あだち充13
……そういうことか。

      ――あだち充『KATSU』K巻――
        (「週刊少年サンデー」'04年6号〜'04年15,第108〜117回まで)

 ぼくは、このあだち充『KATSU』のレビューで、出でよ“本阿弥 さやかお嬢さま”と言い続けてきた。それは単(ひとえ)に鈍 チン“香月”ヤキモチを焼く姿が 見たかったからだ。
 しかし考えてみると、そもそも、あだち充のヒロインにはライバルが 存在しない、のだった。
 『ナイン』、『タッチ』、『虹色とうがらし』、『ラフ』、『じんべい』、『スローステップ』、 『いつも美空』には、端から存在しない。
 『陽あたり良好』、『みゆき』、『H2(エイチツー)』には、ヒロインのライバルが居るかに見える。 が、『陽あたり良好』の“○○ちゃん”(名前も忘れてしまった(^^ゞ)や、『みゆき』の“鹿島みゆき”は 、所詮ライバルたり得ていない。便宜上そこに対置されて居るに過ぎない。(こういう言い方を したら“鹿島みゆき”のファンは怒るだろうか? いや、むしろ、“鹿島みゆき”に感情移入出来た 読者が居たとしたら、その人はあだち充のファンでは無い。――でしょ!)
 そして『H2(エイチツー)』の“古賀春華”。彼女の存在は、もしかすると、あだち充の 初めてのヒロインのライバルたり得たかも知れないのだが。
 しかし、ラストシーンに於ける“古賀春華”の立場は、“鹿島みゆき”と同じなのだ。こう書けば、 両作品を既読の方にはご理解戴けると思うので、未読の方に配慮して、これ以上はここでは語るまい。 (『H2(エイチツー)』に就いては、今、もう少し突っ込んだ論考を書いているので少しお待ち 戴きたい。)

 さて、何故鈍チン“香月”“本阿弥 さやかお嬢さま”が現れないのか? だが。
 思うに、“香月”“本阿弥 さやかお嬢さま”なのだ。
 話が少し逸れるが、あだち充の描く女の子の髪型には(『H2(エイチツー)』より前の作品群には)、 一つの共通項があった。それは、《ショートカット=元気で活発なタイプ》VS.《ロングヘアー=おとなしい 物静かなタイプ》である。(処が『H2(エイチツー)』でそれは逆転したのだったが。)
 で、“香月”も髪型で別ければ《ショートカット=元気で活発なタイプ》である。が、“柔 ちゃん”と“本阿弥さやかお嬢さま”を考える時、髪型は逆だが、“香月”の 性格は正に“本阿弥さやかお嬢さま”なのである。  あだち充作品のヒロインの性格が強烈な故に、ヒロインの ライバルは現れにくいのかも知れない、のである。少しく残念ではあるのだが。

 で、『KATSU』K巻である。
 本巻は、前巻の“岬新一”の《好きな女の子発言》に終始する。
 鈍チン“香月”の心は揺れたのだろうか? ――あ、 勿論、“活樹”に対して、という意味だが。(“岬新一”に対して揺れる訳は無い、でしょ!)
 しかし、主人公に感情移入している読者としては、面白くない(笑)訳だ。
 けれど、これが、もしかしたら、鈍チン“香月”の恋のライバルの 変形版かも知れない、と思ったのだ。つまり、ライバルの女の子に拠って心を 揺らすのではなく、自分を好きだと言う男の子の存在に拠って、逆に(自分の中に芽生え始めて いる“活樹”への想いに)心を揺らすのだ。

 とまあ、こんな事を考えた『KATSU』K巻であるが。
 本巻のラストは、次巻へのヒキが大き過ぎる。(と言っても、勝敗への期待や不安があるのでは無い のだが。)所詮、この顔(戸田順平くん)は、ヤラレキャラだしぃ……(笑)。
 むしろ、気になるのは、ラスト頁の「……気のせいですよね。」という“岬新一”の台詞だ。
 “活樹”は、アゴへのカウンターパンチを打てないのか? “ラビットのおっちゃん”が“赤松 隆介”を死に追いやった――そのパンチを。
 という処で、以下次巻。(出るのは7月か……待ち遠しい(^^ゞ)。

(2004.04.17)
テキスト:少年サンデーコミックス;2004.05.15 初版発行;本体390円;ISBN4-09-127042-5


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