火薬、爆弾の駄論
爆弾、古くから用いられる無差別兵器にして、案外身近にも使われる存在。
物騒な物と考えられがちだが、扱い方さえ間違えなければ極めて友好的にも使える存在。
ここでは、管理人が集めた火薬、爆弾に関する知識を垂れ流しにしてみようかと思います。
※なお、悪用は絶対厳禁です。
@火薬、爆弾の歴史
1.発生について
銃の駄論でも述べたが、全ての大本となる黒色火薬は古代中国で生まれました。
不老不死の技術を探求する仙道の研究者達が開発したと言われているが、詳しい年代は分かっていません。
明確な処方の記録の最古の物は11世紀の物ですが、それ以前にすでに秘伝として伝わっていたようです。
材料となるのは硝石、硫黄、木炭で、この混合比率を変える事により、用途別の火薬を作り出す技術が生まれました。
更には砒素などの毒を混ぜ、毒ガスのような物を作り出せる技術まであった模様です。
10世紀の頃には槍の先端に火薬を詰めた筒を取り付けた《火槍》なる火炎放射機もすでに存在しました。
12世紀になると、手榴弾の原型とも言える《震天雷》が開発されます。
これは鋳造した鉄の中に火薬を詰め、導火線で着火する物で、重量が4〜10kgもあり、大型のは砲で使われた模様です。
鎌倉時代の日本で起きた元寇の際にも使用され、火器など見た事も無かった日本軍を大いに苦しめました。
古代中国ではこれらに代表される火器・爆弾の開発が盛んに行われ、焼夷弾の原型である《万人敵》、地雷、機雷の元である《水雷》、矢に火薬によるロケット推進を持たせた《火箭》、鳥のハリボテに火箭を取り付け、内部に火薬を詰めたミサイルの原型とも言える《神火飛鴉》、更には火箭を多段式にした《火龍出水》などがありました。
火龍出水の射程距離は1kmにも及びましたが、更なる進化を遂げるにはいささか時代が早過ぎた模様です。
また、これらの技術は戦争を通じて諸外国にも伝わり、十字軍遠征の際、イスラム軍が使う火薬は望遠鏡と並んで十字軍を苦しめました。
2.変化について
時代はずっと下り、1846年、イタリアの化学者 アスカニオ・ソブレロ によって今までとは比べ物にならない爆発力を持ったニトロ・グリセリンが開発されます。
しかし、液体状態でのニトロ・グリセリンは極めて安定性に乏しく、僅かの熱や振動で爆発してしまう極めて危険な代物でした。
しかしソブレロの友人であるアルフレッド・ノーベルは低硝化綿薬(弱綿薬)を混合してゲル状とし、安定化に成功。
これが後に有名な《ダイナマイト》となります。
本来、ノーベルはダイナマイトを大規模工事などの平和利用のためとしていましたが、後に戦争にも用いられ多くの戦死者を生みました。
ダイナマイト程の強い破壊力を持った物は戦争に使われるはずがないとしていた自論があっさりと崩され、傷心したノーベルは、遺言でダイナマイトで得た利権や油田開発などで得た莫大な財産を元に、科学に貢献した人物に賞金を与えるノーベル賞を設立させたのは有名な話です。
3.更なる安定化、破壊力の増加
二次大戦中、アメリカは今までの物とは全く違う安定性を持った《プラスチック爆弾》の開発に成功します。
これは従来とはまったく違う爆弾で、単体では全く起爆せず、信管を取り付けて電気信号を流す事によって初めて爆発する極めて安定性の高い物でした。
RDX爆薬にプラスチック結合剤や可塑剤などを混ぜて製造され、代表的なのがコンポジション爆弾で、外見は紙粘土そっくりで、加工も容易です。
だが故に服の下などに隠し持ち、自爆テロなどにも使われるのが現在の状況であります。
A火薬、爆弾の基礎知識
歴史でも述べましたが、火薬・爆薬の発展はそのまま安定性の発展とも言えます。
花火工場などでたまにあるのですが、黒色火薬などの通常火薬は微弱な静電気などでも爆発してしまう危険な代物です。
ゆえに、爆発物を扱う場所ではアース盤の設置が義務化されており、作業の際にはこれに触れてからが常識です。
また、ダイナマイトは工事などで大量に使われる事があるが、それ故に扱いは専門の知識と技術が必須となります。
大量搬送及び保管中の事故はそのまま大惨事に直結し、事実過去多くの事故が起きている。
間違っても軽々しく扱っていい物ではありません。
1.爆弾の種類
ここでは用途別の爆弾、主に戦闘用に付いて分類します。
T手榴弾
映画やゲームでも有名な、手投げ式の爆弾。
升目の入ったパイナップル型が現在主流だが、案外使用用途は誤解されております。
