第二次スーパーロボッコ大戦
EP62



「以上が現在のこちらの状況だ」

 401の艦内で、ガランドを中心に群像、ミーナ、そして冬后提督が先程届いたばかりの小規模転移現象についての説明を行っていた。

「個人単位の転移ね………前回は501がそれぞれバラバラの場所に飛ばされた事はあったけれど」
「合流するまでが大変だったね〜」

 ミーナが前回の戦いを思い出し、肩にいたストラーフも頷く。

「一国の女王までいるとは………王女だったらすでに二人いたが」
「マイスター乙HiMEとそのマスターをセットで転移させたらしい。一体どこまで調べ上げている?」

 ガランドと群像も色々と考え込む中、冬后提督は別の資料を見ていた。

「呉鎮守府の潜水艦隊も巻き込まれたか………不用意にあの超空間通路とやらには近寄らない方がいいようだ」
「あの中は完全にJAMの制御下らしい」
「どこに飛ばされるか分かった物じゃないそうだ」
「私達FAGもこの鎮守府にしかいないしね、警告もされてないもの」

 冬后提督の呟きに、ガランドと群像も説明しながら頷き、スティレットがそれに同意する。

「正直、連絡が取れる所でよかったというべきか否か………こうなった以上、呉鎮守府にも一報入れておくべきなのだろうが」
「何か問題が?」
「信じてもらえるかどうか………」

 冬后提督の言葉にミーナが思わず聞き返すが、出てきた言葉に全員顔を見合わせて唸る。

「最大の問題だな」
「確かに」
「呉鎮守府の司令官は話が通じる方ですか?」
「難しいな。呉の杉山提督は基本自分が見た物か部下からの直接報告しか信じない人だ」
「つまり石頭って事だよね?」

 各指揮官からの質問に冬后提督が表情を険しくし、ストラーフが一言でまとめる。

「厳しい人だが、部下の艦娘達思いなのも確かだ。前に大本営から来た情報将校が艦娘を酷使するような事を提言したら、ならば直に確かめろと、哨戒艇に無理やり一緒に乗り込み、艦娘と共に戦場まで引きずり出した事まである位だ」
「………それで、どうなったんです?」
「深海棲艦の攻撃を食らって搭乗していた哨戒艇が沈んだが、そのまま泡食って失神した情報将校を背負って泳いで帰ろうとしたらしい。慌ててその場にいた艦娘達が救助したそうだが」
「ガチ過ぎない、それ?」
「いや、むしろそれ位なら信用出来るだろう」
「信用はともかく、説得出来るとは…」
「ええ………」
「バーゼ、そっちの鎮守府でなくて良かったー」

 冬后提督が話すエピソードに、ガランドを除く皆が顔を引きつらせる。

「ともかく、一度連絡をつけさせるべきでは?」
「通信設備の問題があるな。こちらの規格に合わせられるか?」
「いやむしろこちらから予備の通信機を持っていくのは?」
「どのようにして?」
「それなら………」

 冬后提督の疑問に、群像がある提案をした。



「そういう訳で、お前達には呉鎮守府に予備通信機を持っていってもらう事になった」

 美緒に呼ばれた芳佳、バルクホルン、ペリーヌの三名が通信機搬送任務を言い渡される。

「横須賀から呉って結構距離ありませんでした?」
「心配ない、あれを使う」

 芳佳の問いに、美緒はイー401の方を指さす。
 その甲板上に、オリジナルの401に搭載されていた艦載機をモデルとした、空戦ウィッチ搬送用ドローンが展開途中だった。

「今回の派遣に伴って用意した物だそうだ」
「NORN技術班の試作機の一つです。自動制御の無人小型輸送機。性能として航続距離、速度共に問題ありませんが、試作機なので武装はまだついていません」

 美緒に続けてアーンヴァルが説明をする。

「深海棲艦は内陸までは攻撃してこないらしいが、JAMによる攻撃の可能性は捨てきれない。各自入念に用意せよ。指揮はバルクホルンに任せる。通信機の接続操作は武装神姫に一任する事になるだろう」
「了解!」
「分かりました」

 バルクホルンが敬礼し、ヴェルヴィエッタも頷く。

「輸送機の発進後、空中で搭乗する事になる。やった事は無いだろうが、お前達なら問題ないだろう」
「ウィッチの飛行距離を稼ぐため、飛行機の翼に掴まって運んでもらうという事もありますしね」
「501に入る前にやった事あるな」
「え、そうなんですか?」
「それよりは簡単、らしい」
「技術班の方々が各自の技術を持ち込んで色々作った物の一つですし」
「そこはかとなく不安がありますわね………」
「まあまだ大人しい方みたいだよ、あのドローン」

 ペリーヌがぼそりと呟いた不安に、ヴェルヴィエッタがフォローする。
 そこに冬后提督が姿を見せる。

「急な話で済まないが、呉鎮守府の杉山提督には実際に見せた方が話が早いと思ってな。こちらからも連絡は入れておく」
「そうしてもらうとありがたい。まさかいきなり迎撃なんて事は無いと思いたい所だが」
「杉山提督ならやりかねないな………」
「え?」

 バルクホルンの言葉に何か危険な事を呟いた冬后提督に、芳佳は思わず目を丸くする。

「ともかく、友軍の無事を知らせてやるのがこの任務の肝になる。そこから先は相手の反応いかんだが」
「呉鎮守府にも謎の敵の襲撃があったらしい。その点も踏まえて頼む」
『了解!』

