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 土曜日。午前十時を少し回って目覚めた鳳の腕が、無意識の中で横に眠る者を探っている。
 「……あ……れ……?」
 違和感を覚え、身体を起すとあるはずの姿がそこにない。それだけではない。居たという形跡すら見当たらない。
 まさか――。
 身体を起こし襖を開けて隣の部屋を覗くと、タオルケットを頭からすっぽりと被って、足首だけを覗かせて丸くなって眠っている。
 布団も敷かずに上掛けだけを持ち込んでそこで寝たらしい。
 夏に近いこの時期、風邪を引く心配はないのだが――。
 このまま見過ごしてしまうのは少々、気が引ける。
 「おい」
 寝起きの悪さはよく知っている。一度や二度、普通に揺すったところで寝返りを打たせるのがせいぜいだ。
 「おい日吉。嫌味ったらしい寝方をするなよな」
 「……っ……」
 最後は忌々しさもあってか、蹴りが肩に入っていた。むくりと身体を起した日吉は、虫の居所が悪いときのような顔を起き抜けだというのに見せて、威嚇するような目で鳳を見る。
 「まだ寝るんだったら向こうの部屋へ行け。俺はこっちでテレビを見るから」
 「見たかったら勝手に見てりゃいい……俺はまだ寝る……」
 「だーから。寝るんなら向こうの部屋へ行ってベッドを使えって言ってるの」
 「うるせぇーな……どこで寝ようが俺の勝手じゃないか。テレビが見たいって言うんなら勝手につけて見りゃいいだろ。あんま音大きくしなきゃかまわないよ」
 「こらこらこら。話がまだ終わってないのに言うだけ言って寝ようとすんのはナシ!! 俺の言い分も聞いてくれっての」
 「……お前の言い分?」
 「そうだよ。日吉は気にしないって言うけど俺の方は気になるの。だからあっち行ってよ」
 「自分勝手だな。そもそもお前が昨夜怒ってそっちに篭もるから俺がこっちで寝る羽目になったんじゃないか。その俺がなんで朝を迎えてまでまたお前の言動に振り回されなきゃいけないんだよ。そんなに気になるってんならイヤホンでも探してそれ耳に突っ込んでから見りゃいいじゃねぇか」
 「……日吉の意地悪」
 「鳳の我侭に比べたら可愛いものだと思うがな」
 「日吉のケチ!」
 分が悪いのはどうやら鳳の方で、もはや口では勝てないと自分でも悟った。確かに昨夜とった自分の行動は子供じみたものだった。日吉がむくれるのも分かる。だけど日吉だっていつまでもネチネチと突付くなんて子供じみている。
 発端は自分のとった行動なんだと理解はしても――。
 沸き起こってくる腹立たしさが抑えられない。そんな中でふと、目がいったのは上掛けの下から覗く脛。蹴りでも入れてやろうか――。
 思い立つと同時に身体が動いていた。
 「痛ぇだろ! なにすんだよ」
 荒立つ口調と一緒に鳳にも足蹴が飛んで来た。それも鳳が入れた数よりも多く二発もだ。
 「俺は一回しか蹴ってないだろっ」
 お返しに鳳からも三発、抗っていたが日吉にも入った。
 「先に手を出してきたのはお前だろ!」
 「手なんか出してないね。俺が使ったのは手でなくて足だ。ばーか」
 「揚げ足をとってんじゃねーよ。ガキ」
 悪感情丸出しで吐き出すと、タオルケットをまた頭から被って横になった日吉は、これ以上相手してられるかと突き放すかのように鳳に背を向けた。
 相手をされなくなった鳳は、むかむかした気分しか残らない。確かに先に絡んだのは自分だ。だけど日吉の態度にも問題があると思う。いつまでも昨夜のことを根に持つから――。
 いや、もうよそう。感情に流されて手を出しても後味は悪くなるだけだ。それに、土曜の朝っぱらからケンカしてんなんてのもバカらしい。やめたやめた。
