女神転生・クロス

PART3 HIT



「………なんだね、これは」
「検死報告書ですが?」

 年配の監察医に手渡されたばかりの検死報告書を途中まで読んだ捜査課長が、今の自分と同じように気難しい表情をしている監察医に意見を求める。

「ま、実際に見てもらった方がいいでしょう」
「そうさせてくれ」

 困惑のまま、遺体保存室に二人で赴く。
 警察署の中でも近寄りたくない場所の一、ニを争う部屋の一番手前に、司法解剖を終えて間もない遺体に架けられているシーツを、監察医が一気に取り去る。

「……ひどいな」
「ええ、今まで色んなホトケを見てきましたが、ここまでひどいのは滅多にありません。この間の神主もひどかったが、これはそれ以上ですよ」

 縫合されてなお、大きくへこんでいる男の胴体を見ながら、捜査課長が顔をしかめる。

「まず目に付くのがこの跡です」

 遺体の全身に、ソフトボールくらいの無数のアザのような物が有るのを、監察医が指差す。

「拷問の跡か?」
「いえ、幾つか切開してみたんですが、皮下出血がそれ程深くないんですよ。それにアザだけでなく火傷も併発してるんです。質量が極めて軽く、それでいてかなりの高温を帯びた物で殴打されたんだと思いますが、それが何か皆目検討もつかないんです」
「確かにな、警察官になって二十年以上になるが、こんな傷は私も見るのは初めてだ」
「しかも、それが死因じゃないときている。死因は一応内臓損傷によるショック死としましたけど、肺の三分の二、心臓の半分、そして胃全部が内側から食い千切られてるんですよ…………」
「内側から? 寄生虫か何かか?」
「宿主がこんな状態になる寄生虫なんて存在しません。エイリアンにでも寄生されていたとしか………」
「いい加減にしてくれ、ただでさえ最近忙しいのに、何でこうもややこしい事件ばかり………」

 本気で頭を抱え込んだ捜査課長に、監察医も同様に頭を抱え込む。

「そういえば、このホトケを発見した……なんて人でしたっけ? 彼はなんて?」
「ああ、周防警部補の事か。それも頭の痛いとこだ。よりにもよって、悪魔の仕業だとか言っていてな」
「悪魔?」


同時刻 署長室

「………何を言っているか自分で理解しているのか?」
「無論です」

 不機嫌と懐疑をそのままの形で口にした署長に、克哉はさも当然と言った口調で応える。

「で、どこからどこまでが現実の事かな」
「全部です」

 真顔で言い放つ克哉に、署長の片眉が跳ね上がった。

「容疑者の目星を突けた事を知った犯人が悪魔使いをけしかけてきて、それと闘ったなんて報告が警察で通用すると思っているのかね?」
「通用しないならそれで結構です。しかし、これは間違いなく事実です」

 あくまで意見を曲げない克哉を署長はしばし無言で睨みつけていたが、やがてため息一つついて視線をそらした。

「好きにしろ。もう付き合ってられん」
「そうさせてもらいます」

 一礼して部屋を出て行く克哉と入れ替わりに、捜査課長が室内へと入ってくる。

「ちょっといいですか?」
「周防警部補の事か?」
「はい、彼が発見したホトケなんですが、どうにも死因どころか、何で傷を受けたのかすら分からない状態らしくて、報告書の書きようが無いのですが…………」
「一応周防警部補からの報告は聞いた。もっとも長年警察官やっててこんな報告をしてきた奴は初めて見たがね」

 頭痛でもするかのようにコメカミに指を押し当てている署長の様子を見ながら、捜査課長が重いため息を吐いた。

「……港南警察署からはなんと?」
「全て周防警部補に任せろ、そうすれば問題ない。だそうだ」
「全て、ね………」

 とても現実に起きた事とは思えない一連の事件をどう扱うべきか、この難題を解決すべき方法を二人はため息交じりに模索を始めていた。



「ここか?」
「みたいですね」

 八雲とカチーヤの二人は、四番目に聞き込みに行った大学で前に聞き込みに来た刑事に教えたと言われた住所を探し出していた。

「さっきの現場の近くですね」
「警察がうるさくて中見れずじまいだったが、なんか有ったのは確かだしな。案外ここの奴が関係してたりして」

あまり洒落になってない事を言いつつ、古びた家の玄関に立って八雲は呼び鈴を押した。
 待つ事数分。

「……留守かな?」
「さあ?」

 応答が無いのに首を傾げつつ、八雲が玄関を開ける。
 その先には、玄関に不釣合いな程広く、向こう側が見えない程に長い通路が伸びていた。

「………随分とご立派なお宅で」

 僅かに緊張しつつ、八雲が玄関から一歩足を踏み入れると、途端にGUMPが警報音を鳴らした。

「完全に異界化してますね……」
「どうやら大当たりだ」

 八雲が額に架けていたサングラスを下ろすと、その蝶つがい部分にあるジャックにGUMPから伸ばしたコードを繋ぐ。
 GUMPから送られたデータが、サングラスに内臓された超小型ディスプレイに投射される。
 そこには悪魔の所在を示すグラフが無数に表示されていた。

