第二次スーパーロボッコ大戦
EP48



異なる世界 某研究所

「だから、何遍も言ってる通り、ちっちゃいミリタリーロボがくれたんだって………」

 もう何度目かになるかも分からない言葉を、弾は室内に置かれたデスクに突っ伏して答える。
 学校帰りにいきなり誘拐がごとく連れ去られ、何らかの施設らしい所に連れてこられた彼は、スーツ姿や白衣の人物に代わる代わる同じ質問をされ、同じ返答をするしかなかった。

「ちょっといいかしら」
「何か気になる事でも?」

 そこで若い女性の声が響き、今まで尋問していた男と代わったらしい事に弾が顔を上げると、そこに切れ長の瞳を持つ巨乳の女性に気付いて跳ね起きる。

「ちょっと聞きたいんだけど」
「はい何でも!」
「こいつ………」

 いきなりの弾の態度変化に先程まで尋問していた男が呆れるが、その女性は何枚かの写真をデスクの上に置いた。

「これについて聞きたいんだけど」
「あ〜、だから何遍も言ってる通り…」
「その件じゃないわ」

 また同じ質問かと弾が呆れかけるが、女性はそれをとどめてその写真を指差す。

「これは貴方が受け取ったというデータをプリントアウトした物だけど、貴方は何も手を加えてないのね?」
「加えるも何も、隠してたの妹に勝手にばらまかれたって………」
「こちらでも加工の痕跡は発見出来なかったわ」

 女性の言葉に、弾は首を傾げる。

「あの………じゃあ何を聞きたいんで?」
「これの事よ」

 女性が指差した写真を改めて見た弾は、更に首を傾げる。

「箒がISでマグロ捌いてるように見えるけど…」
「それよ!」

 女性がその場に立ち上がり、弾は思わず仰天する。

「言い忘れたわね、私は篝火 ヒカルノ。ISソフトウェアの研究をしてるわ」
「はあ………」

 唐突な自己紹介に、弾は更に困惑の度を深めていく。

「貴方、ISで料理してるのを他に見た事ある?」
「いや、全く………つうか普通そんな事しないでしょ?」
「少し違うわ、しないんじゃない。出来ないのよ」
「出来ない?」
「マグロの解体なんて、パワーと精密さ、それに武装の微細な出力調整、それらの全てが必要になる。作業用ならともかく、この紅椿は出力だけをとっても現在最高レベルのISよ。それにこんな繊細なプロトコルを組み込んで実行させるなんて、私にも不可能よ」
「はあ………」

 熱弁を振るうヒカルノに、弾は改めて写真を手に空返事する。

「そして、それが出来そうな人物は世界にただ一人しかいない」
「一人………それって」
「他でもない、紅椿の製作者の篠ノ之 束よ。ここを見て」

 ヒカルノが弾の手にした写真の片隅、そこに僅かに写るウサミミのような物を指差す。

「これが、何か?」
「このカチューシャ、篠ノ之 束のお気に入りの物によく似てるわ。そしてこの紅椿のマグロ解体、考えられるのは」
「! 箒の姉ちゃんが一緒にいる!」
「そう」
「おい、それは…」

 二人の出した結論を、先程まで尋問していた男が慌てて遮ろうとするが、ヒカルノは片手でそれを制する。

「あの、ひょっとしてオレがここに連れてこられた理由って………」
「知ってるでしょ? 篠ノ之 束は今世界中の色んな組織が探してる。無論この国もね」
「とんだトバッチリ………だからそのミリタリーロボ探せって…」
「あの〜」

 そこで、誰かが声をかけてくるのに皆が気づき、狭い室内を見回す。

「こちらです、こちら」
「誰だ!?」
「ちょっ…」

 尋問していた男は思わず懐から拳銃を取り出し、それを見た弾は狼狽する。

「それはしまってください。私に敵意は有りません」
「じゃあ姿を見せてくれる?」
「貴方の足元です」

 ヒカルノは声の主を探すが、その言葉に全員が一斉にそこへと視線を集中させ、そこにいた者に仰天する。

「これは………」
「な、何だ!?」
「こいつだ! データ渡してきたちっちゃいミリタリーロボ!」

 いつからいたのか、ヒカルノの足元にいる全身に武装を身につけた少女型ロボットに誰もが絶句する。

「最初に謝っておきます。私が渡したデータで、貴方に迷惑をかけました」

 デスクによじ登ってきた少女型ロボットは弾へと向かってその小さい頭を下げる。

「いや、あんたの所為っつうか、蘭の所為だけど………」
「まさか、人工人格搭載型!? このサイズで!?」

 ヒカルノはエンジニアとして、今自分達の目の前にいる小さなロボットが、どれだけ高度な物か気付く。

「改めまして自己紹介を。私はFAF所属フレームアームズ・ガール、三二式一型 轟雷と言います。ある任務でこの世界を監視していました」
「この、世界?」
「状況に変化が生じましたので、情報の一部公開許可が出ましたので、お詫びも兼ねて参上しました」

