第四章「激震! 残酷なりし真実!」 「それで、どうだった?」 無邪気とも思える少女の声が、問う。 「思ってたよりはやるよ、初手は引き分けだったかな?」 楽しげなジンの声が、問いに答える。 「引き分けじゃ困るんじゃない? それじゃあ意味が無いわよ」 別の声、若い女性の声が横から入る。 「そうだ、勝たなければ意味が無い」 また別の声、たくましさを感じる若い男の声が断言する。 「決着っていうのは、すぐについたらつまらないしね。それに、オープニングが終わったばかりだよ」 「そうね、それじゃあ次はいつ?」 「すぐだよ、今度は二人でだってさ」 「それじゃあ、私が行くわ。私も興味が出てきたし」 微かな笑い声と共に、少女の声が名乗り出る。 「さて、それじゃあ準備に入ろうか…………」 ジンの声を最後に、会話は終わった……… 同時刻 カナダ BC州・バンクーバー島 STARS本部 生体研究室 「これは………」 運び込まれたマンティコアの死体を、防護服に身を包んだシェリーが手際よく切開・解剖していく。 その背後で、同じく防護服姿のレオンやレンがその様を黙って見学していた。 「サンプル」 「はいママ」 シェリーが取り出した組織を、なぜかSTARS本部に来ていた、裾があまり気味の防護服姿のトモエが保護液が入ったビーカーに入れ、密封すると陳列していく。 「ねえトモエ、レンを迎えに来たのにこっち手伝ってていいの?」 「んー、いいんじゃないかな? 娘がママ手伝うのは自然だし」 陳列したビーカーの順番と説明を手早く端末に入力していくトモエに、シェリーは眉をひそめる。 「食事とか洗濯とか手伝った事はないのにね?」 「そうだったっけ?」 (この娘は………) 大まかな解体を終えたシェリーが、視線を隣の部屋へと移す。 「……ヒロ、そっちはどう?」 「信じられない、っていうのが本音だな………」 ガラス越しの別室で先に取り出した電子部品を調べていた眼鏡を掛けた温和な壮年男性、シェリーの夫でトモエの父親に当たる神経電子工学者の八谷 智弘が、傍らのキーボードに検査結果を入力していく。 「生体、電子両方で神経系が構築されてる。とんでもない技術だよ。少なくてもボクはこんな物は見た事も聞いた事も無い」 「こっちもとんでもないわよ」 シェリーが無造作に切開されたマンティコアの死体から、白くて長い奇妙な臓器を取り出す。 「電子スキャニング」 「はいはい」 取り出された臓器を、トモエがスキャン機に掛ける。 その臓器の構成が、スキャニングされて壁に備え付けられた大型ディスプレイに表示されていく。 「! これって!」 「人口有機回路ね。恐らく……ネメシス型の発展タイプ」 「間違いないのか?」 レオンの言葉に、シェリーは頷く。 「これだけの有機回路、現在の技術じゃまだ設計できないのよ。唯一造れるとしたら」 「DNAレベルで、そういう〈機能〉を持った生命体として造り上げる」 シェリーの言葉を、レンが遮って続ける。 「その通りよ。かつて、BOWの最大の欠点である〈知能の欠落〉を補うために、記憶・制御機能を持った《ネメシス》が造られ、BOWに移植されて幾度となく私達の前に立ちはだかったわ」 シェリーのメスを持つ手が、震えているのにレンは気付く。 そしてそれに、嗚咽が混じり始めた。 「何でよ………なんでこんな物がここにあるのよ………私や………クレアや……レオンや……そしてあの人が、あんなに一生懸命戦って、壊滅させたはずなのに………なのに、なんでよっ!?」 勢い余って、シェリーの手の中のメスがへし折れる。 「シェリー………」 「ママ……」 「あ、大丈夫だから……」 心配そうに声をかけてきた夫と娘に、シェリーが多少無理して嗚咽を押さえ込む。 「結論は?」 「間違いないわ、これはネメシスの改良版よ」 「こっちも同じ意見だよ。これを見てくれ」 智弘が手元のキーボードを操作し、大型ディスプレイに予想図を加えたマンティコアの概略図を映し出す。 「脊髄に隣接して通っているこの〈ネメシス〉型の中枢生体素子を中心として、四肢の根元に相互補完型と思われる演算ユニットが埋め込まれていました。しかも、それがネメシスから伸びた生体神経と演算ユニットから伸びた電子神経とリンクしています。 端的に言えば、ネメシスと演算ユニットと双方の破壊、もしくはリンクの完全途絶が無い限り、頭を切り落としても腹を吹き飛ばしても動き続けます」 「なるほど、道理で幾ら急所に撃ち込んでも効かなかった訳だ……………」 「レン君がいなければサンプルも取れませんでしたよ、残りがアレじゃあ………」 皆の視線が、他に回収されたマンティコアの死体、首を失った挙句に、胴体が三つにぶつ切りにされた物、僅かに原型を留めて木っ端微塵になっている物、凄まじいまでの力で原型を留めなくなる程に撲殺されている物、の計三つを見た。 