 美緒と冬后提督に敬礼すると、三人はすぐに準備へと取り掛かった。

「武装は十分にしておけ。今流行っている個人単位の転移に巻き込まれる可能性も十分ある」
「はい!」
「にしても重武装過ぎでは?」

 バルクホルンがMG42機関銃に予備弾、予備銃身にパンツァーファウストまで装備しているのにペリーヌは少し顔をしかめる。

「いやマスター、敵襲の可能性は否定できないし」
「まあ、あの輸送機に乗せてもらえるなら搭載量の問題もありませんし」
「変な誤解されないといいけど………」
「先程連絡は入れておいた」
「簡単な説明しかしてないけどね」

 準備を進める三人の元に、不意に長門がFAG連れで現れて声をかけてくる。

「それと提督からの紹介状だ。これならいきなり敵対という事は無いと思う」
「そうか、ありがたく預かろう」

 渡された紹介状を、バルクホルンは厳重に懐へと仕舞う。

「正直、大本営は各鎮守府を競わせようとしてる節があるが、現場はそんな余裕すら無くてな。前線では共闘や救援も珍しくない」
「どこも似たような物だな。統合戦闘航空団もそんな状態だ。功を欲しがる各国軍部がウィッチを送り込んでくるが、現場では功を競う余裕すら無い事も多い」
「統合戦闘航空団設立前はもっとひどかったですわよ?」
「本当に似たような物だな………」
「あ、ドローンの準備出来たって」

 どの世界も現場の苦労はほぼ一緒らしい事に双方が頷く中、ヴェルヴィエッタが401からの報告をあげてくる。

「よし、それでは行くとするか。順番は輸送機の発進を確認後、私、クロステルマン中尉、宮藤の順にカタパルトから発進、上空で輸送機とランデブーする。搭乗は私が中央、クロステルマン中尉が右翼、宮藤が左翼だ」
「はい!」「分かりました!」

 バルクホルンの指示に従い、三人はイー401へと向かう。
 程なく、イー401のカタパルトから大型ドローンが発進し、続けて三人のウィッチが出撃していく。

「いってらっしゃーい!」
「バーゼにお土産よろしくね」
「遊びに行くわけじゃないって」

 FAG達の気の抜けた言葉に、ストラーフが突っ込みを入れる様を、他の面々は笑いながら見る。

「さて、果たして向こうはどう出るか………」

 飛び立つドローンを見送りながら、長門は思わず呟いた。



「全員搭乗を確認、問題は無いか」
「有りませんわ」
「へ〜、これはすごいですね」

 ストライカーユニットを装備したまま、ドローン内部に格納状態で搭乗した三人は意外と乗り心地がいい事に驚く。

「完全格納、しかも与圧までされている。これなら魔法力を切っても問題ないな」
「有事の際はこのまま出撃出来ますし」
「ちょっと狭いですけど」
『ウィッチの速度や移動問題の解決のために作られた試作機だそうです』

 そこでドローン内部に投射された通信映像で401のブリッジから静が説明してくる。

『そちらの状態はこちらでもモニターしてます。何かあったらすぐに報告してください。操縦はAIによる自動操縦ですが、有事の際は中央にマニュアル操縦桿が付いています』
「了解している。これの使用感の検査も任務の内だからな」
「でもほんと便利ですねこれ」
「あまり長時間だと問題は出そうですが」
「トイレなら簡易式がこっちに…」
「率直に言わないでくださいまし!」
『それでは加速します。一時間ほどで目的地に着く予定です』
「さてどう出迎えられるかだな………」



一時間後 呉鎮守府

「アレか?」

 連絡を受けていた呉鎮守府の艦娘達が、半分は艤装を装備した警戒態勢で、もう半分は完全に野次馬根性丸出しで来訪予定の客を待っていた。
 上空に飛来した見慣れない機影に警戒が高まるが、そこから何かが分離するのが確認出来た。

「分離確認、母機から三機………いやあれは人でありますか?」
「なんだ、空挺降下か?」

 あきつ丸が自前の双眼鏡を覗いて確認していたが、武蔵の疑問に今見えているのをどう説明すべきか悩む。

「その、飛んでいるであります」
「は? 飛んでるって…」
「本当に飛んでる!」
「何あれ!?」
「飛行用艤装!?」

 あきつ丸に続いて、上を見ていた他の艦娘達も相手の動きに気付く。
 明らかに速度を調整し、弧を描きながらこちらに向かってくる三つの人影に、武蔵はわずかに顔をしかめる。

「変わったのが来るとは聞いていたが、確かにな。そこ、着陸に滑走路がいるらしい。開けておけ」
「は〜い」
「警戒しなくていいのか?」

 そこでビスマルクが艤装の砲塔を一応向けたまま武蔵に問う。

「あの高度であの速度だ。やる気だったらもっと高速で突っ込んでくるか、高空から爆撃してくるだろう」
「それもそうね」

 砲塔を下げながら、ビスマルクも頷く。
 やがて三人は速度を下ろしながら滑走路代わりの艀を滑空しながら着地する。

「足にプロペラ付いてる………」
「耳と尻尾も付いてるよ………」

 見た事も無いウィッチ達の姿に呆然とする艦娘達だったが、ストライカーユニットを脱いだバルクホルンが即座に敬礼する。

「出迎え感謝する。私は第501統合戦闘航空団所属、ゲルトルート・バルクホルン大尉だ」
「呉鎮守府秘書艦の武蔵だ。変わったのが来るとは聞いていたが、予想以上だな」

 武蔵も敬礼すると、改めてウィッチ達を見る。

「先程まで変わった物が生えていた気がしたのだが」
「あれは使い魔の物だ。ウィッチの証でもある」
「ウィッチ?」
「話せば長くなる。言える事は先日ここや横須賀を襲撃したという敵と我々も戦っているという事だけだ」
「なるほど。確かに今一番欲しいのは敵の情報だ。原因と思われる霧の竜巻の調査に行った第二潜水艦隊の事も含め」
「………どう説明すればよいのか。直接本人達に聞いてくれ。そのための通信機も持ってきた」
「どこに設置すればよろしくて?」
「怪我人の方はいませんか? 私治療出来ます!」

