第五章 開演


JUST THE LIMIT

第五章 開演




訓練開始から約九ヶ月がたち、武義も大分慣れてきたのか訓練を淡々とこなすようになっていた。
また、DGSCに関しても二人の予想を裏切ってみるみる上達していき、6割がた完成していた。

「信じられん・・・」

こうつぶやくのも無理はない。
開発したマックスでさえ、ここまで来るのに軽く二年は掛っているのに、武義はその半分以下の日数で到達したのである。
訓練につき合っているレイニーも武義の上達ぶりに舌を巻いていた。

マックスはこのまま順調にいけば1年でマスター出来るのではないかと期待をしていたが、同時に敵がいつ攻めてくるか気がかりでもあった・・・







ドアを叩く音が聞こえた後、外から若い女性の声がした。

「オーディン様、フレイヤ並びにホド、参りました」
「入れ」

アース神族の本拠地の一室で、オーディンの目の前に二人の部下がいた。
北欧神話で愛の神とされているフレイヤと呼ばれた肩口で切りそろえられた茶髪に目に愛嬌のある十代後半ぐらいの若い女性と盲目の神とされるホドと呼ばれたスキンヘッドにサングラスを掛け、手には盲人用の杖を持った二十代なかばぐらいの黒人男性はオーディンの前までくると気をつけの姿勢を取った。

「君たちに仕事を頼みたい」
「我々アース神族のメンバー二人で掛らねばならない相手・・・」

アース神族とは、組織名であると同時にある物に適合し常人以上の身体能力や特殊能力を得た者たちの集団をさす言葉である。
一人一人の戦闘能力が最低でも特殊部隊一個小隊に匹敵する能力を持っている。
そんな怪物じみた能力を持つ彼らの中から二名も選出してことに当たるということは異例中の異例のことなのだ。

「ターゲットは?」

ホドと呼ばれる青年が、威厳のある声でオーディンに質問を投げかけた。

「ターゲットはこの青年並びに彼の周りにいるものすべてだ」

オーディンは手元の資料を二人に渡した。
ホドの資料はご丁寧に点字仕様になっている。

「・・・オーディン様、失礼ですがたかだか一人の青年を消すのに我々二人を派遣する意図がわかりかねます。ソードガンナーがいるとはいえ二人で行かなくても・・・」
「・・・その青年、小林武義はフェンリルの適合者だ」

その言葉に二人は驚愕した。

「そういうことですか・・・」
「ならば二人がかりなのも納得です」
「最低でもその写真の青年、小林武義は必ず抹殺しろ!いいな!」
『了解!』
「念には念を入れてお前らにヘイムダル部隊から二小隊を出す、確実に仕留めるんだ!」

ヘイムダルとは人間界とアース神族の住むアースガルズとを結ぶ虹の橋の番人を指す。
この部隊はアース神族の所有する私設部隊のことで、オーディンからの指令のもと暗殺任務、破壊工作等の任務をこなす者たちである。
全員が元傭兵もしくは軍・警察関係者で構成されておりその戦力は小国の軍隊に匹敵する規模と質を兼ね備えるまさに番人の名に相応しい戦力を有している。ただしここ最近は、ライバル会社との対立が激化し、それに伴い両社の武力衝突も水面下で激化しているため、ここ最近は主に所有施設の警護並びに妨害工作を請け負っている。

「作戦決行は今夜零時、場所はロジック山だ!」

戦いの幕が静かに開こうとしていた・・・





今日も無事に訓練という名の地獄を凌いだ武義はシャワーを浴びた後、マックスとレイニーと共に遅めの夕食をとっていた。

「・・・ねぇおじさん」

食事中、武義が神妙な顔つきでマックスに話しかけた。

「ん?どうした?」
「その・・・気のせいかもしれないんだけど、一昨日ぐらいからなんか視線を感じるんだ」
「なに?」

その言葉にマックスに緊張が走った。

「気のせいじゃないの?」
「そうかもしれないんだけど気になってさ」

マックスは武義の言葉が事実だと半ば直感的に判断した。

「もしかしたらここがばれたのかもしれん・・・」
「そんな・・・だってここのことは私とパパ以外は小林さん達しか知らないはずだよ」

マックスは特殊部隊員時代にテロリスト等に懸賞金を掛けられているため家の所在地は架空のものを市役所に登録してあり、経歴等の資料は軍が厳重に保管しているためまず漏れることは無いし、レイニーも普段は大学近くの下宿に住んでおり、帰る時は必ずマックスが迎えに行くようにするなどしている。
ちなみに、武義がアメリカに来て訓練をするようになったと同時にレイニーは大学を辞めている。
そのため滅多な事がない限りこの場所がばれることは無いのである。

