第二次スーパーロボッコ大戦
EP52



「これは!」
「そんな………」

 臨時前線基地に設置された、臨時指揮所の大型ディスプレイで武装神姫やメンタルモデルから送られてくる映像を見ていた者達は、突如として現れた怪物に絶句していた。
 特にそれを知る帝国華撃団の隊員達が。

「間違いない、降魔だ!」
「ど、どしてここにおるん!?」
「どこかから拾ってきたんだろう」
「落ちてる物なのか!?」

 それがかつて帝都を恐怖に陥れた魔物、降魔である事を知っている花組隊員達が慌てる中、大神は鋭い目で送られてくる画像を見ていた。

「ただの降魔じゃない。改造されている」
「え? そう言えば………」
「あちこちに機械ついてマ〜ス」
「降魔兵器なんか…」

 よくよく見れば、降魔の各所に改造の痕跡らしき機械部分がある事に、軍の一部が降魔の兵器転用を目指して作り出した物を思い出す花組隊員達だったが、機械部分からレーザーが発射された事にその見解は吹っ飛んだ。

「これは、降魔兵器やけど降魔兵器やないで! JAMによって改造されたんや!」
「降魔兵器・JAMカスタムと言った所か」

 紅蘭の導き出した答えに、プロキシマが名付ける。

「こいつは危険だ! 紅蘭、動かせる光武二式は何体ある!?」
「まださっき緊急整備始めたばかりや! それにみんなさっきの戦闘でバテてるで!」
「あたいが行く! 体力ならまだ余ってるぜ!」
「私も行こう! 他に動ける者は!」
「香坂君、増援を送る! エレベーターを戻してくれ!」
『大神司令、それは難しそうですわ………』

 カンナやグリシーヌが増援を名乗り出る中、大神がエレベーターを確保しているはずの香坂 エリカに通信を送るが、渋い答えが帰ってくる。
 そして、その通信に重なって響く降魔兵器の咆哮も。

「そっちにも!?」
『上にも下にも、こいつらを行かせる訳にはまいりません。ここはこの香坂 エリカとエリカ7にお任せあれ』
「しかし!」
「大神司令、彼女の意見も一理有ります。現状で疲弊していない部隊は、今下にいる彼女達しかいません」
「それにエレベーターが下にある以上、部隊をどう降下させるかの問題もあります」

 マイルズも背後で警戒には当たっているものの、目に見えて疲弊している部下達を見て提言し、フォートブラッグもそれを補足する。

「上空からとエレベーターホールとじゃ、確かに条件が違い過ぎる………降下可能な装備は?」
「このスペースなら、空戦ストライカーユニットなら何とか………」
「蒸気ウィンチ用意しとらんかったか!?」

 地上からなんとか増援を送り込もうとしていた頃…



「当たると痛いですよ〜」

 ユーリィが双竜牙・ガンモードを乱射し、降魔兵器を容赦なく攻撃するが、攻撃が当たっているはずの降魔兵器は全く怯んだ様子がなく、こちらへと向かって来る。

「効いてないわよ!?」
「これなら!」

 他にも遠距離攻撃を得意とする者達の攻撃が繰り出されるが、全く怯まない降魔兵器にのずるがツールにブリッドを装填、強烈な旋風攻撃を叩きつける。
 これには流石に降魔兵器の動きも止まるが、吹き飛ばされる降魔兵器の上空、旋風の死角から別の降魔兵器が襲撃してくる。

「危ない!」
「させない!」

 飛来してくる降魔兵器にポリリーナのバッキンボーとあかりの光線攻撃が直撃し、バランスを崩して落ちてくる。

「いただきよ!」

 そこを待ち構えていた舞がアイアンで頭部を直撃、血肉が飛び散る中、奇妙な物が交じる。

「硬っ!?」

 異様な手応えに舞がアイアンを取り落しそうになる中、頭部が半ばまでひしゃげた降魔兵器の傷口から、血肉と共に機械部分が顕になる。

「こいつら、サイボーグ!?」
「舞ちゃん危ない!」

 間近で見てしまった舞が驚く中、頭部のひしゃげた降魔兵器が鋭い爪の生えた腕を振り上げ、とっさにユナが横から押し倒してその一撃をかわさせる。
 振り下ろされた一撃は舞のバトルスーツの肩プロテクターをかすめただけだったが、かすめただけでプロテクターはいともあっさりと切り落とされる。

「危なっ!? なんて切れ味してんのよ!」
「わわわっ!?」

 光の戦士の力を受けているはずのプロテクターが役に立たないレベルの攻撃に、舞の顔は青ざめ、ユナは慌てて距離を取る。

「気をつけろ。見た目は怪物だが、中身は完全に兵器のようだ」
「今の一撃、爪部分にレーザー発光を確認した。レーザー切断を併用した近接武装か」

 その一撃の正体を見きった幻夢とハルナが、こちらに武装を向ける遠距離攻撃型降魔兵器を見る。

「見た目以上に重武装のようだな」
「ああ」

 遠距離攻撃型から放たれた小型ミサイルを幻夢のメタルボールとハルナの重力球が撃墜する。

「防御はこちらで受け持つ! 攻撃に専念しろ!」
「そう言われても…」
「今までので一番凶暴よ!」

 キリシマが演算力最大で攻撃予測するが、光の戦士もパンツァーも咆哮を上げながら襲ってくる降魔兵器に苦戦していた。

「正面から相手はしないで! パワーが半端じゃないわ!」
「言われなくても!」

 縦横に振り回される降魔兵器の豪腕と爪を機敏に避けながらポリリーナが警告し、どりすが小柄な体を駆使して死角に潜り込みながら叫ぶ。
 振り下ろされる豪腕はビルの瓦礫をたやすく吹き飛ばし、その爪は転がっていた装甲車の装甲をたやすく斬り裂く。

「何なんだこいつらは! 化け物か、兵器か!」

 強靭な肉体からの攻撃に、取り付けられた兵器からの攻撃が交じる事にねじるが声を荒げながらも、放たれたレーザーをシールドで受け止める。

「FAFに該当データ無し。未知の存在」
「該当データ有ったのだ! 名称は降魔、帝国華撃団がかつて戦った魔物だそうなのだ!」
「あの蒸気ロボ、こんなのと戦ってたの!?」
「そりゃあんなごついのが必要な訳だ………」

