■2016年7月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●全米科学アカデミー、ゲノム編集技術に懸念を表明


 全米科学アカデミーが、相次いで重要な報告書を発表した。その1つが6月8日発表の「ゲノム編集技術」に関するものである。それによると、この技術は環境や人々の健康への影響に課題があり、実験室内や高度に管理された野外で多くの研究を行ない、知見を増やす必要がある。特に懸念されるのが、思いがけない生物の出現とその拡大である。この技術を人間に適用した場合、子孫に遺伝的影響が及ぶため、より慎重さが必要だと述べている。そのためには科学的・倫理的な規制や、社会的影響を考察する研究が必要である、と指摘している。

さらにこの報告書では、2016年5月時点まで、ゲノム編集技術を実施した際の環境影響評価が行われていないと述べ、この技術の有用性と有害性は、公共政策決定の中に組み入れなければならない。さらにはこの技術が生物兵器へ意図的に悪用されることへの可能性も研究の対象とすべきだ、と指摘している。〔The National Academies of Sciences Engineering and Medicine 2016/6/8〕


市民団体のETCグループは、この報告書は以下の3点について言及がないと批判している。@意図しない悪用は生物兵器だけでなく広汎に存在している。Aこの技術は、商業利用の強力な武器になり、農業に利用された場合、農民の権利や食料主権が奪われる。Bこの技術の知的所有権は大半がバイテク企業に与えられる。結果として種子支配をもたらし、食糧安全保障を奪う。〔ETC Group 2-16/6/8〕