「・・・今夜から警戒をした方がいいな」

その後三人は三時間交代で見張りを立てることにし、何があってもすぐに対応できるようにし、電気を消して見張り以外は眠ることになった。
数時間後、夜も更け光る物もなく、漆黒と呼ぶに相応しい闇が支配する山中を慎重に進む一団がいた。
フレイヤとホド、それにへイムダル部隊の者たちである。
今回の作戦にヘイムダルから二十名が作戦要員として送られてきた。
ホド以外の全員が暗視スコープ越しに見える視界を頼りに出来るだけ静かにかつ素早く鬱蒼とした森林地帯を駆け抜けていく。
装備は、フレイヤはグロック18を二丁と背中に小太刀を背負っており、ホドはBA50という50口径ボルトアクションライフルにスパスセミオートマチックショットガン、ヘイムダル部隊は全員がM4A1にダットサイトを装備し、副武装にはFN5.7ピストルを装備している。
彼らはロジック山の麓二キロ地点から徒歩で目標地点であるマックスの自宅まで来ていた。

「こちらフレイヤ、ナイトバード聞こえるか?」

フレイヤは一昨日から武義たちを監視していた諜報部の人間に通信機で呼びかけた。

『こちらナイトバード、感度良好です』
「状況を報告せよ」
『今のところ動きはなし、目標は就寝しているようです』
「了解、あと十分ほどで到着する。それまで監視を続行せよ」
『了解』

通信を終えるとフレイヤはホドに事前の打ち合わせ通り完全包囲したのち急襲を掛けることにした。
ホドは目が見えていないにも拘らず、健常者以上にスムーズに闇夜の中を部隊を引き連れて所定のポイントに向かい、フレイヤも作戦ポイントに向かっていった。
作戦ポイントに到着したフレイヤはホドにその旨を無線で知らせると、ホドから信じられない返答が来た。

『フレイヤ・・・奴ら俺たちのこと感づいてるぞ』
「そんなはずないわ。ナイトバードは望遠レンズの有効範囲ギリギリの位置でさらに気配まで消して監視していたのよ?」
『だが、現に俺の“耳”には奴らが俺たちの話をしているのが聞き取れたぞ』
「あなたがそう言うなら間違いないわね・・・」

ホドは目が見えない代わりに耳が異常に敏感になっており、百メートル先でコインが落ちた音をはっきりと聞き取るほどの聴覚を有している。

「位置は?」
『・・・家の中央付近・・・恐らくリビングだろ・・・伏せろ!』
「え?」

ホドの言葉の直後、右隣にいた部下の頭が吹き飛んだ。

「伏せろ!」

突然の狙撃に慌てて頭を下げる隊員たち。

『無事か!』
「一人やられたわ、しかし暗視スコープ付きとはいえ茂みにいる私たちに正確に・・・」

そこに言葉を遮るようにフレイヤの側頭部を掠めながら弾が通過して、すぐ後ろの気に弾痕を刻んだ。

「総員!木を盾にしろ!奴らサーモスコープで狙ってきている!」

フレイヤの指示に隊員たちは姿勢を低くしたまま木の裏側に移動した。
サーモスコープとは人間の体温を視覚として捉えることのできるもので、狙撃者はその映像をもとに狙いを付けていたのである。

「・・・サーモスコープに気づくとは、手ごわいな・・・」

リビングにある正面の駐車場に面しているベランダへ続く窓のカーテン越しにサーモスコープ付きPSG1狙撃銃を構えながら敵の戦力分析をするマックス。
三人は襲撃を察知してすぐに、寝る前に決めておいた配置に素早くつき敵の動向を見ていたのである。
ちなみに、レイニーはキッチンの陰から勝手口を見張り、武義はマックスの近くで待機していた。

