち着いていて。狼狽しているのが自分だけみたいでそれが余計に恥かしさを増長させた。
 「これからは俺、ちゃんと気をつけるからさ、ねぇ…………」
 鳳が襟足に鼻をくっつけてきても動揺激しく、躯を硬直させるのがもう精一杯ですり寄ってこられてもひたすら声が出せないでいる。好き勝手をさせてやる気など全然ないのにこれでは放置しているのとまったくかわらない。
 「何度でも謝るからもう許してよ……。日吉に無視されんの、すごくイヤだ……」
 ふざけるなと、身じろいで離れてしまいたいのになぜだか躯が動かせない。
 背中に貼り付いた温もりは、汗ばんでいるだけでなく、容赦なく鼓動までをも伝えてきている。その安定したリズムが、胸が轟いている日吉の心臓を締め付けて、呼吸が震えるからか胸の辺りが重くって敵わない。
 「黙ってないでなんか言ってよ……」
 こんな状態で口なんかきけるかと、やけくそに胸の中で吐き出したあと、日吉は気を取り直そうとして大きく喘ぎ、それから腹のそばにある手の上に自分の手を重ねて置いた。
 そうしてからきつく結ばれている指を震える指で外しにかかった。
 当然、鳳は抵抗した。せっかく外した指がすぐにまた結ばれて日吉はまた同じ事を始めなければならなくなる。何度それを繰り返しただろうか。
 「……はなせよ」
 ついに日吉は声を発した。か細いものだった。それでもこれだけの至近距離だ、聞こえないはずはないのだ。
 「鳳、はなせ、……」
 ――――聞こえないはずはないのだ。なのになぜ、ぐんときつくなる?
 「鳳!」
 なかばやけになって甲を叩いた。何度も何度も。
 「しつこい!」
 「じゃあ許してよ!」
 「わかったからはなせ!」
 「わかってない! いま日吉適当に答えただろ!」
 「なんなんだよお前! 許せとか言いながら俺がわかったもういいって言ってんのにわかってないとかなんとかいちゃもんつけやがって! じゃあ俺はなんて言えばいいんだよ!」
 「だって日吉怒鳴ってるじゃん! なんかやけくそみたく聞こえるよ」
 「ちっ。やけくそだったんだから仕方ねえだろが」
 「ほら!」
 「あーもうお前うざい!! わかったよもういいよ。許してやるよ。だからこの手はなして俺からもはなれろ!」
 「……」
 「なにやってんだよ早くはなれろよ! いつまでもこんなとこでこんなことしてたら誰かに見つかるだろ!」
 「……もう、無視すんのなしだぞ?」
 「ああ!」
 「ひとりですたすた帰ろうとするなよ?」
 「ああ!」
 「じゃあもう怒ってないって証拠を見せて俺にキスしてよ」
 「あ、ああっ!?」
 「もう怒ってないんだったらできるよね? 周りには人もいないし暗いし二人きりなんだからできるよな? してくんなきゃ俺、はなさないから」
 「お前なに調子ん乗ってんだよ! ふざけんな! ばか!」
 「ふざけてなんかない! 俺は本気だよ! してくんなきゃマジでずっとこのままだからな!」
 まるで駄々っ子のように我侭を主張する鳳に、日吉もいい加減溜息がこぼれてくる。いったいなんでこういうことになってしまうのか。許して欲しくて抱きついてきたんだとばかり思っていたのにこれでは最初からこれが目的でうしろから羽交い絞めをするみたく抱きついてきたのではないだろうかと疑ってしまいたくもなる。
 「……お前なぁ、……」
 鳳が我侭なのはいまにはじまったことではないが、さすがにこれは逆切れに近くないだろうか。日吉から折れてやることは、本当は、ないのだ。だが折れてやらなくては延々、この状態が続くこともわかるから心がぐらついてしまう。ここは自分が一歩引いて希望を叶えてやるべきなのか、反省の色がどうも薄いようなのでやっぱりここは突き放すべきなのか。悩むところである。
 「日吉ぃ……」
 「うるさい。少し黙ってろ。いま考えてるとこだ」
 「なんで考えるのさ? 俺、反省してるからって言ったよね? これからはちゃんと気をつけるし。信じてよ。ね?」
 「でもお前すぐ忘れるだろ。それで毎回毎回俺に怒られてるじゃないか。どうせまた明日にはころっと忘れてまた俺を怒らすんじゃねえの? さすがにこう何度も同じことが繰り返されるともう信用できねえよ。お前に振り回されてばっかで面白くねえよ。たまには俺にも気が済むまでとことんお前のこと無視させろよ。でなきゃ不公平だ」
 「……だから、ごめんてば……。今回はマジで本気で反省してるんだって。明日からはちゃんと努力するから。ちゃんと我慢するように頑張るから。ね。だから今日はもう許してください。……ほんと、無視されまくって凹んだ。目の前で先輩たちと仲良くされんのも胸がきりきり痛んで泣きそうになったよ……。黙って見てなきゃいけないのって辛過ぎ……。ああいう想いするんだったら我慢してた方がうんとましだよ……」
 「お前ってほんとに自分勝手なんだな」
 陽気さを消して神妙な表情をつくって見せる態度は殊勝だが、言い分が、あまりにも自分本位で勝手過ぎる。
 「俺に迷惑掛けてるってこと、そこをちゃんと反省しろよ」