 メイヴとマオチャオからの報告に、ある者は驚き、ある者は納得する。

「しかもかなり改造されている。元のデータはアテにならないだろう」
「しかもかなり悪趣味という奴だぞ!」

 幻夢がメタルボールで上空から迫ろうとしている降魔兵器を牽制する中、キリシマはタダでさえ屈強な降魔に異常な重武装をしている事に怒声をあげる。

「頭部を破壊しても、まだ動くわ! 明確な急所が分からない! 一体ずつ確実に破壊しないとダメよ!」

 頭部と心臓がありそうな場所を正確に銃撃しても効果が薄い事に、ミサキがレールガンをチャージしながら叫ぶ。

「まずは動きを止めて!」
「了〜解! 爆光球!」「スタンオール!」「フラワーミスト!」

 ポリリーナの指示に、舞を中心として電撃や催眠花粉が撒き散らされ、食らった降魔兵器の動きが止まる。

「これでも喰らえ!」

 そこへミサキがフルパワーチャージのレールガンを撃ち込み、胴体に大きな風穴を開けられた降魔兵器の一体が倒れると共に爆散する。

「これくらいやらないと意味ないわ!」
「すんごい過激………」
「お前もやれ! オレのじゃパワー不足だ!」

 叫ぶミサキにどりすが唖然とするが、しびれている降魔兵器の足をドリルで攻撃しながらねじるが促す。

「分かった! いっけぇ!」

 カイザードリルからブリッド(※量産改良型)の薬莢が三発まとめて排莢され、どりすの全力攻撃が更に降魔兵器を一体貫き、爆散させる。

「作戦内容把握。支援開始」

 そこでメイヴがいきなり腰部のスラスターを起動、宙へと飛び出す。

「待ちなさい! こんな狭い所で…」

 地上戦に十分だが、高機動を誇る戦闘妖精が空中戦を行うには不利過ぎる環境に狂花が止めようとするが、メイヴは低すぎる天井と瓦解しかけているビルの隙間を巧みに飛び交い、降魔兵器を機銃で攻撃していく。

「ベクトル操作も無しにあの機動、どんなシステム積んでるのかしら」
「かつてのFAFの全所属機体の戦闘データを蓄積しているとの話だ。データ量で言えば我々以上だな」
「もうちょっと他に覚える事あるんじゃな〜い?」

 ミサキとハルナが上空から的確に攻撃してくるメイヴを見て感心するが、舞が爆撃の余波がこちらにまで吹き付けてくるのに悪態をつく。

「メイヴが足止めしてる間に、一気に仕留めるわよ!」
「ブリッドをケチらないで! 半端な攻撃じゃ効かない!」

 ポリリーナとあかりの声に、全員が一斉に攻勢へと転じる。

「くるくる〜パ〜ンチ!」

 ユーリィの気合が入っているか分からない声と共に突き出された拳が、降魔兵器を殴り飛ばし、数体を巻き込んで瓦礫へと叩きつける。

「ライト・スラーッシュ!」
「行って、ミルキー!」
「ホールイン・ワン!」

 そこへユナ、ポリリーナ、舞が各自の必殺技を叩き込んで止めを指していく。

「こっちも行くわよ!」

 はさみがブリッドを複数まとめてツールに叩き込み、最大出力のフォールド・シザーを炸裂させ、直撃を食らった降魔兵器が大ダメージを受け、余波だけでも巻き込まれた降魔兵器が吹き飛ぶのを、こんどはのずるがツールで一気に吸い寄せる。

「こんだけダメージ与えれば!」
「今よ!」
「任せて!」
「オレはそっち!」
「じゃあ真ん中!」

 ダメージを負った降魔兵器が吸い寄せられた所へどりす、ねじる、あかりがブリッドをまとめて使いながらの必殺技を叩き込み、確実に仕留めていく。

「行くぞ!」
「ええ姉さま」

 大技の連発をかいくぐろうとした降魔兵器を、幻夢と狂花がメタルブレードと電磁ブレードで左右から斬り裂き、倒す。

「今ので最後!?」
「待って、今確かめるから」
「私モ…」

 ユナが周りを見回す中、サーニャが確認する中、エイラが足元に転がっていたひん曲がったダウジングロッドを手に取ろうとする。

「アレ?」
「どうかしたか」
「いヤ、炙られたのカ、ちょっと熱い…」

ダウジングロッドが妙に熱いのにエイラが首を傾げるが、そこでダウジングロッドが急に鳴動したかと思うと、まるで射出されたかがごとくエイラの手から飛び出していく。

「うわ!?」
「何だ!?」

 突然の事に皆が驚く中、ダウジングロッドは大きな瓦礫へと突き刺さる。

「エイラ?」
「分からなイ、ロッドが急に…」

 サーニャもいきなりの事に首を傾げる中、一番首を傾げているのは当のエイラ自身だったが、そこで瓦礫に突き刺さったダウジングロッドがまだ鳴動しているのに気付く。

「サーニャ」
「………分かったエイラ」

 エイラが銃のマガジンを交換しながら呟き、どんどんエイラの顔色が変わっていく事にサーニャも残弾を確認しながら魔導針に魔法力を込めて精査する。

「気をつけロ! まだ来るゾ!」
「え!?」
「どこから!?」

 エイラが叫んだ事に、皆が一斉に周囲を見回す。

「円陣を組んで! まだ何か隠してるかもしれないわ!」
「今度は何!?」
「周辺反応を洗い直す」
「もう何が来ても驚かんぞ!」

 皆が口々にいいながら身構える中、一番最初に反応したのは意外な人物だった。

「建築物及びFAF装備に該当物体無し、敵性体の可能性判断、攻撃」

 上空を旋回していたメイヴが、いきなり先程ダウジングロッドが突き刺さった瓦礫を爆撃する。

「うわぁ!?」
「注意くらいしろ!」

 悲鳴と怒号が飛び交い、爆風と巻き上げられたホコリが静まっていく。

「あいつモ相当無茶苦茶…」

 ホコリで咳き込みながらエイラがぼやくが、そこである違和感に気付く。
 先程メイヴが爆撃したはずの瓦礫が、ほとんど形を変えていない事に。

「そこダ!」

 エイラは叫びながら瓦礫に、瓦礫だと思っていた物に銃口を向ける。
 だが引き金を引くよりも早く、それが動き始める。

「な、何?」
「攻撃!」

 予想外の事に困惑する者達を差し置き、とっさに判断した者達が一斉に攻撃を開始。
 だがそれは覆いかぶさっていた瓦礫を巻き上げながら、その場から立ち上がり、そして凄まじい咆哮を上げた。