 ペリーヌが持ってきた通信機入りの小型コンテナを担ぎ、芳佳が治療を申し出る。

「治療?」
「宮藤は治癒魔法が使える。そちらの高速修復剤のような物だ」
「なるほど、変わったのが来るとは聞いていたが」

 説明するバルクホルンだったが、そこで横から聞こえた男性の声に振り向くと、そこに海軍士官服に体を押し込んだような偉丈夫がいた。

「提督、こちらで確認してから応対する予定では…」
「危険は無さそうだったからな。私がこの呉鎮守府を指揮する杉山 喜一少佐だ」
「ゲルトルート・バルクホルン大尉です、よろしく。こちらは冬后提督からの紹介状で…」

 名乗った杉山提督に敬礼してから紹介状を渡そうとしたバルクホルンだったが、ふと相手の右手が三角巾で吊られ、頭部にも包帯が巻かれているの気付く。

「その怪我は…」
「この間の妙な敵の襲撃でな。気にしないでくれ」
「宮藤、頼めるか」
「はい! ちょっと失礼します!」

 バルクホルンに促され、芳佳が杉山提督の隣に立つと、固有魔法を発動させる。

「何を…」
「これが宮藤の固有魔法だ、心配しなくていい」

 身構える武蔵だったが、当の杉山提督が警戒していない事に構えるのを止めた。

「これでどうでしょうか?」

 程なくして治療を止めた芳佳に言われ、杉山提督が吊っていた右腕を動かしたり額の包帯を触ってみて驚く。

「………驚いた。確かに治ってるようだ」
「本当ですか!?」
「これはたまげたであります………」

 杉山提督が呟くと武蔵だけでなくあきつ丸や他の艦娘達も驚く。

「その、まだ出来るでありますか?」
「全然平気です。まだ治す方いますか?」
「前回の襲撃で入渠している者がいる。治してもらえるならありがたいが………」
「任せてください! で、どこに?」
「案内するであります」

 杉山提督の願いに快く返答した芳佳を、あきつ丸が案内していく。

「どうやら、彼女達を信用してもよさそうだ」
「なぜ?」
「あれほどの力を隠そうともしない。裏の無い証拠だろう」
「確かに、あれだけの力を交渉材料にも使わないとは」

 杉山提督の判断に、武蔵も頷く。

「では予定通り通信機の受領と設置を」
「これ単体だけでも問題ないそうですわ。仕組みは理解できませんけれど」
「そうか、なら私の執務室へ」
「全員警戒態勢の解除」

 通信機を伴い、ウィッチ二名は呉鎮守府の提督執務室へと向かった。



「そこでいいか」
「恐らくは。ヴェルヴィエッタ」
「はい、接続と起動を行います」

 部屋中央の来客用と思われるテーブルに通信機を置いたペリーヌは、ヴェルヴィエッタに後の作業を頼む。
 作業が進む中、杉山提督は紹介状に目を通しつつ、ヴェルヴィエッタの方をちらりと見る。

「それは妖精、ではないようだが………」
「武装神姫と申しますの。今回の件であちこちに派遣された一体ですわ」
「小さいが何かと便利だ。戦闘でもそれなりに頼りになる」
「このサイズでか。信じがたい話だが………」
「起動確認、通信回線開きますか?」
「頼む」

 ヴェルヴィエッタが通信機を操作し、イー401の次元間通信機を介して学園鎮守府(仮)への回線を開く。
 程なくして、通信機に見慣れぬ制服姿(東方帝都学園のを借りた)でスナック菓子を食べながら談笑している第二潜水艦隊の姿が表示された。

『………! 皆さん通信! 通信繋がってます!』
『隠すのね!』
『もう遅い』
「………元気そうなのは分かった」

 慌ててお菓子を隠す第二潜水艦隊に、杉山提督は少し呆れた顔をする。

『報告が遅れて申し訳ありません提督! 聞いてはいると思うでちが、第二潜水艦隊は全員無事であります。まだ途中ですが報告が山ほどあるでち!』

 率先してゴーヤが報告(口元に食いカスが付いたまま)するが、他の艦娘達は慌てて背後の菓子や漫画を隠していた。

『提督はどこまで聞いて?』
「足にプロペラつけた子達が下りてきて、鎮守府を攻撃した敵と戦っているとだけ」
『………間違ってはいないでちが。問題はその敵が色々いるらしいでち』
「色々?」
「ヴェルヴィエッタ」
「はい」

 ゴーヤの報告に杉山提督が小さく首を傾げたのを見たペリーヌがヴェルヴィエッタを促し、ヴェルヴィエッタは内部データから現在確認されている敵の一覧を通信機の画面に映し出していく。

「これは………」
「それが現在我々が交戦した敵の一覧だ。見覚えの有るのもないだろうか?」
「あ、これだこの間ここ襲ってきたの!」

 横からその一覧を見ていたバルクホルンだったが、同じく横で見ていた武蔵がその一覧にあったのを指さす。

「ネウロイか、それは我々ウィッチが交戦していた敵だ。個体差がかなりあるが、弱点は」
「内部の玉。重巡や戦艦の砲撃で外装を剥がし、そこを攻撃して倒した」
「それが正しい対処法だ」
「だが、あんなの見た事は無いんだが………」
『それはそうでち。何せ、別の世界の連中でちから』
「別の世界?」
「そうだ、私達はこの世界とは違う世界から来た」

