第二次スーパーロボッコ大戦
EP04



「超空間通路、発生確認。敵機多数出現」
「出現規模はBレベル。現地勢力及び転移勢力、迎撃行動を開始」
「本部に連絡、観察対象レベルをオーバーする可能性あり………」



「足立区に謎の物体多数出現! 市街地に攻撃をしています!」
「次々と火災発生! 避難民多数!」
「敵機は南西に進行を開始、直線上にこの大帝国劇場が有ります!」

 大帝国劇場の地下、帝国華撃団司令部にて、急遽呼び戻された帝国華撃団の支援部隊風組の三人娘、藤井かすみ、榊原 由里、高村 椿が突然の敵襲に声を張り上げる。

「大神!」
『今翔鯨丸にて急行中!』
『こちらソニックダイバー隊、発進準備完了! 敵機迎撃のため出撃します!』

 もう座る事もないと思っていた司令席で米田が声を張り上げ、大神が返答する中、追浜基地からタクミの通信が入ってくる。

「頼む! 向こうは空飛んでやがる! 光武じゃ空までは戦えねえ!」

 叫ぶように返信した所で、思わず米田は苦笑する。

(機械か魔物かも分からねえ謎の敵に、どうやって飛んでるかも分からねえ機体に乗った嬢ちゃん達、老いぼれの頭にキツイぜ………)

 米田は視線を司令部の大型画面に映し出されている、戦地へと向かう翔鯨丸へと移す。

「大神、この事態にはお前の判断力が必要だ。最前線での判断は全てお前に委ねる。後方支援ぐれえは俺がなんとかしてやる。躊躇わずに行って来い」
『はい!』
「海軍省にも連絡! 陸軍の手に余るかもしれねえ! 避難民の海上輸送の準備を打診!」
「了解!」
「こっちはどうにかする、そっちは頼んだぜ………」

 矢継ぎ早に指示を出しながら、米田は戦場へと向かう若者達に、小さく呟いた。


「飛行外骨格『零神』。桜野。RWUR、MLDS、『パッシブリカバリーシステム、オールグリーン』っ!」
「飛行外骨格『風神』。園宮。『バイオフィードバック』接続っ!」
「飛行外骨格『雷神』、一条、ID承認。声紋認識。『ナノスキンシステム』、同期開始っ!」
「『バッハシュテルツェ』、エリーゼ。『バイオフィードバック』接続っ!」
『ソニックダイバー隊、発進してください』
「雷神 一条、発進!」
「風神 園宮、出ます!」
「零神 桜野、ゼロ行くよ!」
「バッハ エリーゼ、テイクオフ!」

 発射台から噴煙を上げ、四機のソニックダイバーが次々と発進していく。

「くそ、やっぱり攻めてきやがったか!」
「なんぼくらい来てるんや!? 弾は積んだので全部やで!」
「やっぱこっちのにFCS付けといた方いいやろな」
「敵がどれくらいいるか分からねえ! 使える物は使えるようにしとけ!」

 速度を上げていくソニックダイバーを見送った後、整備班のメンバー達が大慌てで光武用の武装をなんとかソニックダイバーで使えるよう、細工に入る。
 そこに、やたらと華美な装飾が施された、悪趣味一歩手前の蒸気自動車がタイヤをスピンさせながら格納庫の前へと止まる。

「斧彦! 菊之丞! 敵は足立区から大帝国劇場に向ってるわ! 直線上の避難誘導、するわよ!」
「分かったわ!」「じゃあ私達も行きます!」「待ってください! 私も!」

 運転席で叫ぶ琴音に、斧彦と菊之丞が慌てて乗り込むが、そこに医療箱を担いだ芳佳も加わる。

「医療班は大歓迎よ、早く乗って!」
「はい!」
「芳佳はん! 無理したらアカンで!」
「もうウィッチやないんやから!」
「大丈夫です!」

 作業しながら叫ぶ御子神姉妹に片手で返しながら、芳佳を含めた薔薇組の乗った蒸気自動車が走り去っていく。

「くっそ、攻龍がありゃあ………」
「あっても市街地にミサイル撃てるかい!」
「敵はステルス機能持っとるらしいで」
「何が攻めてきたんだ何が!」



「大神司令! 投下予定地点に到達」
「何だよ、あいつら見た事もない奴らだ」
「相手が何物であれ、我々のすべき事はかわらない!」
「当然です! 大神さん」
「投下開始や、行くで」

 翔鯨丸から投下された光武改二は、一直線に最前線へと着陸。と同時に皆が一斉に敵へと向き直る。

『帝国華撃団、参上!!』

 降り立った帝国華撃団の勇姿を見た市民達が一斉に喝采をあげる

「華撃団だ! 帝国華撃団が来てくれたぞ!」
「そいつら倒してくれ!」
「お前ら、そんな声援送る暇会ったら避難だ! 早くこっちへ来い! 彼らの邪魔になるぞ!」

 声援を送る市民が陸軍によって誘導されるのを脇目で見ながら、大神は正面の敵を観察する。

(見た事無い相手、というのは確かだ。昨日見た映像にこんな連中はいなかった。だが!)
「隊長、相手の能力が未知数だ。ここは慎重に様子を見…」

 レニの言葉が終るよりも早く、大神の乗る純白の光武改二は敵へと向けて突撃していった。

「大神はん?!」「大神司令!」「大神さん!」

 いきなりの先行に隊員達が驚く中、大神機が突撃していった先、4脚の歩行戦車とも言うべき漆黒の相手は大神機へと連射式の銃撃を放つが大神はそれを巧みに交わし、相手へと肉薄、敵は銃撃を止め脚の一本を振り上げて攻撃しようとするが、大神はそれを左の刀で受け流しつつ、右の刀で一瞬にして斬り飛ばす。