「な………」「ウソ………」
「すごく大っきいですぅ!」

 その姿に誰もが絶句する中、ユーリィののんきな一言が最も端的にその正体を言い当てる。
 それは、ちょっとした一軒家くらいはありそうなすさまじく巨大な降魔だった。

「これが切り札!?」
「離れて!」

 ユナが思わず呟く中、ミサキが号令をかけながらユナの首根っこを引っ張って強引に離れる。
 咆哮を上げながら、巨大降魔は片手を振り上げ、一気に振り下ろす。
 その軌道上にあったビルの残骸をたやすく貫き、凄まじい破壊力を持った一撃が地面へと叩きつけられ、まるで爆撃のように舗装材と土砂を吹き飛ばす。

「キャァァ!」
「うわぁ!」

 規格外の一撃に、ある者は吹き飛ばされ、ある物は飛散した瓦礫から必死に身を守る。

「みんな無事!?」
「全員のバイタルを確認している。問題はないはず」

 瓦礫から身を守りながらポリリーナが叫び、ハルナが確認を取って報告する。

「こ、これじゃ怪獣だ!」
「ウ○トラマンの出番!?」

 無事だったらしい皆から口々に文句が飛び交いながらも、まだかろうじて戦意は衰えていない。

「これは………」
「こいつも、改造されてるわね」

 改めて巨大降魔をよく見たポリリーナとミサキは、その体の大部分を黒光りする機械のような物が占めている事に気付く。

「先程の爆撃でもビクともしてない事といい、これは生半可な相手ではないな」
「見れば分かるだろう! 地下じゃなかったらコンゴウに相手させる所だ!」

 幻夢が改めて言うのに、キリシマが怒鳴り返す。

「詮索は後! まずは動きを封じないと…」

 パッキンビューを構え、反撃に転じようとするポリリーナだったが、そこで巨大降魔兵器が大きく口を開くのと、その口内が奇妙な漏斗型になってるのを見る。

「! 皆、正面から散レ!」

 エイラが叫び、彼女の予知は当たると経験していた全員が一斉に左右へと飛び去る。
 直後、大型降魔兵器が先程と違う、異様に甲高い咆哮を上げたかと思うと、その正面方向に有った路面や瓦礫が粉砕されていく。

「今度は何!?」
「超音波破砕!? サイコと威力が桁違いだ!」

 転がっていた装甲車の残骸まで瞬く間に砕けていく様に、その咆哮の正体を悟ったねじるの顔色が変わる。

「音波破砕か、私達でも耐えられるか?」
「確かめるなよ!? むしろ有機体でないこちらの方がダメージになる!」

 ハルナが先程の攻撃を詳細に解析するが、とんでもない仮定にキリシマが怒鳴りつける。

「背後から狙う。あれは正面しか撃てないだろう」
「それしかなさそうですわね」

 幻夢と狂花が素早く巨大降魔兵器の背後に回り込み、攻撃をしかけようとするが、そこで巨大降魔兵器が翼を開き、尻尾をふりかざす。
 翼に無数のランチャーが、尻尾に複数の銃口が有る事に二人が気付いた時には、それらが一斉に火を吹く。

「幻夢さん! 狂花さん!」
「大丈夫だ」「狙いは甘いですわ」

 とっさにメタルボールや瓦礫を使って防いだ二人だったが、さすがに無傷とはいかなかった。

「これで大体分かった。全身がほぼ兵器の塊だが、攻撃は大味だ」
「けれど、下手したらかすっただけで致命傷になりかねませんわね」

 傷口を用意しておいた補修パッドで覆いつつ、幻夢と狂花は相手の特性を解析していく。

「動き続けて! 狙いを定められたら危険よ!」
「定まらなくても危険だ! ただ動くだけでも危険が…ほげっ!?」

 ポリリーナの指示で皆が巨大降魔兵器から距離を取りつつ、動き回って撹乱しようとするが、ただ振り回しただけの腕が廃墟と化していたビルを粉砕し、飛来したガレキがキリシマの頭部を直撃する。

「く、今ほどこの体がぬいぐるみで良かったと思った事は無い………」
「あまり汚すな、蒔絵に怒られる」

 中身が綿のお陰で汚れるだけで済んだキリシマがボヤくのにハルナが警告しつつ、両者で演算力を駆使して巨大降魔兵器を解析していく。

「何だこれは………生物部分よりも機械部分が多いぞ?」
「生体反応もサイズに比べて低い。これは一体………」

 違和感を感じ始めるキリシマとハルナだったが、巨大降魔兵器が翼を広げた事に警戒を一気に高める。

「またミサイルか!?」
「総員防御…」

 先程の大火力攻撃を予感した皆が慌てて瓦礫の背後に隠れようとするが、予想に反して巨大降魔兵器はその体躯に対しては小さいとも言える翼を羽ばたかせ、宙へと舞い上がる。

「飛んだ!?」
「ウソだろ!?」
「まずい!」

 予想外の巨大降魔兵器の飛行に全員が驚くが、その意味する事に聡い者達は気付く。

「散って! 狙い撃ちされるわ!」
「狙う必要はないかもしれんな」
「やばいやばイ! 全力で逃げロ!」

 ポリリーナが叫ぶ中、幻夢は巨大降魔兵器がこちらに向けて口を開くのに気付き、エイラが大慌てで逃げ出し、皆もそれに続こうとする。
 だが退避が完了するより早く、巨大降魔兵器の超音波砲が放たれ、周辺のビルごと、真下を粉砕する。