「悪魔だらけか………どこの馬鹿だ、こんな一般家屋ダンジョンにしやがったのは」
「この様子だと、ここに住んでいた人は…………」
「かもな」

 最悪のパターンを予想しつつ、八雲がソーコムピストルの残弾を確かめ、カチーヤは懐から湾曲した刃渡り40cmはある刃を取り出すと、それを一振りする。
 途端に収納されていた柄が伸び、それはカチーヤの身長よりも長い本式の青龍刀となった。

「随分と凶悪な得物使うんだな………」
「色々試してみたんですけど、これが一番なんです」

 カチーヤは何回か青龍刀を振り回し、それを構える。
 隙の無い構えに、八雲は小さく口笛を吹く。

「イエローレベルか、注意しておくに越した事はないな」

 八雲が手早くGUMPを操作し、仲魔を召喚していく。
 召喚に応じて魔獣 ケルベロスが、英雄 ジャンヌダルクが、そして蝶の羽根を持った老人の姿をした妖精 オベロンが召喚される。

「オレとケルベロスは先頭で警戒、カチーヤとオベロンは真中、ジャンヌは最後尾を頼む」
「リョウカイ」
「はい」
「分かり申した」
「は!」

パーティに指示を出すと、全員がダンジョンと化している邸内に足を踏み入れる。

「トラップの類は無さそうだな。急ごしらえで作ったダンジョンといった所か」
「こんな物を簡単に作れるとしたら、相当な術者が関与してますね…………」
「ナニカ来ルゾ!」

 ケルベロスの警告に、全員が臨戦体勢に移行する。
 八雲がソーコムピストルのセーフティを外し、銃口を廊下の向こう側へと向ける。
 サイト(銃の上に付いている照準用の出っ張り)越しに影が現れ、それは妙な軋み音を立ててこちらへと近づいてくる。
 やがてその姿を確認した八雲の顔が怪訝な顔になった。

「な?」
「なんだこいつは!?」

 姿を現した相手に、思わず声が漏れる。
 それは、人と同じくらいの大きさの、飛鳥時代の鎧をまとったハニワだった。
 巨大なハニワが、いきなり腰にある陶製の剣を抜いて一行に切りかかってくる。

「問答無用か!」
「ゴガアアァァ!」

 先頭にいたケルベロスが巨大ハニワの腕に噛み付くが、陶製のハニワは予想外の頑強さで牙を阻み、そしてケルベロスを振り解こうとする。

「この土器野郎!」

 動きの封じられた巨大ハニワの額に八雲が銃口を突き付け、連続してトリガーを引く。
 放たれた弾丸がハニワの額に突き刺さり、三発目で命中部分に大きなヒビが生じた。

「ダメ押し!」

 腰のナイフホルスターからHVナイフを抜いた八雲が、柄尻の高周波振動スイッチを押して弾丸の命中部分に逆手でHVナイフを突き刺す。
 一撃で刃が半ばまで突き刺さり、そこから無数のヒビが生じたかと思うと澄んだ音を立てて巨大ハニワは砕け散る。

「ま、ざっとこんな物…」

 HVナイフをホルスターに仕舞おうとした八雲の目に、通路の向こうからさらにもう数体の鎧ハニワと、更には馬型のハニワまでが出現してきた。

「まだいやがったか!」
「こちらもです! 召喚士殿!」

 ジャンヌダルクの声に後ろを向くと、背後から鎧ハニワと髪を結った女性の姿をした姫ハニワが近づいてきているのが見えた。

「挟み撃ちか!」
「イヤアアッ!」

 気合と共に、カチーヤが大上段から青龍刀を振り下ろして先頭の鎧ハニワを両断して砕くが、返す刃でその隣の鎧ハニワを横薙ぎにしようとするが、初撃程の力のこもっていない刃は相手の胴に食い込んだ所で止まる。