「お兄ちゃん、スゴーイ!」
「まだだ! せやぁぁ!」

 脚を失った為バランスを崩した敵に、大神は気迫と共に両刀を突き刺し、左右へと切り開いた。敵はその攻撃でダメージの限界を迎えたのか、爆発・四散する。

「最初から、オイシイ所持っていきすぎデース」
「まったくだぜ」

 大神の無謀とも取れる行動に、華撃団の皆があっけにとられる中、大神は新たな敵へと向かい直る。

「見たか皆、こいつらは硬いが決して敵わない相手では無い。臆する事は無い!」

 その言葉に華撃団の誰もが抱えていた未知の敵への恐怖を消し飛ばした。

「行くぞ! 帝国華撃団! ここを絶対に守りぬくんだ!!」
『了解!』



「こちら雷神 一条。敵機を確認! 敵機多数!」
「風神 園宮、敵機解析を開始、順次データを転送します!」
「撃ってきた!」
「各機散開! 迎撃を開始!」
「このっ!」

 見た事も無い、戦闘機ともそうでないとも取れる奇妙な敵機から放たれたミサイルのような物を、ソニックダイバーはフォーメーションを一時散開させて回避、音羽が零神のビーム砲でそれを迎撃、爆発四散させる。

「やっぱりミサイル! 敵機は高速誘導兵器を所持!」
「だけじゃない!」

 エリーゼが叫びながらバッハシュテルツェをロールさせ、それを追うように別の敵機から光条が伸びる。

「光学兵器まで!」
「敵機は高速機動兵器と推察! 有人無人は不明!」
「たあぁぁぁ!」

 瑛花と可憐が叫ぶ中、音羽は零神をAモードへとチェンジ、すれ違い様にMVソードで敵機を斬り裂く。
 斬り裂かれた敵機は煙を上げながら墜落していくかに見えたが、途中で爆発、文字通り粉々に砕け散った。

「今の消え方………」
「ネウロイに似てるわね。けどネウロイとは違う………」
「多分だけど、アレ誰も乗ってない!」
「もうどうでもいいわよ! 次々来る!」
「フォーメーションをスクエアに! 音羽とエリーゼは攻撃、私と可憐でサポートするわ!」
『了解!』

 帝都と、自分達の双方を攻撃してくる。
 それ以外何も分からない敵にソニックダイバー隊は応戦するべく、向っていた。



「何なんだこいつら………」

 追浜基地の管制塔に急遽造られた指揮所にて、門脇、嶋、そして冬后の三人の指揮官は送られてくる謎の敵の映像を凝視していた。

「ワーム、ヴァーミス、ネウロイ、バクテリアン、どれとも一致しません! これは、全く未知の敵です! 常時ジャミングを発生させてるらしく、詳細な解析も不可能です!」
「こいつらが、今度の敵って訳か………」

 断片的ながら送られてきたデータを解析した七恵の報告に、冬后は苦虫を噛み潰したかのような顔で謎の敵と、交戦するソニックダイバー隊を睨みつける。

「帝国華撃団は!」
「現地に到着、敵地上部隊と交戦を開始した模様!」
「空戦機と陸戦機、双方を繰り出してくるとは、敵は制圧戦を狙っているのか………?」
「それならば、最初に出撃する前のこちらを叩けばいい。わざわざ、離れた場所に出現した意味があるはずだ」
「帝国華撃団から報告! 敵は霊力の攻撃に弱いらしく、善戦してるそうです!」
「ソニックダイバー隊に連絡、防衛線を構築。市民の脱出まで時間を稼げ」
「ソニックダイバー隊、防衛線を構築して市民の脱出時間を稼ぐようにだそうです!」
『一条、了解しました。しかしこの数は………』
「坂本少佐が増援を連れてくる予定だ! それまで持ち堪えろ!」
『了解!』

 瑛花の焦りを通信越しに感じつつも、鼓舞させるために冬后は声を張り上げる。

「ウィッチの増援が来るのが先か、ナノスキンの限界が来るのが先か………」
「残弾数の問題もある。このままで済めば…」
「敵、更に増加!」

 指揮所の不安を更に増大させるように、七恵の悲鳴のような報告が響いた………



「はああぁぁ!」

 気合と共にさくらの駆る文字通り桜色の光武二式が白刃を一閃。
 一刀の元に敵機は両断、直後に爆発しながら粉々に砕け散る。

「何だよこいつら!」
「こっちが聞きたいデ〜ス!」
「落ち着け皆! 攻撃を確実に当てれば撃破出来る! 何も問題は無い!」

 見た事も無い敵に困惑する花組隊員達を鼓舞しながら、大神も自機の双刀を振るい、次々敵機を撃破していく。

「大神はん! 多分これ自立型の無人機や! 上飛んでるのも同じらしいで!」
「見た事の無い奴だ。前回はこんなのはいなかった………」
『大神! 市民の避難までそこから敵を通すな! 今陸軍が総力を上げてる! 海軍の増援部隊も向ってるそうだ!』
「そちらは頼みます米田司令!」
『司令はてめえだろ!』
「帝国華撃団花組、ここから敵を一体も通すな!」
『了解!』

