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 「ひよし。日吉起きて。ほら、ひよし」 
 時刻はまだ七時前。 
 いつもならもう少し明るいのに、今朝は雪で太陽が出ていないせいか、かなり薄暗い。 
 「ほら、ひよし」 
 寝つきもいいけど寝起きもいい方の日吉は、いつもならこれで目覚めたはずだった。 
 だけど、昨日はかなり無理をさせたから、疲れてしまったのだろう。今朝の眠りはいつになく深いようであった。 
 「ひよ。若。ねえ、起きなって。若」 
 ベランダ側の窓に掛かるカーテンはさっき、外の様子が覗けるようにと少しだけ開いてきた。 
 これでわざわざ起き出さなくても、ベッドの中で寝たままでも雪を見ていることが出来る。 
 たかが雪が降ってるくらいでこんな早くに起こすなと、怒られるかもしれないけれど、ベランダの手すりには五、六cmだろうか、雪が積もっていたのだ。東京でここまで積もるのは最近では珍しい方だろう。地面や建物の屋根が白く染まる光景は珍しくもないが、コンクリートの道路や柵や門といった上にまで積もった光景はあまり見掛けたことがない。そこまで積もる前にだいたい雨になってびしゃびしゃになってしまうからだ。 だから今朝のは本当に一面が銀世界で、しかもこれだけ積もりながら外はいまだ吹雪いていて、まだしばらくは降り続きそうなのである。もちろんそれはオレの予想なんだけど、天候は変わりやすいものだし、三十分後も絶対に降っているという保証はどこにもない。だからこそ、見られる環境にあるなら見て欲しいと思うのだ。 
 それに今年初めての雪でもある。 
 見せてあげたいのだ。どうしても。我侭、になるかもしれないけれど、それでも、見せてあげたいのだ。
 