「一つは周辺を包囲していた軍のベースに出て、山のような死傷者を出した挙句に戦車砲の一斉砲撃でようやく仕留めたと聞いている」 「軍隊式の戦い方じゃあ、それしかなかった訳ね………」 「こっちの首なしはあのジンとか言う奴の物だろうが、問題はこっちか…………タイラントタイプも投入されていたのか?」 「あ、それ私」 「…………感染源の特定は?」 シェリーの言葉をつつがなく無視する事にして、レンが最大の問題を聞いた。 「それはもう分かってるわ。足元を見て」 「?」 レンが足元を見ると、マンティコアの物と思われる体毛が無数に散らかっていた。 「これが?」 「見てて」 シェリーがマンテイコアの死体から体毛を掴むと、それを毟り取る。 体毛はあっさりと抜けると、なんと抜けた場所からすぐさま生え始めていた。 「!?」 「死後24時間近く経っててコレよ。ウイルスチェックはあからさまに陽性。これが飛び回っただけで、相当量のT―ウイルス付き体毛が飛び散るわ。しかも、意図的に」 「動物による飛散体毛感染を前提として作られたBOW、だと?」 「間違いないわ。今回の事件はバイオハザードじゃない。BOWと、T―ウイルスによるバイオテロなのよ!」 『!!』 その場にいた全員の体が、導き出された恐ろしい事実に硬直する。 「事件性の確立は?」 「これだけのBOWを四匹も放した、しかもバイオハザードが起こるのを承知で。事故の可能性を考える方がおかしいわ」 「『テストだ』とあいつは言っていた。そして、あいつとオレはそのテストに合格したと」 「待ってくれ! それじゃあ、そのジンとかいう奴と、レン君の戦闘テストのためだけに、街一つ犠牲にしたっていうのか!?」 「そういう事に………なるのかもしれない」 レンは、ジンが倒したと思われるマンティコアの死体に歩み寄る。 そして、その切り口をつぶさに観察した。 「見事な太刀筋。光背一刀流《 「そいつがレンと同じ技使ったっていう話、ホントなの?」 「ムサシとアニーが見たらしい。この切り口は間違いなく光背一刀流の技による物だ」 トモエが、同じように切り口を見ながら、首を傾げる。 「それも問題ね、なんでアンブレラのマーク背負った奴が?」 「分からん。オレ以外に光背一刀流の使い手は死んだ師匠の息子である敬一と、御神渡門派の陰陽師達だけだ。しかも、これだけの技を持ってるのはオレと敬一ぐらいだろう」 「それじゃ、その人を容疑者として……」 「電話したら、その時間は恐山のイタコと一緒に退魔行の最中だったそうだ。第一、自分の弟子の顔を見間違うか」 「だけど、これだけは言えます」 「これは、始まりに過ぎない」 智弘の言葉を、レオンが代弁した。 「そうね、これだけの物を造れる組織があるという事は………」 「他にも造ってる可能性は高いだろうね」 「じゃ、じゃあ!?」 「次が必ずどこかで起きる」 レンは無造作に防護服のメットを掴むと、それを投げ捨て、奥歯を強くかみ締めて断言する。 「あ、危ないよレン君!」 「大丈夫よ、ここにはT―ウイルスしか飛散してないわ。そして、彼は数少ない母胎内で感染とワクチン摂取を受けた、T―ウイルスに絶対免疫を持つ人間…………」 「あいつの狙いは、間違いなくオレだ。なぜそれにバイオハザードが必要なのか、なぜ光背一刀流を使うのか、そんな事はどうでもいい。FBI捜査官として、そして光背一刀流の免許皆伝者として、あいつを追い詰める………!」 レンの宣言に、背後から防護服越しの曇った拍手が響く。 「それでこそ、ブラックサムライね」 「あ」 「課長、なぜここに? そう言えばトモエも………」 背後に予想外の人物、レンの上司であるFBI特異事件捜査課課長 キャサリン・レイルズがいる事にレンとトモエが驚く。 「ICPOからの協力依頼よ。以後FBI特異事件捜査課は総力を持ってノースマンの事件を捜査する事になったから」 「……そんな依頼出した覚えは無いが」 そう言ったレオンの顔面に、捜査協力についてのICPOの正式書類が叩き付けられる。 「で、今度は誰を脅したんですか?」 「失礼ね、ただICPOの事務総長が匿名予約入れようとしていた日本アニメの予約を代行してあげたのと、ペンタゴンの国防長官にそちらは月二回給料日が有って二回目のほとんどをある女性に寄付してますね、って言っただけよ」 「………恐喝だ………」 「さすがジョン・エドガー・フーバー(※初代FBI長官、FBIの捜査力で得た情報で大統領ですら脅した)の再来と言われてるだけあるわね」 「同僚からは女モルダーって言われてます………」 「とにかく! すぐに世界中の警察トップを集めて緊急会議よ! レポートをまとめておいて!」 「それはこっちが言うべき台詞なのだが」 その場を仕切り始めたキャサリンに釘を差しつつ、レオンは連絡を入れるべく壁のコンソールへと向かった。 