 ゴーヤとバルクホルンの唐突な話に、杉山提督と武蔵はそろって目を丸くする。

『信じられないかもしれないけれど、本当の事でち。正直、ゴーヤ達もまだ信じきれてないでちが………』
「私達も最初は戸惑ったからな」
「違う世界………」

 二人がかりの説明に、杉山提督は顔をしかめて思わず唸る。

「違う世界から来たって証拠は?」
「その目で見たはずだ、我々ウィッチとストライカーユニット、武装神姫、そしてこの通信機もだ」
「確かにやたら高性能だが………深海棲艦の影響を避けるため、鎮守府の通信機は旧式を使っているからな」
「らしいな。ネウロイ相手だともっと徹底して、斥候部隊は金属製品すら最低限にする」
「そのネウロイと深海棲艦は近い存在、と考えていいのか?」

 バルクホルンと武蔵の会話を聞いた杉山提督が問い質すが、バルクホルンも首を捻る。

「そこは分かりません。だがもっと厄介な敵も色々確認されています」
『こっちだと、物体すり抜けて触られただけで人が炭になる奴と戦ったでち。ノイズとかいうらしいでちが………』
「さすがに早々信じられる話ではないが、辻褄はあう………のか?」
「と言ってもな………」

 半信半疑の杉山提督と武蔵に、バルクホルンは少し考えて口を開く。

「実はこの間分かった事なのだが、最近深海棲艦の間で使われる刀」
「ああ、あのとんでもねえ妖刀だな。どこからあんな物…」
「あれは私達501の副隊長、坂本少佐の愛刀 烈風丸である事が判明しましたの」
「は?」

 バルクホルンに続けて、ペリーヌが説明した事に再度武蔵が目を丸くする。

「本当かそれ………どんな剣豪だ、そっちの副隊長………」
「すごく頼りになる方ですの。残念ながら前線から引退してしまいましたが………」
「その原因が烈風丸だ。あれは使用者の力を根こそぎ抜き出してしまう。深海棲艦もそれを理解したのか、次々使い手を変えているだろう」
「あれってそういう事だったのか………くそ、それが分かってれば!」
「残念ながら、烈風丸は極めて強力な武装、それをほぼワンウェイとして使用してくる以上、対策は難しいです」
「実際、この間私達も烈風丸を使用してくる深海棲艦と対峙した艦娘の方々の救援に向かったのですが、結局救助した後に離脱するしかありませんでしたの」

 武蔵が悔しがるが、ヴェルヴィエッタとペリーヌの説明に更に歯ぎしりする。

『一番の問題は、それらを引き起こしている元凶がいる事でち』
「それが目下、我々の最大の敵だ」

 ゴーヤとバルクホルンの言葉に続けて、通信機の画面にJAMの姿が映し出される。

『この変な縞模様、JAMって言うらしいでち』
「惑星フェアリィから攻めてきたエイリアン、それ以外の事はほとんど分からない。だが恐らく目的は、ウィッチや艦娘のような特異戦力のデータ収集」
「待った、それが本当ならここも横須賀も威力偵察で攻撃されたってのか!?」
「それだけではない。すでに我々の知りうる世界で幾つもの襲撃が起きている。そして、別の世界で敵の対処法を知らない者達は苦戦を強いられている」
「ああ、その通りだ」

 バルクホルンの説明に、杉山提督は静かに頷く。

『そして、その襲われた人達が結集して、JAMに対抗する組織を作ったそうなんでち』
「JAM対抗組織、NORN。我々ウィッチもそこに所属している」
「つまり、私達もそこに入れと?」
「私の任務はあくまで通信機の配達と簡易的な説明だ。それ以上の事は今横須賀鎮守府に来ているガランド少将と話してほしい。現状ウィッチ隊の最高責任者だ」
「むう………」

 そこまで聞いた杉山提督は思わず唸り声をあげる。

「横須賀の冬后提督はなんて言ってるんだ?」
「それなんですけれど、こちらと併せて烈風丸対策で手一杯で、そこまで話が進んでませんの」
「提督………」

 ペリーヌの説明に、武蔵は杉山提督の方を見るが、当人はうつむいて思案中だった。

「目下の問題は、深海棲艦の手にある烈風丸をどうにかする事、こちらとしても坂本少佐の愛刀が悪用されるのは放置できん物がある」
「よりにもよってあんな化け物達に坂本少佐の刀が渡るなんて………今度という今度こそ何が何でも奪還してみせますわ………」
「破壊してもいいと坂本少佐自身言っていただろう」

 問題提起するバルクホルンにペリーヌは何か危険な雰囲気で宣言し、バルクホルンは思わずたしなめる。

「そちらも何かと大変なのは分かった。確かにあんな物悪用されたら責任問題だろうしな………」
「そのために呉鎮守府も協力してほしいと?」
「そうと言いたい所だが、そこまでの権限は私には無い。今横須賀鎮守府に来ているこちらの船とのホットラインも繋がるので、そこから話し合ってもらう事になります」
「いいだろう。だがその前に確かめなければならない事が有る」
「それは?」
「それは…」

 杉山提督の提案に、バルクホルンは素直に応じ、ペリーヌは驚く事になった。



「あの、これって一体?」

 入渠中の艦娘達を治癒してきた芳佳が、運動場と思われる一角に艦娘達が集合してバルクホルンと武蔵を取り囲んでいる状況に首を傾げる。

「杉山提督の発案ですの。まずはこちらの実力を見せてほしいと」
「実力って、模擬戦ですか? あ、でも模擬専用の装備なんて持ってきてませんよね?」
「ええ、ですので火器無しでするそうですの」
「火器無しって、それって………」