 つい昔の癖で言ってしまった事に怒鳴り返されつつ、大神は花組全員に指令を出し、自らも先陣を切る。

「司令! 敵が翔鯨丸に!」
「全速で後退させろ! 速度が違い過ぎる!」

 マリアが上空を見ると、そこに敵機に狙われる翔鯨丸の姿が有った。
 大神が後退を指示するが、そこに敵機のミサイルが飛来、直撃するかと思われた時、翔鯨丸の前に魔法陣の描かれたシールドが展開、ミサイルはそれに阻まれて爆発四散した。

「私が援護します! 早く撤退を!」

 ミサイルをウィッチのシールドで防いだ静夏が、翔鯨丸に撤退を促す。

『静夏君か! 助かった!』
「早く! 一斉に攻撃されたら、私だけでは持ちません!」

 静夏が叫びながら、撤退していく翔鯨丸の殿を受け持つ。
 撤退を確認した静夏は、全身を冷たい汗が流れるのを感じつつ、目の前に広がる光景を見る。

「これが、戦場………」

 上空ではソニックダイバー隊が、地上では帝国華撃団がそれぞれ奮戦しているが、敵の攻撃は市街地を容赦無く破壊していき、市民達が帝国陸軍の兵士達に促されながらも、逃げ惑っていた。

『静夏ちゃん!』
「は、はい宮藤少尉!」
『そこから7時方向後方300m! 逃げてる人達を護衛して!』
「了解しました!」

 下から見ていたのか、芳佳の昨夜とは違う鋭い声に、静夏は即座に復唱し、指定された場所へと急行する。

「ひえええぇ………」
「急げ爺さん!」
「来た!」

 逃げ惑う市民達に、敵の陸戦型が迫る。
 老人が一人、それに腰を抜かし周りの者達が慌てて救い起こそうとするが、突然陸戦型が爆発四散する。

「何だぁ!?」
「急いで下がってください! 向こうの通りに軍の救援隊が来ています!」

 驚く市民に、上空からの銃撃で陸戦型を撃破した静夏が叫ぶ。

「おい、女の子が空飛んでるぞ!」
「しかも耳と尻尾が生えてる!」
「まさか、帝国華撃団の新型!?」
「いいから早く!」

 さっきとは違う意味で驚いてる市民に思わず怒鳴りながらも、静夏は機関銃を向かってくる陸戦型に向けて構える。

「市民を一人でも多く逃がす、それが今の私の任務!」

 自分を鼓舞させながら、静夏はトリガーを引いた。



「急いでくれ!」
「はい!」

 あちこちから爆音が響いてくる中、美緒は月組の一人が運転する蒸気自動車で追浜基地へと向っていた。

「総員、避難する市民を護衛! それ以外の交戦を許可しない! いいな!」
『了解!』

 車の中で通信機に怒鳴る中、後方で何人ものウィッチが上空へと飛び上がり、市民の元へと向かっていく。

「く、私が飛べれば!」

 こちらの世界に影響が出ていないため申請していたウィッチの増援は間に合わず、急遽自分の教え子の研修生達を駆り出す羽目になった美緒だったが、全員が初陣という状況では苦戦しているソニックダイバー隊の援護にまでは向かわせる訳にはいかなかった。

「こちら坂本! 追浜基地、応答せよ!」
『こちら追浜! 坂本少佐、戻られたんですか!?』
「すまん! 防衛隊は動かせなかった! 今こちらの新人ウィッチ達を市民の護衛に向かわせたが、それ以上の事は期待できない!」
『ええ!? このままだと、ナノスキンの効果が切れる前に、残弾が切れちゃいます!』
「なんだと!? クソ、何か手は…」
「手ならあります」

 そこで響いた声に、美緒は驚き運転していた月組隊員は自分達だけしか乗ってないはずの車内を見回す。

「お久しぶりですマスター」
「お前は!」
「え………」

 何時の間にか、車のアタッシュボードの上に立つ、文字通り小さな人影に二人は驚く。
 それは、全長が15cm程しかないような白いスーツをまとったような人形のような存在だった。

「アーンヴァル!」
「増援に参りました、マスター!」

 その人形のような存在、前の戦いで皆をサポートするために送り込まれた武装神姫と呼ばれる者に美緒はその名を呼んだ。

「人形が喋ってる!?」
「彼女は武装神姫、アーンヴァル。味方だ!」
「今回、機体をバージョンアップ、正式名称は天使型MMS・アーンヴァルmk2です。アーンヴァルのままで結構です」
「早速だがアーンヴァル、行けるか?」
「はい! マスターはこれを!」

 そう言いながら、アーンヴァルはどこかから半透明のHMDのような物を取り出す。

「これは?」
「新開発されたRIDE ONシステムです! 装着してください!」

 似たような物を前回見た事が有った美緒は、見よう見まねでそのHMDを装着する。

「行きます、RIDE ON!」

 アーンヴァルのボイスコマンドと同時にシステムが作動、突如として美緒の視界に自分自身を見上げる画像が映し出される。

「これは、アーンヴァルの視点か?」
「はい! マスターの代わりに、私が飛びます!」
「そうか、では出撃だ!」
「はい!!」

 美緒の命令にアーンヴァルは大きく答えながら、背部のシンペタラスユニットを発動、その小さな体からは想像できない速度で、一気に空へと舞い上がる。
 HMDに映る、久しぶりの空を舞う感覚に美緒は僅かに笑みを漏らす。

「10時方向、新人ウィッチ達が市民の避難護衛にあたっている! 援護しろ!」
「レーダーに感知、急行します!」
「三時方向、敵機だ!」
「攻撃開始!」

 アーンヴァルはGEモデルLC5レーザーライフルを構え、右手に見える小型の飛行型に銃撃。
 放たれた光条は小型を貫き、爆散させる。

「よし、どんどん行くぞ!」
「はい、マスター!」



「たああぁぁ!」

 気合と共に音羽はMVソードを一閃、だが浅かったのか、敵機はダメージを追いつつ、体勢を立てなおしてくる。

「もう一撃…」

 こちらも零神をひるがえし、二撃目を放とうとするが、そこである警告表示が視界内に表示された。

「MVソード損傷!?」

 敵の装甲が予想以上に厚かったのか、斬撃を放ち続けたMVソードに限界が来始めている事に音羽が愕然とする。

(予備は無いぞ!)

