あだち充12
一緒に観てあげようか?

      ――あだち充『KATSU』J巻――
        (「週刊少年サンデー」'03年47号〜'04年4・5合併号,第99〜107回まで)

 『KATSU』J巻である。
 男の(“活樹”の)ライバルは次々と登場するのだが、女の(鈍チン“香 月”の)ライバルは結局出て来ないのだろうか? “半沢みのり”くんも最近とんとご無沙汰 だし……(笑)。
 さて今回のライバルは、“香月の初恋の男”だそうな。鈍チン“香 月”“初恋の男”?――(笑)。紹介されるエピソードが 少な過ぎて、イマイチ“?”なのだが。大体、(折角のカラー頁を無駄 に使った)増頁の一回しか出て来ないのでは……判断しようも無いのであるが。で、どんな男なのかという と、役者志望のナイスガイ(死語)らしい。しかし、幼い頃からボクシング狂い の“香月”が、<サーフィンが上手くてギターも弾けて、地元の有名人だった>(“紀本 高道”談)この青年に“初恋”?――(笑)。
 まあ、“宮川光クン”同様、しばらく様子見か……(笑)。
 (それにしても、この回のラストに『いつも美空』のあの<新作映画を構想中の巨匠世界のヒロサワ>監 督が……また構想中で、また<イキのいい若い役者>を探してるのね……笑)

 で、インターミッションのようなその回を挟んで、物語は“岬新一”との対決が待つインターハイへと 突き進む(…のか?)。“怪物・岬新一”と“カラス・内田”(カバー裏のストーリー紹介文より…やっ ぱり“カラス”なのね…笑)の意外な接点(←こればっかり)などを折り込みながら、次巻はもう インターハイ開幕だ。
 ふと思ったのだが、『ラフ』も12巻で終わったなぁ――と。
 前回ぼくは<多分、あだち充は《プロボクサーになった“活樹”》は描かないだろう>と書いた。
 何故か? はひとまず置いておいて、あだち充はプロになった主人公に興味を持てないように 見える。発表誌が少年誌だからでは無いと思うが、過去の作品全てが高校生で終了している。

 昨今流行なのだが、例えば、水島新司『ドカベン』のプロ野球篇や、松本零士の過去のキャラクター 総出演の新作……など、作家は、その後の物語を描きたくなるものなのだろうか? 思い起こせば 野球まんがの不朽の名作、川崎のぼる『巨人の星』も(当然巨人軍に入るのが目標なのだからプロ野球篇が あって然るべきなのだが)ぼくには、プロ野球篇(というか、プロになってからの物語)が、それ程光り 輝いていたようには思えない。(さらに、この作品は『新巨人の星』として《その後の物語》が描かれ たハシリの作品だったとも言える。)
 読者に続編をせがまれる物語は幸せである――勿論、正編以上の作品が生まれた例は無いので あるが。

 話が横道に逸れたが、あだち充のラストシーンは、いつも見事な省略形だ。例えば『ラフ』の ラストシーン――答えは言葉にされない。『みゆき』のラストシーンも葉書が届くだけだ。『タッチ』も 絵皿が物語るばかりである。
 あだち充は、切り捨てる事により、そこまで積み上げてきたストーリーを一瞬にしてフィードバック させる。そのエンディングの巧みさは、多分、追随する作家を持つまい。
 今巻で、“香月の父”が“ラビットのおっちゃん”に「里山活樹をおれに預けろ。」と 言い、“おっちゃん”が「プロにさせる気はない」が「万が一、億が一、兆が一…もしもの話ですよ、 京が一、垓が一…」「プロデビューするとしたら」「水谷ジムから」だと答えたとしても、あだち充は その先を決して描かないだろう

 今回のインターハイで“里山活樹”と“岬新一”の対決はあるのだろうか?
 あったらやはり12巻で終了だが(笑)、それでは、“香月の初恋の男”も“宮川光クン”も“カラス・内 田”も登場して来た意味が無いし……(笑)。
 となると、二人の内どちらかが事故かアクシデントで不戦敗。――で、来年(三年生)のインターハイを 目指す――と。“活樹”の性格からして昇り詰めたら(優勝したら)終わりだろうし。となれば、 アクシデントは“活樹”の方か。
 あるいは、“活樹”が対“岬新一”戦に勝ってしまい、逆上した“カラス・内田”が高校に再入学して 来年(三年生)のインターハイで……無い無い(笑)。

 まあ、まだあまりにも未消化のエピソードやキャラクターが多すぎるので、しばらく続くのだろうが、 妙に二人の対決へのボルテージが上がっていて、嫌な感じである。
 それとも、やはり、“怪物――岬新一”は、登場した時の第一印象通りの所詮は《やられ キャラ》だったのか?

 そんな処で、以下次巻((^^ゞ)。

(2004.02.28)
テキスト:少年サンデーコミックス;2004.03.15 初版発行;本体390円


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