 そう言う轟雷に、誰もがどう反応すれば分からなかった………



AD1929 オペレーション・ラプンツェル発動中


「如月ちゃん、無事だったんだ!」

 予想外の再開に喜ぶ吹雪だったが、かけられた言葉に如月は少し顔を曇らせる。

「無事、とは少し違うかな………」
「え?」

 間近まで来た如月の右の瞳が、小さな機械音と共にピント調節される。

「その目………機械?」
「目、だけじゃないんだ………」

 吹雪の驚きに、如月は言葉を濁した。


「あれは………」

 コンゴウは艦上で未確認の存在の出現と同時に施したターゲット判定を、艦娘達が相手を敵視していない事からとりあえず解除する。

「艦娘、だがこれは………」

 コンゴウは演算力を出現した存在、如月に向けて解析を開始、その結果にかすかに眉が跳ね上がった。


「え? え? どういう事?」
「えっと、あのね…」
『そいつ、お前達とはかなり違うな』
「ミストコンゴウ、ワッツ?」

 困惑する吹雪達だったが、そこでいきなりコンゴウが通信で割り込んでくる。

『その如月と言ったか。元は艦娘だったのだろうが、今は少し違う。体の32%が機械化している』
「32%!?」
「如月ちゃん本当!?」
「うん………」

 コンゴウからの報告に驚く吹雪達に、如月は頷く。

「一体どうして…」
「詳しい事は後にして。まだ戦闘中よ」

 困惑する吹雪に、加賀が矢を番えながら話を中断させる。

「…でも如月ちゃんは如月ちゃんだからね! 早く終わらせて戻らないと! 睦月ちゃんにも教えてあげないと!」
「吹雪ちゃん………うん!」

 いささかショックを受けた吹雪だったが、半ば無理やり思考を切り替え、如月も頷くと揃って砲塔を上空にいるネウロイへと向けた。


「小型ネウロイ、掃討率72%、今75%に上昇デス!」
「空母型ネウロイからの増援無し、ほぼ出し尽くした物と思われます!」
「やれやれ、やっとか………」
「けどまだ母艦が残ってるわ」

 エイハブのブリッジで現状報告を聞いていたサニーサイドがボヤきかけた所で、ラチェトが釘を刺す。

「手が必要なら、ウィッチの子達をエイハブの護衛から外してもいいかな?」
「けどまた相手が何を残しているか…」

 一気に戦況を打開すべく、護衛戦力の投入をサニーサイドが考えた所で、ある通信が入ってくる。

「本部から?」
「写してくれ」

 プラムが後付の重力通信のスイッチを入れると、画面に小柄で白衣のメガネ姿の少女が現れる。

『どうも、ウィッチエンジニアのウルスラ・ハルトマン中尉です。皆さんに警告を』
「警告?」
『まだ不確実な情報なのですが、空母型ネウロイは内部に小型ネウロイの製造工場のような物があるとの話が有ります。現状で小型の発進が無くても、長引けば再度の発進が有りえます。留意してください』
「何だって!?」

 とんでもない情報を言うだけ言って、ウルスラの通信は切れる。

「製造工場!? 一体ネウロイとは一体………」
「加東少佐に連絡、エイハブはこれから戦場から退避するから、護衛戦力を全て空母型に投入するように。大河君にも先程の情報を送ってくれ。前回同様、ダイアナならコアの位置を探れるかもしれない」
「イエス、サー!」
「海上および海中戦力は一掃した模様! 現在艦娘の方達も上空援護に入ってます!」
「帝国華撃団と巴里華撃団にも連絡、空母型ネウロイ破壊の後に、上陸を開始されたしとね」

 作戦が次の段階に移りつつあるのを、サニーサイドは実感しつつつもそれが困難な事も感じていた。
 今まさに、空母型ネウロイから放たれる無数のビームの閃光によって。


「まただ!」
「うわわわ!」
「下がって!」

 再度放たれたビームの弾幕に、紐育華撃団は慌ててウィッチの背後に隠れる。

「まるでハリネズミだよ! これじゃあ近寄れない!」
「威力も低くない。スターの装甲も連続で食らったら持たないと思う」

 悪態をつくサジータに昴は冷静に状況を解析していた。

「コアの位置が分かれば、そこに集中攻撃できるんだけど………」
「何かおかしいぞ、ケイ」

 先程からコアの位置を探るべく攻撃と観察を繰り返していた圭子とマルセイユは、何か違和感を感じ始めていた。

「サイフォス、貴方で探れない?」
「それが陛下、対象が大きすぎるのか、はっきりと位置が把握できない」
「エイハブが後方に下がったら、ライーサとマミもこちらに来る」
『こちら501! 小型ネウロイはほぼ掃討完了! そちらに向かうわ!』
『こちら502、やはりそのデカブツが邪魔だな。下から援護でももらうか?』