 不満が残るものの、気持ちの切り替えを行った鳳は、暇を潰す為にもテレビのリモコンを押した。適当にチャンネルをかえているとなにを思ったのか、日吉がむくりと起き上がってきて、視線をブラウン管に向け出した。
 「なに?」
 「鳳のせいで眠気、どっかいっちまった」
 「ふーん」
 「喉、渇いてないか?」
 「それって……遠回しに俺になにか持って来いって言ってんの?」
 「さぁ?」
 「……そう言いながら俺をじいっと見つめてんのはなんで? あんにぐだぐた零してないでとっとと立って持って来いって腹ん中で冷蔵庫がある方向を指し示してるだろお前」
 「わかってるんなら早く行って来いよ」
 「……ちっ。で? なにを飲みたいんだよ?」
 「ミネラルウォーターがあったからそれでいい」
 「はいはい」
 鳳が下まで下りて行って冷蔵庫を開け、ペットボトルを一つ掴んで戻ってくると、日吉は無言で手を出し、その手に収めた。
 「日吉、俺も飲みたいから少し頂戴ね」
 「だったら、先に飲め。あとでこれっぽちかよとか、ほとんどないじゃんとか、ぶちぶち言われたくはないからな」
 鳳は、再び手元に戻ってきたペットボトルに直接口をつけて喉を潤すと、もう一度口に含んで日吉の不意を狙って自分のそれを日吉の唇にあてがった。
 突然の行為に呆然となってされるがままに手足が出てこない日吉をそのまま畳の上に押し倒して日吉の喉を鳴らせることに成功すると、
 「一度口移しってのがやってみたかったんだよね」
 と、日吉も零さなかったしえらいえらいと、湿った唇を手の甲で拭う日吉を眺めながら、鳳の表情も和らぐ。
 「……くだらん。よくそういうガキ臭いこと躊躇いもなく実行に移せるな」
 「うーるさいな。日吉こそ顔、ちょっとだけど赤いよ。それに……心臓もドキドキ言ってるじゃん」
 「これはお前が驚かせるからだ。ヘンに誤解しないでくれよな」
 「そうなの? 嬉しくてときめいてるんじゃなくて?」
 「アホだろお前。いきなり襲われてなんでときめくんだよ」
 「えーだって、さっきちょっとだけど舌が絡まったじゃん。気持ち良くならなかった?」
 「なるか」
 「ふーん。日吉ってヘンなとこ鈍感だよね」
 「それぐらいのことでいちいち感じてたらお前と付き合う俺は四六時中勃ててなきやいけなくな……おい」
 「ん?」
 「この手はなんだ」
 これと日吉が咎めるのは日吉のTシャツの裾を捲り上げようとしている鳳の不埒な右手。
 「なんだろね」
 「ふざけてんな。朝からなに不健康なこと考えてるんだ。俺はイヤだからな」
 「そうなの? じゃあその気にさせたげようか?」
 日吉の拒否を無視してシャツの中に手を滑り込ませると、『鳳、鳳』とうろたえるような口調で名が呼ばれる。胸の突起をつまむ頃には喉元を露にして、耐える姿の象徴でもある筋が、息を詰める行為と連動してその首筋にも浮かぶ。
 それのラインを舌で辿ってみようと考えた鳳はシャツを引いて胸元を広げ、日吉のそれに唇を落とした。
 「……っ……おおっ、……とりっ……!」
 「ん?」
 「……まさか本当にスル気なのか……?」
 「うん。ダメ?」
 「…………」
 「どうしてもダメ?」
 日吉は、少し考えてから『勝手にしろ』とぶっきらぼうに答えて、それから鳳の髪に指を潜り込ませると、そのまま後頭部に力を加えて鳳を自分の方へと引き寄せた。
 キスをかわしながら、互いに相手の服を剥いでいく。
 小さな動作でも浮き上がってくる鎖骨に唇を移動させて軽く吸い付いた鳳は、その日吉の肌に自分のものだという所有の印を何箇所かに作った。