「レイニー、裏手はどうだ?」
『まだ動きは無いわ』

勝手口近くの窓に仕掛けた熱感知カメラと暗視カメラ、両方のカメラで外の様子を見ていたレイニーから異常なしの報告が入る。

「よし、そのまま見張りを続けていてくれ」
『わかったわ』

マックスは無線機を置くと再びサーモスコープ越しに狙いを定めた。

「ホド、裏から攻めれない?」

自らの能力を発揮すれば突破は容易だが、部下たちは普通の人間のため被害が出る恐れがあるため、ホドに援護を要請した。

『まかせろ』

フレイヤからの連絡を受け、ホドは部下に裏手から攻めるよう指示を出す。

「だが、その前に・・・」

ホドはその驚異的な聴覚で敵が勝手口付近で待ち伏せしているのを察知し、手に持っていた世界で初めて50口径で十発マガジンを実現したボルトアクションライフルBA50を音のする場所向けて発砲した。まるで大砲のような轟音を轟かせながら発射された弾は空気を切り裂き一瞬にして家の外壁に到達し、壁に埋め込まれていた20mm厚の鋼板を貫通した。
凄まじい音に混じって響いた愛娘であるレイニーの悲鳴を聞いたマックスは見張りを武義に代わってもらい、急いでレイニーのいるキッチンに向かった。

「レイニー!無事か!」

マックスは倒れているレイニーを急いでそのから移動させた。

「・・・外したか、まぁいい」

敵の待ち伏せが消えたのを確認したホドは部下に突撃命令を出した。
レイニーは運よく直撃は免れたものの、大口径弾が通過した衝撃で気絶していた。

「・・・・武義」
「レイニーは無事ですか!」

武義はそう言いながらも、散発的に発砲していた。

「レイニーは無事だ、俺はこれから裏手のくそったれどもを片づけるから正面は任せた」
「了解」
「それと武義・・・」
「?」
「容赦するなよ?」

マックスの重みのある言葉に首を縦に振って答えた。
それを確認するとマックスは防弾チョッキと大量のマガジンが吊るしてあるタクティカルベストを羽織り、腰にポーチを付け、さらに暗視スコープを付けると二丁のUSPを持って素早く裏手へと向かった。
ホドの指示を受けた数名の隊員が素早く扉に近づき、ドアノブを捻るが鍵がかかっていたため扉を吹き飛ばすためにC4(プラスチック爆弾)を仕掛けようとした時・・・
突然扉が開くと同時に大きな影が躍りでた。その影、マックスは飛び出しながら両手に持っていた銃で爆弾を仕掛けようとしていた隊員達に発砲。
45口径ホローポイント弾が寸分の狂いなく額のど真ん中を射抜き、スイカのように頭をはじけ飛ばした。
突然の奇襲に動きが止まっている隊員にマックスは両手の銃を向けるが、危険を察知してその場を飛びのいた。
直後、狙い澄ました大口径弾が数秒前までマックスのいた場所に大穴をあけた。

「おいおい・・・そんな物騒なので人撃つなよ・・・」

マックスは周りの敵に意識を向けつつ、高さ五メートルほどの板にロープのついた訓練器具の陰に隠れるようにBA50を構えていたホドに視線を向ける。

「・・・さすがソードガンナーと呼ばれていただけはある」
「お前、目が見えないのか?」
「なぜそう思う?」
「完全に体を陰に隠し、銃だけ出して俺を見ずに撃ってきたのと、こんなろくな光もないのに暗視スコープを付けていないからな」
「なるほど・・・鋭いな」

ホドは下手な奇襲は効かないと判断し、BA50をその場に置き、背負っていたスパスセミオートマチックショットガンを取りだした。

こいつが隊長格か・・・・

マックスは他の隊員とは違うオーラを醸し出すホドに油断なく構える。
突然、マックスが後ろも見ずに右手の銃を撃ち、侵入しようとしたホドの部下の一人を撃ち抜いた。

「誰一人いかせねぇよ?」
「貴様を倒すしかないか・・・フレイヤ、すまんが援護は無理だ・・・」
『あら?どうしたの?』
「ソードガンナーに邪魔されてな・・・」
『了解。奴が相手じゃないなら大丈夫よ』