 出撃前に僚平に言われていた事を思い出した音羽はとっさにビーム攻撃に切り替えて追撃、両腕のビームを速射させてようやく敵機にトドメを刺す。

「音羽! あなたMVソードが…」
「まだ行ける! ゼロはまだ…」

 損傷報告を確認した瑛花が思わず叫ぶが、音羽は剣戟とビームの双方攻撃に切り替え、MVソードの負担を減らそうとする。
 だが攻撃パターンを変えた事を好機と判断したのか、敵の攻撃が零神に集中し始める。

「ゼロ、行くよ!」

 音羽は零神を高速飛行のGモードに変更、高速飛行と回避パターンを併用して攻撃をかわしていくが、そこに執拗に敵のミサイルが飛来する。

「なんて陰険!」
「音羽避けて!」
「音羽さん!」

 攻撃が零神に集中した事に気付いたエリーゼと可憐も援護するが、フォーメーションのほころびを狙うように、敵は零神を攻撃し続ける。

「まずい…」
「危ないよオ〜ニャ〜」

 ミサイルを回避しきれないと感じた音羽が迎撃を試みようとした時、響いてきたどこか眠たそうな声と共に、突然ミサイルが明後日の方向へと狙いを外す。

「今のは…」
「助けにきたよ〜」

そう言いながら、速度を落とした零神と並走して飛ぶ小さな人影に音羽は気付いた。

「ヴァローナ!」
「久しぶりオ〜ニャ〜。何か大変な事になってるね」

 黒いスーツをまとったどこか眠そうな雰囲気の武装神姫、悪魔夢魔型MMS・ヴァローナの姿に、音羽は声を上げる。

「武装神姫!? 何でここに!」
「何って、助けに来たに決まってるよ〜。あたし以外にもあちこちに来てるよ」
「他にも武装神姫が?」
「もうどうでもいいから、手貸しなさいよ!」
「OK〜」

 他の三人も驚く中、更に多くなる敵にエリーゼが叫び、ヴァローナもあっさり了承する。

「行くよ、ヴァローナ!」
「分かったよオ〜ニャ〜」



「狼虎滅却・天地神明!!」

 莫大な霊力を乗せた双刀の斬撃が、向かってきていた大型の陸上機を一撃で斬り裂き、吹き飛ばす。

「全員状況は!」
『全機無事で交戦中です! ただ、防衛線を構築するので手一杯です!』

 大神の誰何に、マリアが銃撃を続けながら報告する。
 帝国華撃団は奮戦を続けていたが、敵は次々と新手を繰り出し、誰もが目の前の敵を迎撃するのに必死だった。

「やむを得ない………巴里華撃団に増援要請!」
『それが、さっきからやってるんだけど、通信が繋がらないの!』
『こちらでも確認しました! 広域の電波妨害が行われてます! 長距離通信帯を狙った、極めて高度なECMです!』
「なんだって!?」

 かえでとタクミからの通信に大神が声を上げた瞬間、遠くから一際大きな爆発音が響いてくる。

「隊長! あっちになんかデカイ火柱が上がってる!」
「アイリスも見えた!」
「あの方向、まさか………」
『大神司令! 敵の別働隊よ! 大電波塔が破壊されたわ!』
「そこまで………」

 琴音からの緊急通信に、大神は光武二式の中で思わず歯を食いしばる。

(市街地に攻撃してこちらに注意を集中させ、電波妨害に大電波塔の破壊、こいつらは極めて高度な戦術で運用されている!)

 一見無差別攻撃に見えた敵の攻撃が、理論的な戦術であった事に気付いた大神が、それでもなお戦意を奮い立たせる。

「帝国華撃団、市民の避難が完了するまで、その場を死守! この場はオレ達だけで守り切るぞ!」
「増援ならいるぞ! ここに一人な!」

 隊員達の返答よりも早く帰ってきた声に、思わず大神の動きが止まる。

「今の、どこから?」
「どこを見ている、ここだ。すぐ目の前にいるぞ!」

 光武二式の外部モニターにはそれらしい人影は映ってない事に大神が更に不審に思い、何気に視線を僅かに下に移す。

「そう、ここだ!」
「え?」

 文字通りすぐ目の前、光武の中に小さな人影が立っている事に、大神は一瞬思考が停止する。

「ボクは武装神姫、ケンタウロス型MMS・プロキシマ。次元転移反応確認。指定条件に全項目一致。今から君がボクのマスターだ」
「しゃべる人形が光武の中にいる〜!?」

 全く予想外の事態に、大神が奇声を上げそうになる。

「いや、武装神姫? そう言えば昨日見た資料にそんなのがいたような………」
「そういう事だ、これからボクがマスターを全力でサポートする」
「全力って………」
「それでは行くぞ!」