本来あの大きさでは、爆薬だけによる殺傷は難しく、内部にベアリングなどを一緒に封入し、爆発力でそれを飛散、殺傷させるのが本来の使用用途です。
パイナップルにも似た升目も、爆発の際に割れて飛散させるのが目的です。
ピンを抜けば爆発、ではなくピンはあくまで安全装置で、ピンを抜いた後レバーを外して初めて信管が作動します。
熟練した使い手は信管発動後、3秒待ってから投じ、処理の暇を与えない。
なお、二次大戦時物資に困窮した日本軍は陶器で製作したそうだが、果たしてマトモに使えたかどうかは不明です。
また、円筒状の非殺傷用の物として派手な音で相手を怯ませる音響手榴弾(スタングレネード)、閃光で敵を眩ませる閃光手榴弾(フラッシュグレネード)、煙でかく乱するスモークグレネード及び煙の代わりに催涙ガスを噴出するガスグレネード、爆発でなく燃焼を目的とした焼夷手榴弾(ナパーム・グレネード)など、用途ごとに多岐のバリエーションが存在します。
U時限爆弾
これもまた有名な爆弾。
ただ端的に言えば、タイマー式の信管さえ付ければなんでも時限爆弾となる。
しかし、ただ時間差だけを狙う場合と違い、設置式の時限爆弾は解除を困難にする事で脅迫用に使われる事が多い。
昨今では自爆テロが主流となりつつあるため、少なくなりつつあります。
………用はそれだけ爆弾が無差別殺戮用に使われるという皮肉な状態の証明でもある。
ついでに時限爆弾のトラップについても説明します。
配線トラップ………よくある配線のどちらかを切れば解除or爆発、などという簡単な事は滅多になく、大抵はダミーやアースなどと複雑に絡み合い、起爆回路を解析し、電流の導通を確認して慎重に処理していく、一番オーソドックスなトラップ。無論、間違えればすぐに爆発する。
センサートラップ………種々のセンサーに反応すれば起爆装置が発動するトラップ。内部に設置して解体のために開けると光が反応する光センサー、水平を図るジャイロと連動して傾くと反応するジャイロセンサー、振動があると反応する振動センサー、最近ではGPSと連動してその場から動かすと反応する物まである。光センサーは覆いをしてスプレーで塗りつぶす、ジャイロはセンサー部分をエポキシなどで固める、などの処理方法がある。
ネジトラップ………配線トラップの一種で、ネジその物を導通性のある金属の物を使用し、それに配線を繋げて回路の一部としてしまうトラップ。ネジを完全に外すと断線して起爆するので、半ばまで外してそっと抜き取るという方法がある。
プログラムトラップ………起爆装置にマイクロ・コンピューターを繋ぎ、プログラムに変化があったらすぐ起爆するトラップ。ただ小型の物に搭載できるマイクロ・コンピューターには限度があり、ハイスペックのパソコンなどで解析されるとあっさり無力化するため、あまり実用的ではありません。
ライフ・デススイッチ………これは時限爆弾というよりも純粋に脅迫のためのトラップ。グリップ式スイッチを握りつづける事で停止信号が流れ続け、何らかの理由、主に持ち手の死亡等で手を放すと爆発する。自爆テロの一種としても使われます。
他にも多種多様なトラップが存在します。用は何かに反応して信管が作動すればいいので、色んな方法が取られるが、解除する方としてはたまった物ではない。
映画やマンガでは素人がプロの指示を受けて解体というシーンがあるが、実際は膨大な知識と技術、豊富な経験が必要で、間違っても素人がどうこうできる代物ではありません。
Vプラスチック爆弾
名前は極めて有名だが、種類が豊富な事はあまり知られてない。
一般的なのが粘土状のC4だが、RDX爆薬をコーティングして粒子状にしたA3、組成を変えて威力を調節しているC1〜C3、更にはTNT爆薬と混合させたコンポジションBなどがある。
特にコンポジションBの破壊力は極めて高く、数kgもあればビルすら吹き飛ばせる。
W兵器の爆弾
地雷………踏むと発動する爆弾。人間用から戦車用まで多種のバリエーションがあるが、発見されない事が要である。しかし、それは逆に後の処理を困難にし、戦争終結後も多くの死傷者を出す事から対人地雷は使用禁止の方向へ動きつつある。踏んだ後、代わりの重石と素早く取り替えるという手段もあるが、最新のには一切通じない。踏んだままの状態で解体というのが最後の手段だが、プロでなくては不可能である。
クレイモア………地雷の一種だが、こちらは水平にセットし、センサーなどで反応して水平方向にベアリングを撒き散らす。広範囲の効果があり、ゲリラ戦などで多く使われる。