「あっ……」
「危ない!」

 胴に刃の食い込んだままの状態で陶製の剣を振りかざしてきた鎧ハニワの攻撃を、とっさにジャンヌダルクが間に飛び込んで自らの剣で受け止める。

『マハ・ラギオン!』

 オベロンの放った火炎魔法が鎧ハニワの頭部を襲うが、炎耐性があるのかわずかによろけるだけで退こうとはしない。

『ブフーラ!』

 僅かによろけた隙を突いて、カチーヤの氷結魔法が続けて鎧ハニワの頭部に炸裂し、温度差で鎧ハニワの頭部が砕け散る。

「こっちはオレとケルベロスでどうにかする! そっちを頼む!」
「心得ました! 召喚士殿!『ラクカジャ!』」

 ジャンヌダルクの防御力上昇魔法が発動し、淡い光が皆を包み、そのまま体に光がまとわりつく。

「カチーヤ、無理するなよ!」
「分かってます!」

 ケルベロスが足に噛み付いて動きを止めた所で、手にしたHVナイフですれ違い様に勢いを乗せて鎧ハニワの首を斬り飛ばしながら、八雲がカチーヤに注意を向ける。

「来ます! 離れないで!」
「はい!」

 ジャンヌダルクとコンビを組むようにしてオベロンの魔法援護を受けつつ、カチーヤが青龍刀を振るう。
 長柄武器の破壊力を生かしつつ、振り回した後の隙をジャンヌダルクが上手くふさいでいるのを確認すると、八雲がこちらに注意を向ける。
 馬ハニワがいななきもせず突っ込んでくるのを横っ飛びにかわし、その胴体に八雲は弾丸を叩き込む。

「ちっ、拳銃弾じゃ効かないか………」
「危ない!」

 カチーヤの言葉に、八雲がそちらを向こうとした時、その視界に風景が揺らぐ様が飛び込んできたのに気付いた八雲は、床を転がるようにその〈揺らぎ〉を避けた。
〈揺らぎ〉はそのまま先程まで八雲がいた位置にぶつかり、分散した衝撃波が八雲のジャケットをはためかせる。

「ザンマ!? 魔法も使えるのか!」

 ザンマを放ってきた姫ハニワが再度魔法を放とうとしているのに気付いた八雲は、ジャケットの内ポケットからチャイカムTNTを取り出すと起爆スイッチを押して姫ハニワに投げ付ける。

「伏せろ!」

 八雲の指示に従って、馬ハニワの脚に噛み付いていたケルベロスがそれを離して馬ハニワを壁にするようにその背後に回り込み、ジャンヌダルクがオベロンとカチーヤを押し倒すようにして床へと伏せる。
 直後大きな爆発が起こり、爆風が周囲一帯に吹き荒れる。

「おわ!?」

 予想していたよりも強い爆風に、八雲が思わず声を漏らした時、爆風に吹き飛ばされた鎧ハニワがこちらに倒れこんできた。

「おわわ!?」

 再度転がりながら八雲は鎧ハニワの落下予想地点から逃げ、ついでにその位置にHVナイフを上に向けて突き立てておく。
 倒れこむと同時に澄んだ音が響き、自重で深々と刃が突き刺さった部分から鎧ハニワが砕け散る。

「次!」

 素早く起き上がりながら、八雲はカチーヤの攻撃で片腕を失っている鎧ハニワの胴体に突撃の勢いを付けてHVナイフを突き刺し、さらに相手の足を踏みつけて固定した後、両手で一気に上へと切り上げ、さらにそれによって生じた切れ目から駄目押しに弾丸を叩き込む。

「ラスト!」

 内部で跳弾を起こした鎧ハニワの体の各所が着弾の衝撃でヒビ割れていくのを確認すると、八雲が最後に残った馬ハニワに向き直る。

「足を止めろ!」
「ガアアアァァ!」
「ヤアアァァッ!」

 右前足にケルベロスが噛み付き、左前足をカチーヤの青龍刀が半ばまで打ち砕く。

『マハ・ブフーラ!』
「そこだ!」

 さらにオベロンの凍結魔法が後ろ足をまとめて凍りつかせ、ジャンヌダルクの剣が胴に斜めにスジを入れる。

「線を狙え!」
「はい!」

 強固な防御力を誇る馬ハニワの胴に入った唯一の線に向けて、八雲とカチーヤが銃口を向けた。
 二つのトリガーが同時に引かれ、狙い澄ました銃弾が片方は単発で、片方はフルオートで発射された。

「あっ!?」

 グロッグG18C、単発と連射の切り替えが効く極めて珍しいハンドガンのセレクターを、フルオートの方にしていた事を撃った瞬間気付いたカチーヤが、思わず声を漏らしている間に、マガジンの全弾が前方にばら撒かれる。
 半分近くが狙いを外れ、残る半分が馬ハニワに突き刺さり、その内一発がようやく狙っていた線の至近距離に当たる。

「下がれカチーヤ!」

 慌ててマガジンを交換しているカチーヤを、八雲が半ば突き飛ばすように後ろへと下がらせる。
 猛烈に暴れて強引に戒めを振り解いた馬ハニワが突撃してくるのを見た八雲が、背後にいるカチーヤをかばうようにして守りを固める。