 周囲を取り囲まれる中、同調テスト用の非武装艤装を装備した武蔵が腕を回しながら具合を確かめる。

「悪いな、ウチの提督はなんでも確かめないと信用しないタチでな」

 それと相対するバルクホルンも魔法力を発動させ、使い魔のジャーマンポインターの耳と尻尾を出現させながら拳を鳴らす。

「構わない。何より相手の実力を知らなければ協力も何もないからな」

 やる気満々の双方が、不敵な笑みを浮かべて対峙する。

「え〜、それではこれより当鎮守府秘書艦武蔵殿と、501統合戦闘航空団、ゲルトルート・バルクホルン大尉の模擬戦を始めるであります」

 審判を任されたあきつ丸が両者を見ながら宣言する。

「条件を対等にするため、双方火器の使用は厳禁、他は何でもありであります。ただ、これはウィッチの方々を実力を知るための物だという事をお忘れなく」
「分かっている」
「心得た」
「それでは、始め!」

 号令と同時に、バルクホルンが一気に前に出て拳を突き出す。
 武蔵は腕を上げてその一撃をガードするが、その拳に込められた予想外の力に後ろに弾き飛ばされ、かろうじて堪える。

「くっ!」
「よく堪えた!」

 外見に似合わぬパワーに武蔵がたじろぐが、追撃を狙うバルクホルンに、武蔵がカウンターとばかりに拳をボディに叩き込む。
 かろうじてシールドで直撃を防いだバルクホルンだったが、今度はこちらが後ろへと弾き飛ばされる。

「やるな」
「そっちも」

「武蔵とパワーで互角だと!?」
「あれがウィッチの力か」

 最前列で見ていたビスマルクが驚く中、隣にいた杉山提督も予想以上の力に驚いていた。

「だ、大丈夫でしょうか?」
「バルクホルン大尉なら大丈夫だと思いますけれど………」
「何かあったら宮藤少尉が治療すれば問題ないんじゃない?」

 かなりの迫力の格闘戦に芳佳が心配し、ペリーヌも少し顔を曇らせるが、ヴェルヴィエッタは芳佳の方を見て呟く。

「確かに治療出来るんがいるのは便利やな。高速修復剤も安うないし」

 そこで隣から聞こえてきた関西弁に芳佳がそちらを見ると、小柄でバイザーキャップを被った艦娘と目が合う。

「龍驤型1番艦 龍驤や。さっきは怪我してた皆、治してもろうてありがとな」
「宮藤 芳佳です。それが私の特技でして」
「便利なモンやな。それと一つ聞きたいんやが、ウィッチいうんはみんなああなんか?」

 龍驤の視線の先、武蔵とバルクホルンが一進一退、互角の格闘戦を繰り広げ、双方の拳が立てる音がまるで巨大ロボ同士のような様相を呈していた。

「え〜と、その」
「ウィッチは確かに魔法力を発動させれば身体能力が上昇しますけれど、それとは別に固有魔法という物が有りますの」

 言いよどむ芳佳に替わってペリーヌが説明する。

「宮藤さんの固有魔法は治癒、そしてバルクホルン大尉の固有魔法は怪力ですの」
「なるほど、道理であの武蔵はんと互角な訳や………それであんたは?」
「これですわ」

 そう言いながらペリーヌは魔法力を発動、その手に小さく電撃をまとわせて見せる。

「雷さんか、使えそうやな」
「ええ、前回はこれで深海棲艦を黙らして撤退しましたの。できれば止めを刺したかった所でしたが………」
「マスター、救援が目的だったからあれで正解」
「変わった妖精連れてるんやな」
「武装神姫って言うんですの」
「あ!」

 芳佳の声にペリーヌと龍驤が視線を戻すと、そこには袖を絡み取られ、更に足払いで体勢を崩されたバルクホルンの姿が有った。

(これは、ジュードーか!)

 投げ技だと判断したバルクホルンが受け身を取ろうと身構えるが、武蔵は体勢を崩したバルクホルンをそのまま力に物を言わせて振り回す。

「!?」
「行くぞ、耐えろよ!」

 回転の勢いをつけて、バルクホルンの体が宙へと投げ上げられる。

「え…」「なっ…」

 ウィッチ二人が絶句する中、艦娘達は声を上げる。

「出たぞ必殺の大戦艦おろし!」
「というかマズイんちゃうか!?」
「誰かネット!」

 高々と放り投げられたバルクホルンに艦娘達も慌て始めるが、武蔵は宙でバルクホルンが腕を胸でたたみ、体を伸ばすのを見た。
 バルクホルンは投げられた勢いを利用して体を旋回させ、適度に勢いを殺しつつ、地面に激突する直前にシールドを展開、残った勢いをシールドで受け止めつつ、地面を転がって完全に勢いを殺すと何食わぬ顔で立ち上がる。