 他のウィッチ達も周辺の掃討を終えて空母型へと攻撃を開始するが、その巨体と弾幕の前に攻めあぐねていた。

「ダイアナさん!」
「そ、それがこちらでもコアの位置がはっきりしません!」
「どういう事だろう………」

 新次郎もダイアナですらコアを見つけられない状況に違和感を感じ始めていた。

「ケイ! こいつ何か変だ!」
「何かって何!」
「分からない! だが、撃っても手応えが軽い!」

 マルセイユの指摘に、圭子は今まで見聞した情報を脳内で思い出す。

「ミーナ中佐! そちらにナイトウィッチが二人もいたわね! コア分離型の可能性は!」
『サーニャさんもハイデマリーさんも他に反応は無いって言ってるわ! コアは確実に内部にあるはず!』
『待てミーナ、ナイトウィッチ二人だと? どちらか片方こちらに回すつもりはないか?』
「そういうのは後にして!」

 ラルがいらんツッコミをしてくるのに圭子は怒鳴りながらも考える。

「千早艦長にそちらのコンゴウからの援護要請を! あの大火力ならうまく行けば!」
「全機散開! 巻き込まれる!」

 圭子の判断に新次郎が即座に巻き添えを懸念して退避を指示、ウィッチ達も慌てて離れる。


「無駄にデカイが、それほどの驚異でもない」

 援護要請に従い、コンゴウは自艦のビーム砲を照準、空母型ネウロイに向けて発射。
 応戦するように空母型ネウロイからも複数のビームが降り注ぐが、半数は出力の違うコンゴウのビームに飲み込まれ、残る半数はクラインフィールドに阻まれる。
 狙い違わず、コンゴウのビーム砲撃は空母型ネウロイの中央部分を貫き、その巨体の半数を吹き飛ばす。

「この威力なら!」
「いや、外した!」

 圭子は間近で見る霧のすさまじい攻撃力に圭子は喝采を上げそうになるが、マルセイユは即座に空母型ネウロイの再生が始まった事に気付いていた。

「もう一度支援要請を…」

 再度の支援要請を出そうとする圭子だったが、そこで通信機からノイズしか聞こえない事に気付く。

「陛下、周囲を見ろ!」
「何だこれは!?」

 サイフォスとマルセイユの声に圭子が周囲を見回しそこでコンゴウの砲撃で吹き飛んだネウロイの断面や破片から無数の銀色の紙吹雪のような物が舞っている事に気付いた。

「これは…」



「各種レーダー及びセンサーに異常発生! 空母型ネウロイからチャフのような物が拡散された模様!」
「通常通信帯、全域使用不可! ただのチャフでは有りません! 高度なECM機能がある模様!」

 攻龍のブリッジ内で、七恵とタクミが相次いで報告する。

「まさかこのような物まで用意しているとは………」
「ネウロイの新武装か、JAMが与えた物か………他の艦との通信確保を優先だ」
「了解です!」

 門脇と嶋も険しい顔をし、戦場から少し離れているにも関わらず、ここからでも見える輝く無数のチャフを見つめていた。

「ソニックダイバー隊の再出撃用意は?」
「機体の点検及び補給は終わっています。いつでも再出撃可能です」
「IS隊の方は?」
「損傷が軽微なのでこちらも再出撃可能だが、一部使用不能な装備が出ている。甲龍は内部に溶解液が入り込んでいる可能性が有るので、出撃は不許可にした」
「だが、この状況でそちらも出撃は可能か?」

 嶋の問に千冬は応えつつも、すこし考える。

「ISのハイパーセンサーならある程度はこの状況下でも運用は可能かもしれないが、想定した訓練は積ませていない。もしこれ以上向こうが何かを隠しているのなら、出撃は許可出来ないな………」
「それには同意する。電子機器を積んでいればいるほど、この状況は危険だ」

 門脇もチャフの影響下での運用を危険と判断し、出撃許可は出さないでいた。

「他の部隊の状況は確認出来るか?」
「ウィッチ及び紐育華撃団は未だ戦闘中の模様です」

 どこかから軍用双眼鏡を取り出して観察してた緋月が門脇の問に応えるが、倍率を上げた所で僅かに眉が上がる。

「空母型ネウロイはどうやら七割方再生した模様です」
「そんなにか!」
「動きから見て、未だコアを見つけられない模様。このチャフで他の部隊との通信も途絶してますからね」

 冬后が驚く中、緋月は見たままの事を淡々と告げてくる。

「通信が途絶してるとなると、再度の支援砲撃も難しいか………」
「蒼き鋼の動きも止まっています。どうやらメンタルモデルにまで影響が出ているのかもしれませんね」
「あの火力だ、連携も取れなければ巻き込まれるのは必至だからな」

 千冬も現状で最大火力を誇る蒼き鋼の艦隊援護が難しい状況に険しい顔をしていた。

「電子機器以外で、ネウロイのコアを探す方法は?」
「前に聞いた話だと、再生速度の違いからコアの場所を推測するそうですが、どうやらそれもうまく行ってないみたいですね………」

