背中の上を自由気侭に遊び歩く指に、それまで眠っていた日吉の瞼が小さく震える。 一瞬、起こしてしまったかと指を止めた鳳だが、様子を見守っても覚醒に至らないらしいと判断をつけると安心して再びその指を遊ばせ始めた。 自分が眠りについたのは深夜の三時半に近い頃。日吉は確かそれよりも早く、三時を迎える前にはもう寝息をたてていた。だが普段の生活で彼が眠りにつくのはだいたいが一時半前後。遅くても二時までには寝てしまうと聞いている。それから考えれば随分と遅くまで昨夜は起きていたことになる。きっとまだ眠いのだろう。 でも、日吉がそうなのだとしても、鳳の目はすっかりとすでに冴えてしまっている。遅くに寝付いた彼を起こすのは忍びないと思うものの、二度寝の出来そうにない鳳は暇を持て余してつい、美味しく転がる目の前の裸の背中に目が奪われてしまって仕方がないのである。 なんと言うか寝起きのこの状態で理性を前面に押し出して品行方正であれと言われても困ってしまう。 悲しいかな、男の性というヤツだ。目が覚めたら勃っていました、なんて状態はこの年頃であればごくごく正常な現象と言えよう。 ぶっちゃけて言ってしまえば、健康な男子であればいくつになってもこういうものであろう。 つまりは……アレ、だ。
勃ってしまったのは不可抗力。朝っぱらから元気なのは自然現象。そしてもよおして来るのも当たり前なしくみ。
問題は、一人で扱くかご協力を仰ぐか、どっちを選ぶかと言うこと。 だが、あっさり択一出来るかにみえたこの問題が意外と難しかった。 日吉はぐっすりまだ寝ているけれど、言い換えればそれは目の前でピクリともしないまま転がっていると言うことだ。しかも裸。あらためて脱がす手間とかもまったくなく。目の前に広がるは……自分が昨夜に散々に付けた跡を色濃く残した無防備に晒したバック……もとい、背中。 当のその日吉の眠りはいまだに深くて当分は起きそうもなく。背中にキスを降らしたってきっとすぐには目覚めやしないだろう。 少しばかり調子に乗って……いまのここよりさらに手を進めて乳首を触ったりだとか……悪戯さえしなければ直接握ってしまったとしても、それでもまだ起きることはないだろう。……多分。 意を決して……眠っている躯にこっそりとご協力を仰ぐか。 それとも昨夜のことを色々と思い出しながら自分ひとりだけで頑張るか。 これが二者択一ながら、ワンマンショーかアシスタントをつけるかと言ったささいな違いはあるが、それぞれちがった楽しみ方で遊べるからなのだろう、正直なところ、そのどちらも捨てがたいのである。 色香漂う裸の背中に釘付けになってうーむと唸ってばかりいたって埒があかないだろうにと、鳳だってこの状況には頭が痛い。 「……ん〜……」 知らずのうちに深まってきている眉間の皺。そして低くもなってきている唸り声。 そして、そうやっているかんにも昂りを見せている下腹部。 真面目に悩んでいてさえ、昂奮は収まらないようで。 「……どっちを選んだとしても出さなきゃこりゃもう収まらないよ……」 一刻も早くどうにかしなくてはと、おさまらない熱にいよいよ鳳も焦り始めた。 「……よし!」 爪が食い込むほどに強く拳を握りしめる。 目の前に転がるは、滑らかな、けれど情の痕を幾つも散らした背。 上になる半身の肩甲骨のでっぱりにまで異常なほどに煽られているのだ。 そこまで昂っているのに我慢して耐えていることもないだろう。 触るだけなら、触れて遊ぶ程度なら、日吉を起こしてしまうこともないはず。 そう思い鳳はそろりと裸の肩にまずは触れてみた。 シャープな輪郭に沿って、手のひらをゆっくりと滑らせ、撫でて温もりを楽しむ。 昨夜の日吉の体温は、もう少し高かったような……。 朝だから、眠っているから低いのか……? 「……」 そっと、唇を肩口に降らせて温もりを図ってみた。 ぬるいような、そんな感じがした。 