■2025年12月号

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バイオジャーナル

ニュース


●欧州事情
●デンマーク人の82%がGMO規制緩和に反対

 いまEUでは、ゲノム編集技術を含む新しい遺伝子技術(New Genomic Techniques :NGTs)について、GMOでの規制を行わない方針が成立する寸前にある。デンマークでは、EUがNGTsについて食品表示やトレーサビリティを免除するか否かの最終議論の段階に入っている渦中に、最新の世論調査が行われた。調査を行なった世論調査会社YouGovによると、デンマーク人の82%がEUのGMO規制緩和の取り組みを停止し、食品の安全、環境、消費者の選択権を保護するために現在の厳しい規則を維持するべきだと回答した。デンマーク政府はEU理事会の議長国であり、任期満了の2025年12月までに新たなGMO規制緩和の交渉を完了させようとしているが、そのことについて国民の84%は知らなかったと回答した。〔NOAH 2025/11/5〕

●ChatGPT設計のゲノム編集作物が規制なしで認可か

 EUではNGTsについて、20塩基以内の改変に関しては規制をなくそうとしている。ChatGPTが設計し、20塩基以内の短い塩基の配列改変で作成した殺虫性トウモロコシはそれに該当し、承認の可能性が強まっている。10月2日付の「Frontiers in Plant Science」にその設計図が公開された。〔TestBiotech 2025/10/2〕
●北米事情
●米国の食品表示訴訟で市民団体勝訴

 10月31日、米国連邦控訴裁判所は、連邦法に基づく農務省のGM食品表示についての規則は違法と判断した。米国では長い間GM食品表示がなかったため、市民が各州議会に働きかけ、いくつかの州で表示制度ができつつあった。しかし、そこに国が介入、連邦法に基づく表示制度を作り、州法を無効とした。しかし、連邦の表示制度には大きな問題があり、消費者がほとんど選択できない表示であったため、市民団体の食品安全センターが提訴したのである。すでに下級審では農務省の表示規則を違法と判断していたが、今回は控訴審で違法という判断が出た。判決では、QRコードでの表示は違法、食用油のような加工度の高い食品の表示免除も違法、さらに「バイオエンジニアリング」という表現も、「遺伝子組み換え」などわかりやすい表示にすべきだとした。〔Center for Food Safety 2025/10/31〕

●GM昆虫
●オキシテック社が豪州でのGM蚊の放出申請取り下げ

 英バイオテクノロジー企業のオキシテック社とCSIRO(オーストラリア連邦科学産業研究機構)は、感染症対策を目的として、北オーストラリア全域で数百万匹の遺伝子組み換え蚊を商業的に放出する申請をしていたが、それを取り下げた。同社はブラジルでNon-GMOの蚊の製造工場を開設するなど、GMOからNon-GMOへと方針を転換しており、それを反映したものと思われる。これまでのGM蚊の放出実験は成功したとは言えず、住民の反対運動も強かったことから方針を転換した可能性が強い。しかし、大量の不妊をもたらす蚊を放出し、蚊の個体数を大きく減少させれば、植物の受粉に影響が出、餌を失う昆虫や動物が減少して生態系が破壊される可能性もあり、慎重さが求められることに変わりはない。(GMWatch 2025/11/10)