 千冬に七恵が応えるが、ベテランやエースウィッチが複数がかりでも攻めあぐねてる状況に顔が曇る。

「だとしたら、アレしかないか?」
「だが彼女は…」
「他に有りませんよ」
「何の話だ?」

 ブリッジ内で議論される何かに、千冬が首を傾げる。

「有るんですよ、ネウロイのコアを簡単に見つける方法が一つだけ」
「それは?」
「それは…」



「無茶です教官!」

 翔鯨丸の防衛にあたっていた静夏が、思わず声を荒げる。

「そんな事は百も承知だ。だがこれ以上あのネウロイに手間を取られるわけには行かない」

 翔鯨丸の甲板上で、愛刀を手に美緒は譲らない。

「マスターの魔法力はもうほとんど残ってないと聞いてます。それなのに出撃するのは無謀です!」

 アーンヴァルもこの状況で出撃しようとする美緒を必死に止めていた。

「だが、このチャフと言ったか? これのせいでレーダー機器どころか通信すら使えん。今の状況でコアの位置を探れるとしたら、私の魔眼しかない。もっともどれくらい使えるかは私自身分からないがな」
「ですが!」
「だから服部に同伴を頼んでいるのだ。確実にコアの位置が分かる距離まで近づかなくてはならんからな」
「しかし!」

 初めて美緒に反論する静夏だったが、そこへ芳佳が接近してくる。

「坂本さん!」
「宮藤、お前にも頼む。私があいつのコアを見つけるまでの間、護衛を頼みたい」
「………分かりました」
「宮藤少尉まで!」
「坂本さんは軽はずみな事は言わないよ。それしかないって分かってるから、言ってるんだ」
「けれど…」
「時間が無い。各組織の連携も万全とは言えない状況では、戦闘が長引けば長引くほど問題が生じてくる。今しかないんだ」
「! 了解です。服部 静夏、これより坂本教官搬送及び護衛任務に付きます!」

 美緒の覚悟を悟った静夏は、敬礼すると美緒の体を抱えて飛び立ち、その両隣にアーンヴァルと芳佳も並ぶ。

「周辺と連絡が出来ない以上、衝突の危険性も有る。十二分に注意しろ」
「はい!」
「私のセンサーも光学以外使用不能です」
「目だけじゃなく耳も使って、接近してくる音に気をつけて…」
「美緒! 何をしてるの!」

 諸注意を受ける静夏のそばに、こちらを見つけたミーナが近寄ってくる。

「ミーナか、ちょうどいい。あいつのコアの場所を見つけるまで手伝ってくれ!」
「貴女もうシールドすら張れないのよ! 魔眼だってどれくらい使えるか………」
「だが必要だ。電子機器が使えない現状では、私の魔眼しかない」
「マスター、残念だけどその通りだ」
「………分かったわ」
「あ、坂本少佐だ!」
「本当か!?」

 ミーナの傍らで、ストラーフが美緒の言葉に同意し、更に遠目からこちらを発見した501のウィッチ達が状況を理解して美緒の周囲を固めていく。
 それに気付いたのか、空母型ネウロイの攻撃がそちらへと放たれるが、とっさに芳佳を中心に防御に優れたウィッチ達がその攻撃をシールドで受け止める。

「坂本教官!」
「まだだ! 正確な位置を知るにはもっと近寄れ!」
「どうにか他の隊に連絡を!」
「チャフのせいで通信も発光信号も使えないよ!」
「じゃあこうすればいい!」

 矢継ぎ早に来るネウロイのビーム攻撃に焦る静夏に美緒は動じず、ミーナとストラーフがなんとか他の隊と連携を取ろうとするのを聞いたバルクホルンが、手にしたMG42重機関銃二丁をぶつけ始める。

「ちょっとトゥルーデ!」
「これしかない!」

 明らかに銃を損傷するレベルでぶつけるバルクホルンにハルトマンが口をはさむが、彼女は手を止めようとしない。


「何やってんだろアレ………」
「いえ姫、これは…」

 ロデオスターのコクピットで、外部集音器から聞こえる銃をぶつける金属音にジェミニが首を傾げるが、チャフを避けて内部に入ってきたフブキがその金属音の意味に気付く。

「モールスです、ソウイン、サカモトショウサヲエンゴセヨ」
「援護? 分かった!」

 ジェミニに先んじて、モールスに気付いた新次郎と昴も空母型ネウロイの注意を反らせるべく、攻撃を集中させる。

「ボク達も行くよ!」
「はい!」

 ジェミニもそれに参加すべく、ロデオスターの出力を上げて突撃していった。


「坂本少佐を援護か、確かに魔眼持ちは今この戦場では彼女しかいないしな」
「孝美かひかりがいりゃ良かったんだが………」
「孝美さんならともかく、ひかりは危ないよ」

 モールスを聞いたラルが攻撃しながら唸るが、隣でそれを聞いていた直江とニパが顔をしかめる。

「しかし明らかにあのネウロイ妙です! 攻撃箇所はほぼ全体に及んでいるのに、未だコアが発見出来ないのは幾らなんでもおかしい!」

 ポクルイーシキンが、固有魔法の映像記憶で空母型ネウロイのダメージ確認をするが、コアの該当箇所の見当がつかなかった。

「当初、こちらのセンサーでコアが確認出来なかったのはこのチャフを内包していたためだと推測出来ますけど、ウィッチの方々が見つけられない理由がどこかにあるはずです」

 ラルの肩にしがみついてセンサーをフル稼働を試みていたブライトフェザーも同様の疑問を感じていた。

「攻撃を続行、謎解きはあちらに任せよう」
『了解!』

 ラルは己達に今出来る事に集中し、銃口を空母型ネウロイへと向けた。


「坂本少佐………ああ、あの魔眼使いか」
「501の副隊長だった方ですよね? 引退したと聞いた気が………」

 攻撃を続けていたマルセイユとライーサが、ヒット&アウェイしつつも首を傾げる。

「それすら引き出す相手という事だ。このネウロイ、確かに何かおかしい。この私でもコアの位置が見当がつかない」
「幾ら大型とはいえ、これだけのウィッチがいてそれは確かにおかしいですね………」

