■2016年1月号

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バイオジャーナル

ニュース



●北米事情
●ダウ社の除草剤耐性作物用農薬、承認取り消し

 米国環境保護局(EPA)は、ダウケミカル社の除草剤耐性作物に使用する新世代の除草剤「Enlist Duo」の承認を取り消した。2014年にEPAが承認したこの除草剤は、グリホサートを使用しても枯れない雑草(スーパー雑草)が増えた対策として開発された、グリホサートと2,4-Dを組み合わせたもので、除草剤耐性トウモロコシ、大豆、綿に使用する予定であった。EPAは「従来考えていたよりも強い毒性がある」としている。これによりダウ社の新除草剤耐性作物は販売できなくなった。「Enlist Duo」の承認取り消しを受け、スーパー雑草対策として、ジカンバとグリホサートを組み合わせた除草剤を開発しているモンサント社の株価が上昇した。〔The New York Times 2015/11/25〕


●カナダGM鮭採卵施設の承認取り消し裁判のゆくえ

 カナダの環境保護団体バイオテクノロジー・アクション・ネットワークは、カナダ政府が承認している、カナダのプリンス・エドワード島にある採卵施設でのGM鮭の採卵とパナマへの移送承認手続きに問題があるとして、その承認取り消しを求めて2014年提訴した。この判決が6カ月以内に出ることが明らかになった。米国食品医薬品局がGM鮭を承認したいま、重要な判決になる。〔The Guardian 2015/11/17など〕

●企業動向
●シンジェンタ社がカーギル社らを逆提訴

 スイス・シンジェンタ社は、中国が米国産トウモロコシの輸入を拒否した件で、カーギル社とADM社を訴えた。中国は、米国産トウモロコシの中にシンジェンタ社の未承認トウモロコシ「MIR162」が混入していたため、米国産トウモロコシの輸入を止めた。それによりカーギル社やADM社、米国の農家が損害を被ったとしてシンジェンタ社を訴えたことに対抗したもの。シンジェンタ社は、責任はカーギル社とADM社にあるとしている。〔Reuters 2015/11/20〕


●ゲノム
●ゲノム編集

 2015年12月15日、政府の生命倫理専門調査会は、12月1〜2日にかけて米国ワシントンで20カ国の研究者が集まって開催された、ゲノム編集技術に関する国際会議で、「人間への応用においては子宮に戻さない基礎研究に限って認める」と結論したのを受けて、検討を行なった。参加者からは法的整備を含めて何らかの対応が必要であるという声があがった。
国際会議は、中国・中山大学の黄軍就らの研究チームによる、ゲノム編集技術を用いた遺伝子治療を受けて開催された。ゲノム編集技術は、制限酵素を用いてピンポイントで遺伝子の働きを止める技術である。この技術は制限酵素の種類によって「ZFN」「TALEN」「CRISPR/Cas9」などがあり、特定の狙った場所のDNAをピンポイントで切断する。現在は「CRISPR/Cas9」を用いることが多い。遺伝子の働きを止めることを「ノックアウト」と言い、これまでは複雑な遺伝子組み換えが必要だったが、それが簡単なものになった。制限酵素は、DNAを切断する部分と修復する部分を併せ持っている。そのため切断した後、修復されるが、その際に一定の割合で遺伝子の働きが止まる。また、修復の際に、その部分に遺伝子を挿入することもできるため、特定の箇所の遺伝子を止めて、そこに新たな遺伝子を挿入することができる。これまでの遺伝子組み換え技術ではできなかった、文字通りの遺伝子の入れ換えが可能になる。
中国・中山大学の黄軍就らの研究チームは、遺伝性の血液疾患がある不妊治療中の夫婦から採取した受精卵86個に対してゲノム編集技術で遺伝子を操作した。狙い通りに遺伝子が挿入されたのは4個だったという。しかし、倫理的に問題があるとして、黄らの論文は「ネイチャー」や「サイエンス」誌から掲載を拒否されている。