榛野なな恵『Papa told me』26巻を読む

 最近、殆どコミックスの新刊を買わなくなってしまった原因のひとつは、好きだったまんが家さんの絵が みんな変わってしまったからだ。それも、困った事に、僕には下手になったとしか見えないのだ。まんがの 絵には、当然、その時代時代による流行があるのは、判る。しかし、変わらない人も居る。
 例えばあだち充。彼の絵は、本当に変わらない。しかも、デビュー当時から上手かった。あるいは小山ゆ う。彼も、タッチは殆ど変わっていない。寧ろ、絵としては、新化してさえ居る。
 処が、高橋留美子。何故、彼女の絵は、こんなに雑っぽい輪郭線になってしまったのだろう。個人的な絵 に就いての趣味の問題もあるのだが、彼女の以前の輪郭線は、もっとくっきりと丸かった。それが今、何本 も線を重ねたような細い輪郭線になってしまった。それが今の流行のラインなのは判るが、しかし、僕には、 下手になったとしか映らない。少し話は逸れるが、『らんま1/2』をアニメでやった時、初めは絵の違い に戸惑ったものだった。アニメのキャラクター・デザインの中嶋敦子の個性が強過ぎて、それはもう殆ど 高橋留美子の絵では無かった。(ただ、その異常に大きい眼の、中嶋敦子のキャラ・デザインは、意外と 自分の好みに合った事も在り、やがてそれ程気にはならなくなった。)で、去年、『犬夜叉』がアニメ化さ れた時、原作に近い絵を作るサンライズの制作という事もあり、初見で「ああっ高橋留美子の絵だ!」、と 妙に新鮮に感じたのだ。それは、僕には、現在の高橋留美子が描く『犬夜叉』のまんがの絵よりも、余程、 高橋留美子の絵に見えた。それは、アニメが輪郭線をくっきりと描かなければならない宿命を負っていた為 に起きた、言ってみれば、先祖帰り現象だったかも知れない(^^ゞ。つまり、現在の高橋留美子の絵を、その まま輪郭線をくっきり描けば、以前のままの高橋留美子の絵になる、という事だったの、かも? 基本的に その作家が持っているラインはそう簡単に変わるものでは無いの、かも。
 だが、名指しで批判するのは少々気が引けるが、細野不二彦。彼の絵は、どう贔屓目に見ても、下手にな ったとしか見えない。特に『ギャラリーフェイク』。今、手元に全て揃っていないので、正確に何巻頃か 判らないが、左手で描いたのでは、というくらい酷い時期があった。確かにその描線は、その当時の青年 コミック誌の流行の絵柄の様に見えた。が、何故、自分の絵柄を変えてまで、流行に合わせようとするのか、 僕には合点がいかなかった。『東京探偵団』や『あどりぶシネ倶楽部』の頃の様な繊細な描線は何処へ行っ てしまったのだ、という遣り切れない思いで一杯だった。
(C)2001年;榛野なな恵;集英社
 また、前置きが長くなってしまったが、榛野なな恵『Papa told me』26巻の話だ。
 榛野なな恵ファンを自認している割には、『Papa told me』も19巻以降買っていなかった。 (なんて奴っ! (^^ゞ)で、久し振りに買った別の新刊コミックス(全くなんて奴っ! (^^ゞ)に、榛野 なな恵『Papa told me』26巻の発売告知が載っていて、何この絵はっ、(左の写真) と思ったのだが、その時はまだ買わなかった(ホントになんて奴っ! (^^ゞ)。それから直に、 『Papa told me』の連載が終了して、著者自薦傑作集が出るという予告を見て、これは買わねば、 と発売日に近くの本屋へ出掛けたのだが、無いんだなァ、これが。昔なら何件でも本屋を廻って、絶対その 日の内に買ったものだが、たまたま、26巻は平積みされていて、ああ、これがあの最終巻だな(最終巻だ と思いこんでいた)と思いそれを買って来たのだった。
 で、最初の数ページを捲った時に、何この絵はっ! と、また感じたのだ。何このヘタクソな 絵はっ! (^^ゞ。思わず表紙を見ると、カバー絵もヘタクソだった(^^ゞ。もうその日は本編を読む気 にならない程、ショックだった。榛野なな恵、お前もかっ! だったの だ。
 2、3日して気を取り直して読んでみれば、そこは、何時もの榛野なな恵ワールドで。

   どんな山に
   登ろうと
   しているのかな――
   君は

   つるつるの絶壁の
   ちょっとした手がかり足がかりに
   その小さなピンク色の
   爪をたてて

   ウソをつき
   仲間を出し抜き
   微笑を売り渡して

   それでも見たい
   山頂の風景って
   いったい
   どんなもの
   なんだろう

   そんなに
   大層なものとも
   思えないけど

   いや しかし
   君の気持ちも
   わかるよ

   何とかして
   世界に
   痕跡を
   残したいんだろう

   そんなことを
   しなくても
   きっと君は
   幸せに生きて
   いけるのに

   僕も生きて
   いけるのに

   でも
   わけも無い不安に
   かられ

   今日も心だけを
   はばたかす

   天使ならぬ身の
   我々は

        ――「ティードレス」

 やはり、まんがもアニメもお話だよ。うん。
 しかし、最初にそのまんがを手に取る切っ掛けは、やはり、絵かなァ? 

 処で、件の著者自薦傑作集の1巻は、後日手に入れたのだが、まだ封を切っていない。実は今、ちょっと 無謀な事を考えているのだ。僕にとっての『Papa told me』傑作集を3巻分選んで、比べてみよ うか……などと(^^ゞ。いずれ、この場でご報告しよう。

(2002.01.03)


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