 攻撃を繰り返してコアの位置を探り、発見次第集中攻撃というネウロイ戦の鉄則が何故か通じない事に、マルセイユも疑問を感じざるをえなかった。

「悔しいが、ここは魔眼使いに頼るとしよう。援護するぞライーサ!」
「了解!」

 この場でもトップクラスウィッチとその両機が、空母型ネウロイへと突撃していった。


「美緒、他の部隊が攻撃している間に!」
「分かった! さて、見つけるまでは持ってくれよ……」

 ミーナに促され、美緒は残った魔法力を振り絞って魔眼を発動させる。
 かろうじて発動した魔眼は、空母型ネウロイの中のコアをぼんやりと美緒の視界に映し出すが、直後に信じられない物が飛び込んでくる。

「な、これは!」
「どうかしましたか教官!」
「ネウロイの内部でコアが移動している!」
『ええ!?』

 美緒の魔眼が導き出した答えに、501のウィッチ全員が思わず声を上げる。

「間違いない、攻撃が当たった瞬間にコアが移動している! 見つけられなかった原因はこれだ!」
「そ、その場合どう対処すれば!?」
「変わらない、コアを破壊するだけだ」

 困惑した静夏の声が思わず上ずる中、美緒は冷静なままだった。

「私が行ければ、なんとか出来るのだが………」
「飛ぶ事すら出来ないのに、出来るわけ無いでしょう!」
「ああ、その通りだ」

 ぽつりと呟いた美緒にミーナが思わず怒鳴るが、美緒は頷きながら魔眼を解除、ついでに用意しておいた回復ドリンクを取り出して嚥下する。

「魔眼もどれほど使えるか分からん。そしてこの通信断絶状況、せめて艦船からの砲撃が出来ればいいのだが………」
「だったら私が直接伝えに行きます!」
「ボクも!」
「あたしも!」

 通信が使えない中、アーンヴァルとストラーフ、そしてペリーヌについていたヴェルヴェイエッタが伝令に名乗り出る。
 だがそれを聞いたペリーヌが思わず反論した。

「お待ちなさい! 通信もレーダーも使えない中、機械である貴方達もマトモに動けますの!?」
「有事の際の光学観測機動はインプットされてます!」
「プロフェッサーはちゃんとこういう事態も想定してるよ」
「こちらもです」
「だが………」
「トゥルーデ、さっきのはもう出来ないし」

 武装神姫達がやる気なのをウィッチ達は思案するが、ハルトマンは先程モールスに使ったバルクホルンのMG42がかなり破損しているのを指摘する。

「他に手は無いわ。アーンヴァルは翔鯨丸とエイハブに、ストラーフは各ウィッチ隊、そちらの…」
「ヴェルヴィエッタ、貴女は下の攻龍とコンゴウに!」
『了解!』

 三体の武装神姫が一斉に伝令に走る中、ミーナは空母型ネウロイへと向き直る。

「伝令から態勢が整うまでの間、攻撃を続行! 散開しつつ、全方向から飽和攻撃でコアを狙います!」
「宮藤、服部はこのまま私の護衛を! ペリーヌ、リーネは一緒に来い! 機会があればコアを指摘する!」
『了解!』

 即座にフォーメーションを変え、501のウィッチ達は空母型ネウロイへと向かっていった。



「コア移動型?」
「はい、そのためにコアの場所が特定出来ないそうです」

 攻龍のブリッジ内で、ヴェルヴィエッタからの報告に皆が顔を見合わせる。

「通信、レーダー、双方をチャフで撹乱する上に、弱点であるコアを内部移動させるとは………」
「厄介だな、この状況では高火力を持つ機体、艦船共に支援も難しい。光学照準だけで教え子達を出動させるわけにもいかんな………」

 嶋の険しい顔に、千冬も表情を曇らせる。

「マスターを含め、ウィッチにも高火力を持っている人はいるわ。それでどうにかできれば…」
「それは連携が取れればの話だ。通信すら使えないのにどうやって…」
「なんとかしているようですね」