「ぐっ!」
「八雲さん!」

 体当たりをまともに食らった八雲の体が吹き飛ばされ、背後のカチーヤがその体をなんとか受け止める。
200

「おのれ!」
「ゴガアアァァァ!」

 高々と前足を上げてそれを八雲に向けて振り下ろそうとしている馬ハニワに、ジャンヌダルクの剣とケルベロスの牙が首筋の左右から襲い掛かる。
 本物の馬並に太く、かつ強靭な硬度を誇る馬ハニワの首の前に剣は弾かれ、牙は致命傷に至らない。

「ガルルル!」

 強引に抱きつくようにして更に牙を食い込ませようとするケルベロスを引き剥がそうと、馬ハニワが暴れまくる。

「ケルベロス! あと少しだけ持ち応えろ!」

 ふらつく足取りで立ちながら懐から素早くGUMPを取り出した八雲が、キーボードをタイプ。温存していた仲魔を召喚させる。
 小型ディスプレイから溢れ出した光が形となり、そしてそれは六つの腕を持ち、無数の頭蓋骨をアクセサリー代わりに身につけているインド神話の猛々しい女神、地母神 カーリーとなった。

「あの馬を砕け!」
「アアアァァ!」

 雄たけびと共に、カーリーが手にした六本の剣を次々と馬ハニワに繰り出す。
 無数の斬撃が馬ハニワの体を打ち据え、ヒビ割れさせていった。

「一気に行くぞ!」
「はい!」
「おう!」
「ハッ!」
「ガアアァァ!」

  執拗に攻撃を続けるカーリーに続いて、二つの銃口から放たれた弾丸が、オベロンの放ったマハ・ラギオンが、ジャンヌダルクの剣が、ケルベロスの口から放た れた業火が馬ハニワを襲い、そしてその一斉攻撃に耐え切れなかった馬ハニワの体が、カーリーの六本同時の上段切りを最後に粉々に砕け散った。

「硬いだけが特技かい、土人形風情が」

 砕け散ったハニワの破片を見つつ、カーリーが獰猛な笑みを浮かながら振り向く。

「さっさとアタイを呼べばもっと簡単に片ついたろうが」
「……そうは思うが、お前たまにオレの背中狙ってないか?」
「さあて、なんの事かねえ…………」

 含みのある笑いを漏らすカーリーを胡散臭げに見つつ、八雲が傷の具合を確かめる。

「大丈夫ですか? 召喚士殿」
「少し傷めたが、骨まではイってないな」
「す、すいません、足手まといで…………」
「ま、初仕事じゃこんなもんだろ」

 カチーヤが謝りつつ回復魔法をかけて八雲の傷を癒す。
 ふと、その光景が何かとダブって八雲の視界に広がる。

『何やってんのよ、まったく足手まといなんだから』
『悪かったな、第一お前も…』

「ネミッサ………」
「え?」

 四年前の相棒の名前を思わず呟いた八雲を、カチーヤは怪訝な表情で振り向く。

「わり、忘れてくれ」
「はあ……」

 それだけ言うと、八雲は無言でマガジンの残弾を確かめて足りない分を装填していく。
 その態度にカチーヤは疑問を覚えたが、あえて何も聞かないで自分も空になったマガジンを交換する。

「………もう来やがったか」

 初弾をチェンバーに送った所で、遠くからまたハニワ達が近づいてくる音に気付いたカチーヤが、緊張した顔で銃口を足音の方へと向けた。

「相手の特性さえ分かりゃこっちのもんだ。オベロンとケルベロスは相手が見えると同時に、けん制して足を止めろ、その隙にカーリーとジャンヌとオレが先頭に集中攻撃で破壊、カチーヤは後方からサポートに当たれ」
「おう!」
「グルルル………」
「分かったよ」
「はっ!」
「はい!」
「来るぞ!」

 オベロンの放った火炎魔法とケルベロスの口から吐き出された業火が姿を現したハニワ達を嘗め尽くし、その炎が途切れると同時に繰り出された都合八つの刃が、先頭の鎧ハニワを一瞬にして粉々に打ち砕く。

「カチーヤ、左を!」
「は、はい!」

 次の狙いを魔法を放とうとしている姫ハニワに決めた八雲が、反対側の鎧ハニワをカチーヤに任せて突撃をかける。

「させないっ!」

 陶製の剣を振りかぶった鎧ハニワに向けて、カチーヤは今度こそ狙い澄ました弾丸を、立て続けに撃ち込んだ。



「これは!?」
 状況説明(という名を借りた尋問)からようやく開放された克哉が、容疑者の事を聞くと同時に襲撃された事を疑問に思い、再度老民俗学者の所に足を運んでいた。
 だが、つい数時間前に訪れたはずの邸宅からは、明らかに異様な気配が漂ってきているのが目に見えて分かった。

