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 「おい、赤也、起きろ。時間だ」
 「ん……」
 「早く起きろって。メシもう出来てるぞ。ほら早くしろって。ちんたらしてっと遅刻すんぞ」
 「……ん、……ハヨございます……」
 「おう。ハヨ」
 ちゅっ。
 朝の恒例、ねぼけまなこの赤也に軽いキスを贈って、くしゃりと髪を掻き回したのちに、ブン太はダイニングへと急ぐ。同棲を始めてから、ブン太は、毎朝学校がある日にはかならず赤也の朝食を作り、そして弁当を用意してやっている。もとから家事は得意であり、手順を心得ているから、他人の世話をすることも苦とは思わない。一方赤也は得意云々以前に面倒臭がり屋であった。朝は別に食わなくても平気、昼も学食ばかりでも構わないと、同棲する前に家事はどうすると言う話になったときにそんなことを言って、ブン太をびっくりさせたのである。家に居たときにはきちんと朝食を摂り、なおかつ弁当も持参し、その上で学食を利用していたブン太にしてみたら、赤也の発言は、『お前そんなんでよく朝練に出れるよな、栄養も偏るぜ』とびっくりものであった。その結果、『よし、家事はオレが全部やってやる。お前は手伝えるときには手伝え。オレと暮らしてから痩せたなんて言われたかねえからよ』と、ブン太の宣言で、暮らし始めてからここずっと、本当にブン太が家事全てをこなしていた。
 「……」
 「あ、こら赤也。いつも言ってんだろ。顔洗ってから席につけっての。ほら紅茶入れてやっからちゃっちゃっと洗ってこいっての」
 「……めんどうっすよ……今朝は勘弁……いっしょ?」
 「ダメだ。決まりは決まり。ほらさっさと行く」
 「……だりぃ……」
 「……ったくしょうがねぇな……」
 ダイニングのイスに跨ったかと思うとそれの背に覆い被さり、ぼりぼりと今朝もひどい寝癖の髪を掻く赤也に、近寄ってこめかみに唇を落として、ブン太は続ける。
 「顔洗ってしゃきっとしてきたら、キスしてやるぜ? それも濃いーヤツ。どーする? ん?」
 「顔、洗ってくるっす!」
 鼻息も荒く、あんな甘言でまんまと釣られて走って去る赤也の背を苦笑しながら見送って、ブン太はその赤也の為に紅茶を入れてやることにする。
 あの調子ではディープなものを強請られるなと、ティーバックを振りながらブン太は考える。
 でもアレだ、キスだけで済めば御の字。
 雪崩れ込んで軽く悪戯なんかを始められたら……まあその確率は結構高いであろうが、昨日何もされなかったブン太的には悪い気はしない。
 「洗ったっすよ、ブン太先輩っ」
 前髪が濡れたままの赤也が飛んで帰ってくると、ブン太は紅茶を入れたカップをテーブルに置いて、手前のイスを引いて座るとちょいちょいと、指で、突っ立つ赤也を呼んだ。


 本日の赤也の朝食、丸井ブン太。

 そのブン太の作成した朝食は、心地の好い汗をかいたあとに二人が仲良く並んで、いちゃつきながら食すのである。










END

 


 

卒業シーズンになんとなく四月の日記でこれ書いたのが同棲物語の始まりでした。まさかこんな続くとは思ってなくてシリーズと化した状況にあーびっくりっす。でも楽しいっす。わくわくしてまふ。

そん時の日記には、
『ブン太大学の一年生。赤也高三』
『ブン太の大学進学を機にめでたく同棲を開始したお二人の日常を覗いて見ました』
『仁王柳生。仁王が家事得意。つくす攻め』
『赤ブン。ブン太が家事得意。甘やかす受け』
みたいなことを書いたんだけど、設定はそこからスタートした模様。

日記で書き散らかした同棲ものは、赤ブンの部屋にまとめてUPしますね。その方がバランスいいかなと思ってるので。

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