 「えっ。俺、ちゃんと反省してるよ? いつも日吉に言われてたのに、その注意が守れなくて今日また怒らせちゃったこと、お前の耳は飾りなのかって言われてからもうずっと、日吉を怒らせるのはこれで最後にしようって、何度も誓ったもん。……だから、……ね? お願いだから日吉、俺にもう一度だけチャンスをくれないか? もう、しないから……。ね……?」
 「ほんとに心から反省してんのかよ?」
 「してます」
 「これがラストだぞ? もしまたやったら……」
 「やったら……?」
 「その場で蹴り倒してジ・エンド」
 「……口もきいてくれなくなるってこと?」
 「顔も見たくないだろうから、徹底的に無視されること覚悟しといた方がいいかもな」
 鳳が、しょぼくれた顔をするのが脳裏に浮かんだ。日吉の怒りを買って、口もきいてもらえない状態が数時間続いただけで傍目からもはっきりと落ち込みぶりの激しさが窺がえる鳳のこと、『顔も見たくない』と突き放されたならばその場でもって、焦燥の感に襲われることであろう。そうなってから慌てて臍を噛もうとも自責の念に駆られようとも、なす術がなく、ただただ焦り、そしてそのうち苛立ち、気だけが先走り焦慮の色を濃くするのだ。
 そうなったら日吉はきっと言うであろう。自業自得だ、ばかと。
 果たして彼は再び過ちを犯すであろうか。
 日吉の言葉に、不快そうに顔を歪めるのを見るかぎりでは、確率は高いような気も、しなくはないが、先のことはわからぬものである。
 それでも、先にこうして落ち込む姿が想像であれ、見られたことは十分、日吉の溜飲を下げてくれた。
 脅かしによって見える未来がここまで鮮明で明るいと、した甲斐もあると言えよう。
 そろそろ今度はアメを与えてやってもいい頃であろう。苛め過ぎが原因でこんなところで開き直られたら、今度はもっと酷く鳳は騒ぎ立てるだろう。
 内心で唇を緩めた日吉は、わざとらしく溜息をついてから、大袈裟に背筋を正し、神妙にして返事を待つ鳳に、屈めと、尊大に放った。
 そしてわずかに首を傾げて、そのまま顔を近付けていって、ほんの数秒だけ唇に触れていた。
 「……ほら、これでいいんだろ?」
 薄く口元を緩めた日吉がたずねると、ほっとした顔で鳳は笑顔を見せた。
 「笑ってる場合じゃないだろ。ほらもう帰るぞ」
 釈然としない気持ちが起きないわけではないが、我侭を強く主張する者にはなぜか勝てない。相手は鳳限定であるにしても、我侭を聞き入れてしまう運命にどうもあるらしいのだ。
 「約束、絶対に忘れるなよ?」
 「当たり前じゃん! あ、ちょっ、日吉待ってよ! 置いてかないでよ」
 忘れるなよと、わざわざ念を押すような真似、なぜしてしまったのか。ほっとけばいい厄介払いが出来たかもしれないのに釘を刺すなんて余計なお世話である。これではまるで、……そうこれではまるで自分が約束を絶対に守って欲しがっているみたいである――。
 …………くそっ。
 自分が望んでいるものは何なのか。口にする言葉は本意なのか。それとも本心を隠す為に強がっているだけなのか。
 ……くそ、わからねぇ……。
 「日吉ってば!」
 「っわ! 急になんだよ! びっくりさせんなばか!」
 「だってさっきから呼んでのに無視するから」
 「だからって急に手を引っ張っることはないだろ!」
 しっかりと握られたその手を振り払おうと手を払ったのだが鳳のその手ははなれなくて、日吉はうろんな目つきで鳳の顔を睨みつけた。
 すると鳳は慌てて首を振り、
 「ち、ちがうよ! へんな意味はないって! ただ一緒に帰ろうって言いたいだけだって!」
 「……」
 「ほんとだってば! あのさ、隣、歩いてもいいでしょ?」
 「……」
 「べつに手をつないでくれとかそういうこと言うつもりは全然ないから!」
 「……」
 「さっき誓ったばかりじゃん! もぉ、信じてよぉ!」
 「……」
 「ほんとに隣に並びたいだけなんだってば……」
 「……」
 「日吉ぃ……」
 困惑を極めたような声色と、握ったままいっそう握る力を増した指。はなしそうにもないその指につかまれた指をためしに動かすと、案の定鳳はきつく握り返してきた。手をつなぎたいわけではないようなことを言っておきながらこれだ。まったく矛盾している。だけど彼が必死なのは温もりからしっかりと伝わってきている。突っ込む気が起きないのは多分、それのせいだ。
 好きにしろよと捨てて、それでも『男』を保つために日吉も先に歩き始めた。
 反動で連れてきてしまう鳳に無言で指を預けたまま、黙々と歩みを進める。ぴしゃりと振り払えなかった自分にも問題はあるが、いつまでも握ったままの鳳もかなりずるいと思う。見透かされているような気がしてならないが、実際はどうなんだろうか。こちらの心情を読んでわざと触れてきているのではないだろうか。思い過ぎであればいいのだが……。
 ……くそっ……。
 キスを強要された上に今度は手を繋いで歩いているなんてまるきり鳳のペースにはまってしまっている。疑心暗鬼になりふと隣を見上げようとしても結局一度も顔を上げられなくて。気苦労の絶えない自分に思わず溜息なんてものをついてしまった。
 何本目かになる街灯の下に入ったときいっそもう鳳がずっと口を閉じていてくれたらいいのにと、……彼は我とは無しに願っていた。