 唖然としている大神を差し置き、プロキシマは勝手にハッチを開け、外へと出て行く。

「たああぁぁ!」

 凛とした掛け声と共に、小剣ハダルとアゲナを振りかざし、その小ささを利用して陸戦型の脚部を一気によじ登り、付け根を双剣の斬撃で切断、バランスを崩した所で大きく後方に飛び退きながらイクシオンライフルを掃射、超小口径とは思えない破壊力を発揮し、動きが完全に止まった所で大神機の斬撃がトドメを刺す。

「なるほど、確かに出来るな」
「さあどんどんやるぞマスター!」
「おお!」

 頼れる小さな増援に大神は僅かに驚きつつ、己も双剣を振るい、防衛線を死守するべく奮戦する。
 だが、小さな増援達の力すら上回る程、敵は更にその数を増してきていた………



AD2085 日本 追浜基地跡地

「転移空間の概要把握が出来ました」
「何よこれ………」

 超銀河研究所から調査隊として来たエミリーがトリガーハート達と協力して出来た転移した空間の詳細が3Dディスプレイに表示される。

「追浜基地の施設とソニックダイバー隊がいた上空部分のみ、綺麗に転移した模様です」
「信じられないけど、滑走路まで完全に水平に削りとって転移してたわ。チルダよりも圧倒的に上の転移技術ね………」
「Gでもここまで精巧な転移は不可能よ。こんな事が出来る存在はデータバンクに存在してない………」
「そんなのはどうだっていい! 音羽ちゃん達はどこに行ったの!?」

 あまりに高度な転移技術に誰もが愕然とする中、亜乃亜が声を荒げる。
 夜を徹した調査が行われていたが、転移先の特定にまではまだ至っていなかった。

「落ち着きなさい亜乃亜。あちら側の協力で転移エネルギーの概算は出せたわ。今からそれで転移可能範囲のメガバースを探索すれば」
「それってあとどれくらいかかるの!?」
「全力でやるわ。少し休んだ方がいいと………」

 声を荒げる亜乃亜を、エリューとエミリーがたしなめる。
 誰もがあまり休んでないが、ずっと臨戦態勢で待機していた亜乃亜が、一番憔悴しているように見えた。

「せめて四次元座標の方角だけでも分かればすぐなんだけど」
「まずその選定から…」
「! ゲートから転移反応! これは、外部から!?」
「何!?」

 エミリーの言葉に、全員が一斉に常時接続状態にしている転移ゲートを見る。
 だがそこからは、予想外の物が飛び出してきた。

「すまないが、警戒態勢を解いてくれないかマイスター」
「え………」
「ムルメルティア!? 何で!?」

 転移ゲートから出てきたのは、全長15cm程の、小さな人影だった。
 それがかつてフェインティアをマスターとしていた武装神姫、戦車型MMS・ムルメルティアだと気付いた一同が驚く。

「どうしてここに?」
「非常呼集だ。第一種非常事態発生のため、私を含めた武装神姫達が各所に配備された。無論、ソニックダイバー隊の所にも」
「! 皆がどこにいるか知ってるの!?」
「こちらで座標の特定に成功した。私はそれを知らせるために派遣された」

 ムルメルティアの告げた驚くべき情報に、亜乃亜を筆頭に全員が色めき立つ。

「すぐにそこへ…」
「待って欲しい。こちらで確認した事だが、どうやらその座標で大規模な戦闘が起きているようだ」
「………ま、予想通りね」

 ムルメルティアの告げた更なる情報に、その場の緊張が高まっていく。

「座標は教えるが、転移は臨戦態勢を整えてから…」
「もう、出来てるよ」

 そう言いながら、亜乃亜はビックバイパーにまたがり、起動させる。
 それを見ていた他の者達も、一斉に戦闘準備に取り掛かる。

「そういう事よ、ムルメルティア」
「了解した、座標をそちらに転送させる」
「オペレッタ」
『受け取りました、これから転移準備に入ります』
「エリカ7! 準備はいいわね!」
『はい、エリカ様!』

 Gの天使達が、トリガーハート達が、緊急招集されていたエリカ7が全員臨戦態勢を取り、転移の瞬間を待つ。
 ふとそこで、クルエルティアがある事を口にした。

「ユナさんには………」
「………まだ知らせてないわ」

 ポリリーナとなっているリアが、小さな声でクルエルティアに呟く。

「あの子は、今頃全銀河ボランティアコンサートの最中よ。この事を知ったら、すぐにでも予定をキャンセルして飛んでくるわ。出来れば、私達だけで解決したいの」
「………そうね。彼女には随分と世話になったし」

 自分達が今、地球の学生としてやっていけるのも、彼女が積極的に友達として接してくれた事を思い出し、クルエルティアは小さく頷いた。

『座標設定完了、目標メガバースへの転移を開始します』
「音羽ちゃん、今行くから!」



太正十六年 帝都東京

「お願いします!」
「私達にも出撃許可を!」
「出来るわけがねえだろ!」

 ソニックダイバーレスキュー隊の訓練生達が、臨時指揮所に談判しに来たのを、冬后は一蹴した。

「考えてもみろ! まだ基礎訓練段階、シミュレーションも数えるくらいしかしてない連中に、実戦出撃させられるか!」
「しかし!」
「それに武装もねえ! どうするつもりだ!」
「貸与された光武用の武装があります!」
「ド素人に扱えるか!」

 双方激しい論議をしながらも、指揮所にまで遠くから上がる炎と戦闘音が響いてくる。
 じっとしていられないのは冬后としても分かるが、練習用の機体と訓練を始めて間もない者達を出す訳にはいかなかった。