「…………」 全部がそんなカンジなんだろうか? ぴくりともしない日吉の肩の上を、別の目的を持った唇が滑り落ちていく。 途中からは手のひらも参戦して、眠る日吉の肌をまさぐった。 最初は確かに体温を測ろうと言う意思があったのに、気付けば痕をつけることばかりを考えている。 ちゅっと、吸い付いたって日吉は起きない。 その鳳にとって絶好の状態が次第に鳳を大胆にさせるのだ。 「……日吉……」 そっと、唇で囁いてもびくりともしないのだ。 起きていたらくすぐったいとみじろいだであろうに。 あの掠れた吐息を聞けないのは、少し、残念かもしれない。 「……」 唇を這わせたままで上体を起こし、慎重に様子を窺いながら手のひらを脇腹まで大胆に移動させた。 ウエストを撫で、肩甲骨にキスをし、昂る自分のそれを日吉の尻へと押し付ける。 次のステップとしてゆっくりとグラインドをし、勃起し張りを持ったそれにゆるゆるとだが間断なく刺激を与え続けた。 無論、そのかんにも唇とともに手の方も休むことなく肌の上を滑り、悪戯もし続けた。 胸の突起などちょっと摘んだだけで硬くなり、刺激を受けたあとの乳首はつま弾いてやりたいほどにぴんと立つのだ。それを摘んだり転がしたり。それでも日吉は目を覚まさないのだ。 「…………っ……」 別に目なんか覚まさなくたっていい……。 思いながら、鳳は息を殺そうとしながら昂りをぐっと、押し付けた。 こうやって悪戯出来るだけでもう十分。触って、まさぐって、そんなことをしながらたまに日吉の痴態を思い出して、いまさら日吉の手なんか借りなくたって自分一人だけでも気分を高めていくことは出来るのだ。 だけど。 気持ちと躯は常には、うまく連携が出来ないものらしい。 今日もまた、躯が暴走をして勝手に手が日吉の下腹部へと伸びようとしていた。 さわさわと、茂みをまさぐって……まったく元気のない彼のものをいまにも握ろうとしている。 さすがにそこを弄れば日吉だっていづれは目覚めてしまうであろう。 せっかくの静寂な時を壊してまだ望むのはなんなのか。本心ではどう考えているのかが、自分のことなのに、もはやわからなくなってきている。 ただ触れたいと、そう思う心がいまは強くて。 日吉のそこに触れたいと、躯が欲求に忠実に勝手に動いてしまうのだ。 「……ひよ、し……」 愛しくて堪らなかった。 躯のちょうど真ん中あたりから突き上げてくるその感情に、同調するかのように心が震え、すると昂ってくる気持ちに次第に躯も熱くなり、暴走にも拍車がかかった。ダメだ……。止まらない……! 主であるはずなのに、勝手に動いてしまうその手を結局鳳にも制御することは出来なかった。 握ったそれは……まだ覚醒もしていないというのにすでに十分な硬さを持ち、手のひらに脈を打つのをしっかりと伝えてきている。 日吉……日吉……。繰り返された名前。居ても立ってもいられなくて背中を噛み始めてしまった唇。一転して大胆な動きを見せ始めた指。 やがて尻の割れ目を鳳の昂りは繰り返しなぞり始めていた。 まるでいつでも割って入れると言うように。 繰り返し、そこを狙ってのなぞりは続く。 「……ひよ、し…………っ……」 まるで煮え滾るような湯を、腹の中に抱えているみたいだった。 ぐらぐらと煮える湯にぶくっぶくっと泡が立つように、鳳の中でも何かが膨らんでは弾けてを繰り返していた。 「……っ……」 欲、だ。激しく、欲情しているのだ。 背中のラインに、肩のラインに、首の、艶かしいラインに。そしてなにより昂奮してくるのは、彼の体温に、だ。 声もまだ聞いていないのに、彼がなにをしてくれたということもないのに、ひとたび愛しいと思い始めたら状況に関係なく瞬く間に心は乱され、抑え切れぬほどに烈々と欲も募ってくるのである。 愛しい。彼に向けるこの愛しさには底がないのだ。 「……ひよし……」 日吉、日吉、日吉。 自棄のように唇だけで名前を紡ぎ、まるで縋りつくみたいにして彼に抱きついた。 