「な…」
「武蔵の必殺技を食らって平気なのか!?」
「ほう………」

 今度は艦娘達が絶句する中、武蔵は感心していた。

「まさかあそこから立て直すとは」
「これでも空戦ウィッチだ。空中での体勢保持なぞ基本中の基本だ」

 天高く投げられた相手が平然と着地してその理由を話した事に、艦娘達の視線は別のウィッチに注がれ、芳佳は小さく首を左右に振り、ペリーヌは少し考え込む。

「本当なら投げた後に砲撃を叩き込むまでで1セットなんだ」
「そうか、やはり無手だと互いに決め手に欠けるな」

 バルクホルンは視線を左右に向け、ふと横手に前回の襲撃の修復用と思われる建材が有るのに気付く。

「火器は禁止、だったな」

 そう言うやいなや、バルクホルンは建材の中から鉄骨を掴むと、それを片手で持ち上げると両手に持ち直して構える。

「ちょ…」
「バルクホルンさん!?」

 皆が慌てる中、武蔵は小さく笑みを浮かべる。

「それいいな」

 武蔵も同じように建材から鉄骨を掴むと、構える。

「あの、それはさすがに…」
「はああぁ!」
「せえいぃ!」

 審判のあきつ丸の制止よりも早く、気合と共に両者が鉄骨を振り回し、文字通り鉄の塊同士が激突する轟音が鎮守府に響き渡る。

「やるな!」
「そちらこそ!」

 互いに笑みを浮かべながら、鉄骨同士がぶつかる轟音が幾度となく響きまくる。

「さ、さすがに危険であります!」
「大丈夫、怪我しても宮藤が治してくれる!」
「なら遠慮はいらないな!」
「私にも治せる限度が…」

 興奮してきたのか、制止の声も無視して二人は鉄骨の危険すぎるチャンバラを続け、どんな力がこもっているのか鉄骨も徐々に変形していく。

「そぉら!」
「なんのぉ!」

 武蔵が全力を込めて鉄骨を水平にフルスイング、バルクホルンはそれを構えた鉄骨とシールドを併用して受け止める。
 今までで一番の轟音が轟き、間近で聞いた者達が何人も思わず耳を抑える中、双方どう見ても本来の用途に使えない程に変形した鉄骨を放り投げる。
 変形した鉄骨が轟音と共に地面にめり込む中、両者は笑みを浮かべた。

「実力確認と言うなら、これくらいでいいか」
「ああ、十分見させてもらった」

 衣服を払ってホコリを落とすバルクホルンに、武蔵も両手を払ってホコリを落とすと、互いに差し出した手を握り合う。

「そ、それまでであります!」
「怪我有りませんか!?」

 やっとそこであきつ丸の終了宣言が入り、芳佳が慌てて二人へと駆け寄る。

「ああ、問題ない。互いに急所には入ってない」
「鉄骨なんてぶつかったら急所なんて関係ありません!」
「それもそうだな。だが互いに問題になるほどの怪我は無い。ウィッチとは中々やる物だな」
「どこの世界も脳筋っているんだね」
「ヴェルヴィエッタ、それは言わないでおきなさい。それに武蔵さんに大怪我なぞさせたら、杉山提督に申し訳が立ちませんわ」
「む、秘書艦に重傷負わせたら確かに問題になるか」
「いえ、そちらではなく………気付いておりませんの?」
「何がだ?」
「武蔵さんと杉山提督、左手薬指に同じデザインの指輪はめてますわよ?」
「………え?」

 言われて改めて武蔵の手を見たバルクホルンが、確かにそこに指輪がはまっているのに気付く。

「その、既婚者だったのか?」
「ああこれか、ケッコンカッコカリと言ってな。鎮守府の責任を持つ提督と儀式的関係を結ぶ事によって艦娘の術的存在を高めるらしいんだが、まず該当する艦娘の力と提督からの信頼度が重要で、つまりは提督からもっとも頼られる艦娘が…」

 武蔵の長口上の途中で、龍驤が手招きしてバルクホルンを遠ざけさせる。

「あれ、始まると長いからほっとき。どうこう言いながら、ただ惚気てるだけや」
「つまりは本当に既婚者なのか?」
「まあ鎮守府ごとで違うようや。ここはほぼ事実婚扱いやけど。横須賀鎮守府だと水面下で誰がするかで争いが起きてるいう噂や」
「冬后提督、意外と優柔不断なんだな………」
「ウチの提督も実は胸で選んだいう噂も…」

 何か聞いてはいけない事を聞いた気もするバルクホルンだったが、そこで今まで無言で模擬戦を見ていた杉山提督が歩み寄ってくる。

「そちらの実力は見させてもらった。こちらの第二潜水艦隊からの詳細報告後になるが、同盟の件は検討したい。問題は大本営にどう報告するかだが」
「同盟の件は上の判断になるが、異常が起きている件はそちらの上層部にも伝わっているはず。場合によってはそこまで話を持っていく事になるかもしれません」

 バルクホルンの話に、聞いていたあきつ丸が小さく唸る。

「はっきり言って、大本営は各鎮守府にほとんど丸投げでありますよ? どこの鎮守府の提督も現場主義者ばかりで、前に一度大本営に集合したら、あまりの殺気に大本営の人員の半数が逃げたという噂も」
「………統合戦闘航空団の隊長が全員集まってもそこまでは………」
「あれは緊迫感持ってない方が悪い」
「提督、あの時はさすがに脅しすぎだったぞ」

 さらに聞いてはいけない話を聞いた気がするバルクホルンは、聞かなかった事にしつつ後片付けをする。

「資材を無駄にしてしまったが、これどうする?」
「工廠持ってけば何かに使えるだろ」

 再度魔法力を発動させて武器に使った鉄骨を持ち上げたバルクホルンの隣で、武蔵も自分の使った鉄骨を持ち上げる。

「同盟を組む事になったら、あんたに援護を頼もうかな」
「構わない、頼れる者がいるのはこちらも心強いからな」

 そう言って笑いながら鉄骨を担いでいく武蔵とバルクホルンの姿を、残った者達はどこか引きつった顔で見送る。

「何か、シュールな絵やな………」
「バルクホルン大尉が素直に相手を認めるのは珍しいですわ」
「殴りあって友情が芽生えたでありますな」
「有るんですかそんな事?」
「少年漫画じゃあるまいし………」

 ヴェルヴィエッタが呆れた所で、通信が届く。

「あ、ガランド少将から帰投命令。一応こっちでの事はリアルタイムで送信してた」
「帰ったら何を言われるのやら………」

 あちこちに鉄骨が叩きつけられた痕跡が残る地面を見ながら、ペリーヌは思わずため息を漏らす。

「なんやもう帰るんか?」
「もっと色々聞きたい事はあるのでありますが」
「こちらも忙しい身でして」
「また次の機会の時にでも」
「あんただけでも残らんか? 入渠も高速修復剤もいらんようなるのはめっちゃ助かるわ」
「生憎と宮藤さん程の治癒能力者はこちらでも希少でして………」
「NORN内でも二番目だって言われました」
「もっと上がおるんか!?」
「これはぜひとも同盟組みたい所でありますな」
「………それにはある程度の覚悟が必要でしてよ」

