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 キスをする。深く。逃げるのも許さずに。
 掴んでいた肩にも更にちからを籠めて。
 足りない。どんなに長く絡み合っていても、深く、執拗に追いかけ捕まえていても。
 どんと、胸元を小突いたってダメ。まだ、離れたくない。
 もうほんとうにイヤだって言うんだったらあんたを追うオレの舌を噛めばいい。ほら、チャンスをやるよ、ほんの少しのあいだだけがっつきたい気持ち、押さえ込んでいてやるから、やってみろよほら、――。
 どうした? 噛まないの? 許すのかオレの我侭を。
 つけあがっちゃうよ? オレ、しつっこいよ? 知ってるだろあんただって。
 無駄だって知ってそれでもなお、小突くだけ?
 このままキスをし続けたらどうなるかわかってる?
 あんたは知らないだろうけどオレは知ってる。
 そのうちシャツを掴んで、このままだとあんたのほうから縋ってくるよ。
 ほら、ね。
 あんた諦めんの早すぎ。
 でもそういう流されやすいとこオレは好きだよ。
 どんどん流されていっそ溺れてくれたらいいのにね。もがいて、あがいて、息が止まりかける直前までオレの名をずっと呼び続けてよお願いだから。
 ――…先輩、…。
 ああ、背中にまわったあんたの手の暖かさに、胸が、潰されそうだよ。
 密着した躯の面積より全然少ないってのになんでこんなにリアルなんだろな。
 片腕なのに、けどあんたのそれはリアルなだけでなく魔法かなんかも使えるだろ。
 スゴイね、これってなんかオレの方が抱き締められてるみたいだ。
 わかってる、そんなのは錯覚だ、あんたへの想いを抑え込むことが出来ず溢れさしているオレの、都合のいい勝手な思い込みだ。
 でも、この感覚はイヤなものなんかじゃないから、むしろまだもう少しこのままで居てほしいと願ってしまうんだ。
 そりゃあ切に。
 だからね、肩口に顔を埋め圧し掛かるようなこの体勢を崩すことをオレは拒むよ。
 先輩にも頼みたい、お願いだよ、その手をまだどこへもやらないで。
 いっそ両腕で抱いて欲しいくらいだ。
 あんたのその腕の中にオレを閉じ込めてしまってよ先輩、お願いだよ。

 

 

 


END
(08.01.02)


 

大晦日から新年にかけての赤ブンです。
どちらの家に居るのかはご想像にお任せします。

赤→ブンなカンジで切羽詰った赤が書きたくて書き出したものです。
つか、最近どうしたことか赤→ブン的な赤ブンの話が好きで、書くまでもないけどでも想像してるのはそんなカンジのものばかりです。

や、でも、ちゃんと幸せでからねこの二人は。

うまく言えないんだけど赤也が切羽詰ってれば詰まってるほど赤ブン万歳ってはしゃぎたくなるのだ。

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