日吉を起こすことになってもかまわないと言う気持ちがここにきてふっと、鳳の中にも芽生え始めてきている。むしろ目を覚ましてくれた方が好都合かもしれないと思うこともあり。下腹部で遊ぶ手の動きにもややスピードが上がるのが見え、くびれに触ったりと大胆にもなってきている。 「…………!」 不意に戦慄くようにして日吉の背中が震えた。 起こしてしまったか……一瞬そんな思いが浮かんだが。動いたのはそれだけでそのあとはぴくりともしない。 我侭なのはわかっていたが、噛むようにして日吉の項に鳳は吸い付いた。起きてなんらかの反応が欲しくてそんな行動に出てみたのだ。 ちゅっ……。 強く吸い付いてしっかりと痕を残して。ざらりと、感触が伝わればいいと思って舐めて。項を、幾度となく舌を這わして攻めた。 「……日吉……」 先端にくりっと、指の先で円を描いてもみる。さすがにそんなことをされたなら、躯はまだ眠りについていても脳波の動きには乱れが生じるだろう。それをきっかけにいっそ目覚めてしまえばいいのだ。 真剣に、必死にそう思うからか、いたずらをしようとして指が亀頭を集中的に弄りだし始めてしまった。 「…………」 また、日吉が身じろいだ。 寝返りを打とうとしたのかもしれないががっしりと抱き締めていたせいで彼は文字通り鳳の腕の中で身じろいだだけ。 そこでわざと、昂っていた己のそれを尻の割れ目に挟まるよう鳳は腰を押し付けた。 いっそ割って犯してしまってもよかったが。さすがにそれは可哀想だと思い止まり、仕掛けるに留めたのである。 「……ン、……」 声だ。声が初めて発せられた。 まだ眠りの中にある調子だが、恐らく覚醒に繋がるだろうと耳にした時点で鳳には自信があった。 「…………」 バックから抱きついたこの体勢では顔を見られる状態になかったが、それでも気配を察するだけのアンテナは自分では立てているつもりだ。空気とか、目に見えないけど伝わってくる何かを察知して日吉の状態くらいうしろからだって簡単にわかるものだ。 「……おはよ、……」 まさにするりと、その言葉は口をついて出てきた。 まだ、寝惚けているのだろう。項にキスをしているのに全然気付いてもいない。 「…………ァ……」 さすがに括れへの悪戯には躯も敏感に反応を見せた。てのひらの中でそれは、ぴくんぴくんと、これまでとはちがって活気のある動きをみせる。眠っているときには見せなかった、劇的な変化の兆しだ。 「……ッ……ふ……」 俯くような仕種で晒された項のラインが、なんとも艶かしい。 部活で日焼けはしていてもラインだとか太さだとかのつくりは繊細で。あせもやにきびとか言ったものもない。見た目だけでなくて実際に触っても張りがあるし滑らかだ。なんと言うか、舐めなきゃ損だろと言う気分になってくる。 「……ァ……とり、……ッ……」 肩のラインへと続くとこにある、ぽこりとでっぱった骨の隆起をちょっと試しに舐めてみた。 項にキスをしたときにはそんなに反応なんてしなかったのに、舐め上げたら途端に首を竦めるし、手の中のものもぴくくんっと元気に跳ねていた。さすがにキスと舐めるとではそこで覚える刺激の度合いがだんちで違うらしい。 堪え切れないというように、鼻から洩れてくる吐息にもあきらかに甘さが含まれていた。 甘えたようなその吐息だけでなく、焦れたように腰も揺れていたのだ。日吉のそんな仕種を、鳳は昂奮を抑え切れない面持ちでじっと見つめていた。 「……ン、ァ……あぁ……」 手の中のものだって、もうかなり張ってきている。そんなにいじったわけでもないのに朝だからか、触って確かめた先端はもうかなりぬるぬるとしてきている。 「……あ……ッ」 指の腹がつるつると滑るそこに円を描いて悪戯をすると、やめてくれと哀願するかのように首が頷いた。どうせである。晒してくれたのだからやっぱり舐めなくては損であろう。 「……っや、……ァ……あ、……ッ……」 尖らせた舌先で上に行ったり下に戻ってみたり。