■2022年12月号

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バイオジャーナル

FDAが米国で初めて細胞培養肉を承認

 

米国食品医薬品局(FDA)は、同国で初めて細胞培養肉を承認した。承認されたのはアップサイド・フーズ社(元メンフィス・ミーツ社)の鶏の培養肉で、細胞株や細胞バンクの確立、製造管理、投入された原材料や添加物、製造工程等が評価され、FDAは安全性に問題はないとした。米国では、FDAに続いて、米国農務省食品安全検査局(USDA-FSIS)による検査を経て初めて、細胞培養肉の市場化は可能になる。そのため、すぐに市場化されるわけではない。米国で市場化されれば、世界中で細胞培養肉の市場化が進む可能性が強まる。

現在、細胞培養肉の市場化が認められている国はシンガポールだけである。企業では米国やイスラエルの企業が先行しており、それらの企業もシンガポールでの販売を目指してきた。今後、米国市場がスタートすると、その動きが大きく変わるだろう。 世界で最初に培養肉を製造し販売を開始したのは、米国のイート・ジャスト社で、2021年12月に、シンガポールでチキンナゲットの販売を開始した。同社はシンガポールでアジア最大の培養肉生産センターの建設に着手している。さらにカタールにも進出し、中東や北アフリカ、ヨーロッパ市場に供給拠点を作ろうとしている。

イート・ジャスト社と並んで米国で先導してきたのがアップサイド・フーズ社で、多額の資金調達をはかり、事業展開を進めてきた。今回FDAが承認した鶏肉以外にも、甲殻類の培養肉開発企業を買収し、水産物へも範囲を広げている。米国では9社で構成するAMPSという業界団体も作られた。 米国の企業と並んで活発なのがイスラエルの企業だ。工場を稼働させ始めた企業に、レホヴォトに本拠を置くフューチャー・ミート・テクノロジーズ社がある。2021年6月に、世界で初めてとなる1日に500kgの培養肉を生産する能力を持つ工場を完成させた。同国ではその他に、アレフ・ファームズ社がシンガポールに工場建設を予定している。しかし、イスラエルの企業は国内での販売を考えておらず、主に米国市場を狙っている。

まだほとんど動きのないのがEUである。EUは以前から新規食品に対して慎重な姿勢をとっており、厳しい安全性評価を経て初めて承認されるため、市場化はかなり先になると見られる。それでも世界で最初に培養肉を作り出したオランダのモサミート社があり、同社は2022年10月に国内の生産工場の拡大(7340u)を発表した。この拡大は、やはりシンガポールや米国市場をにらんだものと思われる。オランダのミータブル社もまた10月に、シンガポールのESCOアスター社と提携し、2024年には培養豚肉の販売を開始すると発表した。〔Testbiotech 2022/11/2ほか〕