■2025年8月号

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バイオジャーナル

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●遺伝子組み換えイネ
●新たなワクチン・イネが開発される

 このほど新たに、「ムコライス(MucoRice-CTB)」という下痢症予防ワクチン用イネが開発された。開発者は清野宏・東大医科学研および千葉大学特任教授である。このイネは、遺伝子組み換え技術により、米粒の中にコレラ毒素を作らせたもので、導入した遺伝子はコレラ毒素産生遺伝子のBサブユニットと呼ばれる領域である。コレラ毒素産生遺伝子は、AとBの2つのサブユニット(単位)の遺伝子から構成されているが、そのうちBユニットだけを導入した。 なぜワクチンをイネに作らせたのか。イネを用いると量産が容易で長期間保存でき、経口で摂取できるため注射の必要がなく、低コストで生産性が高いなどのメリットが多い、と説明している。なぜムコライスという名が付けられたのだろうか。Mucoは、粘性の分泌物(mucus)由来と思われる。コメを散剤としてPBS(リン酸緩衝生理食塩液)に溶かして飲むため、このように名付けたのだろう。 コレラ以外にも、大腸菌由来の毒素も予防効果があるといわれている。大腸菌O-157も効果があり、赤痢菌毒素にも予防効果があるという。効果は、腸内細菌叢に影響して発揮するとされる。栽培は植物工場などに用いる閉鎖系の水耕栽培で行う予定である。〔The Lancet Microbe 2021/6/25〕
●ゲノム編集食品
●ゲノム編集食品について知っている人は7.3%

 消費者庁は、6月20日に「令和6年度食品表示に関する消費者意向調査報告書」を発表した。ゲノム編集食品について知っていると答えた人はわずか7.3%。前年調査の同じ質問に対する回答は6.1%だったので、増えたといっても微増であり、ほとんど変わらない。また食品表示を求める人は58.4%で、前回が55.7%なので、こちらも微増だった。
●ES細胞
●マウスのES細胞から卵子の元になる細胞を作製

 2025年6月30日、京都大学教授の斎藤通紀らのチームは、マウス由来のES細胞から卵子の元になる卵母細胞を作りだした、と発表した。この研究チームは、すでに2017年に同じような成果を論文に掲載しているが、今回はより卵子に近い状態にできたとしている。今回は培養過程でビタミンAなどを加え、さらにタイミングを工夫した。その結果、従来の方法に比べて作製効率が大幅にアップしたという。今後、ヒトのES細胞やiPS細胞から卵子や精子を作ることが予想される。現在、ヒトにおいても作成までは認められているが、受精は禁止されている。しかし今後、研究の成果次第では、ヒトへの応用が始まる可能性が出てきた。〔毎日新聞2025/6/30〕