「あ、危なかった………」
「ええ………」
「いや、何が起こった?」
「助かりました〜」

 ポリリーナとミサキが荒い呼吸をする中、つまずいて逃げそびれそうになったねじると、元からスローな詩織がその小脇に抱えられている。

「ちょっとテレポートしただけよ」
「また放たれる前に落とさないと」
「は? テレポートって…」
「今度は〜こっちから〜行きますよ〜」

 状況が理解しきれないねじるだったが、その隣で詩織が相変わらずスローな口調のまま手をかざすと、両肩から強烈なビームが放たれる。
 放たれたビームは身を翻した巨大降魔兵器の翼をかすめ、そのまま天井に直撃して大穴を開ける。

「外れて〜しまいました〜」
「見た目の割にすげえ物騒な奴だ………」
「よく狙って! このままじゃ瓦礫ごと更地にされるわ!」
「このぉ!」

 予想外の詩織の火力にねじるがあっけに取られる中、ポリリーナとミサキに続くように遠距離攻撃可能な者が巨大降魔兵器を狙うが、その異常なまでの耐久力にほとんど効果が出ていない。

「効いてない!?」
「見た目以上に頑丈よ!」
「つうかどうやって飛んでるの!?」

 その巨体と翼の動きと不釣り合いな機敏に飛び交う巨大降魔兵器に皆の焦った声が飛び交う。

「目標、JAM改造個体。AAM、ロック。ファイア」

 メイヴが空対空ミサイルを一斉発射、外しようのない距離で全弾が炸裂し、盛大な爆炎が上がるが、程なくしてそこから抜け出してきた巨大降魔兵器とメイヴがすれ違い、ついでとばかりにメイブが大型ナイフで巨大降魔兵器の表面を切り裂いていくが、巨体から見れば微々たるダメージだった。

「目標の損傷軽微、装備をAP仕様に変更要請。DU弾装填を…」
『何か危険な事を言ってないか?』

 通信を仲介していたハルナが、閉鎖空間でDU(※劣化ウラン)弾を使おうとしていたメイヴを止めようとする。

「落とすなら、こうすればいい」

 ハルナが演算力最大で重力球を生成、巨大降魔兵器は突然発生した高重力にバランスを崩し、態勢を立て直す事も出来ず落下を始める。

「落ちてくるぞ!」
「このまま一気に…」
「バカ、離れロ!」

 ハルナがそのまま重力球で巨大降魔兵器を押し潰そうとするが、そこへエイラとサーニャが半ば飛びかかるようにハルナの両脇を掴み、ついでにそばにいたキリシマの頭を引っ掴んでそのままウィッチの強化された身体能力で飛び退る。
 直後、先程までハルナがいた場所に超音波砲が直撃し、砂塵と化していく。

「あんな大技使ってたラ、狙われるに決まってるダロ!」
「む、それもそうか」
「あの化け物、奇妙な外見の癖に、どいつを狙えばいいか分かるくらいの頭脳はあるのか」
「そうみたい」

 重力攻撃が消えた事でバランスを立て直した巨大降魔兵器が、轟音を立てて地面へと着地する。

「仕切り直しよ」
「行くよ皆!」
「飛んでなければ、こっちの物よ!」

 着地した巨大降魔兵器の周囲を取り囲み、ポリリーナが構え直す両隣で、ユナとどりすが息巻いていた。



(近い)
(ええ、明らかに戦闘音が聞こえる)
(どうする? 脱走して加勢するか?)

 ベッドに横たわったアイーシャが、響いてくる振動と爆発音をナノマシンを介して別室の二人と話していた。

(無理だ。私は動けないし、貴方達も武装も無しだと、返って足手まといになる)
(そうね、もう動くのもやっとのエネルギーもあるかどうか………)
(私は動けます。なんとかここを出て、救援を呼んでくるという事も…)
(それもダメだ。分かるだろう、何かとてつもない物と戦っているのが)
(これは、何? 生物なのか機械なのか)
(分からない。けど、機械部分があるのは確か。もしもの時のために、準備はしておく。力を貸してほしい)
(分かりました。備えます)

 今自分に出来る事を考えながら、アイーシャは仲間を信じ、静かに待ち続けた。



「翼を狙って! また飛ばれたら事よ!」
「攻撃はこちらで防ぐ!」
「武装を狙エ! 誘爆させるんダ!」

 ポリリーナ、ハルナ、エイラの指示が飛び交う中、振り回される両腕とその度に飛散する巨大な瓦礫を避け、防ぎながら皆が必死に攻撃する。

「ダメ、誘爆くらいじゃあまり傷つかない!」
「何で出来てんのよ、このデカ悪魔!」

 ランチャーを狙い撃ちして幾つかの誘爆に成功したミサキと舞が、爆炎の晴れた後に予想よりも傷ついていない巨大降魔兵器の翼に怒声を上げる。

「分かった。この降魔という物自体が私達の魔法力に似た力を持っている。物理攻撃は効きにくいみたい」
「そういう事カ!」

 サーニャが注意深く相手を探って気付いた事に、エイラが銃撃を翼へと浴びせるが、僅かに弾痕が開くだけで影響は少なそうだった。

「ダメ、威力が足りない」
「誰か強烈なの持ってないカ!?」

 元からの耐久力に改造も加わり、ダメージが通りにくい事にエイラが周囲に呼びかける。

「どりす、ブリッドまだあるか」
「一応…」
「予備だ」

 ねじるが自分のブリッドの残数の半分以上を投げ渡し、どりすがそれを受け取る。

「オレのドリルじゃ、あのデカブツ相手に通じねえ。しかも下手に近寄る事も出来ねえ」
「あいつに反応されるより早く、そして強烈な攻撃を持っているとしたら」
「フォームアップしたあなただけね」
「隙は私達で作るわ」

 ねじるのみなず、はさみ、のずる、あかりも同じ結論に達したらしく、四人共頷くとどりすを残して巨大降魔兵器へと向かっていく。

「出し惜しみ無しで行くわよ!」

 はさみがブリッドをツールに叩き込み、最大出力のフォールドシザーを繰り出す。
 巨体故にかわしきれなかった巨大降魔兵器に直撃、その口から絶叫が漏れるのに間髪入れず、こんどはのずるがツールを向ける。

