■2019年9月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

今月の潮流●ゲノム編集生物の有機認証をめぐる論争

 米国農務省次官のグレッグ・アイバーは連邦議会農業委員会で、有機農作物の生産性を高めるために、ゲノム編集技術を用いることを考える時期にきた、と発言した。この考え方はトランプ政権の姿勢とも一致する。GM作物は有機農作物と認められていないが、ゲノム編集作物は「GM作物ではない」という考え方に基づいている。バイオテクノロジーによる種子開発は多額の費用がかかり大企業しか取り組めないため、ゲノム編集を用いた有機農作物の開発は企業に大きな利益をもたらす。それに対して有機種子生産者協会(OSGATA)は、有機農業の種子は生物多様性を守り、企業による種子支配を排除し、農地の伝統を受け継ぐことが基本であり、ゲノム編集の種子はそれに反すると指摘した。〔The Cornucopia Institute 2019/7/25〕


EUでは昨年、欧州司法裁判所がゲノム編集生物をGMOと同等に扱うことを求める判決を下して以来、激しい論争が続いている。環境保護団体や消費者団体などは判決を歓迎し、産業界はヨーロッパの技術開発が遅れをとると主張して反対してきた。この間、EUの行政組織である欧州委員会やバイテク企業のロビイストらは、GMOの規制を緩和、あるいは撤廃を求めて動いている。EUのGMO規制は20年前に作られたもので、今の状況に合わないというのがその理由である。しかし本当の意図は、GMOの規制を緩和あるいは撤廃することで、ゲノム編集生物への規制を免れようとするものである。世界的にゲノム編集生物の規制が行われず、有機農作物として扱う動きが出ていることに対して国際有機農業運動連盟(IFOAM)は、そうなれば有機農業は困難になり、農家、消費者、食品メーカーに深刻な影響をもたらす、と批判している。〔EURACTIV.COM 2019/7/9〕


ヨーロッパにおけるゲノム編集技術推進派の動きを批判して、EU議会の欧州緑の党・欧州自由連盟グループは欧州委員会に対し、欧州司法裁判所の判決に基づきゲノム編集などの新植物育種技術で開発された作物への規制――食の安全審査、トレーサビリティ、食品表示を行なうことを求めた。同時に、栽培国からの輸入を規制しないと、それらの食品がEU市場に参入しているかどうかを知る方法がなく、人々の健康を危険にさらす可能性があると指摘している。〔Greens/EFA group in the European Parliament 2019/7/25〕