■2015年3月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●世界のGM作物栽培状況


 1月28日、2014年のGM作物栽培面積が国際アグリバイオ技術事業団(ISAAA)によって発表された。昨年の総栽培面積は1億8150万haで、前年より630万ha増加した。1800万戸の農家が作付けしたというが、その大半は中国710万戸とインド770万戸の小規模農家で、Bt綿を作付けしている。その結果、中国の綿畑の93%、インドの綿畑の95%がGM品種になった。

 世界の栽培面積は全農地(15〜16億ha)の1割強だが、米国、アルゼンチン、ブラジルの3大栽培国で1億3960万haと全体の約77%を占め、栽培国が限定していることに変わりない。2014年はとくに米国とブラジルの栽培面積の増加が目立ち、米国は300万ha増、ブラジルは190万ha増だった。主要栽培国のアルゼンチン、中国、南アフリカでは栽培面積が減少している。栽培国は28か国で、新たに作付けした国はバングラデシュのみだった。
 しかし、バングラデシュのBtナス栽培は失敗していることが明らかになっている(本誌2014年8月号参照)。また、米国で新たなGMジャガイモが承認され、ナスとともに新たな作物への期待が述べられているが、このGMジャガイモもマクドナルドが使用について消極的姿勢を示すなど、商業化に向けた課題を抱えている。
 その他、耐乾燥性トウモロコシが27万5000haに作付けされたことを強調し、スタック品種と呼ばれる「除草剤耐性と殺虫性」など複数の性質を持たせたGM作物が5100万ha作付けされ、全体の28%に達したという。

 ISAAAの今後の見通しによれば、バングラデシュに続き、Btナス栽培が承認されたベトナムとインドネシアで、まもなく栽培が開始されると予測している。
 昨年の報告で、まもなく作付けするとされていたフィリピンのゴールデンライスは、栽培の目途が立たないため、表現が後退している。アフリカで栽培国が広がるという予想だったが、栽培国は南アフリカ、ブルキナファソ、スーダンの3か国で変わらず、増えていない。現在アフリカで野外試験栽培をしている国は、昨年同様、カメルーン、エジプト、ガーナ、ケニア、マラウイ、ナイジェリア、ウガンダの7か国である。
 毎年のことながら、これらの数字や予想にどれだけの裏付けがあるかは示されていない。この発表自体がプロパガンダとしての色彩が強いと見られる。


国際アグリバイオ技術事業団(ISAAA)発表
 2014年のGM作物栽培状況

表1 遺伝子組み換え作物の栽培面積推移(万ha)
1996年 170
1997年 1100
1998年 2780
1999年 3900
2000年 4300
2005年 9000
2010年 1億4800
2011年 1億6000
2012年 1億7030
2013年 1億7520
2014年 1億8150
*参考:日本の国土面積は3780万ha
    世界の農地は15〜16億ha


表2 国別栽培面積/作物(万ha)
米国 7310 トウモロコシ、大豆、綿、ナタネ、テンサイ、アルファルファ、パパイヤ、カボチャ
ブラジル 4220 大豆、トウモロコシ、綿
アルゼンチン 2430 大豆、トウモロコシ、綿
インド 1160 綿
カナダ 1160 ナタネ、トウモロコシ、大豆、テンサイ
中国 390 綿、パパイヤ、ポプラ、トマト、ピーマン
パラグアイ 390 大豆、トウモロコシ、綿
パキスタン 290 綿
南アフリカ 270 トウモロコシ、大豆、綿
ウルグアイ 160 大豆、トウモロコシ
ボリビア 100 大豆
フィリピン 80 トウモロコシ
オーストラリア 50 綿、ナタネ
ブルキナファソ 50 綿
ミャンマー 30 綿
メキシコ 20 綿、大豆
スペイン 10 トウモロコシ
コロンビア 10 綿、大豆
スーダン 10 綿
その他 *わずか
1億8150

*その他(5万ha未満)の国チリ(トウモロコシ、大豆、ナタネ)、コスタリカ(綿、大豆)、ホンジュラス、ポルトガル、チェコ、キューバ、ルーマニア、スロバキア(トウモロコシ)、バングラデシュ(ナス)