同 STARS本部 休憩室 「あ~………」 設置されているソファーにどっかりと座り込んで首筋を鳴らしつつ、スミスが調整が終わった義腕を動かしてみる。 「どうだ調子は?」 「いいな、バツグンのフィードバックだ」 並んでいる自販機からブラジルコーヒーを選び、湯気の立つコップを手に片腕を三角巾で吊っているカルロスが隣に座る。 「弾切らせて単機でゾンビの大群に突っ込んでいって、乗ってたスーツ大破させて、当人は腕一本の不調で済ませてんだから、つくづく頑丈な奴だな、お前も」 「あれで五機目だからな~、また本部長に怒られる………」 「減棒で済むならまだいいだろ。オレんとこは二人死んじまった…………」 「……そうか」 「ベックの野郎は、先週のポーカーの負け分払わねえで逝っちまったし、モーリスは来月家族旅行行きてえって言うから、有給休暇の書類にサインしてやったばっかりだっていうのによ…………」 「そうか…………」 話している内にカルロスの手でカップが震え出し、ついには半ばまで残っていた中身ごとカップが握り潰され、中身が溢れ出す。 「……ざけてんじゃねえよ。なんで今になってバイオハザードが起きんだよ。オレと、お前と、あいつで、ぶっ潰したんじゃねえのかよ………」 「知るか。起きちまったモンはしょうがねえだろ」 「お前は平気なのか!? T―ウイルスは全滅してなかったっていうのに!」 「……そう思うか?」 激昂するカルロスが、スミスの義腕がソファーの背を握り締めているのに気付く。 機械仕掛けの驚異的な握力に耐え切れず、とうとうソファーの背が陥没した。 「オレだって腸が煮え繰り返ってんだよ。ふざけんじゃねえ、どこの誰がやらかしたのか知らねぇが、絶対見つけ出してぶっ殺してやる!」 激昂しながら振り下ろされた義腕が、ソファーを一撃で破壊する。 半ばでへし折れたソファーが瓦解し、斜めになったソファーから二人の体がずれてお互いに寄りかかる。 「……何やってんです、隊長」 「よう、どうだったCH」 二十代後半くらいの、微かに紅い肌―ネィティブ・アメリカンとの混血の証―を持つしなやかに鍛えられた体格の青年、シカゴ州警察モビルポリスチームのスナイパーでスミスの片腕を勤める男、CH・サンハートが呆れた顔で壊れたソファーで寄りかかっている二人を見た。 「オヤジが本部長に掛け合ってくれて、しばらくこっちに出向しろって話です」 「そうか、よく本部長が納得したな」 「3R目 2分25秒で本部長のアックスボンバーを耐えたオヤジがカウンターで入れたジャンピングアッパーが決め手だったらしいです」 「そういや、おやっさんがSWATの隊長だった頃からあの二人仲悪かったからな………」 「そっちじゃリアルファイトを掛け合いって言うのか?」 「長年の鬱憤が溜まってたみたいで。オヤジに全部片がつくまで帰ってくるなって怒鳴られました」 「半端にやると、年甲斐もなく手前で乗り込んできかねねえな…………前は本気で北極まで来たし」 「あ、いた……って、何やってるの?」 「見て分からないか? 休憩している」 「壊れたソファーで肩寄せ合って?」 白衣姿のシェリーが、大破したソファーに座っている二人を見つけて顔をしかめる。 「緊急会議よ、隊長クラスは全員会議室に集合。スミスも来て」 「了~解」 「何か分かったか?」 「………会議の時に説明するわ」 シェリーの固い表情に、スミスとカルロスは顔を見合わせる。 「どうやら、ヤな事聞かされそうだな………」 「お前だって気付いてんだろ、言いたくはないだろうがな」 「ああ……あいつらの事はよく知ってるからな」 「? どういう事です?」 「覚悟しとけよCH。これから地獄巡りが始まるからよ…………」 「えっ!?」 「全員集まったか」 「じゃ、始めようか」 神妙な面持ちで会議室に集まったSTARSの隊長達が、ささやき声で話したり、手元の資料を見たりしている。 「多分、旧STARS関係者は気付いてるだろうけど、今回のノースマンの事件について分かった事を」 議長を務める智弘が、会議室全面の大型ディスプレイに幾つかの情報を表示させた。 「事の始まりは10日、いや日付が変わったから11日前か。ノースマンの近郊である死体が発見された事から始まる」 ディスプレイに、無残な牙痕がつき、腐敗が始まった死体がアップで表示される。 「当初は何らかの猛獣に襲われたと判断されたけど、こんな大型の猛獣にはオーストラリアには存在しない。ペットとして飼われていた大型獣が起こした物じゃないかと思われたが、該当するペット登録は無し。 しかもこれを皮切りに、ノースマン近郊、さらには市街地の中で同じ状態で食い殺された被害者が次々と発見された。