通信を終えると、ホドはスパスを構える。

「総員、戦闘態勢」
「かかってこいよ・・・」

扉付近にいた隊員は全滅、残るはホドの左右に等間隔で展開している5名のみとなった。
お互いが相手のわずかな隙を突こうと神経を尖らせ、それと同時に殺気がその場に充満していく。
そして、殺気が頂点に達した瞬間両者は動きだした。

「・・・散れ!」

ホドの号令のもと、ヘイムダル部隊員は左右に展開し、ホドは再び訓練器具の陰に身を潜めた。
マックスの所有する訓練器具は緊急時の際にどの器具でも身を隠せるように柱などが通常の倍の太さになっているため、よほど大柄な人間でない限り体を隠せる設計になっている。
マックスはその大柄な体格からは想像もつかないスピードで動き、巧みに敵の射線の死角に入る。
暗視スコープを付けているとはいえ、不鮮明な視界の中で両者は昼間と変わらないような戦闘を繰り広げていた。
へイルダム部隊は人数の利を生かして左右から挟撃しようとするが、マックスは地の利を生かし、頭の中にある訓練器具の位置を確認しつつ敵の位置を把握し、敵の射線上にある器具の陰に身を隠しながら二つに分かれた敵のうち少ない二人に急接近し、右手の銃剣で正面の敵の喉を切り裂き、そのやや左斜め後ろにいた敵を左手の銃で撃ち殺す。

「く!」

マックスは直感のままにその場から飛びのき近くの器具の陰に体を滑り込ませた直後、狙い澄ましたスラッグ弾(散弾銃用の単発弾)が先ほどマックスのいた場所を撃ち抜いた。
マックスは途中からホドが音と気配で自分の位置を把握していると考え、可能な限り音と気配を感じさせないように行動していた。
特殊部隊時代、サイレントキリリング(無音暗殺術)を得意とした友人に叩き込んでもらった技術でホドをかく乱できたのはほんの数分で、その後はまるで目で見ているかのような正確さで銃撃をしてきた時点でマックスは音と気配以外の要素でホドが敵の位置を探知していると確信したのである。
しかしそれがわかったと言って状況が好転するわけでもなく、的確にマックスの動きを捉え、味方を援護するホドによって思うように動けず、マックスの体の各所に銃撃による傷が徐々に増え動きに精彩さが失われつつある。
そのせいでマックスは大胆な行動がとれず、先ほどの行動も慎重に敵の位置を探り、一瞬の隙をついての行動であった。
敵の数はホドを入れて四人に減ったが、ホドと連携するように残り三人がホドの射線にうまくマックスを誘導するように動き、隙あらば自ら打って出る戦法にマックスは内心焦っていたが、冷静に敵の動きを観察し、一定のパターンを掴むことができたマックスは隙を見て、腰のポーチからスタングレネードを一個とりだすと、ピンを抜いて敵に見えないように気を付けながら自分の後ろに投げ、爆発まで約一秒と言うところで自分のしていた暗視スコープを外した。

「!全員暗視スコープを外せ!」

突然の命令に部下の三人は反応が遅れた。
ホドの言葉から数秒後、凄まじい音と共に閃光がその場を一瞬だけ昼間のように明るくした。
強烈な光のせいで暗視スコープがショートしてしまい視界のきかなくなった三人はその場で動きが止まる。
その隙を逃すわけもなく、マックスは素早く二丁の銃を連射してまたたく間に三人を撃ち抜き、ホドのいるであろう場所に向かおうとした直後、強烈な悪寒を感じたマックスは即座に近くの器具の後ろに隠れた。

「・・・いい反応だ」
「やっぱあの程度じゃお前を無力化できんか・・・」

先ほどのスタングレネードの策はホド以外の部下を倒すための策であり、ホド自身を倒せるとは露ほども思っていなかった。

「なぜ最初からスタングレネードを使わなかった?」
「腐っても奴らは軍人だ、あのような策に何度も引っかかるとは思えない、それに・・・」
「それに?」
「お前が音と気配だけでしか敵の位置を把握できないわけがないと思っていたからな、ちょっと俺なりに探ってみたんだ・・・よ!」