 あー……ちがうな。俺が一緒に見たくて仕方がないのだ。 
  
 「……ン……」 
 「若?」 
 みじろぐのを見て、急いで毛布の上から揺すると、うるさそうにその手を払おうとする。 
 潜ってしまうのではなく、何であれ意識して起こした行動。それはしっかり目覚めてきていることを証明するものだ。 
 「ねえ、ちょっと若。起きてよ」 
 「……ぅ……さいっ……」 
 「雪なんだって。すごい降ってんだよ。ね、見てみなって」 
 「……ゆ……き……?」 
 「そ。すごいよ。五cm以上は積もってるよ」 
 「……んー……」 
 「んーじゃなくて。目開けて見てよ。ほら、カーテン開けてあるからちょっとここから顔出しなって」 
 ほんの少しめくっただけなのに日吉には寒かったのだろう、その瞬間、ぶるりと震えていた。 
 「エアコン、入ってるよ。ほら、向きかえなって」 
 風邪なんか引かれては困るから、俺もすぐに肩まで掛け直してやり、とりあえず躯の向きを変えるよう伝えた。 
 「面倒臭ぇ……」 
 「そう言うなって。ほら、肩が出ないように毛布押さえててやるから」 
 「ホントにちゃんと押さえてろよ」 
 「任せてよ」 
 俺が頷いたあと、面倒臭そうにもぞもぞと、日吉も動き出した。その動きに合わせて俺も肩が出ないように毛布に注意を払いつつ、ちゃっかりと日吉を腕の中におさめてしまう。 
 うしろから抱き締めてやって、 
 「ほら、あそこから見えるでしょ?」 
 どさくさに紛れてなにやってんだよと、文句を言いだけに振り返った日吉の額に軽いキスを落とし、ほらと、囁く。 
 毛布の上からなんだからいいでしょ。なにもしないよ。 
 耳元で約束すると、渋々だけど許された。 
 「……」 
 「ほら、ね? 見えるでしょ?」 
 「……ああ」 
 「さっきベランダに出て見たんだけどスゴイよ。手すりにも積もってた」 
 「出たのかよ」 
 「うん。つい、ね」 
 「……ッ」 
 ひたり。額に当てて。冷たいだろと囁く。 
 いきなりの冷たい感触に、やっぱり日吉は縮こまって。無防備にうなじを晒した。何もしないと約束したばかりだけど、せっかく美味しく晒してくれたのだ。ちょっとくらい味見したっていいだろう。 
 「……ッ……てめ……ッ……ァ……」 
 「暴れるなって。舐めるだけだよ。ほら、雪見てなって」 
 「……フ……舐めら……てんのに、見て、ら……ァ……れる、かよ……ッ……」 
 「感じてきちゃって?」 
 「ッ……ウソツキ……! ……噛んっ……で、じゃ……ね……か……ッ」 
 「……うそつきはひどいんじゃない? 首だけだよ? ほかは触ってもいないんだからそんな騒ぐなよ」 
 「……さ、……ァ……ったら、……ぶっ飛ばす……ッ……」 
 「じゃあ日吉がして欲しくなるまで俺もガンバロっかな」 
 「……ァ……」 
 うなじを撫でられたり、そこにキスされたりするのに日吉はひどく弱い。こそばゆくなると同時にぞくりともくるらしいのだ。現に既に日吉の吐息は乱れてきている。あと少しだ。あと少しで間違いなく彼は陥落する。 
 震えて、苦しげに喘いで、涙を溜めて。そして最後は縋ってくるのだ。まるで許しを請うように切なげに喘ぎながら『鳳……』と……。
 自覚してやってるわけじゃないんだろうけど、俺からすれば、散々時間を掛けて煽られていくようなもの。俺、思うのだ。日吉は素っ気無さ過ぎるんだよ。そんなんだからしょっちゅう俺に仕掛けられちゃうんだよ。振り回すなだって? わかってないよね、日吉だって結構俺のこと振り回してるよ。たまに言ってやりたくなるもの。もっと俺を愛してよって。中途半端に優しいのは嫌い。抱きしめてくれるならしがみつくくらい強いのが好き。
 なのにお前の腕は意地を張って張って張りまくって、ようやく俺に軍配が上がる頃になってやっと縋ってくれるんだから、自覚ないだけで日吉だって俺を苛めてるよ。
 だから俺、許されてもいいと思うんだよね、最初のうちの、これくらいの意地悪。  
 「……若」 
 「ァ、アアッ……ッ……ゥ……」 
 うなじに触れるとびくりと、震えた。大袈裟な。 
 いや、そういえば手は冷たいのだっけ。日吉の躯は熱を孕み火照りを覚えているはず。いきなりでびっくりさせたか。 
 「……き……」 
 「え?」 
 「……ユ、……キ……ッ……」 
 雪? ああ、雪なんか見ていられない、そう言いたいのか。 
 「いいよもう雪なんか」 
 「……ッ……おま、……勝手なこ……っか……言って、……ッ……ア……」 
 「うん。ごめんね」 
 「……ッ……く、しょう……!」 
 「はは。元気いいね」 
 若。 
 囁いただけで震えるなんて、いくらなんでもそれはないよ。ろくでもないことばかりを言う男みたいじゃないか。 
 「若」 
 「ァ……ッ……、ッ……」 
 「……触って欲しくなってきた? してほしくなったら言えよ? 言えばすぐ叶えてやるから」 
 どうせこの雪だ。 
 日吉は帰れない。否、帰るって駄々をこねられたって帰してなんかやらない。今日一日ベッドの中でオレと一緒に過ごすのだ。家にはあとで電話を入れるつもりだ。日吉が眠っているときにでもこっそりと。 
 「……そういや寝てるとこ起こしちゃったんだよね。悪かったね。せっかく起きてもらったのに雪どころの話じゃなくなっちゃったし、一汗かいてまた眠ろうか?」 
 せっかく気遣って提案してやったって言うのにふざけんなと、意固地な返事と共にきっぱりと首まで振られてしまった。 
 だよね。そんな従順な性格してないもの。 
 「そっか、じゃ仕方ないね。オレも好きにさせてもらうかな」 
 「ン……ア、……ッ」 
 冷たい手に握られたそこは、一瞬にしてしゅんと縮こまった。不快だったのだろう。仕方がない。でも心配はいらない。弄っていればそのうちまた元気なんて取り戻してくるはず。 
 「……少しのあいだ、我慢してな?」 
 「や、……ッ……ア、アァ……ッ……ン……」 
 亀頭は勿論だけど裏の筋も弱いところである。 
 ついでに玉も揉みながらリズムをつけてやれば……ほぉらな、元気になってきた。 
 「……ッ、な、ちょっ、……ッ!」 
 寒いとまた震えると思ったのだ。だからオレが毛布の中に潜り込んで、ちょっと苦しいけどオレが頑張って色々としてあげようと思うのだ。 
 暗いのが難点だけど贅沢は言ってられない。 
 なんか文句を言ってるみたいだけど潜っているのが幸いしてかなり聞き取り難い状態だ。……ま、これをラッキーと思って、まずは舐めるとしますか。
 










END

 


 

冬の朝です。日吉んちでなら風流に雪見も出来るだろうけど鳳んちではきっと無理。

つか、雪見障子を少し開けた和室でエッチをさせてやりたかったんだけど、なぜかこんなことに。

つか、ころころの鳳はますますとエロオヤジ化してて有島もあひゃ〜でありました。

つか、こんな中学生はヤぁぁぁぁぁぁ〜でございます。

なので、多分でありますがこれを書いたとき有島の頭では高校生くらいに変換されてたのかもしれないです。

高校一年の冬? 二年でもいいかな?

中学生よりは高校生な鳳若で妄想としてみると…ちょっと興奮してきますよ!

つか、掘り起こしてみたら内容は冬物。なのに現在は夏という…おいおい…な時期のサルベージでありやした。や、だけどもそろそろ掘り起こしてやんないとマジ深く地中に埋まりそうだったので…えへへ…。

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