前代未聞の獣害事件として現地警察が該当害獣を捜索に入ろうとした所で、発見された死亡確認済み被害者を始めとして、死体の収容に当たった警察鑑識、被害者家族等が次々とT―ウイルス症状を発症。 初期断定の遅れも事態の悪化を招き、とうとう市街全域に感染は拡大。オーストラリア政府は当初政府軍で事態の収拾を試みたが、そこをSTARSが対生物災害特別法にのっとって介入、事態の大体収拾に成功した」 画面が切り替わり、そこに現在分かっている被害者数などが表示される。 見ている先で、概算死者数が3人足された。 予想していたとはいえ、今回の事件がT―ウイルスによる物だと改めて伝えられた隊長達に動揺が走る。 「原因は? どこから漏洩した?」 「感染源はこれよ」 カルロスの問いに、シェリーが手元のコンソールを操作して、解剖前のマンティコアの画像を映し出す。 「こいつは…………」 「これはレンが倒した物だけど、間違いなくT―ウイルスをベータウイルスとして改造された生物兵器、BOWよ。しかも、飛散体毛を媒介としてバイオテロ機能も持ってたわ」 室内を、驚愕が走り抜ける。 全員がざわめく中、シェリーが説明を続ける。 「外見上はドラク……じゃなくてインド神話の怪物《マンティコア》に酷似。DNAにはあからさまに改造の痕跡があったし、尻尾は先端部にニードルシューターが内臓されている伸縮性のハイパワーマニュピレーター。しかも、脊髄に隣接して有機生体回路が発見されたわ。これは、かつての《ネメシス》タイプの改良型と見て間違いないわ」 「《ネメシス》だと!?」 思わずデスクを叩きながらカルロスが立ち上がる。 「そんな馬鹿な! ネメシスを造れる技術はもう存在しない! アンブレラの壊滅と同時にデータも消失したはずだ!」 「だが、なぜか存在している」 レオンの一言が、重く皆に圧し掛かる。 「かつてのアンブレラの関係者や研究者で死亡や行方不明扱いになってる人間もいるはずよ。多分、彼らの持っている技術やデータと引き換えに匿っている組織も存在するはず」 なぜか会議に出席しているキャサリンが、もっともな推論を述べる。 それを聞いたレオンはそれを更に補足した。 「軍事目的ではなくても、T―ウイルスやBOWの開発資料は医療目的なんかにも応用できる。事実、怪しい医療メーカーや薬品メーカーは幾つかあるだろう」 「よし! 今からそこを強制捜査してくる!」 「ちょっと待って」 席を立って会議室から出て行こうとするスミスをシェリーが止める。 「何だよ、話なら全部潰してきてからだ」 「アメリカじゃ殲滅作戦を捜査っていうのか? もうちょっと落ち着け」 「そんな所を叩いても無駄かもしれない」 カルロスもスミスの制止に入る中、レンが口を開く。 「こいつは明らかにT―ウイルスのバイオテロを起こすためだけに造られた兵器、しかも四体も確認されている。向こうの手がこれで全部とは思えない」 「じゃあ何か!? 今こうやって会議してる間にどこかで別のバイオテロが起きてる可能性もあるってのか!?」 「有り得る」 「!! 動ける人員を全て回せ! オレも強制捜査に行ってくる!」 レオンの言葉に、カルロスまでもが席を離れようとする。 他の隊長達もお互いに頷きあうと、行動を起こそうとする。 しかし、レンがそれを制止した。 「待ってください」 「何やってんだJr! 手前も来い!」 「次はすぐには起きません」 「何でそう言える!」 画面に、一つのモンタージュが映し出される。 それは、レンやケンド兄妹の証言から作られたモンタージュだった。 「こいつの名はジン。ノースマンに現れたマンティコアの一体を倒した奴だ」 「……ムサシとアニーが言っていた妙な奴ってこいつか……」 「こいつは、今回の事件はオレとこいつのテストだと言っていた。それが本当なら、次のテストにもオレが来る事が前提になるはず。だとしたら、お互いに互角の立場となる場所を用意してくるはず…………」 「確証は?」 「こいつはアンブレラのマークを背負い、光背一刀流の技を振るい、そしてどっちがブラックサムライの後継者か? と言っていた………」 「あいつの、後継者だと? ふざけるな! Jr以外に誰がいるってんだ!!」 「でも、レンに固執しているのは確かよ。なら、確実にレンが絡む状態を用意してくるはず」 キャサリンの発言に、納得したのかカルロスとスミスが席へと戻る。 「それで、そいつ一体何者なんだ?」 「分からん、だが今回の事件のカギを握っている事は確かだ」 「どうにかしてこいつの首根っこをフン捕まえてくるしかねえか………」 「ほう………そいつはいい事を聞いたな」 いきなり聞こえてきた声に、、隊長達が声が聞こえてきた方向へと一斉に振り向く。 「お前か、フレック」 腰の拳銃を抜きかけていたカルロスが、いつの間にか会議室の中へと入ってきていた肩のホルスターに大型のコンバットナイフを差している筋肉質の体に鋭い目つきをした青年の姿を認めると、銃をホルスターへと戻す。 