「いる、なにか危険な者が………」

 ペルソナがそこにいる何かに強く反応するのを感じた克哉が、玄関を開けると同時にそこに広がっている迷宮を見て絶句する。

『あ の阿部って奴、とんでもなくヤバイ奴だ。過去に遺跡盗掘の疑いが十件以上あるが、そんなのは序の口だ。桐島に聞いてみたら、そっち畑じゃ有名な実践派サタ ニストらしい。ウソかホントかはまだ不明だが、やばい奴を幾度となく召喚に成功しているって話だ。そんな奴が殺人までやらかして何するかは分からねえが、 ろくでもない事なのは確かだ! オレ達もすぐそっちに向かうから不用意に動くな! いいな!』

 数分前に届いたパオフゥからの電話を思い出し、克哉はしばし迷ったが、やがてニューナンブ片手に邸内へと侵入する。
 だが、少し進んだ所で散らばっているハニワの破片に気づき、それを手に取る。

「これは…………」

 破片の中に弾丸が混じって落ちているのを目ざとく見つけた克哉が、もう片方の手でそれを手に取り、破片と交互に見つめてみる。

「誰かが、戦った………しかも、ついさっき」

 まだほのかに暖かい弾丸を握り締めた克哉が、通路の先を鋭い視線で見つめた。

「何者だ? 何が目的で? いや、まずは………」

 通路の向こうから姿を現した一体の鎧ハニワを見ながら、克哉は懐からペルソナカードを取り出す。

「答えは、この先にある!」

 召喚したヒューペリオンから放たれた光の弾丸が鎧ハニワを打ち砕きつつ、克哉は先へと向かって走り出した。


「…………ここがゴールか」
「みたいですね」

 今まで長く続いてきたダンジョンとは明らかに不釣合いな、ごく普通のドアと、その向こうから感じられる強い妖気に八雲が僅かに顔を強張らせる。

「全員回復しとけ。カチーヤ、予備マグの確認を」

 MP回復のチャクラドロップをオベロンとジャンヌダルク、カチーヤに渡しつつ、八雲が手にしたHVナイフの刃の損傷を確かめる。

『メ・デイアラマ』

 ジャンヌダルクの回復魔法が淡い光となって皆を包み、傷を残さず癒す。

「行くぞ」

 緊張、嘲笑、威嚇、とそれぞれの反応を皆が示す中、八雲がドアを開く。
 そこには、山と詰まれた資料に埋もれるようにあるデスクに向かって、こちらからちょうど背を向ける格好で何か作業をしている老人の姿があった。

「なあ、ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「ん? なんだね、君達は」

 体をそのままに、首だけを僅かにこちらへと向けた老人が、八雲達を胡散臭げに見つめた。

「こいつの事、何か知ってないか?」
「……………」

 老人が相変わらず背を向けたまま、首だけを八雲の取り出したモンタージュをへと向かって振り返る。

「ほう、それは………」

 モンタージュを見た首が、そのままの動きで動き続け、そしてそれは背をこちらに向けたまま、完全に頭部を反転させる形となった。

「ヒッ………!!」

 カチーヤが思わず悲鳴を漏らしそうになったのを必死に押し留め、明らかに人間に出来ない動きをした老人に向けて青龍刀を構えた。

「そう、知っているよ、よく知っている。そのお方の事は」
「ほう、それじゃあそれを聞かせてほしいんだけどな」
「さて、どうしようか………」

 困惑と侮蔑が混じったような妙な表情をしたまま、老人の首が再度先程と同じ方向にさらに回り始める。
 老人が答えぬまま、首は一回転して何事も無かったように元へと戻る。

「おお、思い出したよ」

 先程と同じ方向、同じ動きで今度は急激的に首が真後ろに振り返る。
 背後でカチーヤが唾を飲み込む音を聞きながら、八雲も油断無くナイフの柄に手を伸ばした。

「もし、自分の事を聞きにきた奴がいたら殺せ。そういう命令じゃったな」
「ほう…………」

 都合540°動いた首をそのままに、老人が立ち上がる。
 そして、突然その体のあちこちが突然膨らみ始める。

「! 伏せろ!」

 老人の皮膚の下で小爆発が連続して起きているかのような動きに危険を感じた八雲が、怒鳴りながら伏せつつ、棒立ちになっているカチーヤに足払いを架けて強引に転ばせた。

「キャ…」

 突然の事に悲鳴を出しそうになったカチーヤの視界に、内側から老人が爆発するのが飛び込んでくる。

「!?」

 急激的に視界が下へと移動する中、爆発した老人の破片が彼女の髪をかすめ、その数本を吹き飛ばして周囲に飛び散りまくる。

「ぐおっ!」
「オベロン!」

 唯一反応が遅れたオベロンが、老人の破片を食らってよろめく。
 弾丸と化した老人の肉の破片が、室内の壁を貫き、その異常な破壊力に八雲もさすがに顔を青くする。

「ほうほう、なかなか出来るな………」

 耳に届いた老人の声に、八雲が顔を上げる。数秒前まで老人が立っていたはずの場所に、文字通りの異形の怪物が立っていた。

「なるほど、モノホンの化けの皮って奴か………」
「皮は本物じゃったよ。皮はな…………」

 それは、人の形をした肉と臓物の塊だった。学校の人体模型の皮をはがれた半身を重ね合わせたような姿をしたそれは、歯が無く舌だけがよく見える口から嘲笑を上げながら、それは八雲達と対峙した。