「全員避けて! キツイのが行くわ!」

 のずるが叫びながら、ツールから最大出力の旋風を発射する。

「化け物相手なら、遠慮もいらないわね! 喰らいなさい、V・テンペスト!」

 のずるが自ら危険だと判断して試合では使わなかった必殺技を使用。
 ブリッドを矢継ぎ早にツールに叩き込み、旋風が更に強さを増していく。

「のずる、その技!」
「サポートお願い!」
「無茶はしないでね!」

 その技を知っていたはさみとあかりが慌ててのずるを背後から支える。
 のずるの背部プロテクターのファンが全力で噴出してバランスを取ろうとするが、強力過ぎる旋風が彼女自身を反動で吹き飛ばそうとするのを背後の二人がかろうじて支える。
 巨大降魔兵器は吹き付ける旋風に抗おうとするが、強力な風圧とそれによって生じた気圧差が刃となって生身の部分に幾つもの傷を穿ち、やがてその巨体がじりじりと押され始める。

「行けるか!?」
「こちらも援護を…」

ねじるとあかりがツールを構えようとした時、のずるのツールから異音が響く。

「のずる!」
「ゴメン、ここまで…」

 ツールが限界に達し、ヒビが生じた事で一気に出力が落ちていく。

「牙王さん、あなたは右! 私は左!」
「任せろ!」

 暴風が消え、動きを取り戻そうとした巨大降魔兵器へと向かって、ねじるとあかりが同時にツールにありったけのブリッドを叩き込む。

「こいつでも喰らえ!」
「喰らいなさい!」

 ねじるのツールから高速回転するエネルギーの渦が、あかりのツールから出力限界を収束させた閃光の束が放たれ、動きを取り戻そうとした巨大降魔兵器の両膝を貫く。
 巨大降魔兵器の口から耳をつんざくような絶叫が放たれ、思わず耳を塞ぐ者が続出する中、すかさず動く影が有った。
 絶叫を上げながら、巨大降魔兵器がその翼を振り上げる。

「させない!」

 飛び上がろうとする隙を逃さず、どりすが瞬時にフォームアップ、複数のブリッドを叩き込んだカイザードリルを高速回転させながら、バーニア全開で突っ込んでいく。
 巨大降魔兵器が振り下ろした腕をかいくぐり、カイザードリルを突き出しながら一気に上昇、羽ばたこうとしていた翼の片方を根本から一気にえぐり飛ばした。

「やった!」
「これで相手の動きは封じたわ! 距離を取って総攻撃を…」

千載一遇のチャンスと見た全員が、一斉攻撃に入ろうとした時だった。
 巨大降魔兵器の胸が、突如として開いた。

「え?」
「は?」
「何だ!?」

 思わず全員の動きが止まるが、胸のみならず、背中の方も同様に肉が割り開き、更には両上腕部や大腿部の左右にもスピーカーのような物が現れる。
 そして巨大降魔兵器の口から咆哮が漏れ始め、それが大きくなっていくと全てのスピーカーが鳴動を始める。

「全方位音波砲!?」
「まずい、逃げロ!」
「どこに!?」

 巨大降魔兵器が周囲をまとめて音波破砕するつもりだと気付いた者達が有る者は逃げ惑い、ある者は迎撃しようとするが、それよりも向こうの発動の方が早そうだった。

「フィールドを最大演算」
「ダメだ、とても足りない!」
「サーニャ!」
「私達のシールドでどこまで…」

 メンタルモデルやウィッチが防御しようとするが、とても防ぎきれそうにない出力を感じさせる全方位音波砲が放たれようとした瞬間、唐突に巨大降魔兵器の動きが止まる。

「アレ?」
「な、なんだこれは!?」
「ナノマシン強制干渉だと!?」

 ユナが思わず間の抜けた声を漏らす中、余波を食らったハルナとキリシマが思わず呻く。

「アイーシャ!」
「あいつの援護カ!」
「今よ!」

 そのナノマシン強制干渉が、アイーシャによる援護だとサーニャとエイラが悟った時、ミサキが中心となって巨大降魔兵器へと狙いが向けられる。

「狙いは発動点の口腔発生装置! 撃てぇ!」

 ミサキがフルチャージしたリニアガンを皮切りに、光の戦士達の攻撃が巨大降魔兵器の頭部に向けられ、口腔内の音波砲が顎ごと吹き飛ぶ。

「他の場所のも」「こっちで右、そっちで左ダ!」
「分かった」「手早く行くぞ!」

 エイラとサーニャが素早く横手に回り込み、ありったけの魔法力を込めた弾丸で右側の音波砲を、ハルナとキリシマが二人がかりで小型の重力球を撃ち込み、左側の音波砲を潰す。

「狂花!」「ええ姉さま」

 幻夢が無数の光弾を生み出し、それを狂花が一つにまとめ上げると、巨大降魔兵器の背中へと直撃。
 残った羽ごと背中の音波砲が吹き飛び、そこでようやく自由を取り戻したのか、巨大降魔兵器の残った口から潰れた絶叫が放たれる。