「何しに来た? 今は会議中で関係者以外立ち入り禁止だぞ」 「面白い話が聞けるかと思ってね」 フレック、ことフレクスター・レッドフィールドは、了承も得ずに会議室へと入り込むと、手近のコンソールから勝手にジンのモンタージュをプリントアウトさせていく。 「こいつを連れてきたら、幾ら出す?」 「オイ! 勝手に…」 「100万ドル。生きている場合に限りだ」 プリントアウトを手にしたフレックの言葉に、レオンが速答。 「ひゃ、100万!?」 「情報を得られる状態で拘束、護送してくる事。それが守られない場合、賞金は出さない」 「OK、さすがに話が早いな」 「悠長に討論できる身分じゃないのでな」 「それじゃあ狩ってくる」 口笛なぞ吹きつつ、フレックが会議室を出て行く。 「あいつも、何であんなになっちまったかな……学生時代はクリスに似て馬鹿な程正義感だった奴が………」 「防衛大のエリートが、今やフリーのバウンティハンター(賞金稼ぎ)。ままならない物ね」 「クリスの奴、仕事にかまけて子育て間違えたんじゃないか?」 「お前が言うなよ………」 変わり果てた戦友の息子に、旧STARSメンバー達からため息が漏れる。 「そういや、そのクリスの方には言っといたのか?」 「先程、極秘に連絡しておいた。ICPO本部で特別予算の計算に入るそうだ」 「さっきの賞金は、その中から?」 「いや、ほとんどは私の私費から出そう」 「……相変わらず給料使ってねえのか」 さらりととんでもない事を言っているレオンに、スミスが嫌味な目を向ける。 「特に使うべき理由が無いだけだ」 「幾ら独身って言っても、食堂で普通に飯食って本部私室に住んでる長官なんてどこの警察にもいねえだろ。高給もらってんだから家と車くらい買えよ………」 「前に買った車は、納車当日にロケット弾を撃ち込まれて大破してしまった」 「世界一恨まれてる男だろうからな………しかもそのほとんどがテロリストだ」 「物騒な話ね」 「課長が言わないでください………前に課長の実家に爆弾犯が立て篭もったの忘れたんですか?」 「ああ、あの小学校の時のラブレターを大音量で読んでやったら泣きながら外に飛び出してきて自爆しようとした奴」 「オレが配線斬ってなかったら、課長の実家ごと吹き飛んでましたよ…………」 「ああ、あの後両親に泣いて職業変えろって言われたわね~」 「お互い、恨まれる職業だな」 「そっちには負けるわ」 限りなく物騒な話題で盛り上がる上司に生ぬるい視線が注がれる中、智弘が咳払い一つで本題を再開させる。 「とりあえず、WHOのレベッカさんに連絡して、ディライトタイプ・ワクチンの保存数と有事の量産、搬送ルートをチェックしてもらっています」 「この間ので、うちのは使いきっちゃったからね~…………」 「また使う日が来るとは思ってなかったからな………」 「出来れば、永久に来てほしくなかったぜ。あんな思いするのはもうたくさんだったのによ………」 かつてのバイオハザードを目の当たりにしてきた者達が、沈痛な表情で呟く。 唯一、表情を変えてなかったレオンが、その場に漂う重い空気を切るように口を開いた。 「今の我々にできるのは、万全の体制を持って世界のいかなる場所にも出動できる準備を整えておく事だ。全員に一級待機を発令、総員いつでも出れるようにしておけ。オレはすぐにICPO本部に行って全世界の警察に非常事態宣言と協力体制を取り付けてくる」 「ついでだ、戦艦でも用意させといてくれ」 「予算があればな」 レオンが杖を手に、会議室から出て行く。 他の隊長達も、今後の準備の事を相談しつつ、会議室から出て行く。 やがて、レン一人だけが室内に残る。 「……どう来る? あいつは……」 レンの呟きを、聞く者はいなかった。 五日後の朝 STARS本部 第二待機室 「よ、おはよう」 「お~………」 声を掛けてきた、いまだ三角巾で腕をつっているカルロスに、眠そうな目でスミスが片手を上げる。 「ったく、なんだって出向していきなり夜勤やらされんだよ…………」 「仕方ねえだろ、第一と第二はまだ 「ロットの野郎はまだ出てこれねえのか?」 「縫った腹の傷と折れた腕がまだくっついてねえとよ。お前が来る前に強引に出撃しようとして腹の傷が開いたって聞いてっし」 「じゃあオレみてえに腹と腕機械にしちまえ。そうすりゃすぐ退院できる」 「当人に言うなよ。本気でやるだろうから………」 眠気覚ましに備え付けのコーヒーサーバーからやけに濁ったコーヒーをカルロスが二人分カップに注ぐ。 「モーリスがいねえと、誰も替えやしねえ………」 「ボヤくなら自分で替えとけ。