「骨の無い臓物だけの異形………ヒルコガミか!」
「さよう…………」

 日本神話でイザナギとイザナミから一番最初に産み出された異形の邪神 ヒルコガミが肉だけで構成された両腕を大きく広げ、交戦の意思を示す。

「参られよ、そして我に主命を果たさせておくれ」
「参って、やるよ!」

 起き上がりざま、HVナイフを抜いた八雲が全力を込めてヒルコガミに斬りかかる。
 分子間結合の剥離を目的とする高周波振動を帯びた刃が、ヒルコガミの胴体を形成する臓物を鮮やかに斬り裂き、通り抜ける。

「なかなか」

 眼球だけの目を八雲に向け、ヒルコガミが斬撃のダメージを意にも介さず片腕を振るう。
 それを予め予期していたのか、八雲はバックステップでその攻撃をかわした。

「ほほう、これは……」
「あんなに手応えが無いんじゃ、効いてないと思ってたがやっぱりだったな」

 ニャリと笑いながら、八雲は血刃をそのままにソーコムピストルを抜くと連続で銃撃する。

「ジャンヌ! 防御と素早さを上げられるだけ上げろ! カチーヤはオベロンの回復! ケルベロスとカーリーは攻撃だ!」

 銃撃を受けつつ、体中から血とも体液とも取れる液体を撒き散らしながら高速で襲い掛かってくるヒルコガミに全弾を叩き込んだ八雲が、両脇から飛び出したケルベロスとカーリーに対処を任せ、自分は後ろに下がってマガジンを交換する。

「くくくく……」

 自らの体を食い千切り、斬り裂いていく攻撃を防ごうともよけようともせず、ヒルコガミは腸を引きずり出していたケルベロスの顔面を掴むとそこに不気味な色をした粘液を吐きつける。

「ギャウッ!」
「ケルベロス!」

 避ける事すら出来ず粘液を食らったケルベロスが悲鳴と共にのたうち回る。

「毒か!?」

 GUMPからのデータがケルベロスの状態異常を示しているのを見た八雲がジャケットの内ポケットからディスポイズンを取り出すとケルベロスの口に突っ込む。

「スマヌ、召喚士殿」
「これでボーナスはちゃらだぞ」
「このモツ野郎!」

 カーリーが六本の剣を縦横無尽に振るい、ヒルコガミの全身を切り刻む。
 臓物や肉片が飛び散っていくのを気に止めないかのように、カーリーの攻撃を平然と食らいながら再度ヒルコガミが毒液を吐き出す。

「食らうかい!」
「じゃあ、これでは?」

 軽々避けたカーリーが、とどめとばかりにヒルコガミの首を左右から同時に狙うが、その目前で突然舌だけがよく見えるヒルコガミの口が肉と臓物の中に埋もれるようにして消え、そしてそれを逆再生するかのようにしてヒルコガミの右手に口が現れる。

「なに!?」

 肉と舌だけで構成される口が手の中で僅かに歪みー恐らく笑ったのだろうー、そこから毒液が吐き出される。

「くそっ!」
「下がれカーリー!」

 毒にはかろうじて犯されなかったが、両目に毒液を食らったカーリーがよろめくように下がる。

『スクカジャ!』
『ブフーラ!』

 ジャンヌダルクの命中力上昇魔法の淡い黄色の光がパーティを包む中、カチーヤが氷結魔法をヒルコガミに放つ。

「ぐお………」
「効いてる!一 気に行け!」

 氷結魔法を食らってヒルコガミがたじろいたのを見た八雲が、一斉攻撃を支持しつつジャケットの内側に取り付けてある攻撃アイテムから液化チッ素が入った小型ボンベを取り出して投げ付け、ヒルコガミの目前でそれを撃ち抜いて中身をヒルコガミの全身に浴びせ掛ける。