機雷………水に浮く水中版地雷。主に戦闘艦や潜水艦の行動封鎖用に用いられる。自衛隊の海外派遣でこれの処理もあった。解除方法はリモート式爆弾をセットし、遠距離から爆破させるしかない。
魚雷………海戦で使われる水中推進機が付いた爆弾。艦船の速度上昇により、高速化と高度な誘導機能が求められる。今なお改良が続いている。
爆雷………主に対潜水艦戦に使われる沈む爆弾。センサー式、時限式などである程度距離を取ってから爆発する。これを避けるのは潜水艦のクルーの技量を最大限に問われる。
ミサイル………かつては噴進爆弾、今は誘導弾とも言う。推進、誘導機能が付いた長距離戦の主力とも言える爆弾。対地、対空、対艦など多岐の種類があり、かつてはドイツで宇宙開発のためのロケット技術が軍事転用された《V1》などが元祖であり、二次大戦時末期には日本でジェットエンジンを組み込んだ初の対艦ミサイル《桜花》が開発された。ただし、これの誘導装置は生身の人間であり、着陸脚もフロートもないので、一度発射されれば搭乗者は確実に死亡する。現状では大陸間をも越えるICBMなどが大国間で配備され、緊張が高まっている。
核爆弾………核分裂や核融合の際に生じる、膨大な熱量を爆弾に転用した史上最強最悪の爆弾。二次大戦時、決戦用兵器としてアメリカ、ドイツで開発が進んだ。(日本でも計画はあったが、あまりに資金がかかるので実行されなかった)しかし、恐ろしい事に当初ではそれは今までに無い絶大な破壊力を持った爆弾として認識されておらず、また認識していた開発者達はその予想される破壊力から実戦では使用されないと思い込んでいたが、二度に渡り日本に投下されたのはあまりに有名。現在は広島と長崎に使用された原子爆弾から更に強力な水素爆弾が主流。一度使用すれば絶大な破壊力と後々までの放射能障害を撒き散らすそれは、最早滅亡にしか使えない代物である。
2.爆弾の有効活用
戦闘以外にも使われる爆弾の使用方法についても列挙します。
工事爆破………大規模土木工事の際、山を切り崩したりする際に行われる。周辺の地質などを慎重に調査し、念密な計算の元に行われる。足りなかったり、余計に崩したりすると問題なので、専門の会社が存在する。
爆破解体………テレビでよく見る、老朽化したビルなどを爆破して一気に解体する方法。アメリカなどでは周辺に影響が出ないように念密な計算によって行われるが、日本国内では法律上周辺に建物がある場合は許可されない。一見派手だが、要所を爆破しているだけなので飛び散っているのは自重で飛散した瓦礫である。
爆破消化………油田火災などで行われる方法。爆発の爆風で火と酸素を軒並吹き飛ばして消化するという荒っぽい消化。しかしその調節は極めて難しく、一歩間違えればそれこそ火に油を注ぐ状態となって最悪である。映画「沈黙の要塞」の冒頭で行われていた。
爆破処理………ようは戦争が終わり、不要になった地雷や機雷を処理するために爆破させる方法。地雷の処理は東南アジアや中東では深刻な問題であり、専用の企業まで存在する。平たく言えば戦争の尻拭いその物。
B爆弾テロについて
爆弾はその効果の大きさから、テロリズムに使われる事が多い。
かつて日本赤軍等が行ったテロ行為は有名で、手製のロケット弾まで使用される始末だった。
しかし、現在海外ではさらに恐ろしい自爆テロが主流であるが、その元祖が日本の神風特攻隊である事はあまり知られていない。
自爆テロは最早防ぎようが無いが、もし爆弾らしき物を見つけたら即刻警察に通報し、手を出さないのが基本である。
発見時は、『触らない、投げない、蹴らない』が原則だそうである。
………蹴った時点で爆発して死にそうな気もするが、知識がないと遠ざけようとして蹴るケースがあるそうである。
また、爆発物の処理の一種として液体窒素で凍らせるという手もあるが、これは電池などが使用されている際、その電池の起電力を無くすための手法で、それ以外には効果が無い。
もし爆弾テロに巻き込まれそうになった場合、爆発はすなわち燃焼であるため、爆風はまず上方へと逃げるのを応用して、その場でうずくまる、地下へ逃げるなどの方法がある。
ただしこれはあくまで爆風に対する物であって、飛散したガレキなどの二次災害には無防備に巻き込まれる可能性があり、更には閉鎖された屋内だと横へと吹き抜けるのでまったく意味が無い。
最終的には、爆弾テロは警察組織などが目前に防ぐ以外に、完全な対処はあり得ない。
国際化が進む中、いつ日本で爆弾テロがおかしくない状況へと変化しているので充分に注意されたい。
感想、その他あればお願いします。
INDEX