■2025年5月号

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バイオジャーナル

iPS細胞を用いた臓器作製や治験が相次ぐ

 

大阪大学の武部貴典教授などの研究チームは、人間のiPS細胞を用いてミニ肝臓を作成した。再現されたミニ肝臓は0.5ミリほどの立体構造をもったものである。この肝臓をラットに移植したところ、症状の改善が見られたという。今後、安全性を確認して、臨床研究を行う予定だという。
また京都大学付属病院の矢部大介教授らの研究チームは、人間のiPS細胞から作成したランゲルハンス島(膵島)を用いた1型糖尿病の治験を開始している。iPS細胞をシート状にしたものを患者の腹部に移植するもので、2025年2月に、40代の女性の患者に数センチ四方のシートを移植しており、患者はすでに退院している。研究チームはさらに2人の移植手術を行っており、2030年代の実用化を目指すとしている。
京都大学iPS研究所の高橋淳教授らの研究チームは、iPS細胞から作成した神経細胞を用いてパーキンソン病の治療を進めてきた。この細胞はドーパミンを作成する神経細胞で、これをパーキンソン病の患者の脳に移植した。7人の患者に移植したところ、有効性と安全性が確認されたと発表した。ただし大幅な改善が見られたのは比較的若い年齢の患者で、治験の数も少ないため、研究チームは今後も段階を踏まえた治験を行っていくとしている。治験に協力した製薬企業住友ファーマは、この結果を受けて、国に対して製造と販売の申請を行うとしている。〔京都大学iPS細胞研究所 2025/4/17など〕