■2025年5月号

今月の潮流
News
News2


今号の目次へ戻る
ジャーナル目次へ戻る





























バイオジャーナル

ニュース


●iPS細胞
●iPS細胞から作り出したバイオコンピュータ

 オーストラリアのスタートアップ企業Cortical Labs社が、バイオコンピュータの試作品を作成した。3月5日にスペイン・バルセロナで開催された国際会議で発表され、「サイエンス」の同日版がこのコンピュータをトピック欄で紹介した。このコンピュータは、同社の名前の頭文字をとってCL1と名づけられている。機械の中身は人間のiPS細胞で製造された脳の神経細胞で、その脳はアリとゴキブリの脳の大きさの中間程度という。まだ最初の試作品だが、将来的には生物学的AIとしての利用を目指しているという。 同社がこのバイオコンピュータを開発した意図は、グーグルやオープンAIといった企業が脳のように機能する機械の開発を進めているため、最初から脳の細胞を使ってみたらどうか、と考えたところにある。しかも機械は、機能を増やせば増やすほど電力消費量を増やす。それに対してCL1は、ほとんど電力を必要とせず、同社がこのコンピュータを開発した意図はそこにある。加えて、脳が持つもう1つの特徴である、機械ではあり得ない速さと、わずかなデータでも推測し複雑な決定ができることだとしている。他方、生物が持つ機能がもたらす問題点もある。それが栄養の補給と老廃物の除去、微生物の侵入に対する対策などである。課題はあるものの、意外と早く実用化を迎えるかもしれない。〔Science online 2025/3/5〕

●iPS細胞で両親がオスの赤ちゃんマウス誕生

 大阪大学や九州大学などの研究チームが、iPS細胞を用いて両親がオスの赤ちゃんマウスを誕生させた。その手順は、まずiPS細胞でつくり出したオスの生殖細胞のXY染色体からY染色体を自然消滅させ、X染色体のみの性染色体を持った生殖細胞をつくり出した。その生殖細胞の複製を繰り返し、XXの染色体をもつ卵子を作り出した。この卵子をオスの精子と体外受精させ、両親がオス同士の子どものマウスを7匹誕生させたというもの。このうち2匹は、さらに次の世代も作ることができたという。(朝日新聞オンライン版 2025/3/19など)

●脳を持たないボディオイドの作成に向けた動き

 スタンフォード大学の中内啓光教授らがボディオイド作成に向けて動き始めている。ボディオイド(Bodyoids)とは、人体の外で、iPS細胞などを用いて脳を持たず感覚を持たない人体を作成することで、この予備の人体を用いて、動物実験代替、臨床研究、移植用臓器づくりを行うというもの。iPS細胞の応用が進んでおり、このような構想が現実味を帯びてきた。〔MIT Technology Review 2025/4/7〕