「おおぉぉ………」

 マイナス196℃に達する最高ランクの冷却材をモロに食らったヒルコガミの動きが目に見えて鈍る。

『マハ・ブフーラ!』
『ブフーラ!』

 そこにオベロンとカチーヤの氷結魔法が連続でヒルコガミの全身を凍りつかせていく。

「なめるな、小僧」

 ギクシャクとした動きで持ち上げたヒルコガミの片腕が、突然伸びて八雲の首を掴む。

「ぐっ!」
「死ね……」

 肉だけで関節があるかどうかも怪しい手が、圧倒的な握力で八雲の首を絞めていく。

『ラクカジャ!』
「イヤアァァ!」
「ガアアアァァ!」
「ヒャハハハハ!」

  ジャンヌダルクの防御力上昇魔法が淡い白の光となって八雲を包み、八雲の首が絞め潰されようとするのを僅かに遅らせ、そこに気合と共に降り下ろされたカチーヤの青龍刀が手首からヒルコガミの腕を切り落とし、突撃したケルベロスが伸びきっている上腕に噛み付くとゼロ距離で業火を吐いて口の中の腕を焼き千切り、さらにカーリーが分断され床に落ちようとする腕を無数の肉片へと切り刻んだ。

「この…………」

 片腕を失ったのはさすがに効いたのか、ヒルコガミが身じろぎして僅かに下がる。
 首に食い込んだままの手を剥がしつつ、倒せる、と確信した八雲がHVナイフを構えた瞬間、突如としてヒルコガミの全身が泡立つかのように無数に膨れ始めた。

「死ね」

 ヒルコガミの体表面全てが、表面を覆う氷ごと無数の弾丸となって襲い掛かる。

「二度も食らうか!」

 最初に食らった全身肉弾が来る、と踏んでいた八雲が、前に出ながら懐から八角形の遁行盤(とんこうばん、道教で使われる魔方陣)の形をした鏡―物理攻撃反射の力を持つ物反鏡を突き出す。
 その鏡から光が走り、その光が無数の八角形で構成された網となってパーティを覆う。
 それに降り注ぐ形となった凍りついた肉と生の肉の混成肉弾は、その網に触れると同時に全てがベクトルを反転してヒルコガミへと襲い掛かる。

「グガァ!?」
「チェックメイト」

 跳ね返ってきた肉弾を食らい、原型を留めなくなる寸前まで傷め付けられたヒルコガミに、八雲は一気に間合いを詰めると手にしたHVナイフで一瞬にしてその首を切り落とす。

「がはっ…………」
「おっと、ワリぃがまだ死ぬなよ。どうせそれくらいじゃ死なないだろうけどな」

 力を失ったのか、胴体がただの肉と臓物の塊となって崩れ落ちる中、唯一原型を保っている頭部の真横に、八雲はナイフを突き刺す。

「てめえみたいな不定形悪魔は破魔系魔法で浄化するか、燃やし尽くすか、ミンチになるまですりつぶすかしないと死なないって事はよく知ってんだ。お前が知ってる事、あらいざらいしゃべってもらうぞ」
「ぐ………」

 眼球だけのヒルコガミの目が、八雲と眼前に突き立つ刃を交互に見る。

「四年もサマナーやってるとな、頑固な悪魔の口の割らせ方くらい…」
「動くな! 警察だ!」

 突然背後からドアの開く音と同時に男の声が響く。
その場にいる全員の視線がその声の主へと向けられた。無論、床に転がっている者も。
 全員の注意がそちらへと向かった隙を突いて、崩れ落ちたはずのヒルコガミの胴体がアメーバのように広がり、頭部をその一部として飲み込みながら入ってきた男―克哉へと襲い掛かる。

「ちっ…」

 ヒルコガミの狙いが克哉を人質に取る事であろう事を瞬時に悟りながら、無意味と知りつつ八雲は銃口をそちらに向けようとする。
 しかし、それは予想外の形で不発に終わる。

『ヒートカイザー!』

 突如として吹き荒れた超高温の熱風が、襲いかかろうとしていたヒルコガミを一瞬にして跡形も無く焼却させる。
 熱風が止むと、そこには厳しい顔でニューナンブ片手にこちらを睨むように見ている克哉の姿が露わになる。

「今のは?」

 魔法とも違う力の発言に、カチーヤが首を傾げる中、八雲が無造作に克哉へと近寄る。
 互いの距離が1mを切った時、双方がまったく同じ動作を取った。

「!八雲さん!?」
「てめえ、何者だ?本当に警官か?」

 カチーヤの驚愕を聞きながら、克哉の額にソーコムピストルの銃口を突き付けた八雲が問う。

「それはこちらの台詞だ。悪魔使いがここで何をしている?」

 八雲の額にニューナンブの銃口を突き付けながら、克哉が問う。
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「おまわりはお呼びじゃねえんだ。とっとと帰れ」
「そういう訳には行かない。ここで何が起きたかを説明してもらうまではな」
「……イヤだ、と言ったら?」

 八雲のトリガーを握る指に僅かに力がこもる。克哉も同じくトリガーを握る指に力がこもる。
 八雲の背後では彼の仲魔達がいつでも飛び掛れるように臨戦体勢で待ち構え、克哉の背後では姿を現したヒューペリオンが両手に無数の光の弾丸を構える。