 ヴェルヴィエッタの進言に嶋は険しい顔のままだったが、双眼鏡で上空の戦闘の様子を見ていた緋月が口を挟む。

「なるほど、そういや昔のパイロットはそうしてたんだな」

 同じように上空を観察した冬后が、ウィッチ達がハンドサインや銃声などで互いに連携を取りつつ、空母型ネウロイへの攻撃を続行しているのに気付く。

「戦歴の違いはこういう対処能力にも出てくる訳か………今後の課題が更に増えたな」
「十代前半から戦場にいる者達だ。こういう事態も想定しているのだろう」

 千冬も感心する中、門脇は淡々とウィッチを評価していた。

「こちらも援護の準備、光学照準で大型ネウロイを常時照準」
「了解」
「チャフの効果も永続ではないはずだ、通信の復旧に備えて常時発信を!」
「了解です!」

 いつでも援護出来るように、ブリッジ内で各員が機敏に動く。

(やはり戦争経験の有無は大きいか………)

 対応の速さに千冬は改めて経験値の差を感じながらも、上空の戦いを観察していた。

「電子機器が使えないこの状況、果たしてどう戦う?」

 IS教官として、そして個人的な興味から、千冬は視線を鋭く上空に向けていた。



「コア移動型!? こっちじゃ初めてよ!」
「あ、確かシャーリーさんが501で一度相手した事あると言ってました」

 ストラーフからの報告に圭子は驚き、真美が前に聞いた話を思い出す。

「マルセイユが攻めあぐねてる理由はそれね。普段ならとっくの昔にコア見つけてるはずだから」
「それにあのネウロイ、大きいだけでなくかなり硬いです。それにこの…」

 真美が宙を舞う銀色の欠片を手に取るが、それは非常にもろく、更に細かい破片へと砕け散る。

「チャフか、しかもかなり高度だ」
「電波妨害だけでなく、各種レーダーやセンサーにも影響が出てるよ。詳細は分析してみないと………」
「こちらのセンサーもほとんど約に立たない」

 それを見たサイフォスとストラーフも困惑の表情を浮かべ、圭子は少し考え込む。

「それにウィッチの魔導針にも影響が出てるみたいね。こっちの設備ならともかく、下の未来の艦船にまで影響が出るなんて………」
「そうなんですか?」
「ネウロイがこちらに合わせて色々進化するのはこの目で見てきたわ。けど、明らかに技術レベルが違う相手にまで対処出来るは思えない」
「そう言えば、通信が途切れる前に上がっていた情報なんだけど、先程のワームの行動も、何かおかしいって報告が」
「JAMって連中は、こちらの予想以上の技術を持ってるようね………」
「それって………」
「改造されている可能性、という事ですね」

 圭子が言わんとする事を、ストラーフが代弁する。

「多分、他にも気づき始めてる人はいると思うわ。その件は後回し、現状の打開をしないと」
「はい!」

 真美は元気に返事しながら、対大型用に用意していた88mm砲を構える。

「私の指示が出るまで、撃っちゃダメよ」
「はい!」
「サイフォス、照準補正出来る?」
「光学だけですが、なんとか可能です陛下」
「あとはタイミングだけ。他の部隊にも伝えておいて」
「はい、加東隊長」

 必殺の一撃を叩き込むべく、二人のウィッチと一体の武装神姫はその機会を狙っていた。



「出力最大で射出距離を算出してくれ! 速度と到達時間もだ!」
「本気でっか大神はん!?」

 翔鯨丸の格納庫で、いつでも出れるように出撃準備をしていた帝国華撃団の動きが俄に騒がしくなる。
 大神機に搭乗者である大神自身の指示でブースターユニット・疾風が装着されたのみならず、試験用に持ち込まれていた増設ブースターまでもが取り付けられていた。

「大神さん、幾ら何でも無茶です!」
「ですが、効果的ではアリマ〜ス」
「あそこまでだと、アイリスもテレポート出来ないな〜」

 隊員達も大神の考えた策に賛否両論述べるのを、アーンヴァルは準備が進んでいく大神機を見ていた。

「マスター並に無理しようとする人が他にもいるんですね………」
「こちらのマスターは冷静な熱血漢だからね。けど、相手の隙は突ける」

 プロキシマも独自に軌道計算を行いつつ、大神機の出撃準備を手伝っていた。

「この手は一度しか使えない。もしそちらでコアの破壊に失敗した時の予備策と伝えておいてほしい」
「分かりました、伝えておきます」
「撃ち落とされないといいんだけどね………」