「ソニックダイバー隊、ナノスキンの残時間が半分を切っています!」
「大佐!」
「駄目だ!」
「待ってくれ」

 頑として出撃許可を出さない冬后だったが、そこにようやく到着した美緒が指揮所に飛び込んでくる。

「戦闘以外は可能か?」
「それはどういう…」
「今私の教え子達が市民の避難援護に向かっているが、如何せんこちらもまだ不慣れでな。救助活動を行える人員が欲しい」
「レスキュー隊として出動させろと? だが…」
「許可する」

 美緒の提案に冬后がまだ否定的なのを、門脇が鶴の一声で賛同する。

「長官!」
「この状況だ、使える物は使う。だが、戦闘は一切許可しない」
「………了解。83式にレスキューパックを! ソニックダイバーレスキュー隊、初出動だ!」
『了解!』

 冬后の号令に、訓練生達が急いで出撃準備に入っていく。

「長官、ソニックダイバー隊の指揮権を委任します。オレはこっちの指揮があるので」
「了解した。そちらは任せる」
「こちらの新人を護衛にあたらせる。ウィッチのシールドなら大抵の攻撃は防げるだろう」
「そうは言うがな、こっちの新人は戦闘訓練なんて受けてもいないんだぞ」
「分かっている」

 そう言う美緒が、愛刀を強く握りしめている事に気付いた冬后が、それ以上は口をつむぐ。

「幸い、武装神姫達が増援に来てくれているようだ」
「こちらでも確認しています! しかし…」

 状況を報告する七恵だったが、誰もがある事に焦りを感じ始めていた。
 刻一刻と減っていく、ナノスキンの残時間に………



「市民の避難、順調に進んでいます!」
「現在花組は防衛線の維持に全力を注いでいます!」
「ソニックダイバー隊から救助部隊が発進したそうです! ウィッチ隊と組んで市民の救助と援護にあたるそうです!」

 次々と飛び込んでくる報告に、米田は刻一刻と変化していく戦況図を険しい目つきで睨みつけていた。

「ソニックダイバー隊とウィッチ隊のおかげで、被害は予想以上に少なくて済みそうですね」
「ああ、それはいいこった。だが………」

 かえでが最前線と避難市民の距離が大分空いた事に安堵するが、米田はちらりと画面隅に表示されている物に視線を送る。
 そこには、説明されていたソニックダイバーの活動限界である、ナノスキン耐久時間が表示されていた。

「まずいな、今の状況でソニックダイバー隊が退いたら、押し込まれるか?」
「市民の避難が終わり次第、坂本少佐がウィッチ隊で防衛線を構築してくれるそうですが………」
「初陣の連中に期待はできねえ、何か手は………ん?」

 ふとそこで、米田は戦況図に違和感を感じる。
 市街地に攻撃してきたはずの敵が、何故か避難する市民の方には全く戦力を向けていない事、そして市民の避難を優先させるため、帝国華撃団が基地である大帝国劇場から離れている事に。

「まさか、これは………やべえ! 花組を呼び戻せ!」
「中将、それは…」
「こいつは、罠だ!」



「ソニックダイバーレスキュー隊、延焼地区に消火弾投擲開始しました!」
「相対距離を保て! 上嶋、グライド、荘はAモードにチェンジ、倒壊家屋を撤去して避難路を確保!」
『了解!』
「猿飛、加藤、石川は撤去作業中のソニックダイバーの直援に当たれ!」
『了解!』

 ソニックダイバーレスキュー隊、ウィッチ隊双方の新人達が協力して救助作業を進める中、指揮所内の誰もがある事に焦っていた。

「ナノスキン耐久時間、五分を切りました! ソニックダイバー各機、残弾僅かです!」
「交戦しつつ、撤退を」
「残弾の少ない機から戻らせろ! 霊子甲冑用の装備は使えるのか!?」
「一応調整は終わりましたが、実際に使ってみるまでは…」

 門脇と嶋、二人の指揮官が双方撤退を指示した時、ふと門脇は表示される敵の状況に違和感を感じた。

(この配置、そして動き。これは………)「すぐにソニックダイバーを全機撤退。レスキュー隊もだ」
「長官!?」
「これは、罠だ!」

 二人の老将が、同時に敵の目的に気付く。
 だがそれは、僅かに遅かった。

「て、敵がソニックダイバー隊後方にも出現! 挟撃されます!」
「何だと!?」
「遅かったか………」
「ウィッチ隊! ソニックダイバー隊の撤退を援護しろ!」
『教官! こちらにも新手が出現! 囲まれました!』
『こちら帝国華撃団! 敵の新手によって完全に包囲された!』

 次々と飛び込んでくる報告に、指揮所の全員が顔色を変えていく。

「最初からこれが狙いか………!」
「いや、これだけとは…」
『きゃあああぁぁ!』

 嶋が歯ぎしりした所で、門脇が更なる可能性を考慮したが、そこで誰かの悲鳴が響いてくる。

「何事だ!」
『て、敵がワイヤーのような物でこちらを狙ってきています! 恐らく、鹵獲兵器です!』
「鹵獲だと!?」
『教官! 坂本教官! 敵が、こちらを捕まえようと…きゃああ!』
「アーンヴァル!」
『了解しましたマスター!』

 捉えられようとした新人ウィッチをアーンヴァルが救助に向かい、かろうじて鹵獲を紛れるが、送られてくるアーンヴァルからの視界からは、同じような鹵獲兵器を構える無数の敵の姿が有った。