END
(03.08.10)

 


 

鳳と日吉どっちが我侭か。そりゃ鳳に決まってる。
鳳と日吉どっちも相手のことが好きで好きでたまらないけど、好きだとか愛してるだとかエッチしようとか気持ちをうまく伝えられるのは当然鳳。
鳳も日吉もよく相手に『バカ』とか言うけど『お前とはしばらく口きかないから』と幕を引くのは決まって日吉。
しばらく口きかなる二人だけど先にしびれ切らして謝るよりも先にまとわりつくのは当然鳳。
鳳はさびしんぼうで甘えたがり。
日吉は意地っ張り。
押しは断然鳳のが強い。
鳳が押して日吉がおちなかったことは一回もない。
鳳と日吉どっちが甘え上手か。そりゃもう鳳である。

つまり鳳若はなんだかんだ言いつつありつつしっかりラブラブなのです。

以上!

ところで二人が揉めてた原因は何か。
鳳がトコロ構わず日吉に抱きついたり人目を盗んではチューするので日吉がよく鳳を叱ってるらしいから今回もそんなのが原因なのでは?

例えばこんな感じか。

利用する生徒の少ない階段の踊り場でそろっとキスしようとして、
『お前はまた!』
『大丈夫だって。誰も居ないし来る気配もないんだし』(にっこり笑って告げて引っ張ろうとする鳳)
『よせ! なんでお前はすぐそうやって昼間からヘンな気を起こすんだ!』
『なんでって日吉のことが好きだからに決まってるじゃないか』

とか?あるいはこうとか?

『……鳳』
『なに?』
『何でお前まで一緒に入ってるんだ?』
『そりゃ日吉にちょっと用があったからさ』
(場所・男子トイレ。詳細・個室。そのトイレの校舎内での位置・図書室のすぐ近く。利点・生徒の利用度が低い。理由・準備室や自習室、社会科室などあまり利用されない教室が揃っているから。つまり近づく生徒も少ないということだ。欠点・人通りが少ないこと。そういう場所に二人はいるが先にトイレに足を運んだのは日吉。鳳はそのあとをこっそりとつけてきた。日吉が手洗い場の前を通ったそのとき、鳳に個室へと拉致られ今に至る)
『一応きくがその用とはすぐすむものなのか?』
『協力してくれれば』
『そうか。で、協力出来ない場合はそう伝えれば承知してもらえるんだろうな?』(なんだかものすごーくイヤーな予感がしてきている)
『んー、それはちょっと難しいかも』(言いつつネクタイの結び目に指をかける鳳)
『おい!?』(ぎょっとしてみじろぐ日吉。でもすぐに口塞がれてしゅるりと外されてしまう。あまりの手際の良さに焦る日吉)
『ん、……ちょっ、待てって……おっ、とり……』
『待たない。ここなら誰も来ないしいいだろ? あ、最後まではしないから。触るだけ。ね?』
『ね、じゃない! お前がそんな中途半端なことで満足できるかよ! あ、ばか触るな! だめだって、……ちょっ、よせ、って、……』
『ゴメン、もうダメ……』(裾から手を入れたり布越しから擦ったりアクセル踏みっぱなしな鳳)
『あ、……くそ、ばか……とり、……』

とか。

鳳はとにかくよく盛ってて日吉はとにかく怒ってばっかみたいです。

 

でもあれだよね。これで鳳も淡白になっちまったらこのカップル俗に言うセックスレスになっちゃうよ。だからこういう感じでいいのかも。

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