マックスは気配も音も限界まで消した状態で移動してホドに急接近するが・・・

「甘いな」

ホドは振り向きもせずスパスを片手で後ろに向けて発砲した。

「くっ!」

マックスは間一髪、その場に伏せて弾を避けるとホドに向けて両手の銃を立て続けに発射するも、ホドはすぐさまその場から飛びのいてまるで闇に溶けるように姿を消した。

「ちぃ・・・」

マックスは身を隠しながら腰にさげていた予備の暗視スコープを装備した。

音でもなく気配でもないとしたら・・・

「お前・・・振動を感じ取れるのか?」
「ご明答、よくわかったな」
「人間ソナーだなおい」

地面に伝わるわずかな振動をもとに敵の位置を探るホドにマックスは驚きを通り越して呆れてしまった。

「・・・ならやることは一つだな」

その直後、マックスは猛然とホドのいると思われる場所に突撃していった。

「やはりそう来るか・・・」

暗視スコープがあるとはいえそこまで鮮明でない視界のなか盲目でも音や振動で敵の位置がわかる人間に銃撃戦を挑むのは不利と見たマックスは接近戦を仕掛けるべく行動を開始した。
ホドは接近戦に持ち込まれまいと能力をフルに使ってマックスに的確かつ一撃必殺の銃撃を繰り返すが、マックスはホドのいる位置からどのような射線があるかを予測しながら巧みに銃撃を時に器具の陰でかわし時には驚異的な身体能力で強引に射線から身をそらすなどして少しづつホドへと近づいて行った。

「く・・・さすがソードガンナーと言われるだけはあるな」

ホドはスパスに装填する弾をスラッグ弾からダブルオーパック(もっとも散弾の口径の大きい弾)に替え、セミートで弾をばら撒いてマックスの進路を阻みながら素早く位置を移動していく。

「うお!」

僅かな銃声の違いからスラッグ弾から散弾へと変わったのを察知したマックスは急いで器具の柱に身を隠したが、散弾の一部が腕を掠めていった。

「・・・」

マックスは攻めあぐねていた。

これ以上時間は掛けれない・・・

ホドとの戦闘が始まってすでに十分が経とうとしていた。

マックスが戦略を立て終えようとしたその時、正面玄関の方向から複数の爆発音が響いてきた。

「なんだ!」

マックスの頭に一抹の不安がよぎる。

「武義!どうした!」

マックスはすぐさま通信機で武義に連絡を取った。

『おじさん!敵が焼痍手榴弾と閃光手榴弾を同時に複数個投げて視界を塞いできた!銃撃を中断させたせいで一斉に敵が攻勢に出てきてこちらは持たない!』
「そういうことか!レイニーを連れて例の場所に行け!すぐ追いつく!」
『了解!』
「行かせると思うか?」

通信を終えた直後、ホドの散弾がマックスのいる柱に直撃した。

「なぁ〜に、逃げるだけならどうとでもなる」

そう言うとマックスは手榴弾(火薬増量版)を複数取り出すとまとめてピンを口にくわえて引き抜くと、ホドの居るあたりにばら撒いた。

「んな!」

流石のホドもこれには驚いたのか急いで距離を取った。
数秒後、通常よりも大きい爆発を起こしながらほぼ同時に手榴弾が爆発し、いくつかの器具を完全に粉砕していった。
暫くして、爆発も収まったころ合いを見てホドは索敵を開始するが・・・

「・・・なるほど」
「すまん、逃げられた」
『流石と言ったところね・・・』
「こっちは俺以外全滅だ、そっちは?」
『三人やられたわ、私たちがここを発見するまでの間に相当の訓練積んでたみたいね』
「それでもたった一年弱でそこまで成長できるものか?」
『わからない・・・もしかしたら覚醒しつつあるのかも』
「かもしれんな、お互い能力をフルに使って短期決戦で行こう」
『了解。今、部下を三人そちらに送ったから合流して』
「了解」

通信を終えるとホドは減った分の弾をスパスに込めると、複数の足音のするもとへと警戒しながら向かった。

戦いは激化の一途をたどり始める果たして最後まで立っていられるのはどちらか・・・




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