「武装はほとんど潰したわね!?」
「だがあの巨体だけで十分驚異…」

 ポリリーナが確認した所で、ミサキの懸念を裏付けるように、巨大降魔兵器が半ばのたうつような動きで残った両腕を振るい、その軌道上に有る物を無差別に破壊していく。

「余計ひどくなってねえか!?」
「わあ! こっち来たぁ!」

 吹き飛ぶ瓦礫やジャンクだけでも十分な破壊力に、ねじるがシールドをかざし、どりすが思わずその裏に隠れる。

「あれだけの攻撃加えてまだ動けるなんて、とんでもない耐久力! もっと高出力の攻撃を加えないと!」
「どうやってよ! 更に近寄れなくなったわわよ!」

 ミサキが冷静に巨大降魔兵器のダメージを観察する中、飛来する瓦礫から身を守るだけで精一杯の舞が思わず怒鳴り返す。

「ハルナ!」
「動きが激しすぎる。とても止められない」
「それ以前の問題も有るな!」

 キリシマとハルナと協力して、重力球で飛来する瓦礫を除去するが、それで手一杯で巨大降魔兵器にまで手を回せない。

「兵装はおまけだったようだな」
「そうですわね。両膝撃ち抜かれてこれなら、十分でしょう」

 幻夢と狂花が巧みに振り回される巨腕と飛来する瓦礫をかいくぐって攻撃を試みるが、隙を縫って繰り出される程度の攻撃では、ほとんどダメージにもなっていなかった。

「くそ、どういう体してんだ!?」
「頑丈か鈍いかのどっちかよ!」
「悪いけど私はツール限界!」
「まずは身を守るのが最優先!」

 想定外過ぎる状態に、パンツァー達は守備で精一杯だったが、ただ一人やる気十分の者がいた。

「ブリッドはこれで全部なのだ!」
「もう一発くらいなら行ける!」

 マオチャオから残ったブリッドを受け取りながら、フォームアップの解けたどりすが、暴れまわる巨大降魔兵器と並走しながら、最後の一撃を打ち込むチャンスを伺っていた。

「ポリリーナ」
「ミサキ、私達ならあの腕の死角に飛び込めるわね」
「けど、出力が足りない。恐らくアレは物理的防御力と生体エネルギー的防御力を併せ持っている試験兵器よ。私のフルパワーチャージのゼロ距離射撃でも致命傷には………」
「それを打ち破れる程の力を持っているとしたら…」

 ポリリーナがちらりと情けない悲鳴を上げながら瓦礫から逃げ惑うユナと、それを弾きながら一緒に逃げているユーリィを見る。

「まずはどうにかして動きを止めないと」
「さっきから皆試みてるけど、この厄介な雨をどうにかしない事には」

 皆建物の影に隠れて飛来する瓦礫を避けようとするが、最悪その建物自体を粉砕してくる巨大降魔兵器の非常識なパワーに、有効な手を打てずにいた。

「私達二人で、頭部にテレポートして集中攻撃すれば…」
「それは私も考えたわ。けど、あの改造レベルだと頭部が弱点足り得ないかもしれない。賭けになるわ」

 ビルの物影から巨大降魔兵器を観察しつつ、ポリリーナが出した提案をミサキが不安要素を提示、そんな最中に飛来した瓦礫が隠れていたビルの一部を破壊する。

「一か八か、それとも他に何か手が有ったら…」
『特殊兵装使用許可確認。目標周辺から退避要請』

 賭けに出ようかとするポリリーナだったが、そこでメイヴからのいきなりの通信が入る。

「特殊兵装? 何を使うつもり?」
「皆、十分距離を取って! メイヴが何かしでかすつもりよ!」

 人的被害さえ出さなければ(それも怪しいが)手段を選ばないメイヴからの警告に、全員が急いで巨大降魔兵器から離れる。
 それを確認したのか、メイヴが巨大降魔兵器へと急降下しながら、爆弾のような物を転移装備する。
 気付いた巨大降魔兵器がアンダースローで瓦礫を上空へと投じるが、メイヴは驚異的なマニューバーでそれを全弾回避、手にした爆弾を投下。
 投下された爆弾を巨大降魔兵器は薙ぎ払おうとするが、それは触れるかどうかの直前で炸裂、中から液体のような物がばら撒かれ、それに触れた巨大降魔兵器の手や胴体が凍りつき始める。

「爆撃型冷凍弾!?」
「今よ!」

 投下された物の正体を知ったポリリーナが驚くが、ミサキの号令に物陰に隠れていた者達が一斉に動く。

「喰らいなさい! 爆光球!」
「プラズマリッガー!」
「スロ〜ム〜ブ〜」

 光の戦士達の状態異常攻撃が凍りついて動きが鈍った巨大降魔兵器に次々と炸裂し、その動きが一時的に停止する。

「キリシマ」
「分かってる! 私のも使え!」

 更にそこでハルナとキリシマが二人がかりでフィールドで巨大降魔兵器の両腕を固定、そこへ妖機姉妹とパンツァー達が駆け寄る。

「右はこっちで、左を」
「分かった!」

 幻夢と狂花がフィールドで固定された兄弟降魔兵器に右手を剣で貫いて地面に縫い止め、左手をねじるとはさみがツールで同じように縫い止める。

「! サーニャ、目だ!」
「分かった」

 さらにそこで巨大降魔兵器の両目が燐光を帯び始め、そこから何か放たれようとしているのを固有魔法で悟ったエイラとサーニャが両目を銃撃して封じる。

「ユナ! ユーリィ!」
「どりす、今だ!」
「分かった!」「行くですぅ!」「行っけぇ!」

 ポリリーナとねじるの言葉に、三人が飛び出す。

「ライトスラーッシュ!」「クルクルパーンチ!」「ドリルクラッシャー!」

 三人がそれぞれありったけの力を込めた必殺技が巨大降魔兵器に炸裂。
 斬撃、打撃、突撃、そして内包されるエネルギーに巨大降魔兵器の機械部分にヒビが生じ、それは生体部分に広がっていったかと思うと、とうとう限界に達し一気に爆散した。