あと部下の前でそんな事言うなよ」 「お前じゃなきゃ言わねえさ」 片方をスミスに渡し、酸味が効いているコーヒーをすすりつつカルロスは窓の外を見た。 「増えてるな」 「増えてるよ」 窓から見えるSTARSの本部前には、手にカメラやマイクを持った人影が山と押し寄せていた。 スミスが備え付けのテレビのスイッチを入れると、そこには今自分達がいる建物を背に、レポーターがまくし立てていた。 『こちらレポーターのロジャーです。オーストラリア・ノースマンで起こったT―ウイルス・バイオハザードについて、STARSは未だ沈黙を守っています。世界中を震撼させたアンブレラ事件から26年が経った今、なぜT―ウイルス・バイオハザードが起きたのかは謎のままです。再発の可能性も有りとの情報もあり、詳細発表が待たれます………』 無造作にスミスはテレビのスイッチを切ると、ため息をつく。 「機密って話じゃなかったか?」 「機密ってのは、売れば金になるからな。どっかで売った馬鹿がいるんだろ」 「お陰で昨夜は夜中まで電話は鳴るわ、マスコミは押し寄せようとするわ、今までで一番しんどい夜勤だったぜ…………」 「妙な事喋るなよ、あそこの連中集音機みてえなのこっちに向けてやがる」 「ここ防弾防音だろ」 「念のためだ。お~、向こうの奴は双眼鏡でこっちを凝視してるな、多分唇読もうとしてる」 「スペイン語でもしゃべってやれ。オレは日本語でもしゃべる」 「隊長、それじゃ屋上警備に」 「頼むぞCH」 「ちょっと待て」 IWCスナイパーライフルを背に顔を覗かせたCHをカルロスが止める。 「なんか用ですかカルロス隊長」 「……それ持って屋上で何をするつもりだ」 「不法侵入してきた奴がいたらヘッドショットしろとウチの隊長が………」 「オレもやりたいが、止めておけ。騒ぎが起きると収拾がつかなくなる」 「アニーが昨夜からやっていてその交代に…」 「スミス! お前は子供と部下に何やらせてやがる!!」 「安心しろ、サイレンサー付けて麻酔ゲル弾だ。昨夜は三人フん捕まえた。今Jrが取り調べしてる」 「どうせ全員自称ルポライターとか言ってんだろ」 「いや、一人は日本から来たセールスマンらしい。新型パワードスーツの売り込みに来たって言ってるらしいぞ」 「日本人は商売が絡むと早いな………」 「てめえのPC起動させてみろ、セールスメールが山と来てると思うぞ」 「タダ以外は削除してやる………」 そこで、館内放送を示すチャイムが鳴り響く。 「ん?」 『お知らせします。本日正午、ノースマンでの事件についての緊急記者会見が行われます。お集まりの記者の方々の質問にはそこでお答えしますので、正午までお待ちください。繰り返します……』 「昼飯は早めに食っといた方がよさそうだな………」 「オレは仮眠するから夕方まで起こすな」 「じゃあ屋上警備は正午までで……」 「だから止めろって」 正午間近 STARS本部 記者会見室前 「プレスカードの提示を。無い人間は中に入れません」 「持ち物をこちらに」 厳重なチェックが行われる中、口々に情報や噂を話しながら記者やレポーターが記者会見室へと入っていく。 まれに、何を勘違いしたか身分証明も無しにチェックを潜ろうとする者も混じっていた。 「偽造プレスカード断定」 「ちょっとこっちに」 「ま、待ってくれ! オレはフリーだからまだ…」 慌てふためく男を、パワードスーツを着たSTARS隊員が強引に引きずっていく。 「記者会見を目前にして、記者会見室は緊張が高まっております。STARSはこの会見に異常なまでの警備態勢を敷き、これから発表される事の重要さが否応無く感じ取られます。一体、何が語られるのでしょうか? 本日は予定を変更して、STARS長官 レオン・S・ケネディ氏の記者会見を生放送でお送り致します。もうすぐです………」 「そこのレポーター、入るんだったら早めにな」 「あ、声が掛かりました。それでは私も会見室に向かう事に致します」 押し寄せるという言葉しか見当たらないマスコミを前に、記者会見室はすでに満員状態だった。 山のようにセットされたテレビカメラや一丸レフカメラが、発表用の壇に目的の人物が現れるのを今や遅しと待ち構える。 そして、各自の時計が正午を指すと同時に、彼らが入ってきたのとは別の入り口が開き、そこから杖をつきながらレオンが現れると同時に無数のフラッシュが焚かれる。 「長官! ノースマンで起きたのは本当にT―ウイルス・バイオハザードなんですか!?」 「感染源の特定は!?」 「対処は完璧なんですか!?」 次々と寄せられる質問を無視して、レオンは壇上まで来ると、記者達へと向き直った。 「発表する。ノースマンで起きた大暴動事件の披見者から、紛れも無いT―ウイルスが発見された。更に、T―ウイルスの感染が原因と思われる変異生命体も多数確認された。