 アーンヴァルが頷き、プロキシマは大神のやろうとしてる事に不安を覚えるが、準備は着々と進められていく。

「問題は通信が使えん今、どうやってコアの位置を特定するちゅう事か………」
「それならもう考えている」
「へ?」

 紅蘭の疑問に、大神は笑みを浮かべながら自機へと乗り込む。

「蒸気カタパルトの出力最大はどの時間維持出来るか!?」
「長時間は無理や! けど…」
「向こうもそう長くはかからないでしょう」

 双眼鏡で空母型ネウロイとの戦いを観察していたマリアが、激しい空中戦の様から決着までそうかからないであろう事を予感していた………



「501統合戦闘航空団、敵空母型ネウロイの右翼に展開!」
「502、左翼から回り込むぞ!」
「じゃあこちらは上から行くぞライーサ!」
「紐育華撃団、後方に!」

 各部隊がハンドサインや拡声器、武装神姫による直接伝聞でかろうじて相互伝達を行いながら、空母型ネウロイに総攻撃をしかける。

「坂本教官! コアは!?」
「後ろにあったのが中央部、最奥に引っ込んだ!」

 美緒をぶら下げた状態の静夏に、回復ドリンクを飲みながら魔眼を発動させ続ける美緒が叫ぶ。

「中央、奥!」
「なら、打ち破ります! トネール!」

 ミーナが501全員に場所を教えた所で、ペリーヌが固有魔法の雷撃を叩き込む。
 直撃を食らった空母型ネウロイの外装が少し剥がれ、そこに銃撃が集中する。

「私が行くよ! シュツルム!」
「援護する!」

 そこにハルトマンが固有魔法の疾風をまとって突撃し、バルクホルンが破損している銃を棍棒のように構える。


「派手にやってるね〜」
「こっちも行くぞ! 援護しろ!」

 反対側で派手に攻撃している501を見たクルピンスキーがおどける中、直江が構えていた銃を下ろすと、固有魔法の圧縮シールドを拳に展開させる。

「サポートするよ!」
「任せた! 剣一閃!!」

 シールドを圧縮させた事で防御できなくなった直江のサポートにニパが付き、二人で空母型ネウロイへと突撃、強力な一撃が相手の装甲を砕いていく。

「クソ、デカイ上に硬え! もう一発だ!」
「ちょっと待ってぇ〜!」

 一度離れた直江が再度拳を構えるが、そこに空母型ネウロイのビームが集中し、ニパが慌ててシールドでそれを防ぐ。

「502総員、菅野の破壊痕を狙え!」
「火力が足りない! 魔法力を集中!」

 ラルとポクルイーシキンの指示が飛ぶ中、ありったけの銃火が集中する。

「あまりこういうのには頼りたくないんですけど!」

 ロスマンが戦闘前から渡されていた回復ドリンクを開封して一気に飲むと、ありったけの魔法力を込めてフリーガーハマーを発射、放たれたロケット弾が破壊痕を更に大きくする。

「どけ! もう一発叩き込む!」
「どいてどいて!」

 そこへ反転して加速した直江が拳を構え、ニパがサポートしながらも再度突撃、同じ場所に攻撃が叩き込まれ、破壊痕が更に拡大する。


「こっちも行くぞルッキーニ!」
「うじゅ!」

 それを見たシャーリーがルッキーニの手を掴むと、固有魔法の超加速を発動、高速状態で射出されたルッキーニが固有魔法の多重シールドを発生させ、空母型ネウロイへと体当たりして大きく破壊させる。

「美緒!」
「まだだ! まだコアまで届かない!」

 これだけの攻撃を加えてもまだコアに届かない事に、ミーナは僅かな焦りを覚え始めていた。


「ウィッチの人達って体当たりするんだ」
「…姫、アレはそういう固有魔法です。全てのウィッチがするわけではないと」

 ウィッチ達の派手な肉弾攻撃に、ジェミニは妙な感心をしていたがコクピット内でフブキが若干訂正する。

「しかしあれでコアが露出しないとなると、前回の駆逐艦並かそれ以上の装甲だと推測できます」
「動き遅いのはそのためか〜。じゃあボクも一気に…」
『待てジェミニ!』

 霊力を上昇させて突撃しようとするジェミニの様子を察したのか、新次郎が外部スピーカーを最大にして止める。

『ウィッチの攻撃箇所の再生が始まっている! コアを狙わなければ、どれだけ攻撃しても無駄になる!』
「じゃあどうすれば!」
『ダイアナさん!』
『先程から探ってみてますが、はっきりとは……中央になんとなくらしい反応らしき物が』

 近距離でも通信が使えないため、スター同士でスピーカー最大音声でようやく会話する中、紐育華撃団でもっとも感知能力に優れているダイアナですら、コアの場所は特定出来てなかった。

『簡単だ。攻撃の度に移動するなら、今攻撃している場所には無い』
『じゃあ攻撃していない箇所を作れば!』
『逆だよ。多方面から攻撃して、コアを中央から動かさないようにしてる、違うかい?』
『その通りです!』

 昴、リカ、サジータが状況を理解する中、新次郎は空母型ネウロイの上空にマルセイユが陣取るのを見る。

『紐育華撃団、空母型ネウロイに集中攻撃! 上空からはマルセイユ大尉が、下からはボクが行きます!』
『イエス・サー!』

 新次郎が指示を出し、皆が返答するのを聞きながら外部ライトで発光信号をマルセイユへと送る。
 発光信号に気付いたマルセイユが手を降って合図するのを見た新次郎は、一息吸うと号令を出した。

『紐育華撃団、レディ・ゴー!』

 号令と同時にフジヤマスターが加速、霊力を最大にして燐光を帯びる。
 同時に上空からマルセイユが急降下、全魔法力を銃へと込める。

『狼虎滅却・雲雷疾飛!』

 霊力の刃を展開しつつ、フジヤマスターが機体を90度捻り、真横になった状態から空母型ネウロイを後方から一気に斬り裂いていく。

「こちらも行かせてもらうぞ!」

 更にマルセイユが急降下しながら、マガジン内の全弾を空母型ネウロイの中央に叩き込む。
 各所から叩き込まれる集中攻撃にとうとう限界に達したのか、フジヤマスターとマルセイユの攻撃がちょうど交差する中央部の装甲が砕け散り、コアが露出する。