「これが、最初からこれが狙いか………!」
「わざと離れた場所に出現・進軍し、適時戦力を追加してこちらの戦力を根こそぎ出させ、そして鹵獲する」
「私も行く! このままでは…」
「もう力の使えないアンタが出て行ってどうするつもりだ!」
「! 敵機反応、真上!?」

 指揮所も混乱状態になる中、七恵の声が悲鳴のように響き渡り、直後に振動が響き渡る。

「くそ、ここまで来やがった!」
「出る!」

 冬后が悪態を付いた所で、美緒が我先に愛刀を手に指揮所を飛び出す。
 階段を駆け下り、外に出ようとした所で突然熱風と共に業火が辺りを照らす。

「これは…」
「神崎風塵流・孔雀之舞」

 業火をまとった薙刀の一閃で敵機を片付けた紫の光武二式が、残火を振り払って構える。

「あら先程の。坂上少佐、でしたかしら?」
「坂本だ」
「こちらはご心配なく、客人を守るのも務めですわ」

 そう言いながらすみれが他の敵を警戒するが、先程の会話に僅かな乱れが有った事を美緒は気付いていた。

「正直に言ってほしい、あとどれくらい持つ?」
「何の事かしら?」
「先程の一撃で、息が切れ始めているのだろう? 私もそうだった」
「………なるほど、そう言えば貴女も力の低下で引退なされたのでしたわね」
「無理はするな、援護くらいは出来る」
「お言葉に甘えさせてもらいますわ、赤元少佐」
「坂本だ」

 今一名前を覚えていない事に苦笑しながら、美緒はすみれ機の隣で愛刀を抜き放つ。

「おい、また来たぞ!」
「そう簡単に落とされてたまるかい!」
「そうやそうや!」

 そこにありったけの銃火器をかき集めてきたソニックダイバー隊整備班も加わる。

(アガリが二人と非戦闘員、どれくらい持つ?)

 こちらはそれほど重要視されてないのか、数こそ少ないものの押し寄せてくる敵に、美緒は内心の焦りを押し殺し、構えた。



「来るな〜〜〜!!」

 エリーゼが悲鳴を上げつつ、ビームを乱射しまくる。
 小型の飛行型が、編隊を組んでソニックダイバーを一騎ずつ包囲、奇妙な粘性を持つワイヤーのような物を射出してくる。

「動きを止めないで! こいつら、ソニックダイバーを鹵獲する気よ!」
「ゼロだけじゃなく、私達も狙ってるんじゃない!?」

 瑛花が叫びながら小刻みに機体を揺らして敵の狙いを避け続けるが、MVソードを振るう音羽は明らかに機体だけでなく、搭乗者をも狙っている事に気付いていた。

「オーニャー、来るぞ!」
「風神、もうミサイルがありません!」
「バッハももうレーザー砲限界!」
「二人とも下がって! 雷神の残弾が一番多いわ!」
「それだってもうほとんど…危ない!」

 瑛花が殿を受け持とうとするが、そこに迫ってきていた敵機に音羽は思わずMVソードを投げつける。

「音羽!」
「なんとか…」

 MVソードが突き刺さり、墜落していく敵機を見向きもせず、音羽は用心して持ってきていた霊子甲冑用の脇差しを零神の脚部ハードポイントから抜き放つ。

(重い………)

 材質の違いで、構えただけでも僅かにバランスが狂う事に音羽は気付いていたが、敵の 包囲は容赦無く狭まってきていた。

「全機Gモードで高速離脱! 包囲網を突破する!」
「そんな事言っても!」
「! 上空に磁場異常! 転移反応です!」
「そんな!?」

 逃げる事もままならない状況に、更なる可憐の報告が絶望をもたらそうかとした時だった。

「来ます!」
「くっ…」

 音羽が狙いを上空に出現した転移ホールに向けようとした時だった。

「行きなさい、カルノバーン・ヴィス!」
「行って、デイアフェンド!」
「行け、ガルクアード!」

 ホールから飛び出した、紫、白、紅の三つのアンカーが、ソニックダイバーを包囲していた敵機をキャプチャーし、スイングして一箇所にまとめていく。

『ドラマチック・バースト!!』

 更にそこへ、レーザー、スプレッドボム、ゲインビー、機械の触手、ビームが炸裂し、敵をまとめて撃破する。

「あれは…!」
「どうやら、間に合ったみたいです」
「ごめん音羽ちゃん。ちょっと遅れちゃった!」

 転移ホールから、随伴艦を装備した三人のトリガーハートと、RVにまたがった五人の天使達が出現する。

「ううん、ちょうどだったよ!」
「状況は!?」
「こちらはもう残弾もナノスキンも限界よ! 後詰をお願い!」
「了解。さあて、久しぶりに派手にやるわよ!」
「援護しよう、マイスター」