焦らすようにゆっくりと舐めると、そのたびに長いあいだ息を殺している。否、喘いでしまうようなそんな声を殺していたのだろう。 だが。鳳にはそんな仕種を見せる日吉がたまらなく愛しくて、執拗に愛撫を施した。 「……ッ……ん、んんっ……ッ……」 はなしてと、まるでそう言いたいかのように、同時に悪戯を加えていた下腹部の手の上にそろりと手が重なる。でもちからは思うように入らなかったらしく、重なった日吉の手は鳳の動きに合わせて一緒になって動いているだけだ。 「……あ、……あぁ……ッ……とりっ……」 ますますと首を縮めて声を漏らしてくるその様子はとにかく可愛くて。イヤだと言いたいのか首が振られようが、やめてくれと頼みたいのか抵抗しているようには見えなくともときおり指が動いたりするのだが、それら全部を綺麗に無視して鳳は手の中のものをしつこく擦り上げ続けた。 「あ、やっ、……やめ……ッ……」 吐き出される息遣いや、それと一緒に零れる声。今の鳳はそんなものにも昂奮を覚えてしまうらしい。 「……ァ……ッ……もう、やめっ……」 なんだかいじめているような気分にもなってくるが、同時に愛しくて可愛くて、そして欲しくて手の悪戯は止まらない。ただ、もっと啼かせたくて……。 「……ふ、……ッ……や、……あ、あ、……ァ……ッ」 きっと日吉自身も意識してやっているわけではないだろうが、日吉が腰を押し付けるようにしてその腰を揺らすたび、鳳のもまた擦られて先端からじわじわと蜜が滲み出てきてちょうどよく尻の割れ目を濡らしてくれていた。 だけど日吉もとんだ災難に見舞われたものである。 眠っているところを襲われて、目が覚めればまだしっかりと覚醒も仕切らないうちから悪戯なんかされてしまい、本当に可哀想だ。 だけど裸で寝ていたのが運の尽きと思って諦めてもらうしかなく。 だって鳳のが萎えてこないのだ。 こういう状態になってしまった以上、可哀想だが日吉には鳳がすっきりとするまで付き合ってもらうしかない……のだが。さすがに不意をつかれたうえにそのうえ今度はいきなり突っ込まれてしまったのでは可哀想過ぎるだろうと、挿入するのには鳳でも躊躇いがある。 だから。 「……ごめんね、日吉……あとちょとこのままの体勢で俺に付き合ってね?」 「あ、あぁ、……ン、……ッ……ダメ、だ、……も、ダメ……や、……あぁ……!」 「……うん。あと少しだけだから……」 日吉が、頼まなくとも無意識に腰を押し付けて自分で揺れてくれるから、鳳も自分のにはなにもしなくてよかった。鳳はただ日吉のを弄るのに専念して彼を啼かせることにだけ熱を上げていればよく。 くちゅくちゅ、ぐちゅぐちゅ、……下から届く湿った音も今日ばかりはいつもと違って余裕で拾っていられた。 「……すごいね、日吉……俺の手、すっごいべたべたになってる……これ全部お前のだよ? ね、日吉もこの音聞こえてるよね……?」 「……ッ……あ、あぁ、……や、……ァ……」 「ね、気持ちいい……? 俺はすっごくいいよ? ……お前が俺の擦ってくれてんの……ねえ、わかる? お前のここも俺のですごいことになってるんだよ……?」 「んっ、……ァ……ッ……」 そんなことは聞きたくない……首が振られたその仕種はまるでそう抗っているように見える。だから思わず先端を意地悪く突付いて、甘い声を大きく出させてからもう一度『ほら、ぬるぬるしてるし多分いま見たら糸を引いてるかもよ……?』と、これもまたわざと息を吹き掛けながら囁いてやった。 「……あ、ああっ……あ……ッ……ァ……」 だけど日吉にはそんな鳳の声ももう届かないようであった。 イヤだと拒絶するように首は振られるけれど、それは多分無意識の行動だろう。 間断なく喘ぐ声を上げる日吉をうしろからぎゅっと抱き締め、首の筋に唇を押し当てる。日吉も相当に昂揚してきているのだろう、腕に収まる彼の躯の体温はやや高めだ。