これにより、ノースマンの事件は紛れも無くT―ウイルスが原因と断定された」 記者達から、確信のどよめきが漏れる。 そこに、レオンは立て続けに発表する。 「無数の変異生命体の中から、奇怪な物が発見された」 レオンの背後に、解剖前のマンティコアの画像が映し出され、無数の疑惑と困惑が囁かれる。 「検死の結果、これは変異体ではなく、T―ウイルスをベクターとされて改造された調整体である事が判明。また、ノースマンでは数日前から謎の獣害事件や種別不明の猛獣目撃事件が相次いでいた。検査の結果、この調整体は極めて特殊な体毛を有しており、これが飛散する事によって今回の事件が起きたと思われる。さらに、この調整体はT―ウイルス感染を目的として製造された可能性が極めて高い」 レオンの発表に、記者達から驚愕と動揺が走る。 「数多の検証の結果、今回のノースマンの事件は、この調整体を用いたバイオテロと断定された。分かっている事実はこれで全部だ」 「テ……」 「テロ!?」 予想外の発表に、記者達に戦慄が走る。 「テロという事は、実行犯は!?」 「実行組織は分かっているんですか!?」 「再発の可能性は!?」 「目下、これ以上の詳細は鋭意捜査中だ。だが、再発の可能性は充分に有る」 「次に狙われる可能性が高いのはどこでしょうか!?」 「対策は!?」 「私は、ここに宣言する」 山と掛けられる質問に、レオンは厳かに言葉を紡ぐ。 「我々STARSは、元来T―ウイルス撲滅のために活動してきた。事ここにいたり、我々は元来の任務に戻る。以後、全世界のいかなる企業、団体であろうと、関係する組織には絶対なる措置を持って対処、場合によっては殲滅する事とする。以上だ」 「お待ちください長官!」 「いかなる組織と言いましたが、それは例えば国家などでも入るんでしょうか!?」 「長官!」 レオンは応えず、黙って記者会見室を去っていった。 「大変な事になりました! テロです! ノースマンの事件はバイオテロだったとの発表が今、STARS長官 レオン・S・ケネディ氏からなされました! しかも、STARSは以後この事件に関係したいかなる組織をも対処、場合によっては殲滅するとの事です! これは大変な事になりました! 今後の動向が非常に気になる所です!」 「言っちまったよ………」 「本気でしょうね、今ならまだ辞表出せるかもよ?」 警備がてら記者会見を聞いていたカルロスが、隣のシェリーからの言葉に諦め顔を向ける。 「年金が惜しいからな。今から転職もないだろ」 「にしても、殲滅なんて言う事大胆ね。いつもの事だけど………」 「こっちの身にもなってほしいぜ………」 隊長達の緊迫感のまったく感じられないぼやきに、警備に当たっていた隊員達は密かに恐怖していた。 「三割四割は当たり前! 今なら増設バックパックとロゴ入り防弾ジャケットも付けます! 更には大量注文にはポイント還元も付きますよ!」 「……他に言う事ないのか?」 不法侵入で捕まったにも関わらず、熱心にセールスをしてくる男を胡散臭そうに見ながらレンは調書を書いていく。 「え~い、こうなったら赤字覚悟! 新製品のスカイバーニアも付けちゃいます! これでお値段はたったこれだけ!」 「身分照合が終わったから、後はまっすぐ帰るように」 「お買い上げにならないと、絶対損です! どうでしょう!?」 「…………」 無言でレンは相手が気付かない程の高速の直突き(拳を縦に放つ日本拳法独自のパンチ)を相手の胸に触れる程度の威力で放つ。 一瞬だけ軽い衝撃がセールスマンの胸を貫くと、瞬時に失神した男の体が取り調べ室のデスクの上に崩れ落ちた。 男の襟を掴むと、レンはそれを引きずりながら取調室を出る。 「あ、レン君。どうしたのそれ?」 「ダンボール有ります? これは日本まで送りたいんで」 「宅急便はマズイと思うよ………」 廊下で出会った智弘に、手に掴んだ〈荷物〉をレンは見せる。 「そういや聞いた? さっきのレオン長官の記者会見」 「いや、ようやく全員取調べが終わった所です」 「今回の事件に関係してた所はどこでも問わず殲滅するとか言ってたよ。物騒な話だね」 「あの人らしい。殲滅は慣れている………」 レンの瞳に刃のごとき光が宿っているのに気付いた智弘は、思わず苦笑した。 「物騒だね、君も………いや、ここの人達全員かな?」 「対サイボーグ戦闘理論の第一人者が何を言ってるんです? あなたの理論でFBIでも大分助かってますよ」 「いや、見ての通りボクは君やシェリーみたいな腕っ節はからっきしだからね。だからイカサマで勝つ方法を思いつくのさ。もうちょっと時間をくれ。必ずマンティコアタイプの欠点を見つけてみせる」 「次に来るのが同型とは限りませんよ」 「でも、ベースとなる技術は同じだろ? それならなんとかなると思う。