 ソニックダイバーの撤退を援護しながら、トリガーハートとムルメルティアが敵機に狙いを定める。

「上は任せたわ!」
「下はお願い!」

 続けてきたポリリーナがジオールに叫びつつ、前回宮藤博士が制作した光の戦士用ホバーユニット、ライトニングユニットで下へと援護に向かっていった。



「いや〜〜来ないで〜〜気持ち悪い!」
「アイリス、下がれ!」
「何だ何だこいつら! さっきと全然違うぞ!」

 射出されたワイヤーをカンナ機が力任せに払い、アイリス機を援護する。

「まさか、狙いは光武?」
「にしても悪趣味デ〜ス」

 マリアが敵の狙いに気付き、織姫と共に銃弾とビームで弾幕を張って何とか敵の接近を阻止しようとする。

「市民の避難は!」
『戦闘区域からはほぼ脱出済みよ! でも大神君!』
「こちらは何とかします! くっ!」

 先程の無差別な動きと違い、確実に一機ずつ集団で狙ってくる敵に、帝国華撃団は徐々に劣勢になりつつあった。

「隊長、上からも反応!」
「まだ来るのか!?」

 レニの報告に思わず上を向いた大神機だったが、そこで上空から来るのがやけに小さい事に気付いた。

「人?」
「あれは…」

 さくらも気付いた所で、人影が何かを投じる。

「お待ちなさい!」

 凛とした声と共に、一輪のバラが路面へと突き刺さり、敵の動きが僅かに止まった。

「かよわき花に迫る悪の影………けれどこの私が散らせはしない! お嬢様仮面ポリリーナ! 愛と共にここに参上!!」

 名乗りと共に、ステッキを手にしたマスク姿の少女がライトニングユニットから地面へと降り立つ。
 見事な登場に、帝国華撃団は思わず動きが止まった。

「なんやアレ………」
「かっこいい!」
「マスター、増援が到着したようだ」
「増援?」

 口々に感想が漏れる中、プロキシマの言葉に大神は思わず疑問符が漏れる。

「バッキンビュー!」

 ポリリーナが宙を舞いながら手にしたステッキを投じ、旋回しながら飛来したステッキが陸戦型の脚部を根本から斬り飛ばす。

「エレガントソード!」

 動きが止まった隙を逃さず、上空から落下しながらエリカがエレガントソードの一閃で陸戦型を両断する。

「さあこの香坂 エリカとエリカ7がお相手差し上げますわ!」
『はい、エリカ様!』

 エリカを取り囲む様に次々とライトニングユニットから飛び降りたエリカ7が、一斉に敵に向って攻撃を開始する。

「そちらのリーダーは?」
「自分が、帝国華撃団司令の大神 一郎大尉だ」
「大神大尉、お互い詳しい説明は後にして、まずはこいつらの殲滅に協力するという事でいいかしら」
「了解した!」
「ボクも協力するぞ!」
「武装神姫? 新顔ね」
「詳しい事は後、だろう?」
「その通り、ね!」

 ポリリーナ、大神、プロキシマは、押し寄せる敵に向けて、得物を構えた。



「ソニックダイバーが帰還するぞ! 予備は用意できてるか!」
「何とか! ただ使い物になるかは…」
「あ、あれは!」

 無反動砲を担ぎながら怒鳴る大戸に僚平は言葉を濁すが、そこで嵐子がソニックダイバーを護衛する見覚えのある影に気付く。

「アールスティア、シュート!」
「MISSILEセット、発射!」

 滑走路にいた陸戦型に向って、ビームとミサイルの同時攻撃が炸裂、一撃で爆散させてソニックダイバーの着地点を確保する。

「遅れてゴメン!」
「皆さん無事ですか!?」
「亜乃亜だけでなく、エグゼリカまで?」
「なんでや?」
「後にしろ! 増援は多い方がいいだろ!」
「その通り、だな………」

 予想外の援軍もいる事に御子神姉妹は首を傾げるが、大戸に一括されて慌てて補給作業に入ろうとする。

「美緒さん!? 大丈夫ですか!?」
「何………ちょっと無茶をしただけだ」

 愛刀を手に、呼吸が荒い美緒の姿にエグゼリカが慌てる。

「また変わった増援です事………」

 美緒とほとんど二人で敵を迎撃し、こちらも更に呼吸が荒くなっているすみれが、そう言いながらも機体を何とか立て直す。

「今ここの座標をオペレッタに送信して、弾薬を転送してもらいます!」
「姉さん! ソニックダイバー隊の帰還を確認、再出撃まで防衛にあたります!」

 矢継ぎ早に動く二人に、美緒とすみれはなんとか一息つく。

「ふふ、少しなまったかな」
「お互い様ですわ。ですくわーくが続いてましたし」
「違いない。もうひと踏ん張りだ」

 呼吸を整え、美緒が敵襲に備えて再度刀を構え、すみれが機体の状態を確認する。

「これなら、焦ってアレを出す必要は無かったかしら?」
「アレ、とは?」
「霊子甲冑の初期試作機を、華撃団候補生の乙女組の数名に乗せて援護に向かわせましたの。そろそろそちらの隊に合流するはずなのですが………」
「どこもかしこも新人を投入か、末期総力戦のようだな」
「エグゼリカ君が来たって本当か!」

 そこへ、別室で状況整理にあたっていた宮藤博士が外へと飛び出してくる。

「宮藤博士、どうかしましたか?」
「至急空間状況のデータを送ってくれ! 空間変動数値が安定していないようだ! まだ何か来るぞ!」
「何ですって!?」
「今サーチします!」
「こっちも!」

 宮藤博士のとんでもない発言に、エグゼリカと亜乃亜が同時に双方のセンサーをフル稼働させる。

「! 大規模な空間湾曲と重力変動感知! 何か、しかも大質量が転移してきます!」
「こちらでも確認! これって、ボスクラス!?」

 二人が悲鳴じみた声を上げた時、上空に再度巨大な霧の竜巻が発生し、そこから何かがゆっくりと、その姿を現そうとしていた………





感想、その他あればお願いします。


NEXT
小説トップへ
INDEX


Copyright(c) 2004 all rights reserved.