耳の裏も朱に染まっているしほかにも、肩甲骨の少し上あたりが汗ばんでいた。 不思議だ、と鳳は思う。 はっきりと汗臭いわけではないのに目の前の躯からはちゃんと日吉の匂いがしてくるのだ。無臭なのに匂うのである。それは、たしかに日吉の匂いで。 まるで蜜に誘われてふらふらと花のもとにやって来る蝶のように鳳もまた、その日吉の匂いに誘われてぎゅっと彼を抱き締めてしまう。 「……日吉……」 愛しい。 好きで好きで好きで、このままずっと一緒に居たいくらいに好きで堪らない。 こんな風に人を好きになるのは初めてで、じれったいことばかりだし胸が痛くなることばかり起こるし総じて辛いのに、それでも好きだからこの恋から足を洗うことができない。 好きで好きで愛しくて、どんなに戸惑ってもどんなに辛いことばっかりでもそれでも彼のそばに居たいのだ。 「……ひよ、し……ひよしっ……ッ……」 「……ァ、……いや、……だ、やっ……ァ……あ、ああっ……」 いっそう激しく攻め立てると、声を震わせながらイヤだと、扱いている鳳の手を押さえ込むようにして日吉も手のひらを重ねてくる。だけどちからが加わったのは最初だけであとはただ置かれていただけ。 「あぁ……ッ……あ、ァ……とり……ッ……いや、だ、……やっ……ァ……」 前屈みになろうとする彼に涙が浮かぶのが見えた。頬には既に涙の跡も見える。普段の暮らしの中で日吉が泣くなんてことは絶対にないことだ。その彼を朝っぱらから苛めて泣かせてしまったかと思うと、鳳までひどく昂奮してくる。 泣いて嫌がる日吉のものを思う様に扱いて、イヤだと繰り返すがその涙に濡れた表情にどこか恍惚とした色が濃く浮かぶのを認めると、鳳は手を働かせたままで自分の腰をすこし前に進ませる。昂る自分のそれがちょうど尻の割れ目に挟まるようにあたりをつけてからそれを押し付けた。身じろぐ日吉の動きがそのまま刺激となって、鳳のも同時に擦られていくが当然、それが狙いだ。 「……ッ……あ、あ、あぁ……ン……ァ……ッ……」 「……ふ、……ッ……」 ぬるぬる、ぬちゅにゅちゅと、自分で零したモノで滑りは上々。より刺激を受けたくば押し付ければすむし、加減の調整もわりと自由にきく。挿入はしていなくても鳳の気持ちは十分に良い。 「やっ……ァ……あ、もう……あ、ぁ、あっ……」 「……ダメだよ日吉、まだイっちゃダメ……あと少し、頑張って……」 「……あ、あぁ……だ、だめっ……ァ……!」 「……大丈夫……だってここ、……こうして塞いでるし……イきたくてもイけないだろ……?」 「……ァ……や、やだっ……んでっ……とりっ……ッ……」 「うん……だからあと少しだけ頑張って……? ……ね? 一緒にイこ? な……?」 「……あ、ぁ……ふ、……ッ……ン……」 「……ッ」 「あ、あぁ……ァ……だめっ……も、……ね、……がい……とりっ……とり……! ッ……」 「……うん……」 「……あ、ああっ……ァ……ァ……!」 悲鳴のような声が小さくあがると、背中が大きく強張り手に熱い飛沫が散った。それから遅れること数秒。鳳もまた彼の臀部に向けて精液を放っていた。それは少し勢いがつき、鳳の腹のあたりまで届いてしまい思いもよらぬことに臍を汚してしまっている。 「ッ……ァ……」 鳳の腕の中では日吉が唇を噛み締めて、泣きじゃくるようにして息を吐いている。思わず強いちからで抱き締めてしまった。そして、宥めるかのように、しっとりと汗ばんでいたその震える背中にそっと唇を押し当てる。 「ごめんね……」 あまりにも涙を零すものだから思わず、謝ってしまった。 「ごめんね……でも我慢出来なかったんだよ……」 なんて自分勝手なんだろうと鳳だってそう思ってしまう。 「……ほんとは自分でなんとかしようと思ってたんだけど……気付いたらその、手が伸びてて……寝てるとこ邪魔しちゃた上に無茶なことまでさせてその、……ごめんね……」 背中に唇を当てたまま、ごめんねと、そればかりを繰り返した。 