「真美!」
「はい!」

 千載一遇のチャンスに、発射態勢のまま待ち構えていた真美が、圭子の号令と共に88mm砲をコアに向けて発射する。
 ありったけの魔法力と物理的にも破壊力十分な88mm砲弾がコアに直撃する瞬間、予想外の事が起きた。
 突如として、空母型ネウロイの巨体が砕け散る。

「やったか!?」
「直撃したよね?」
「まだだ! コアがまだ見える!」

 バルクホルンとハルトマンが勝利を確信しかけた時、美緒が叫ぶ。

「気をつけロ! 何か来ル!」

 探査が効かない中、魔眼以外この状況下で使える探知能力を有するエイラの未来視が、破片の中から何かが飛び出すのを察知し、思わず叫ぶ。
 幾つものパーツに分かれて砕け散る空母型ネウロイの中から、背部にベレー帽を思わせるユニット部を背負った早期警戒機のような姿のネウロイが、先程の鈍重さとは比べ物にならない高速で破片の中から飛び出す。

「あれがコアだ!」
「追って…」
「ダメだ、破片が邪魔だよ!」

 美緒が飛び出した早期警戒機型ネウロイの中にコアが有るのを見抜くが、ミーナが追尾を指示しようとするが、周辺は砕け散った空母型ネウロイの破片が漂い、追尾は困難だった。

「ルッキーニ、追うぞ!」
「分かったシャーリー!」

 即座にシャーリーがルッキーニを抱え、双方の固有魔法を発動。
 破片を多重シールドで防ぎながら超加速で追おうとするが、早期警戒機型ネウロイは破片を抜け出すと急加速する。

「は、速い!」
「あの方向、狙いは翔鯨丸か!」
「なんとか警告を…」

 静夏と美緒、芳佳も慌てる中、美緒の魔眼が翔鯨丸の方に向けられる。

「いや、問題ないようだ」
「え?」


『あれが、コアだ』
『あの方向、狙いは翔鯨丸か』

 翔鯨丸の艦内有線放送で、ブリッジで美緒の口のみを双眼鏡で見ていたレニが読唇術でその内容を逐一格納庫の大神へと伝える。

「好都合だ! 紅蘭!」
「カパタルトもブースターも出力最大! 行けるで!」

 用心の一手として用意していた大神機が、こちらへと向かってくる早期警戒機型ネウロイへと向けて、最大出力で射出される。
 陸戦機とは思えない高速で、突っ込んでくる大神機に早期警戒機型ネウロイは軌道を変えようとするが、大神機はブースターを操作してその先を取る。

「狼虎滅却・天地神明!!」

 両手に握りしめられていた双刀に霊力が籠もり、渾身の必殺技がすれ違いざまに早期警戒機型ネウロイへと炸裂。
 内部にあったコア諸共、早期警戒機型ネウロイは4つに斬り裂かれ、次の瞬間には粉々に砕け散る。
 それに続くように周辺に落下途中だった空母型ネウロイの破片、更にはまだ空中に漂っていたチャフも次々と砕け散っていく。

「やった!」
「さすが………」
『まだだ! これから目的地に上陸を開始する!』

 ウィッチや紐育華撃団が喝采を上げるが、チャフの消失と同時に復活した通信で大神が全員に告げる。
 使い終わったブースターをパージしながら、大神機が目的の島へと着地、自らが先陣を切ると、それに続けと翔鯨丸から次々と光武二式が射出、降下していく。

「大神司令、頼りになるとは聞いていたが、コレほどとはね………」
「あら、新次郎さんももうちょっと頑張ればなんとか」
「道は遠そうだな」

 決める所できっちり決めた大神に、紐育華撃団は賛辞しつつも、こちらも降下態勢へと入る。

「リボルバーカノン発射確認、着陸地点を確保しろ!」
「今エイハブがこちらに向かってくるわ! 予定地点と同時に陸戦ウィッチも降下!」

 ラルと圭子が指示を出す中、次々と目標の島へと陸戦部隊が降下していく。

「やっと次の段階か」
「じゃあ坂本教官は戻りましょう!」
「もう少し私の力が」
『ダメです!』

 一段落ついた事に美緒が胸をなでおろすが、翔鯨丸に引き返そうとする静夏に続けて、ミーナと芳佳からもダメ押しをもらう。

「さて、あとどれくらいの戦力を隠している事やら」

 大人しく戻る事に同意した美緒だったが、そこで陸戦部隊の到着を待ち構えていたように、島の各所が盛り上がり、そこから何かが出てくる。

「やはり、そうなるか」

 激戦の舞台は、地上へと移り変わっていった………







感想、その他あればお願いします。


NEXT
小説トップへ
INDEX


Copyright(c) 2004 all rights reserved.