■2016年7月号

今月の潮流
News
News2


今号の目次へ戻る
ジャーナル目次へ戻る





























バイオジャーナル

ニュース



●遺伝子組み換え作物
●除草剤の混合使用はDNAへのダメージが増幅する

 アルゼンチンの研究者らが行なった実験で、除草剤のグリホサート(商品名ラウンドアップ)とジカンバについて、両者を組み合わせて使用すると、単独使用時よりDNAにダメージが起きることが明らかになった。現在、アルゼンチンなどのGM作物栽培国では、除草剤をかけても枯れないスーパー雑草が拡大し、除草剤の種類も増加している。最近、米国でグリホサートとジカンバを組み合わせた除草剤耐性作物が承認されたため、対象除草剤の広範囲散布が予測され、実験が行われた。実験に用いたのはヒキガエルのオタマジャクシで、血液細胞のDNAを見た。グリホサート、ジカンバそれぞれ単独の5%溶液、10%溶液にさらし評価したもの、さらに両者の5%溶液を混合したものと10%溶液を混合したものを作り、さらし評価したものとを比較した。その結果、混合液のほうがDNAの破壊が増加していた。〔Environ Sci Pollut Res Int 2016/6/1〕


●WHO/FAO合同会議がグリホサートの発癌性否定

 国連食糧農業機関(FAO)/世界保健機関(WHO)合同残留農薬専門家会議(JMPR)が5月に開催され、その結論が5月16日に発表された。JMPRは、グリホサートの発癌リスクなどに関して検討を加えていたが、グリホサートの発癌性は考えられないとして否定した。
この問題は、昨年3月WHOの国際癌研究機関(IARC)が、グリホサートを発癌物質(2A)と評価したことから始まった(本誌2015年5月号参照)。EUでは、今年6月にグリホサートの15年目の承認期限を迎えていたため、再認可か否かで議論が分かれた。結局、再認可せず失効し、欧州ではグリホサートは使用できなくなった。モンサント社はIARCの評価を否定し、反論を加えていたが、それがWHO/FAO合同会議の勧告につながったと思われる。また、欧州委員会も、保留中の科学研究の期間を12〜18カ月延長し、再認可を検討することになった。〔Reuters 2016/6/20ほか〕

●北米事情
●全米科学アカデミー、GM食品は安全と評価

 全米科学アカデミーは5月17日、GM作物は食べても人や動物に対するリスクの増加は認められないとする報告書を発表した。この研究は、2年間にわたり50人以上の科学者により、これまでの研究データを評価したもので、実際に動物実験などはしていない。ゴルドン&ベティ基金など3つの基金、米国農務省、全米科学アカデミーの資金により行われた。〔The National Academies of Sciences Engineering and Medicine 2016/5/17〕

市民団体「食と水の監視」は、研究にかかわった22人中少なくとも12人はモンサント社などのバイテク企業にかかわる組織に属しており、客観的な判断とは言えないと批判している。中心人物のKara Laneyは、モンサント社が設立した国際食糧農業貿易政策会議に属しているという。〔GM Watch 2016/5/20〕

●フロリダのGM蚊放出実験は時期尚早

 米国フロリダ州フロリダキーズ諸島で進められているGM蚊の放出実験に対して、全米科学アカデミーは時期尚早という判断を下した。アカデミー共同議長でアリゾナ州立大学教授のジェームズ・コリンズは、GM蚊の放出がもたらす科学的・倫理的・社会的影響の大きさを考えると、さらに多くの研究を積み重ねる必要があると述べている。フロリダ州では、当初デング熱対策として放出実験を予定していたが、地元の反対が強く、米国食品医薬品局(FDA)の承認が得られなかった。その後、ジカ熱対策と名目を変えて承認を得た。〔AFP 2016/6/10〕


●米国で食品安全審査の市場拡大

 米国でGM食品の安全検査市場が急成長している。Research and Marketsの発表によると、2015年の推定市場規模は13.6億ドルだったが、2020年には19.9億ドルに達すると予測している。2014年に最も多かった検査は、スタック品種(複数の性質を掛け合わせた品種)だった。〔ISAAA 2016/5〕

●米国の大豆農家の農薬使用量激増

 米国農業統計調査(NASS)発表によると、除草剤に枯れないスーパー雑草の拡大によって、米国の大豆農家が使用する除草剤の使用量が6年前に比べて88%も増加している。〔Agweek 2016/6/1〕