「あ、あの八雲さんも、そちらの人も、穏便に………」

 唯一取り残されたカチーヤがオロオロする中、二人の目が細まり、その間に凄まじいまでの殺気と緊張感が充満していく。

「え、ええぃ!」

 そこに、緊張感からは無縁の戸惑ったようなカチーヤの声と、風切り音が響いた。

「おわっ!」
「なっ!」

 ちょうど両者の中間に振り下ろされた青龍刀の刃が、とっさに腕を引いた両者の袖を少しずつ切り飛ばしながら床へと突き刺さる。

「か、カチーヤ! 危ないじゃないか!」
「いや、その、レイホウさんからもしメンバー内で仲たがいしている奴がいたらこうしろって…………」
「……随分と物騒な和解方法だな」

 毒気を抜かれたのか、克哉が呆れた顔でニューナンブを懐に仕舞い、ヒューペリオンをかき消す。

「ま、ここはカチーヤに免じてそうするか。ご苦労だったなお前らも、オレはこいつと話があるから少し休んでくれ」
「ワカッタ」
「了解した」
「ご自愛を、召喚士殿」
「何だ、つまらん」

 同じく八雲もソーコムピストルを仕舞うと、仲魔達の召喚を解いた。

「さっき、レイホウという名を出したな。ひょっとして君達は葛葉の人間か?」
「! 葛葉を知っているのか?」
「ああ、葛葉のたまき君とは知り合いでね」
「………たまき先輩の知り合いで変わった力を使う凄腕かつ生真面目過ぎる警官……あんた、周防 克哉か?」

 克哉は頷くと、警察手帳を取り出してそれを見せる。

「港南警察署 刑事一課所属の周防 克哉警部補だ」

 それを確認した八雲はGUMPを操作して、ディスプレイに浮かび上がった五芒星を基調とし葛葉の紋章を見せる。

「葛葉所属サマナー、小岩 八雲」
「同じく、葛葉所属術者、カチーヤ・音葉」

 青龍刀の鍔元に刻まれた紋章を見せつつ、カチーヤが八雲の隣に並ぶ。

「なるほど、専門家に任せたとは君達の事だったか…………」
「そういう事のようだな。で、なんであんたはここにいるんだ?」
「独自捜査という奴だ。そうそう簡単によそに捜査権を持っていかれて納得できるような達じゃなくてな」
「それじゃあ、目的は一緒ですね」
「……そういう…」
「事になるか?」

 カチーヤの一言に、なんとなく頷きながら、八雲と克哉が顔を見合わせる。

「目的が一緒だったら、手を組んだ方がいいと思いますけど?」

 カチーヤの無邪気ともいえる提案に、八雲と克哉が顔をしかめる。

「目的が同じでも、それを解決する方法が同じとは限らないぞ」
「その通りだ。ましてやいきなり銃を付き付けてくるような相手ではな」
「それはてめえもだろ」
「生憎と職務で実行したまでだ」
「……ダメ………ですか?」

 そこで、何か落ち込んだ表情をしているカチーヤを見て、二人がいたたまれない罪悪感を覚える。

「ま、こっちも情報不足だしな、完全に情報共有って事なら構わないぜ」
「それはこちらの台詞だ。市民は警察に治安維持のための協力をするべきだからな」

 お互いに不信感を拭いきれないまま、克哉が片手を差し出す。
 それを不承不承ながら八雲が握り返すと、カチーヤがそれに自分の手も重ねた。

「それじゃあよろしくお願いします。周防刑事さん」
「克哉でいい。こちらこそよろしく頼む」

 カチーヤに微笑みながら、克哉が八雲に鋭い視線を送りつつ彼女に聞こえないように囁く。

「言っておくが、完全にお前を信用した訳じゃない」
「奇遇だな。オレもだ」

 表面上はにこやかに笑いながら、握られている手にお互い必要以上に力がこもる。
 ただ一人、それに気付いていないカチーヤがにこやかに笑っているのが場違いだった。


「……出来るな」
 薄暗いどこかの洞窟内で、鼎(かなえ、祭事に使われる水入れ)に満たされた水に映る三人の映像に、男―才季は僅かに顔を曇らせる。
「葛葉の者があそこまで強いとは計算外だ。手を打たねばなるまい」

 鼎から離れた才季は、しばし考えると洞窟の天井近くにいた妖精 パックを呼び寄せ、幾つかの命令を与える。
 パックが飛び去っていくのを見ながら、才季はしばし瞑目する。

「これはむしろ好奇かもしれん。葛葉ならば、草薙の在り処を知っている可能性が高い」

 辺りを包む暗闇の中、才季は一人ほくそえんでいた。


 互いを見つけ出した糸の端を握る者達。
 だが、もつれた糸を解く術はまだ見つからない。
 それがいかに困難かを、まだ知る術は無かった…………



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