 盛り上がる艦娘達にペリーヌが釘を刺す。

「覚悟?」
「JAMがもたらす被害は増えていく一方ですの。少し前も前線基地への攻略戦を行ったのですが、幾つもの世界の幾つもの組織が合同の総力戦でやっとでしたわ。今後、更に激化する予想がされてますの」
「だから仲間になってくれる人達探してこちらの世界に来たんですけれど………」
「………判断はもう少し先にしてもらおう。冬后提督とも話し合う必要がありそうだ」
「そうしてくださいまし。これ以上の事は私達からは言える立場に無いので」

 話を聞いた杉山提督の回答にペリーヌは静かに頷く。

「ただそれとは別に、警戒態勢は高めてください。最近、何故か個人単位で別の世界の方同士を入れ替える奇妙な事が起きてまして」
「入れ替え………でありますか?」
「ええ、何か妙な事が起きたら、すぐにご連絡ください。JAMとは何をしてくるか全く読めない存在らしいので」
「その点は深海棲艦と変わらんちゃうか?」
「う〜ん、そうなんでしょうか………?」

 JAMの未だ未知の恐怖をどう伝えるべきか、ウィッチ達は悩むが答えは出そうになかった………



異なる世界 S.O.N.G.所有演習場

『千ノ落涙!』
「ミラージュビーム!」

 翼の放った無数の光剣を、香坂 エリカの放った腐食ビームが阻む。

「サイキックピース!」
『天ノ逆鱗!』

 周辺の砂礫やがれきを香坂 エリカがサイコキネシスで飛ばすが、翼は巨大な剣を眼前に落下させて防壁とする。
 直後に飛び出した翼と、間合いを詰めていた香坂 エリカの両者の手にした刃が交差し、甲高い音を立てる。

「中々出来るな」
「そちらこそ」

 白刃越しに翼と香坂 エリカが互いに賞賛した所で、互いに刃を弾いて離れ、そして再びぶつかった。

「あのお嬢様、結構やるデス」
「戦い方も変わってるし」
「向こうから見たらこっちの方が変わってるでしょ」

 双眼鏡で二人の模擬戦の様子を見ていた切歌と調の呟きに、同じく双眼鏡で見ていたマリアも呟く。

「こっちはどうかしら」

 マリアが背後を振り向くと、そこにはツールを構えて閃光を発射するすぴなと、その隣で弾着確認をしているクリスの姿が有った。

「弾着確認、ちょっとずれてんな」
「発火が少し鈍いな。さっきのは噴け過ぎだったし」

 エルフナインの試作ブリッドを一つずつ出来を確認しながら、すぴなはブリッドの空薬莢を排莢して次をセットする。

「ま、安モンやバッタ物掴まされるよりはずっといいが」
「あんのかそんなの?」
「こっちじゃパンツァーは競技だからな。ブリッドやパーツもブランド品からジャンク品まで有るんだ。よくジャンク漁りしてパーツ集めてたぜ」
「なんか、涙ぐましいな………」
「ま、ブリッドがロハで手に入んなら文句は言わないさ。買ったら安くねえし。学生連中は結構苦労してたな」
「自腹切って戦うのはなんだかな………」

 色々と世界間の違いを感じつつ、二人は試作ブリッドのテストを続ける。

「で、あのお嬢様はこいつを大量に作らせる気みたいだぜ?」
「らしいな。なんでもこっちのパンツァー連中は二回程襲撃食らったが、一回目でブリッド使い果たして二回目エライ目に有ったらしい」
「どこのも一長一短あるモンだな………」
「姉御、今のでテスト用は最後だよ」
「了解」

 ガブリーヌが試作ブリッドが切れた事を知らせると、すぴなは重甲を解いて大きく息を吐く。

「いいのは6番目と13番目といったとこか?」
「弾着も悪くないしな」
「そっちで多めに作ってもらって、今度は連続使用のテストだな」
「連続で使う事あるのかよ」
「大技なんかだとブリッド三発くらいまとめて使うからな。ジャムったらやばい」
「なるほどな」

 銃使い同士で話し込む中、模擬戦を終えたエリカと翼がこちらへと来る。

「そちらは終わりました?」
「一応な。S.O.N.G.の技術主任とやら、見た目の割に結構出来るぜ」
「どこの世界にも一人くらいは優秀な技術者がいるのはありがたい所ね。ここの方はあっち側じゃないようですし」
「あっちとは?」
「………その、NORNで集まった技術者の半数はマッドな人ばかりで」

 香坂 エリカとスピナの会話に何気なく聞いてきた翼に、香坂 エリカはわずかに目をそらして答える。

「半分マッドサイエンティストで構成された集団か………大丈夫なのか?」
「優秀という点では疑いようが有りません。一応主任の宮藤博士はものすごく真っ当な方ですし」
「残る半分のアクがすごいですけど」
「イーダ、しっ!」
「………まあそれならエルフナイン混じっても問題なさそうだな」
「こちらも最初面食らったしな」
「それはそうだけど」
「何かありまして?」

 今度は装者達の会話に香坂 エリカが問うてくる。

「彼女、人間じゃなくてホムンクルスなんデス」
「元はキャロルっていう錬金術師がベースなんだって」
「………コピークローンという事? 私の世界だと違法ですよ?」
「つうかどこでも違法だろ、それ」
「コピーとかデザインチャイルドとかなら一応おりますけど………」
「今更人間じゃないのが何人か増えても問題ないのでは?」
「がるる、それもそうだ」
「………本当にどういう人達が集まってるの?」