 ささいなものでも独占欲は独占欲。出来上がった印によって自分のものだという錯覚が起きてしまえば鳳だって陶然としてくる。
 「……いっ……っ……」
 臍まで舌を下ろしたあと、まだ隠されているものに手のひらを当て撫でるようにして擦りあげてやると溜息とも喘ぎ声ともとれぬ色を含んだ息だけが吐かれているような声が洩れてきて、鳳の下半身をも刺激する。それは、嬲られているのに近い感覚だ。
 「あ、……お、……とりっ……」
 勃ち上がりかけてきている日吉のものを下着から引っ張り出してきて口の中に含んでしまうと、ようやく喘ぎらしい声が、手のひらで覆ってしまっているのだろう日吉の口からも零れてくる。
 先端だけを先にちろちろと舐めてたくさん泣かせてやると、口元を覆っていた手がそこを離れて鳳の頭を抱き、強張る指で、掻き毟るみたいにして髪を掴んでくるが、鳳はやめなかった。
 「お、とり……っああ、あ……も、いいっ……いい、……ん、……から……」
 「いーよ。出して。飲んだげるから」
 ちからの入った舌尖で亀頭をつつき、それから軸を舌で舐め上げていくと、くびれのところあたりでぶわっと、苦味が口内いっぱいに広がった。それらを残さず飲み干したあとで指を舐めて濡らし、違和感に慣れてもらう為に粘膜に刺激を与える。
 一本が二本に、二本が三本に増えて肉壁に沿って内部を引っ掻き回しているとヒクヒクと第二関節まで飲み込んだ指を肉が締め付けてくるものの、日吉の方は気持ちの悪さとむず痒さとが混同しているようで、喘ぎながらも眉を顰めている。
 「……ん、んん、……ん……あぁ……お、とり……も、いいから……いい、からっ……」
 「……ん。だいぶほぐれてきたし……これぐらいならそろそろ、いいかな……?」
 指を引き抜いた鳳は、すでに膝を立て曲げた右足のその膝の裏に手を差し入れ、膝頭で足を押し広げて、完全に勃起し先端を濡らす自分のそれを日吉のそこに押し当てた。
 「ん……」
 苦しげに表情が歪むのは一瞬。噛み付くみたいにして絡む粘膜を擦り上げて組み敷いた身体を揺さぶってやればあとは快感の波に溺れて、終焉を迎えるその時まで止むことなく啼き続けるのだ。
 「……あぁ、あ……あ、あ……お……とり……お、とりっ……んんっ……ん、ん、っん……」
 「ん……すげっ……いいかも……日吉ん中でびくびく言ってんの、日吉も……わかる……?」
 「ああっ……あ、あ……」
 「……っ……ん、日吉、日吉……!」
 鳳も、自分のそこに絡みつく熱と下腹部で停滞するむず痒さに刺激をもっと与えたくて、挿入したものを穿つ腰の動きが大きくなってくる。
 「……お、とりっ……お……り、ああ……あ、あ、……も、だめ、……だめ、だ……い、くっ……」
 「ん、……あと少し、あと少しだけ……待って……」
 「ん、ああっ……あ、あ、ああ……ん、んんっ……」
 首にしがみついてきた日吉の、しっとりと汗ばんだぬくもりを抱き締めながら、打ち込むような深い挿入を繰り返して、その都度絡み付いてくる内部の肉壁を、鳳も汗を滲ませながら貪欲に貪った。

 

 

 


END
(03.02.20)


 

ぴよのおうちで週末エッチたぁ、鳳若よ、いいご身分だ。 

ぴよんちはマイ設定では純日本風な家屋なものでして、自室は二間続き。寝室に使ってる部屋は一応洋間。だけどねん、襖で区切ったりオープンにしたり出来る部屋として和室も用意してみました。

畳の上でのエッチは淫らで艶やかでいいです。そう!ぴよには畳ですよ!畳!

ベッドのスプリングよりも畳を引っ掻く爪に、ガス大爆発です。

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