■2021年12月号

今月の潮流
News
今号の目次へ戻る
ジャーナル目次へ戻る





























バイオジャーナル

ニュース


●ゲノム編集
●ドイツの独立評価機関がゲノム編集マダイを批判
 ドイツの独立評価機関であるテスト・バイオテクが、日本で認可された肉厚マダイについての問題点を指摘した。マダイそのものの寿命や健康に関するデータがなく、動物福祉に関する評価もないことをあげている。また、遺伝子改変された細胞とされなかった細胞が出ていたことも指摘した。さらには、日本におけるリスク評価の仕組みは、ゲノム編集による改変が複雑な遺伝子の変化をもたらすという事実を無視しており、そのためゲノム編集魚は、遺伝子組み換え魚よりもリスクが上回る可能性があると指摘した。〔Testbiotech 2021/11/1〕

●名古屋大学がゲノム編集で高糖度トマトを開発
 11月9日、国立大学法人東海国立大学機構は、ゲノム編集技術を用いて高糖度トマトを作出したと発表した。同機構の名古屋大学大学院生命農学研究科の白武勝裕准教授らの研究チームが中心となり、神戸大学、筑波大学、理化学研究所と共同で開発した。このトマトは、葉から果実への糖の転流にかかわる遺伝子インベルターゼインヒビターを壊し、作出した。研究結果は「サイエンティフィック・リポート」(2021年11月2日号)に掲載された。開発にあたっては、筑波大学で開発された高GABAトマト同様、2014年度から始まった国家プロジェクト、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)次世代農林水産業創造技術」などの支援を受けた。

●NTTが二酸化炭素削減に向けゲノム編集藻類の開発
 NTTは11月12日、ゲノム編集マダイやフグの市場化承認を受けたリージョナルフィッシュ社と組み、二酸化炭素削減に向けて、ゲノム編集技術を応用する実証実験を開始すると発表した。海洋中の二酸化炭素を吸収する藻類と、それを餌とする魚介類による炭素循環に焦点を当て、二酸化炭素減少に応用できるかを見るものである。

●ゲノム編集で無花粉スギ開発
 農業や漁業に続き、林業においてもゲノム編集技術を応用した樹木の開発が進んでいる。森林研究・整備機構は、すでにGM技術で無花粉スギを開発したが、さらにゲノム編集技術で花粉のないスギの開発を進めてきた。現在は、雄花で発現し花粉形成にかかわるとみられる遺伝子を壊し、無花粉となることを確認している。同機構によると、蛍光遺伝子を用い、外来遺伝子の除去を確認し、また葉緑素にかかわる遺伝子を壊し、葉を白くさせたという。この成果は「サイエンス・リポート」(オンライン版2021年8月10日)に発表された。同機構では、2026年までの無花粉スギの届け出を目指している。

●再生医療技術を応用した培養肉開発
 培養肉の開発に再生医療の技術を応用しようという、大阪のベンチャー企業ダイバースファームが注目されている。この企業は、再生医療の研究に取り組むベンチャー企業ティシューバイネット社と、大阪の懐石料理店雲鶴のオーナー料理長とが組んで設立した。通常、細胞を培養すると平面で広がるため、立体構造作りが課題となっている。単純な細胞の培養だけでは栄養や味覚に問題が生じる。この立体構造作りと、肉質、脂肪量、アミノ酸組成などの組み合わせをコントロールし、それにより鶏の細胞からの本格的な鶏肉作りを目指している。また、本格的な料理に耐えられるようにするため、懐石料理店と組んだ。現在、この取り組みは培養肉の国際的なコンペであるFeed The Next Billionコンペでセミファイナルに進出し、2024年3月に開催されるファイナル大会を目指して開発が進められている。