日吉は何も言ってくれはしなかったけれど、密着している躯を振り払おうとはしなかったことから、剥れてはいるだろうが呆れてなにも言う気が起きてこないといったところか。 汗にもまみれているしお互いに放った精液で汚れてもいるのにいい加減に退け、みたいなことを言ってこないのも、散々好き勝手なことをされたからだるくて口のきける気分ではないということなのだろう。 「……日吉、……ごめんね……」 小さな声で、まだぐったりしている彼にそう零してから、晒されたままの背中にまたそっと、唇を押し付ける。びっくりしたように躯が跳ねることやなんの返事もないことは予想の範囲内で。過度な期待はしていない。 たしかに、自分がしたことはたわむれにしては朝から少し濃すぎたものだったかもしれない。 それは認める。 だけど。あのときはどうしても触れたかったのだ。 「……ごめんね……でも……あんな風に理性の箍が外れちゃうくらい日吉のことが大好きなんだ……」 なんて、自分勝手な言い訳。 こんな言葉で許しを得ようとするなんてズルイ。 わかっている。 わかってはいるけど、言ったことに嘘はない。 好きだと言う気持ちに偽りはないし、想いが暴走して箍が外れることだって実はよくあることだ。 好きだからこそ、暴走してしまうのだと偽りなく告白をしたまでのこと。 「……俺ね、お前のこと考えると頭ん中が色々と整理つかなくなるんだ……好きだって想う気持ちばっかりが募ってっちゃってさ、最後はいつもその気持ちが暴走しちゃうんだ……俺の躯なのに言うことがきかなくて……ごめんな……」 鳳が言うと、それまでずっと沈黙を守っていた日吉が掠れた様な声で答えた。 「え……? なに、なんて言ったの、日吉?」 「……だから、もういい……しつこいっつーか……うざい……」 「…………」 せっかく想いを語っていたというのに。 その甘い言葉に蕩けて甘えるのではなく、日吉の口はいつものように可愛くない言葉を紡いだ。 豹変と言うより彼のこの態度はらしさを取り戻した、と言うべきものであろう。 あーあと、溜息をつきながら鳳は思う。 たわむれている最中はあんなにも可愛くなるのに熱が下がった途端いつものぶっきらぼうで愛想のない姿に逆戻るのか。 そのぶっきらぼうな態度が総崩れになる、あのたわむれの時間は貴重でもあり、そして最中に見せる仕種のひとつひとつに萌えるのだけれど、終わったあとの余韻と言うものにもやっぱりつかってみたいわけで。 それを得る機会はほんと、たまにでいいのだ。 あと、どっぷりとなんて贅沢なことも言わない。ちょびっとでいいのだ。 五分……いや、三分! そんなもんでいいのだ。 させてくれって思うことだってささやかなものである。 言葉なんかなくていいからしばらく抱き合ってみたりとか。 髪を撫でさせてくれたりとか。 そういうことでいいのだ。
………………だけどそんなことは絶対に起こり得ないだろう。
それがわかるからこそ、させて欲しいと、こんな風にして切に切に思うのである。 END (04.12.05)
若、おめでとう! こうしてしっかりと明確に誕生日を祝ってあげたのは初めてかも! わぁ! なんでなんだろこんなに愛しいのにね。でも間に合ってよかったよ。 エロでラブラブを目指した結果です。 全然誕生日ネタじゃねぇじゃないかと、突っ込みはどうかしないでやってください。や、色々考えたんだけどうまくまとめられなくて…。やりかけたネタが三本、未完なまま残ってます。笑。どうすんだろ? 来年までに煮詰めておくとか? うっわぁ。臭いよそれは。笑。 とりあえずイチャイチャで茶を濁してみました。 チョタがオヤジ臭い…なんでこんな彼喋ってんだろ? つーか、有島の悪いクセが出た模様。攻めにさいちゅうにベラベラ喋らせるのがなんか好きみたいです。 でも若が可愛く書けたと思うので、ま、いっか。 若は永遠の14歳を希望。 |