 少し顔をしかめる香坂 エリカとすぴなにガブリーヌとイーダが余計な事を言って装者達が更に混乱する。

「それだけ雑多な者達がいるのなら、もし立花がそっちに行っても問題無いか」
「まだ連絡取れねえのかよ?」
「ビーコンは送ってるのだけれど………」
「JAMが余計な事やってマルチバースの空間状況がデタラメだ。私達の出力だと厳しいのだ」
「小っさいしな」
「この子達も複数世界の総合技術で作られているそうですけど………」

 あれこれ話し合っている中、クリスのスマホがメール着信音を鳴らす。

「あ〜………」
「誰からだ?」

 表示された送信相手にクリスが顔をしかめるのを見たすぴなが不審に思って声をかける。

「未来からだ………そぞろごまかすのも限界だな」
「どちら様で?」
「立花のルームメイトで親友だ。S.O.N.G.の事も知っていて立花を支えている人物でも有るのだが………」

 香坂 エリカも不審に思う中、翼が説明する。

「そりゃ、いきなりいなくなって連絡不能じゃな」
「前に諸事情でしばらく死んだ事にしてた時は色々やべえ事になったしな」
「だがなんと説明すればよいのか………」
「今まで以上に突拍子も無い事だし………」

 装者達が悩む中、香坂 エリカも考える。

「何なら、私から説明しましょうか? こちらも聞きたい事が有りますし」
「そうだな………まずは司令に許可をもらってからだ」
「そもそも信じてくれるデスか?」
「難しいかも………」
「正直あたしはまだ半信半疑だよ………」

 S.O.N.G.用の通信機で連絡を入れる翼の背後で、他の装者達は腕組みして果たして大丈夫かと悩むが、結論は出なかった。



一時間後 S.O.N.G.母艦内

「響が行方不明!?」

 突然告げられた事実に、髪を肩口で切りそろえた一見大人しそうな少女、小日向 未来は思わず声を荒げる。

「いつ!? どうして教えてくれなかったんですか!」
「落ち着け小日向」
「それが、どうにもただ行方不明ってのとは話が違うらしいんだ」
「どう違うんですか!?」
「今そこを説明しましょう」

 翼とクリスがなんとかなだめる中、未来の口調は荒げたままだったが、そこへ香坂 エリカとすぴなが入ってくる。

「こちらの人達は?」
「初めまして。私、香坂 エリカと申します」
「旋風院 すぴなだ」
「わたくしは武装神姫、ハイマニューバートライク型MMS・イーダ」
「がるる、ヘルハウンド型MMSのガブリーヌだ」
「え、あの、ロボット?」

 初見の二人とその肩にいる武装神姫に、未来は訳が分からず目を丸くする。

「これから話す事は、まだ未解明な事も多いですけれど、真実です。貴方が失踪した立花さんの親友という事でお話した上で、ご理解していただければいいのですが」

 そう前置きして、香坂 エリカは今起きている事、JAMが起こしている転移現象とそれに響が巻き込まれたらしい事を説明する。
 自分が何故か響とトレードされるような形でこの世界に来たらしい事も。
 最後まで聞き終えた未来は、ただ困惑するばかりだった。

「その、響は無事なんですか?」
「確かめようはないのですけれど、JAMの目的が特異戦力保持者の観察、だとすればその戦力を発揮できる環境に転移させた可能性は極めて高いでしょう」
「超空間通路に突っ込んでいったりしない限り、極端に妙な所には行かないはずです」
「突っ込んでった奴いんのか?」
「艦娘と呼ばれる方々が調査のために突入して、ある部隊は気付いたらセーヌ川に、別の部隊はニューヨークの自由の女神像前に出たそうです」
「どういう基準だよ………」
「どちらも華撃団と呼ばれる特殊部隊が存在している所で、それぞれ接触して協力体制を取りましたわ。もっとも華撃団の方々も前もって他の世界の事を知らなければどうなったかは分かりませんが」
「はあ………」

 どうにも半信半疑、そして無事らしいと言われても響の現状が確認出来ない状況に未来は顔を曇らせる。
 そこで香坂 エリカがある事を切り出した。

「ここからが本題なのですけれど、立花さんが失踪する前、何か気になる事とかは有りませんでした?」
「気になる事?」
「正直、なぜ私と立花さんがトレードされたのか、その理由が分かりませんの」
「JAMの考えている事を理解する事自体、困難というか不可能ってFAFの人達からは言われてますが」

 香坂 エリカの疑問にイーダが余計な注釈を加える。

「私がここに飛ばされる前に失踪したウィッチの方もいたのですが、その方もなぜ狙われたのかは不明でして。そばに彼女の姉も含め優秀な方が何人もいたのですが、何故か並の能力しか持たない方で」
「立花は装者としては悪くないと思うが………」
「財布の中身はこっちのお嬢様とは雲泥の差だけどよ」
「そんな基準は無えと思うぜ、多分………」
「姉御こっち来たばかりの頃、持ってる通貨が使えなくて苦労してたし」
「いきなり宝石出したご主人様もアレですが………」
「一遍財布事情から離れろ」

 脱線していく話を翼が強引に戻す。

「JAMがやり方を変えたのは間違いありません。NORNの関係組織に接触したのなら、保護されてるのは間違いありませんし、まだこちらから接触してない組織の類でも、シンフォギアとノイズの情報を持っているのなら無下には扱われないかと」
「一理あるな。こちらもJAMの情報が欲しくてたまらなかった所に、香坂嬢が来たのは好都合だった」
「半端に情報交流させてんのか? 何のため?」
「知らねえよ、とにかく今大事なのはあの馬鹿が無事かどうかだ」
「響、お腹すかせてないといいけど………」

 論議した所で、全てが空論に過ぎず結論は出そうに無かった………





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