「やった!」
「倒したですぅ!」
「どんなもんよ!」

 止めを刺した三人がガッツポーズを取る中、多くの者は疲労のためにうなだれたり座り込んでいく。

「あ、後いないわよね?」
「反応は無いみたい」
「多分大丈夫なんダナ」

 念の為に聞くあかりに、サーニャとエイラが固有魔法で周辺を念入りに調査して確認していく。

「あちらに先に通じている通路が有るようだ」
「動けない連中はここにいろ! 先を急ぐぞ」
「もうこれ以上何かが無いといいがな」

 ハルナとキリシマが市街地部分の端にある扉を見つけ、幻夢はまだ剣を手にしたままそちらへと向かう。

「そう言えば、エリカちゃんは!?」

 ユナが向こうにも襲撃が有ったとの報告を思い出した頃…



「おわ!?」
「何だこれ!?」

 降魔兵器が吐き出してきた物をエリカ7は思わず避ける。
 半ば生理反応的回避だったが、吐き出してきた物が床に触れると同時に、異臭と煙を出して床を融解し始める。

「腐食性!?」
「エリカ様! お気をつけを!」
「不細工な見た目そのままの下品な攻撃だ事」

 香坂 エリカが降魔兵器の攻撃を鼻で笑い、半ば無造作に突っ込んでいく。

「エリカ様!」
「そういう物は、こうするべきですわ。ミラージュビーム!」

 降魔兵器の攻撃をかいくぐり、敵陣のど真ん中で香坂 エリカは両肩から腐食ビームを発射、直撃を受けた降魔兵器達が絶叫しながら食らった箇所が爛れていく。

「今!」
『はい、エリカ様!』

 相手に隙が出来たのを逃さず、エリカ7が一斉攻撃、降魔兵器達を次々と倒していく。

「最後の一体!」
「逃げる、いやエレベーター狙ってる!」

 エレベーターを狙っていく最後の降魔兵器だったが、そこで床から飛び出したケーブルがその体に巻き付き、締め上げて絶命させる。

「後は!?」
「これで終わりのようです」
「エレベーターも無事」
「上の人達下ろす準備するね」

 香坂 エリカの声に、ミドリとミキが周囲を確認、最後の一体を倒した亜弥乎もエレベーターを操作する。

「向こうも終わったようです」
「あれだけの人数で、随分掛かった事」
「怪獣が出たとか言ってなかったか?」
「言ってた言ってた」

 マミとルイが通信とリアルタイムで送られていた戦闘データを確認しながら、そこに映った巨大降魔兵器にぎょっとする。

「よく倒せたなこんなの………」
「こっちに出なくて良かった………」
「無駄話は後! 救助部隊突入の準備を!」
「これ、片付けるの?」
「倒した後の事まで考えてなかった………」

 無人パワードスーツや装甲車の残骸はともかく、降魔兵器の遺体のスプラッターな状態にエリカ7は頬を引きつらせる。

「通り道だけ作っておきましょう」
「アコ、マコ、吹き飛ばしておいて」
『は〜い』
「上で今乗り込んだって。すぐに来るよ」
「急いで!」

 亜弥乎の報告に、エリカ7が応急の後片付けに入っていった。



「間違いない、この先にアイーシャ達がいる」
「また普通の通路に戻ったゾ」
「構造計算とかしてるのかしら………」
「学園を見ると怪しい物だな」

 サーニャが先導して見つけた扉から更に先に進む一行だったが、先程までの廃墟との落差にポリリーナとハルナが思わずぼやく。

「すぐそこ、あの通路の先に………待って!」
「うわ!」
「きゃっ!」

 先導していたサーニャが突然足を止め、後ろで軽く玉突き事故が起きるが、エイラだけは素早く銃を構える。

「どうしたサーニャ!」

 エイラの問いかけにサーニャが答えるより早く、その答えが現れる。

「なんですかあなた方は。ここから先は重症者用医療区画です。許可の無い方は立入禁止です」
「え?」
「いやその…」

 突然現れた看護婦に注意され、皆が呆気に取られる。
 だがウィッチの二人は警戒したままだった。

「嫌な感じがする。気をつけて」
「そいつ、人間じゃナイ!」

 サーニャとエイラが瞬時に異常を察知し、ためらいなくトリガーを引いた。
 放たれた銃弾を看護婦は驚異的な跳躍力で半ば天井に張り付くようにしてかわそうとするが、そこにミサキとポリリーナの攻撃が命中し、床へと落下する。

「うわ!?」
「殺っちまった!?」

 見た目は普通の人間に見える相手に、他の者達は驚くが、地面に落下した看護婦の輪郭が緩んだかと思うと、そのまま泥のような物へと変貌して形を無くし、崩れ落ちていく。

「なな、なんだこりゃ!?」
「レプリカントね。人間そっくりの作り物」
「まさかこれが最後のガーディアン?」
「よくできてたけど、会話パターンが単純すぎたわ。自己人格を持たないパターン反応型よ」

 パンツァー達がホラー映画のような状況に顔色を失うが、ミサキは冷静にそれを観察し、
ポリリーナは首を傾げる。

「後は変な反応は無いみたい」
「じゃあ急ぐゾ!」

 サーニャが再度周辺を念入りに探知し、エイラも妙な予知が無いかを確認しつつ、看護婦だった物を放置して先へと進む。

「アイーシャはそこのドアの向こう!」
「任せて」

 サーニャが指摘したドアにミサキが飛びつき、電子ロックの解除に掛かる。

「あと隣、これは知ってる人」
「こっちは任せなさい!」

 その隣、もう一つの扉のロックを舞が解除に掛かる。

「あの人もエージェント?」
「ううん、ウチの学校の先生」
「なんで教師が錠前破り出来るんだ………」

 思わず聞いてきたパンツァー達へのユナの返答に、胡乱な目が向けられるが、程なくしてミサキがロックを外す。
 開いた扉からミサキがレールガン片手に飛び込み、更にサーニャも続く。

「アイーシャ!」
「サーニャ。久しぶり」

 飛び込んだ部屋の中、どう見ても病室のベッドの上に、サーニャの記憶より少し痩せているアイーシャがやっと救助に来た者達に微笑みかける。

「大丈夫? 何かされなかった?」
「大丈夫、皆で何とかしていた」
「皆?」

 ミサキの安否確認に落ち着いて答えながら、アイーシャは壁の向こう、そこにある隣室へと向ける。

「開いたわよ!」

 そして舞もロックを外し、開いた扉にポリリーナとエイラが飛び込む。

「久しぶりね」
「こいつカ」
「ええ、また会えるとは思わなかった」

 部屋の中、隣とは違い、無数の機材のような物が並ぶ室内で、幾つかの機器で捕縛されて動けない人物、かつてはフェインティア・イミテイト、今はFツヴァイと呼ばれてる相手に、ポリリーナはわずかに嘆息し、エイラはやや顔をしかめる。

