■2025年7月号

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バイオジャーナル

ニュース


●欧州事情
●ノルウェーがニューGMOにも予防原則を堅持

 ノルウェー議会は6月5日、改正GMO法を可決成立、予防原則を堅持した。この改正では、GMO法にゲノム編集技術などのニューGMOを加え、これら新しい技術に対してもリスク評価、トレーサビリティ、食品表示を行うよう求めている。しかし、同国はEU構成国ではないものの、EEA(欧州経済領域)加盟国であるため、EUの規制に従わなければならず、EUが新たな基準を設けた場合は変更が求められる。〔GMO Network Norway 2025/6/5〕

●欧州委員会はChatGPT設計のゲノム編集作物も規制は既存と同じ

 欧州委員会は、ChatGPTを用いて設計したゲノム編集作物に関しても「リスク評価は必要ない」という提案を行なった。現在、欧州委員会提案によるゲノム編集生物の規制では、20か所の遺伝子改変まで規制しないことになっているが、ChatGPT設計のケースもこれと同等の扱いにするという。テストバイオテクは、人工知能と遺伝子操作の融合を容易にし、潜在的危険性を大きくしてしまう、と批判している。〔TestBiotech 2025/5/27〕

●ゲノム編集作物
●進まないゲノム編集作物の作付け

 欧米の市民団体の調査で、ゲノム編集作物栽培が進んでいない実態が明らかになった。さまざまなゲノム編集作物が開発されてきたが、現在、世界で作付けされているゲノム編集作物は3種類にとどまる。調査をしたのは欧州のThe European Non-GMO Industry Association(ENGA)と、The Non-GMO Project, North America'sである。現在作付けされているのは、日本での高GABAトマトと、米国での害虫および除草剤抵抗性トウモロコシ2種類の計3種類。その他49種類のゲノム編集作物が開発されている。その開発国は、米国(30種類)、中国(8)、ブラジル(6)、アルゼンチン(5)で、米国ではほぼ栽培は認められているが、市場への道は遠いようである。〔ENGA 2025/6/10〕

●GM作物
●GM作物は農薬の使用量増大をもたらす

 GM作物栽培による農薬の使用量増大が明らかになった。調査を行なったのは、ワシントン&リー大学の農薬問題の専門家クレン・デービス・ストーン、国際綿花諮問委員会のBt綿研究者K・R・クランティらで、調査対象は、Bt綿、除草剤耐性大豆、Btトウモロコシ、除草剤耐性トウモロコシ、Btおよび除草剤耐性の両方の性質を持ったトウモロコシ、除草剤耐性ナタネで、これらの作物に対して30年間使用量を追跡した。その結果、当初、これらの作物は農薬を削減すると言っていたが、実際は増加していた。 農薬使用量が増大した最大の要因は、Bt作物では害虫が耐性を獲得して新たな害虫が発生したため、農家はより多くの殺虫剤を使用しなければならなくなったことにある。例えばインドでは、Bt綿導入以前に比べて、2018年には殺虫剤の使用量が37%増えた。Bt綿導入により、種子のコストが増えた上に、農薬の使用量も増えたため、農家の負担は大きくなった。 除草剤耐性大豆でもグリホサートの使用量は劇的に増大した。GM大豆導入前の1994年にグリホサートを使用していた大豆畑は920万エーカーだったが、2018年には1億1300万エーカーと約12倍に拡大した。その結果、散布面積は米国の全大豆畑の15%から87%に拡大した。〔Journal of Agrarian Change 2025/4〕

●Bt作物の過剰作付けによる耐性害虫の異常増殖

 米国では、農家がBtトウモロコシを急速に過剰に作付けしたため、Bt毒素に耐性を持つ害虫が急激に増えた。これは「サイエンス」誌に掲載された最新の調査によるもので、調査は中国人民大学の叶紫薇(Ziwei Ye)、ミシガン州立大学のChristina DiFonzoらの研究チームにより行われた。それによると12年間にわたる大学の圃場での試験栽培と、米国のコーンベルト10州での調査で示された。急速で過剰な作付けが、害虫への防御力を弱め、そのことが農家の経済的損失につながったと指摘している。この傾向はコーンベルトの東部の州で顕著だとしている。〔Science Vol.387, No.6737;984-989〕