ボクに出来るのはこれだけだからね」 「可能ならば、〈次〉が起きる前に」 「ああ………」 一週間後 「やあっ! とおっ!」 トモエの〈かわいい〉としか表現できない声がトレーニングルームに響く。 しかし、その声と一緒に放たれた拳がサンドバッグを弾き飛ばす鈍い音が共に響くのが、なんとも異質だった。 「たああぁっ!」 一度背を向けてから全身を渦がごとく回転させて放たれた後ろ回し蹴りが、サンドバッグを跳ね上げる。 「……本当にあれで12歳か?」 「さすがシェリー隊長の娘だ。将来絶対男敷くぞ」 「それ以前に彼氏できるかな~?」 年齢と体格にまったくそぐわない破壊力を秘めた少女を、トレーニングしていたSTARS隊員達は憶測を持って囁きあう。 「まだまだよトモエ! そんなんじゃ全然役に立たないわ!」 「そ、そう?」 「例えば、こう!」 シェリーが娘に代わってサンドバッグにミドルキックを放つ。 蹴り足がサンドバッグにめり込み、くの字に曲がったサンドバッグが高々と舞い上がる。 「そしてこう!」 舞い上がったサンドバッグが帰ってきた所で、シェリーはカウンターで拳を当て、全身の筋力を一気に爆発させる。 全身の力を込めて放たれた寸打が、サンドバッグの動きを一撃で静止させた。 動きが完全に止まった所で、シェリーはサンドバッグに突き刺さった拳を引き抜く。 それに続いて拳の形に空いた穴から砂が一気に溢れ出した。 「これくらいじゃないと、ゾンビには効かないわ。修行あるのみよ」 「うん!」 会話は微笑ましいが、やっている事の壮絶さにSTARS隊員達の顔から一気に血の気が引いていく。 「……なんで旦那生きてんだ?」 「結婚する前から、ケンカ一つした事ないって聞いてるぞ」 「やったら絶対死ぬでしょ。旦那の方が………」 「それ以前に、前から思ってたんだがどうやって結婚したんだ?」 「オレが知るかよ………」 「恋愛結婚だったと聞いてるが」 憶測を囁きあうSTARS隊員達の背後に、練習用の木太刀(真剣と同じ重さに仕込んである木刀)を持ったレンが立っていた。 「智弘さんの方が、シェリーさんを口説き落としたそうだ。誠意の一手のみだったのがむしろ幸いだったらしい」 「………日本人は物好きが多いのか?」 「さあ?」 肩に木太刀を担ぎつつ、レンは親娘の下へと歩み寄っていく。 「トモエまで参戦させるつもりですか?」 「まさか。この子はまだ地獄を見るには早いわ。あの時の私みたいに………」 「私だって戦えるもん!」 膨れる娘の頭を撫でつつ、シェリーは微笑む。 「いざという時、身を守れるくらいにはしておきたいのよ。あなたこそ、覚悟は完了してる? BOWは今まであなたが戦ってきた奴らとは次元が違うわよ」 「捜査官になった時から、すでに」 「ふ~、ん!」 壊れたサンドバッグを取り外していたシェリーは、いきなりそれをレンへと向かって投げ付ける。 50kgには達する大型のサンドバッグが、唸りを上げてレンへと迫る。 しかし、レンは慌てず、手にした木太刀を瞬時に上段に構え、振り下ろす。 サンドバッグは勢いそのままにレンの立っている空間を通過し、レンの背後で左右へと分かれて壁に激突、中身を撒き散らしつつ床へと落ちた。 「お見事」 「いえ」 「すご~い!」 木太刀の斬撃でサンドバッグを両断したレンの神業に、当人と八谷親娘以外の全員が凍りつく。 「……あいつ一人でこの事件解決しちまうんじゃないか?」 「元祖STARSの関係者は化け物か!?」 「オレを混ぜるなよ」 「あ、カルロス隊長」 トレーニングも忘れて呆然としている隊員達に、ようやく怪我が治ったカルロスが声をかけると、レンの方を見た。 「親父譲りの凄まじい剣技だな。どうだ? オレの代わりに隊長やらないか?」 「遠慮しておきます」 「お前だったら、安心して現場引退できるんだがな。あと覚えておけ、ここにいる限り、お前はSTARSの一員だ。そして頼りないかもしれんが、オレやシェリーや、こいつらがいる。その事を忘れるな」 「チームプレー……という事ですか」 「親父がそうだったように、お前は刃の切っ先になる。だが、その後ろに切っ先程鋭くはないが、鍛えた刃がある。それを忘れない限り、決して刃は折れねえ。そういう事だ」 「切っ先……」 「どういう事?」 いまいち意味が理解出来ないトモエが首を傾げるが、レンは思う所があるのか、黙ってその言葉をかみ締めていた。 そこに、突然甲高い警報が鳴り響く。 「最緊急出動シグナル!?」 「まさか、次が!」 「た、大変だ!」 トレーニング室に、前の戦いの傷がようやく癒えたムサシが転がり込んでくる。 「次のバイオテロか!?」 「はい!」 「場所は!」 「中国、蓬莱島!」 感想、その他あればお願いします |
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