「無力化用固定具ね。素人がいじらない方がいいわ」
「外せるのはいる?」
「任せてくれ」

 そこに幻夢が入ってくると、周辺の捕縛機器の解除に入る。

「うわ、すごい事に………」
「こいつか信号送ってきた奴は」
「ああそうだ。それと隣にもう一人いる」
「分かった!」

 半ば興味本位で入ってきたどりすとねじるだったが、Fツヴァイの指摘にどりすがいきなり隣り合う壁へとカイザードリルを突き立てる。

「おい!」
「とりゃああぁ!」

 ねじるの制止も効かず、どりすは一気に壁をぶち破り、そのまま崩落して人が通るには十分な穴を開けた。

「大丈夫!? 助けに来たよ!」
「あ、ありがとう………」

 壁の向こうにいた人物、黒髪のショートカットの少女にどりすは声をかけるが、相手の返答はどこか引きつっていた。
 そこはまた隣室と違い、簡素な部屋だったがその無機質さはどこか牢獄を思わせ、ベッドの影に隠れていた少女は巻き上がっていた煙が晴れるとようやく姿を見せる。

「どこか痛い所か無い?」
「それは大丈夫、けど…」
「けど?」
「ドアがそこに」
「あ」
「馬鹿! 助けに来たのに怖がらせてどうする!」
「だって〜」

 黒髪の少女がドアを指差し、どりすが声を上げた所でねじるが小突いて注意する。
それを見た黒髪の少女は、思わず笑みを浮かべ、ようやく警戒を解いた。

「じっとしてろ、今救助隊が来るから」
「あの、大丈夫です。特に怪我も衰弱もしてないので………それよりも他の二人は?」
「片方はベッドから動けないし、もう片方は拘束台から動けないみてえだ。今外してる」
「取り敢えず簡易スキャンかけるのだ」

 黒髪の少女を取り敢えずベッドに座らせ、マオチャオがセンサーで異常が無いかを確認していく。

「確かに問題は無さそうなのだ」
「良かったな。あの縞模様連中、あちこち誘拐してやがったらしいし」
「変な事されなかった?」
「ええ、三人でなんとか抵抗してたから」
「三人で?」

 心配するねじるとどりすに、黒髪の少女は壁に空いた穴から隣室を見ながら説明する。
 そこでようやくドアのロックが外され、ミサキが中を確認する。

「捕虜はこれで全員ね?」
「恐らく………少なくても私が知る限りは私とFツヴァイとアイーシャだけ」
「救護班、こっちにも!」
「お任せよぉ!」

 そこに、救護用ホバーストレッチャーを押しながら、なぜか看護婦姿の薔薇組が現れ、室内のミサキ以外の全員の表情が凍りつく。

「え、と………」
「すごいの来ちゃった………」
「何だアレ?」
「帝国華撃団のサポート部隊よ、見た目と違って優秀だそうだけど」
「さあさあ、悪い連中は一郎ちゃん達が全部倒したから安心しなさい」

 何故か平然としているミサキが説明しながら、琴音が黒髪の少女をストレッチャーへと促す。

「あの、大丈夫です。歩けます」
「ダメよ。女の子をずっとこんな所に閉じ込めるなんてひどい事されてたんだから。上にお医者さん達も準備してるから、素直に乗って」
「そうですか………」

 歩いて出ようとする黒髪の少女を琴音がたしなめ、少女は大人しくストレッチャーに横たわる。

「確かここを押せば自動で簡易診断が出来るそうです」
「それにしてもお花も人形もない部屋にずっと閉じ込めるなんて、JAMってのは本当に女心分かってないわね」

 菊之丞が聞いていた通りにホバーストレッチャーを操作し、斧彦が殺風景を通り越している部屋を見てから心配そうに少女を覗き込む。

「それであなたのお名前は?」
「あ、ニナ。ニナ・ウォンです」

 琴音に問われ少女、ニナは名乗る。

「ニナちゃんね。お生まれは?」
「生まれはちょっと…一時アルタイ公国に所属していました」

 ニナのプロフィールを聞いた皆が眉を寄せる。

「聞いた事無い国ね」
「知ってる?」
「いんや全然」
「惑星エアル北方の国です」
「惑星エアル? あなたあの星の出身なの?」

 ニナの説明にミサキの表情が険しくなる。

「詳しい話は後よ後! 今はこの子を無事にお医者さんに見せる事が私達の任務よ!」
「簡易診断異常無し、ですけどこれは?」

 菊之丞が表示された簡易診断の結果に、僅かに首を傾げる。

「あなた、ナノマシン処置を受けてるの?」
「はい、私は一時アルタイ公国大公のマイスター乙HiMEでしたので」
「マイスターオトメ? まあ詳しい話は後ね」
「そうそう、さあ行くわよ〜」

 ミサキが表示されている注意事項を確認するが、聞いた事の無い説明をするニナに薔薇組が質問を中断させ、ニナの搬送を始める。

「あ、少し待ってください」
「何? 忘れ物?」

 廊下に出た所で、ニナは琴音に声をかけ、同じく部屋から運び出されようとする2つのストレッチャーへと歩み寄る。

「そっちは無事みたいね」
「ええ、そちらは?」
「エネルギーがほとんど残ってないし、一部封印措置されてうまく動けないわ」
「大丈夫、きっと直してくれる」
「あなたが一番重症よ。さっきも無茶して………」
「大丈夫、彼女が手伝ってくれた」

 幽閉され、ようやくお互いの顔を見た三人は、互いの無事を確認して笑みを浮かべた。

「ニナ・ウォンよ」
「Fツヴァイ、そう呼ばれてる」
「アイーシャ・クリシュナム」

 改めて三人は互いに自己紹介する。

「悪いけど、積もる話は後で」
「捕虜三名、救助を確認!」
「さあ急いで運ぶわよ〜」

 そこで救助任務にあたっていた黒ウサギ隊が話を中断させ、薔薇組と共に三人の搬送を開始する。
 だが、忙しく搬送するそばで、メイヴがその三人をじっと観察してる事に気付く者はいなかった。

「こちらFRX―00、捕虜三名の救助を確認。サーチの結果、オリジナルと断定。警戒の必要無し。繰り返す、救助された三名はオリジナル………」





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